歓迎会(非エロ)
瀬文焚流×当麻紗綾


「そういえば瀬文くんの歓迎会、まだやってなかったねぇ。」

野々村係長が柿ピーをポリポリ食べながらそうつぶやいたのは、ある日の平日だった。
その日は特に事件らしい事件も依頼もなくて、当麻・瀬文・野々村の3人は
それぞれのデスクに座って暇を持て余していた。
最近は何だかんだとややこしい事件が立て続けに舞い込んできていていたのだが、

(そもそも、未詳にそんなに立て続けに事件が舞い込んでくる方が珍しいのだが、)

その日は珍しく何もすることがなく平和だった。
そもそもこういった風景の方が、未詳では日常的なのかもしれない。
当麻はだらしない姿勢デスクに突っぷし、パソコンをいじっていたが、急にガバっと起き上がって

「いいですね、それ」

と、目を輝かせて言った。
当の瀬文は無表情で

「いえ、自分は遠慮しておきます。自分一人のために、わざわざそんなことをしていただかなくても…」

と言ったが、

「んだよ、かてーなおみゃーは! そんなんだと、頭まで筋肉になっちゃいますよ瀬文さん。…まぁ、もうなってますけど」

という当麻の声に遮られた。

「んだと、コラ」
「まぁまぁ、瀬文くん。当麻くんもこう言ってることだし、やろうよ歓迎会。ね?」

危うく壮大なケンカが始まりそうだったので、野々村が素早く間に割って入った。

「いいじゃない、どうせ暇だし。…んーじゃさ、僕の命令ってことで」
「は、係長のご命令とあらば」

瀬文は命令という言葉を聞くと、急に背筋をピシッと伸ばして素直に野々村の言葉に従った。

「相変わらず堅いねー」

と、野々村は苦笑した。
当麻は

「よーし、たんまり食べるぞー!係長のおごりで」

と言いながら、もう自分のデスクの持ち物を片づけ始め、次々とキャリーバッグにつめこんでいた。

「ちょっとちょっと当麻くん、僕まだおごるって言ってないよー」

と、野々村が当麻にすがるように言い、

「焼き肉、餃子、豚カツ〜…」

とニヤニヤしながらつぶやく当麻を見ながら、瀬文はやれやれとため息をついて自分も帰る準備を始めた。

歓迎会は街中の小奇麗な居酒屋で行われた。内装は和室で、3人は個室をとって酒を飲んでいた。
当麻は次々と酒と料理を注文し、一体その細い体のどこにそんな量が入るのだというくらい食べて飲んでいた。
もうすでに、当麻の周りには空のビールや日本酒の瓶が何本も転がっていたし、料理にしたって10人前は平らげてしまっているはずだ。

「当麻くん、もうその辺にしといたら?」

と、野々村が心配そうに言った。

「だーいじょうぶですてぇ〜。まだまだイケますよ、あたし〜」

と、当麻は明らかに酔っぱらってた様子で言った。そして、焼酎を瓶ごと持ってあびるように飲んだ。

「ったく、毎度毎度、よくそんなに食えるな。その内吐くか腹壊すぞ。」

と、瀬文は当麻を横目で見ながら言った。

「べー、絶対そんなことになりませんよ〜。私の胃袋はブラックホールです。」

と、言いながら当麻はまたガツガツと料理を食べ、酒を飲んだ。
しばらくして、その事はすぐに起こった。出し巻き卵をおいしそうに口に運んでいた当麻が急にウッとうめいたのと、
それを見た野々村が傍に飾ってあった花瓶から花を引っこ抜いて瀬文に放り投げるのと、瀬文が花瓶を当麻の口元に持っていくのと、ほぼ同時だった。そして次の瞬間、当麻が花瓶に中に盛大に吐いていた。

「―ナイスフォローです、係長…」

と、瀬文は言い、

「あぁ〜、もったいない…」

と野々村がつぶやいた。

会計をレジで済ませると、6万8千円だった。多分8割は当麻のものだろう。
野々村は、あちゃーと言う顔をしたが、全額支払った。

「係長、自分も払います。―というか、この馬鹿に支払わせます。」

と瀬文はすぐそばで座り込んで

「う〜、あ、餃子あと3人前下さい…」

とつぶやいている当麻をあごで示した。

「いいよいいよ、部下におごるのはね、上司の役目なの。それに今日は瀬文くんの歓迎会だし」

と言って笑った。

「それより、僕今日この後ね、雅ちゃんと待ち合わせしてるから。当麻君の見送り、よろしくね」

店の外に出ると野々村はそう言って瀬文に頼んだ。当麻は一人で歩ける状態ではなかったので、瀬文の背中におぶわれている。

「…は、ご命令とあらば」

と、少し顔をしかめて瀬文は言った。

「ふふ、相変わらず堅いねー。それじゃあ、お疲れサマンサー。」

と言い残し、野々村はタクシーを拾って去って行った。

後に残された瀬文は、とりあえず当麻を背負って歩き出す。

「―おいコラ、起きろ。お前の家はどこだ。」

と瀬文は当麻に聞いた。

「うぅーん、わかりましぇん…」
「ハァッ!?わからないってどういうことだ―っておいコラ寝るな!起きろ!オイ!」

瀬文は当麻に向かって呼びかけたが、反応はなかった。チッと舌打ちを鳴らし、瀬文は途方に暮れた。できれば今すぐにでもこの馬鹿を放り投げて帰りたいところだが、そうもいかない。
ホテルに泊めるという手もあったが、こいつの為に1円でも金を支払うのはごめんだった。

―仕方なく、瀬文は自分の家に向かって歩き出した。

それから30分ほどして、瀬文の家着いた。
駅の側にある小さいマンションで、建ってから間もないらしく、見た目は綺麗だった。
当麻を背負ったまま玄関の扉を開けて靴を脱ぐと、うーと当麻が呻いた。コイツ、今頃起きやがってと瀬文が心の中でつぶやくと、

「み、水…」

という声が聞こえたため、仕方なく当麻をリビングのソファに座らせてコップに水をくんで用意してやった。当麻はゴクゴクと水を一気に飲み干すと、プハーッと言って、目をきょろきょろさせた。

「あれ―、ここどこッスか?あたしの家?」
「馬鹿野郎、俺の家だ。」
「へぇー、そうなんすか、ま・いいや。」

―いいのかよ!ってかなんかもっとリアクションとれよ!と、瀬文は心の中でツッコミを入れたが、当麻は意に介した様子もなく、

「じゃ、あたし寝ますんで。ベッドどこすか?」

と聞いてきた。

「誰がお前なんかにベッド貸すか。床で寝ろ床で。」

「イヤですよ、瀬文さんが床で寝てください。あ、ベッドあるじゃないですか―」

そいうって当麻は瀬文をするりとかわしてベッドを見つけ、勝手にボスンッと横になった。

「オイやめろ。勝手に人のベッドで寝るな」

瀬文はそう言って急いで当麻をベッドから引きはがそうとしたが、
当麻はしがみ付いてテコでも離れなかった。数分の格闘のあと、瀬文はあきらめて当麻にベッドを明け渡した。
瀬文がベッドの端に腰かけて息を切らしていると、

「瀬文さん、瀬文さん」

と、当麻がニヤニヤしながら呼んだ。

「うるさい、さっさと寝ろ。」
「一緒に寝ましょう」
「―ッハァ!?なんで俺がお前と寝なきゃいけないんだ?」
「なんでって…あたしが瀬文さんのこと好きだから?」
「寝言は寝てから言え!」

そう言って瀬文は立ち上がろうとした。
しかし、その腕を当麻がつかんで、

「ねぇねぇ、いいじゃないですか」

と言いながら引っ張ると、
瀬文はあっさりバランスを崩して当麻に折り重なるようにベッドに倒れた。酒のせいかどうも調子がでない。

「―お前、酔ってるだろ」
「酔ってませんよ、一応シラフです」
「嘘つけ。お前が酔ってもないのにそんなこと言うわけない」
「ったく、ムードも何もあったもんじゃないですね」
「つかお前、いつも以上にクサい」

瀬文は当麻に鼻を近づけて匂いを嗅いだ。

「あー、そういえば5日間くらい風呂はいってなかったかも。」

と、当麻はサラッと
とんでもない爆弾発言をつぶやいた。

「―ッ!?お前、風呂くらいちゃんと毎日入れよ!一応女だぞ!?」

瀬文は本気で驚いて言った。

「なんすか、一応って。んー、あれ?そういえば10日間だっけ…?」
「―ッ!?」

瀬文はガバッと立ち上がると、そのままドスドスと足音を立ててバスルームへと消えた。しばらくして、シャワーとお湯を沸かすような音がしたかと思うと、瀬文が戻ってきて、「風呂へ入れ」と言った。スーツのジャケットを脱ぎ、Yシャツの袖をたくし上げている。

「イヤですよ」
「じゃあ力ずくで入ってもらう」
「なにす―!?」

と、当麻が答える間もなく瀬文は無理やり当麻の服を全部脱がした。
ジャケットも、スカートも靴下も下着も全て脱がされたそのへんに散らかされた後、
当麻は瀬文にひょいと抱え上げられて風呂場へ連れて行かれ、そのまま湯船にザッバーンと突き落とされた。
当麻は一瞬ブクブクと風呂に沈んだが、すぐにザバッと浮きあがってきた。

「プハッ―し、死ぬかと思った。溺死させる気ですか!」

当麻はゲホゲホと言いながら瀬文をにらんだ。

「うるさい、口を開けろ」

瀬文はいつの間にか歯磨き粉をたっぷりつけた歯ブラシを持っていた。

「ッ、イヤです」

と、当麻が言った瞬間、瀬文にあごをガッとつかまれ、無理やり口に歯ブラシをつっこまれた。
その後当麻は時々抵抗しながらも瀬文に全身を洗われ、体を拭かれてまた瀬文に抱えられてベッドに戻された。

「―あ、あの、瀬文さん―?」

先ほどからの一連の行動に圧倒されていた当麻がやっと口を開いた。

「うるさい、引き金をひいたのはお前だ」

瀬文はそう言って当麻をベッドに押し倒し、強引に唇を重ねた。






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