番外編
![]() 「ぶわっはっは!!!」 「・・・・。」 私語は御法度のコンサート会場で、こんな、馬鹿笑いする男。 たしかに、このオケはひどい。ルー・マルレがもうずっとダメダメなのは、友達から聞いてた。 でも、3か月ぶりに会うユキが、デートをここでというから、来てみたのに。 黒髪の若い指揮者はユキと同じ日本人で、今、ユキがやってるR☆Sの立上げ者だときいたはず。 こんなに、あざわらわなくっても。まだ新人じゃないの。 自分だってこのころは、そうとうダメだったくせに。・・・そう、私と出会った頃・・・。 ユキは、どこからか紙を取り出し、モンブランで何か書きつけている。 私はユキと付き合い始めてから一生懸命 日本語を勉強したから、今では日常会話には困らない。 『ホラね。痛い目あっちゃったー!!』 「・・・・・。」 「カロリーヌ、これ、前やってたみたいに折ってよ〜」 「え、ハートに?」 「そう。あ、きみ、黒木君!! コレ、千秋に渡しといて。頼むね!! あっ・・と、電話だ」 私が手紙をハートに折っている横で、彼は携帯で、おそらく女性と楽しげに話している。 「・・・ハイ」 「じゃ、預かります・・・Au revoir」 クロキクンは私に気の毒そうな眼差しを向けながら、手紙を受け取った。 ユキがこういう人なのは、もう、よぅく知ってるけど・・・。 「あ〜面白かった〜!! さて、MURANOのレストラン予約してあンだ、行こ。今夜は一晩中 愛を語るぞ〜」 えっ、またー? モダンでお洒落なのは認めるけど、ムッシュークロサワのお供で連れて来てもらって以来、ずーっとここばっかり。 情けないことに、彼は私のために素敵なお店を開拓して案内してくれるような人じゃない。 ___違う。なにより情けないのは。こんな男との腐れ縁を切れない私だ・・・。 ー Hotel MURANOのベッドルーム ー 「__あ・・あぁっ、あんっ・・・ユキ・・」 「ん〜〜、イイよ、カロリーヌ・・う・・あっ、ほらっ・・どう?」 彼は私の乳房を後ろから掴み、密着した部分を中心にして深くリズムを送り込みながら、 私の身体のラインを手でゆっくりと撫で下ろした。 「あ、やぁっ・・ん、あぁ・・!!」 私は昔から、冷静だとか感情が顔に出ないだとか、いつも皆から言われてきた。 自分でも、わりといろんなことに冷めてるタイプなのかもしれないと思う。 だから、ユキといるとき、そしてユキに抱かれるとき、ユキが私にもたらす熱が、ひどく快感で・・・ ・・・離れられなかった。 「こんどはいつ会えるの?」 「んー、本番10日だから、楽屋に来てみてよ。タンホイザー演るんだー。いいよー。やっぱ ヴェヌス様最高!!」 「・・・・・」 ・・・もう決めなくちゃ。前に進めなくなっちゃう。 今のユキでは、私がつらくなるだけだ。私は自分を大事にしなきゃ・・・。 ____というわけでLESSON79に続く___ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |