唐突に
瀬文焚流×当麻紗綾


「あ…あっ…!」

瀬文の動きに反応し、当麻は喘ぎ声を洩らした。殆ど痛みだけだった行為は、回数を重ねる度当麻の体を馴らし、今では容易に快感を得るようになっている。
いつもの冷静な思考は沸き上がり溢れ返る快楽に少しずつのみ込まれ、自分で操縦できなくなっていた。
ただひたすら瀬文を感じたい。
目の前ではっ、はっ、と短く息を吐きながら瀬文は抽挿を続けている。行為に集中しているためか当麻を視線で捕えてはいない。体から汗が浮いている。
ふと、唐突に、当麻は瀬文を好きだと思った。
自分の足を抱え、膣内にペニスを差し込み、懸命に腰を振るこの男を。
共に快楽を共有し合い、軍人気質で無表情、憎まれ口ばかり叩く、筋肉バカで真っ直ぐなこの男を。
自分にとって非常に大事な存在であるこの男を。
そしてその思いは大きな波をもって当麻を支配した。瀬文の全てに好きだと身体中が反応する。
どんどん膨れ上がる思いは内から外へと放出したいと告げ始め当麻は思わず口を開いた。

「………っ……!」

けれどそれはごきゅりと喉の鳴る音と共に今一歩のところで呑み込まれた。
当間にとってそれは、思考が麻痺した状態で安易に口にしたい思いではなかった。
伝えるならば自分をきちんと確立させている状態で伝えたい。けれどそれ故に、もしかすると一生告げることは出来ないかもしれない程の大事な思いだった。
しかし今現在思いは膨れ上がる一方だ。
瀬文が一段と大きく当麻に打ち込む。

「あぁ!!」

と当麻の嬌声が上がった。

「瀬…文…さん…」

瀬文さん、瀬文さんと口に出来ない思いの代わりに当麻は何度も瀬文の名を呼び、手を伸ばした。
行為は早さと勢いが上がり、そのせいで、何も考えられなくなっていく。
瀬文が当麻の手を掴み顔を向けた。

「当麻」

一言名前を呼んだ。
自分の名を呼ばれたのを耳にしながら、当麻は行為に上り詰め、真っ白な世界へと意識を飛ばした。






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