第9回のパロ(非エロ)
瀬文焚流×当麻紗綾


当麻は瀬文を待っていた。
―あの筋肉バカ、勝手に辞表なんて出してどこ行きやがったんだよ。
…でもあいつの行く先は読めてる、絶対志村家に現れるはずだ―
そして、当麻の読み通り、瀬文に会うことができた。
二人でベンチに腰掛け、牛丼をあげて、励ましてやった。なのに―

「俺にはもう刑事をやる資格なんてない。」

―ふざけんな

「俺は逃げん。卑怯者でもない。志村の敵は必ず打つ。」

―ふざけんな

「スペックホルダーを今の法の中でどう裁けるんだ。志村を殺した奴を法で裁けるのか。
法なんてクソ食らえだ。」
「それを考えるのは私のこの頭脳です。私が必ず追い詰めてみせます。
だから私は未詳にいて、てめーの帰りを待ってんだろーがよ!!」

そう叫んで、当麻は少し息が切れていた。しかし、瀬文は当麻の顔を見ようともせず、
ただ黙っていた。

―沈黙が怖かった。きっと瀬文さんは一人で行ってしまう。そしてきっと危険な目に会う。
そんなの絶対いやだ。
行くな、行くな、行かないで―

当麻はそう心の中で必死に祈りながら、それでも精一杯強がっているつもりで
自分も瀬文の顔を見ずに、まっすぐ前を見ていた。

しかし、瀬文はすっと立ち上がり、歩き出した。

「瀬文さん…」

そう呼びかけた当麻の声には、悲痛の色が隠せていなかった。

―今ならまだ間に合う?今追いかけて行って、無理やり引きとめてみようか。
いや、そんなことをしても無駄だろう。あのバカは決意したのだ。
一人で行くことを。私が引きとめても、その決意が揺らぐことは決してないはずだ。

でも…―
背筋をピッと伸ばして歩いていく瀬文の後ろ姿を見ながら、当麻は心の中でぐるぐると葛藤していた。すると、数メートルも行かないうちに、瀬文が早足で戻ってきた。紙袋を忘れたらしい。つかつかと歩いてきて、ベンチに置いてあった紙袋を奪うようにさっと拾う。
―忘れ物かよ!んな大事なもん忘れんな!でも、もう一度戻ってくるように
説得しようか…今ならまだ…
と、当麻が心の中で考えていると、
ふと目の前が陰ったかと思った瞬間、瀬文がふわっと唇を重ねてきた。

「―!?」

当麻は驚いてほんの少しだけ肩をピクッと動かしたが、すぐに体の力を抜いて
ゆっくりと目を閉じた。5秒か6秒、二人はそっと唇を重ねていた。

「ずるいですよ、瀬文さん…」

と、当麻が言った。心なしか、目がうるんでいる。

「…わかってる。」

瀬文は、当麻の目をじっとみていた。しかし、やがてふいっと
顔をそらすと、当麻に背を向けてゆっくりと歩き出した。

「―続きは、瀬文さんが無事に帰ってきてからしましょうね!」

当麻はそう瀬文の背中に向かって叫んだ。
瀬文はくるっと振り返ると、少しだけ笑って、

「…ああ、そうだな」と言った。






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