鶺鴒診断その後(非エロ)
番外編


先日に行われた鶺鴒の身体測定で、結よりもややそれが小さかった月海は、ひどく落ち込んで出雲荘に帰ってきた。

「何ぞ、得も知れん苛立ちが収まらぬ」

月海はイライラした様子で冷蔵庫を開け、中から牛乳を取り出した。

ゴクッゴクッ

パックの半分ほどを流し込み、一息をつく。

「…くっ…! ちっとも変わらぬではないか! 毎日飲んでおるというのに、どういうことじゃ!」

当り散らすように叫ぶが、周りには誰もいなかった。 しばらく興奮した後、月海は何かを思いついたように頷くと、そのまま二階へと向かった。

「吾は結に負けるわけにいかんのじゃ。 ミナト…、ミナトも大きい方がよいに違いない……」

月海のそれは一般にはかなり大きい部類に入ったが、「結に負けている」という現実が、=皆人を取られると感じた月海には、もはや一般的などどうでもよかった。
ただ結に勝ちたい、勝って少しでも皆人の目を自分に向けたいと思う一心で、月海は動いていた。
向かった先は、松部屋だった。

「なんですか月海たん〜? 松は今忙しいのですよ。とっても 」

液晶モニターからの光が電灯になっているような松部屋にて、月海と松が座っていた。

「だから言ってるであろ? 胸を…大きくする方法はないのかと聞いておる!」

語尾の発音が強くなっていき、月海は興奮したようにまくし立てる。 しかし松は首を横に振り、ため息をついた素振りを返した。

「何言ってるですか? 月海たんは充分大きいのですよ。それ以上大きくしたら、たぶん皆たんの許容範囲を超えるかと……」

月海は許容範囲?と不思議な表情をしたが、それでも引き下がらなかった。

「もぅ〜仕方ないですね〜。 大きさの1センチ2センチぐらい微々たるもので関係ないのですよ。 要はそれを上手く使った方の勝ちです」
「上手く使う? なんじゃ??」
「皆たんにアピールすればいいのですよ。そのまま胸で。 それで迫れば、皆たんも意識せざるを得ないというわけですし、月海たんを意識して見ると思うです」

なるほど、少しばかり大きいというだけで「負けている」という現実に拘っていたが、大きい小さいは問題ではなく、皆人の気を引きたいなら直接いけばいいじゃないかと松は言っていた。

「結に勝つことに拘りすぎて、本来の目的を見失うとは… 礼を言う、松」

月海は松部屋を後にすると、皆人の部屋へと向かった。 歩きながら、月海は必死に頭を駆け巡らせる。
どうやったらいいのだろうか。胸でそのまま? 考えるほどに分からない。 月海は男の気の惹き方などさっぱり浮かばず、「直接」ということだけ頭にあった。 ただそれを実行するとなると……月海の顔がカーッと赤くなっていった。







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