番外編
![]() 317 :名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 11:33:31 ID:8QkbKANg 「係長、これ」 笹本が小さな箱を差し出す。 意味を分かりかねて箱と笹本の顔を交互に見た。 すると、彼女はふっと笑いながら 「係長は特別なんで。」 と箱を俺に押し付けるようにして渡してきた。 「次の任務があるので。失礼します。」 出ていこうとする彼女に声をかける。 「笹本!」 「はい」 「怪我、しないようにな。気を付けて。」 「はい!」 彼女を送り出し、俺は手のひらの箱に視線を移した。 翌朝、四課では井上、山本、石田が何やら語り合っている。 「笹本さんて昨日男にチョコ渡したりしたんすかね?」 「ないない。少なくとも俺にはくれなかった」 「もしかしてお前、昨日チョコ一つももらえなかったのか?」 「お、俺はいいんです。チョコなんかいつでも食えるし…」「井上は?」 「惨敗っす。合コンも連敗だし…」 頭を抱える二人を尻目に、妻子から愛情たっぷりチョコをもらった石田は上機嫌だ。 319 :名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 23:57:20 ID:ACI7uoTD 「笹本さん、今日何の日か知ってます?」 「さぁ。あんたの誕生日ではないと思う」 世間はバレンタインデーで、恋人達は盛り上がっているが笹本には関係ないらしい。 「そうっすよね…。」 今日は笹本と警護者が違うため、朝しか顔を合わせない井上は落胆の表情を浮かべた。 本当は仕事が終わった後で会いたかったが、今日の予定では無理。 ため息をつきながら井上は突っ伏した。 「なんだ、義理チョコ期待してたのか」 そんなやり取りを笑いながら眺めていた石田は、励ますように教えてくれた。 「警護課には、義理チョコというものは存在しないからな」 確かに少ない女性課員が義理チョコを用意するのは大変だ。 だけど笹本さんは本命にも用意してないんですよ、という言葉を飲み込み拳銃保管室へ向かった。 任務が終わり、帰庁したのはまもなく日付が変わる頃。 腕時計を変えるために開けた引き出しには、小さなメモが貼られ包装された小箱が入っていた。 「井上へ 義理の塊を用意してやったから、よく味わって食べろ。 あと、引き出しの中は整頓しておくこと。」 −−笹本さん、ちゃんと用意してくれてたんだ。 ニヤニヤしている井上に、尾形が訝しい目を向ける。 「お先に失礼します」 「ああ、お疲れ」 警護課を出てすぐにメールを打つ。 「本命チョコ、ありがとうございました。 すごいうれしいです。 もったいなくて食えないです。 ホワイトデー、期待してて下さいね」 笹本が喜ぶものは何か考えながら、井上は家路についた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |