You are blue, so am I
千秋真一×野田恵


煮詰まらなければ見つからないものもあるけれど、
好きな人が隣で煮詰まっている姿を見るのは、どうしてこんなに苦しいんだろう。


You are blue, so am I


仕事を終え事務所を出る頃には、夜11時を過ぎていた。
メシに誘ってくれるオケの連中もいたが、断って三善のアパルトマンへ向かう。
本当はもっと早く行って、何か作ってやろうと思ってたのに。
チケットを渡す約束しかしていないのに、そんなことを思ってしまう自分がなんだか照れくさい。

のだめが相当煮詰まっているらしい…という噂は、ご丁寧にターニャが教えてくれた。

「仕事が忙しいのはわかるけど、ちょっとは気を利かせたら!?」

なんてお説教付きで。

何かしてやりたいのは山々だけど、ついこの間やりすぎて怒られたばかり。
そもそもオレは、のだめのことになると、どうも…その、過保護になってしまうらしい。
日本に居た頃とは、あいつの音楽に対する姿勢も、関係だって変わったというのに、
どうしていつもこうなんだろう、と苦々しくすら思う。

あいつはまだ起きているだろうか。
さすがにピアノは弾いてない…よな(いや、ありえる)。
もう寝たかな。煮詰まっているなら、まだ楽譜を読んでいるだろうか。
…絶対風呂には入ってねえ!

どんどん速くなる歩調に、オレも変わったよなと自嘲する。
三善のアパルトマンはもう目の前だった。

部屋には鍵がかかっている。
―――今日行くって言っておいたのに、本当に可愛げのない奴。
合鍵でドアを開けると、ベッドの上でワンピース姿のまま寝そべっているのだめの姿が目に入った。
横には楽譜が開いたまま置いてある。

「おい、のだめ!」

名前を呼ぶと、彼女がぼんやり目を開けた。

「あ…先輩。」
「チケット!今日持ってくるって言ったろ!?何寝て…」

瞬間、がばりと抱きしめられた。
湯上りらしい、湿度の高いあたたかな肌が触れる。

風呂入ったのか、と的外れなことを思いながら、身体に手を回すと、
オレの髪の毛に彼女の指がからまり、そのまま唇を寄せられキスを交わす。
軽く触れたそれは、すぐに舌を絡めあう深いものへと変わった。

あの合宿以来久しぶりだっていうのに、こんな風にされたら会話もできない。

「ちょっと落ち着けって。」

なんとか彼女をひっぺがして見つめるけれど、すでにオレの我慢も限界が見えている。
頬を染めたのだめは、ぎゅっとオレにしがみついてくる。

「真一くん…充電させて下さい…。」

はぐはぐと匂いを嗅いでくる様は、相変わらずの変態っぷりなのに…どこか必死で。
こいつは相当、オレに会いたかったんじゃないかと虫のいい考えが脳裏を掠めて、
そう思った瞬間に、理性の糸はぱしっと音を立てて焼き切れていた。

首筋に手を添えて、再び唇をむさぼる。
ぎこちなく伸ばしてくる舌を絡めとり、歯列をなぞった。
耳朶をなぞると、それだけでのだめの腰はふわりと浮かぶ。
それに気を良くしたオレは、ぱくりと耳と加えて舌で責めることにした。

「やぁっ…はん、あ…真一くんっ…」

赤い顔をしたのだめが、息も絶え絶えに喘ぐ。
誘ってきたのは自分のくせしやがって、敏感なやつ。
ワンピースを剥ぎ取るように脱がせ、白い乳房に指を這わせる。

「冷たいっ!」

彼女は軽く抗議の声をあげるけれど、誰が聞くもんか。

「大丈夫。すぐ暖まるから。」

そう言ってふわふわの胸を撫で回し、最初は柔らかく、徐々に強く揉んでいく。
まだきちんと触れていないのに、乳首がぴんと立ち上がって自己主張を始めていた。

「勃ってる。」

そう囁いてやると、彼女は恥ずかしそうに身をすくめる。
その様子があまりに可愛くて、追い討ちをかけるように耳元で繰り返した。

「触るのと舐めるの、どっちがいい?」
「…な、舐めて下さいっ…」

お安い御用、と呟いて乳首を咥え、チロチロと舐める。
空いた右手でもう片方の乳房をいじめると、彼女の可愛い声が大きくなった。
同じアパルトマンの連中にばれないようにと、いつも控えめにする声が今日はおさえ切れていない。
もう少し抑えろ、と言ってやるべきなのだろうが…今日ばかりは思う存分彼女の痴態を堪能したかった。
会えずにいる日が続いたんだ。少しくらいいいじゃないか。
大体、アパルトマンの連中はオレたちの関係くらいとっくに承知済みなのだ。

さっきから誘うように動かしている腰に手をやると、胸だけでいきかけていたのだめは、
期待を裏切られたかのように「はい?」と呟いた。
それを無視して、彼女の一番敏感な部分を覗き込む。
そこはもうぐっしょりと潤い、あふれ出しそうなほどだった。
ぐいと足を広げさせて見つめると、さすがにのだめが抵抗してくる。

「恥ずかしいデスよ…!もう!」
「ふーん。」

意地悪く言って反応を楽しんで…こういうことをすると、こいつの感度は上がる。
まあ、普段だって充分いいカラダをしているのだけれど。

さんざん眼で堪能して、恥ずかしがらせた後にそこに吸い付いた。
クリトリスを嬲ると、ほんの少ししかしていないのにすぐにイってしまう。
がくがくと腰をゆすって、オレの舌にそこを押し付けるようにして絶頂を迎える彼女を見ていたら、
すぐに欲しい気持ちに歯止めが利かなくなってしまった。

どうにか避妊具を付けて、彼女の中へ滑り込む。
思いの外、つるりとオレ自身が通って奥へ当たった。

「―――いたっ!」
「あー、ごめん。今のはちょっと、痛かったと思う…」
「もう、なんで…」
「つーか、お前濡れすぎ。」

こんなにぐしょぐしょにしていたら、そりゃ一気に奥まで入るって。
わかっているのかいないのか、涙目でオレを睨んでくるのだめが愛おしい。
つながったままぎゅっと抱きしめると、あ…という小さな声を上げてオレの腰に足を絡み付けてきた。

一番奥に密着したまま、ゆっくりと腰を揺らす。
殆ど抜き差しなしでぎゅうぎゅうと奥を貪ると、最初は安心しきった表情だったのだめが、
徐々に息を荒げ、顔を紅潮させてきた。

「真一くんっ…そこ、変!」

どうやら、いいポイントがあるらしい。

「どこ?」
「あ。そこ…ひゃん!イヤ、だめぇ…」

ダメとか言ってる割には、顔は喜びで溶けそうになっているし、そこはオレをきゅんと締め付けてくる。
そんなんじゃ「ダメ」の意味もへったくれもあったもんじゃない。

イイくせに…という言葉は言わずにおいて、連続してそこを責め続ける。

「あっ、あっ、はうっ…無理無理!ああっ…」

甲高い声で啼くと、のだめは白い喉を大きく逸らせて枕の上に沈んだ。
漏れる息が絶頂を迎えたことを知らせる。

「お前…今日すごいな…」
「そんなことないデスよ。」

目を逸らすのは嘘を付いている証拠。一番自分が、今日の自分のおかしさをわかっているだろうに。

―――今日おかしいのはオレも一緒か。

頭の片隅で思うと、オレはのだめの足を肩にのせて一気に奥を突いた。
はげしいピストンを繰り返し、さっきイったばかりの彼女を容赦なく責める。
自分のそれが熱いのか、彼女の中が熱いのか…とにかくつながったところから溶け出しそうで怖い。
のだめの喘ぎ声が、すごく遠いところから聞こえるような気がして、
そこに自分の吐息交じりの声が混ざって、心臓がはちきれそうになる。

さっきからずっと絶頂状態ののだめが、オレにぎゅっとしがみついて叫び声を上げた瞬間、
オレもまた、彼女を強く抱きしめてゴムの中に欲望を吐き出していた。

戦地から帰ってきた恋人同士みたいな、切羽詰ったセックスの後で、
さんざん感じて満足したのか、のだめは糸が切れたように眠ってしまった。

(バカなやつ―――)

いつも口癖みたいに、好きだの愛してるだの言ってくるくせに、
どうして本当に逢いたいときには、逢いたいの一言も言ってくれないのだろう。
いつもつまらないことは、簡単に報告してくるくせに、
どうして煮詰まってるときや辛いときは、本音を話してはくれないのだろう。

挙句に、ほとんど会話もしないで求め合って、そのまま眠ってしまうなんて。
なあ、これじゃオレがとんでもなく、頼りにならない男みたいじゃないか。

煮詰まらなければ見つからないものもあるけれど、
好きな人が隣で煮詰まっている姿を見るのは、どうしてこんなに苦しいんだろう。

せっかく来ると連絡したのに、部屋に鍵がかかっていた―――。
その状態が、今のオレたちを的確に表している気がして。

でも。
鍵がかかっていても、合鍵があればドアは開くから。
煮詰まった状態が、永遠に続くわけじゃないから。

「がんばれ、学生。」

そう呟いて、すべすべした額にキスを落とした。

そういやオレ、サンマロ以来のだめの「本気のピアノ」を聞いてないよな、と思いながら。

煮詰まり状態を脱したのだめのピアノをオレが聞いて、どう思ったのか―――。
それはまた、別のお話。






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