第五話-戌の回-のパロ(非エロ)
瀬文焚流×当麻紗綾


居酒屋で食事をする瀬文と里中。

里中「よし、そろそろシメの親子丼といくか」
瀬文「そうですね。すいません、親子丼二人前」
店主「あー、ちょうど売り切れちゃったよ」
瀬文「え?」
店主「一人で11人前食べちゃったお客さんがいてね」

瀬文が店主の指さす先をみると、そこには見おぼえのあるムカつく顔が―

瀬文「うまいのか」
当麻「んふっ、ウマいっす」

こちらの殺気を気にもとめず、幸せそうな表情で答える当麻。
その後頭部に肘打ちを喰らわすと、当麻は「ウッ」とうめいて
丼ぶりに顔をつっこんだ。

当麻「瀬文さん、こんなところで何してるんですか」

ガバッと振り返ってこっちを見た当麻の顔には、米つぶが大量についていた。

瀬文「お前は親子丼何杯食べれば気が済むんだ」

瀬文は顔をしかめながら当麻に向かって文句をたれた。

当麻「だからってなんスか、食べたら犯罪ですか、ってか何罪ですか、
高蛋白高カロリー取締法違反ですか―」

バキッ。

当麻の子供じみた反論に腹が立ち、思わず顔面にパンチを
喰らわす瀬文。

当麻「―ッたー…」

小声でブツクサつぶやく当麻を横目に見つつ、瀬文は

瀬文「で、親子丼の味はどうだったんだ」

とぶっきらぼうに聞いた。もともとこの居酒屋にはその親子丼が目当てで
来たのである。瀬文の少し悔しそうなカオをみて、急に表情が明るくなる当麻。

当麻「えー、そんなに聞きたい?ねぇ聞きたい?」

と、ニヤニヤしながら顔を近づけてくる。

瀬文「…近ぇよ」
当麻「んー♪どうしよっかなぁ〜。もう、卵なんか超ふわとろで〜、
鶏肉はジューシーで噛むと味が口のなかで広がって、ダシなんか
もうすんごく濃厚で〜…」
瀬文「………」
当麻「あ、知ってます?ここの親子丼って一日限定20食で、超人気なんで
めったに食べられないそうですよ。
ホント、今日食べれなかった人がお気の毒です〜」

ちっともお気の毒そうじゃない顔をしながら当麻はしゃべった。
瀬文の眉がだんだん吊りあがる。そんな瀬文の反応を大いに楽しみながら
当麻は言った。

当麻「あ・でも、その売り切れた親子丼を食べれる方法を
瀬文さんだけに特別に教えちゃいます。」
瀬文「―本当かっ!?」
当麻「はい。瀬文さん、もっとこっちに―」

と言いつつ、当麻が手招きをする。
いわれるがままに当麻に顔を近づけると、次の瞬間当麻の両腕がすごい速さで
瀬文の肩に回され当麻が瀬文の唇に自分の唇を押しあててきた。

瀬文「ん゛――――!?」

あまりに突然の出来事に目をしばたき、当麻を振りほどこうともがく瀬文。
だが、当麻はかなりの力でしがみついていてなかなか離れない。
ようやく瀬文が全力を出し、当麻を突き離したあと、顔面にもう一発
パンチを喰らわした。

当麻「ったー!!なんすか、瀬文さんがどうしても親子丼が
食べたいって言うから、親切にもその方法を教えてあげたってのにー。 」

殴られた鼻をおさえながら、当麻が憤慨て答えた。
しかし、またさっきのにやり笑いに戻り、

当麻「―で、どうでした?おいしかったでしょ?」

と聞いてきた。

瀬文「…味とか…全然…わかんねぇよ、バカ」

息を切らしながら答える瀬文。

当麻「え!?なにそれ、舌まで入れて欲しかったってことですか?」
瀬文「―ッ…撃ち殺すぞボケ!!」

立ち上がってもう一度当麻に殴りかかろうとする瀬文。
そこへ、里中があわてて割って入った。

里中「ちょっ、この子誰?」
瀬文「…知りません」

くるっと背をむけて、瀬文はぶっきらぼうに答えた。

―数分後、会計をすませ店を出た二人は当麻と別れた。

当麻「おつかれやまでーす」
里中「またね、当麻ちゃん」

当麻に向かって笑顔で手を振る里中。
瀬文は、当麻とは一切目を合わそうとせず、無言で別の方向を見ていた。
帰る途中、里中がにこにこ笑いながら、瀬文に話しかける。

里中「あの子、お似合いじゃないか」
瀬文「…だとしたら、撃ち殺して下さい」

瀬文は顔をしかめながら、それでも里中に悟られないよう、
さっきのキスの味を思い出していた。
あの店の親子丼の味は噂通りの絶品らしい。






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