瀬文焚流×当麻紗綾
![]() 居酒屋で食事をする瀬文と里中。 里中「よし、そろそろシメの親子丼といくか」 瀬文「そうですね。すいません、親子丼二人前」 店主「あー、ちょうど売り切れちゃったよ」 瀬文「え?」 店主「一人で11人前食べちゃったお客さんがいてね」 瀬文が店主の指さす先をみると、そこには見おぼえのあるムカつく顔が― 瀬文「うまいのか」 当麻「んふっ、ウマいっす」 こちらの殺気を気にもとめず、幸せそうな表情で答える当麻。 その後頭部に肘打ちを喰らわすと、当麻は「ウッ」とうめいて 丼ぶりに顔をつっこんだ。 当麻「瀬文さん、こんなところで何してるんですか」 ガバッと振り返ってこっちを見た当麻の顔には、米つぶが大量についていた。 瀬文「お前は親子丼何杯食べれば気が済むんだ」 瀬文は顔をしかめながら当麻に向かって文句をたれた。 当麻「だからってなんスか、食べたら犯罪ですか、ってか何罪ですか、 高蛋白高カロリー取締法違反ですか―」 バキッ。 当麻の子供じみた反論に腹が立ち、思わず顔面にパンチを 喰らわす瀬文。 当麻「―ッたー…」 小声でブツクサつぶやく当麻を横目に見つつ、瀬文は 瀬文「で、親子丼の味はどうだったんだ」 とぶっきらぼうに聞いた。もともとこの居酒屋にはその親子丼が目当てで 来たのである。瀬文の少し悔しそうなカオをみて、急に表情が明るくなる当麻。 当麻「えー、そんなに聞きたい?ねぇ聞きたい?」 と、ニヤニヤしながら顔を近づけてくる。 瀬文「…近ぇよ」 当麻「んー♪どうしよっかなぁ〜。もう、卵なんか超ふわとろで〜、 鶏肉はジューシーで噛むと味が口のなかで広がって、ダシなんか もうすんごく濃厚で〜…」 瀬文「………」 当麻「あ、知ってます?ここの親子丼って一日限定20食で、超人気なんで めったに食べられないそうですよ。 ホント、今日食べれなかった人がお気の毒です〜」 ちっともお気の毒そうじゃない顔をしながら当麻はしゃべった。 瀬文の眉がだんだん吊りあがる。そんな瀬文の反応を大いに楽しみながら 当麻は言った。 当麻「あ・でも、その売り切れた親子丼を食べれる方法を 瀬文さんだけに特別に教えちゃいます。」 瀬文「―本当かっ!?」 当麻「はい。瀬文さん、もっとこっちに―」 と言いつつ、当麻が手招きをする。 いわれるがままに当麻に顔を近づけると、次の瞬間当麻の両腕がすごい速さで 瀬文の肩に回され当麻が瀬文の唇に自分の唇を押しあててきた。 瀬文「ん゛――――!?」 あまりに突然の出来事に目をしばたき、当麻を振りほどこうともがく瀬文。 だが、当麻はかなりの力でしがみついていてなかなか離れない。 ようやく瀬文が全力を出し、当麻を突き離したあと、顔面にもう一発 パンチを喰らわした。 当麻「ったー!!なんすか、瀬文さんがどうしても親子丼が 食べたいって言うから、親切にもその方法を教えてあげたってのにー。 」 殴られた鼻をおさえながら、当麻が憤慨て答えた。 しかし、またさっきのにやり笑いに戻り、 当麻「―で、どうでした?おいしかったでしょ?」 と聞いてきた。 瀬文「…味とか…全然…わかんねぇよ、バカ」 息を切らしながら答える瀬文。 当麻「え!?なにそれ、舌まで入れて欲しかったってことですか?」 瀬文「―ッ…撃ち殺すぞボケ!!」 立ち上がってもう一度当麻に殴りかかろうとする瀬文。 そこへ、里中があわてて割って入った。 里中「ちょっ、この子誰?」 瀬文「…知りません」 くるっと背をむけて、瀬文はぶっきらぼうに答えた。 ―数分後、会計をすませ店を出た二人は当麻と別れた。 当麻「おつかれやまでーす」 里中「またね、当麻ちゃん」 当麻に向かって笑顔で手を振る里中。 瀬文は、当麻とは一切目を合わそうとせず、無言で別の方向を見ていた。 帰る途中、里中がにこにこ笑いながら、瀬文に話しかける。 里中「あの子、お似合いじゃないか」 瀬文「…だとしたら、撃ち殺して下さい」 瀬文は顔をしかめながら、それでも里中に悟られないよう、 さっきのキスの味を思い出していた。 あの店の親子丼の味は噂通りの絶品らしい。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |