今夜も
瀬文焚流×当麻紗綾


ニノマエとの戦いの後二人は病院に入院した。
当麻は幸い軽く、大部屋に移っていた。
瀬文はまだ両腕、目共にまだあまり良くなっていなかった。
当麻は暇をもて余し毎夜瀬文の部屋に行っては相対性理論だの双子のパラドックスだのと頭の痛くなるような話をして眠りの邪魔をしていた。

今夜もそう。
病室の扉がおもむろに開いて、看護師とは違う足音がする。
いつもはここで「よっこいせ」と少々間の抜けたあの声でパイプ椅子をベッドの近くまで運んでくるのだが今日は違った。
おもむろにギシとベッドが軋む。

「…お前、何のつもりだ?」
「あ、起きてたんですか?ッチ…」

?舌打ち?本当に当麻は何のつもりだろうと身構える。

「ま、いか。…瀬文さんは黙って寝てればいいんすよ」

よっこいせといいながらごそごそと当麻がなにかをしている。
黙って寝てろ?一体何のつもりだ?
と、ふわっと香る餃子の匂い。
それとほぼ同時に首筋に何かが触れた。
無意識に力を入れ構えてしまう。
そしてその感覚は今度は耳へ。
むず痒いような背中がぞわぞわするようなあの感覚だ。

「…お前は何をするつもりだ」

当麻に問いかけても返事がない。
その代わりに当麻は病院着のボタンに手をかけていた。
抵抗できない。
毒雪のせいで目がやられ、ニノマエのせいで腕が思うように動かない。

「お前は一体…」

当麻が何をしようとしているつもりかは薄々分かってきたが、その相手がなぜ自分なのかを聞こうとしたがそれも餃子臭い口によって阻まれてしまった。

思い返せば己の欲望を吐き出したのは随分前だ。
入院してからは当然。
正直、溜まっている。
だが、相手は当麻だ。
餃子臭い。
さすがにその匂いじゃ萌えないどころか萎えてしまう。
足の自由はきくのだから本当に抵抗しようとすればできるのだが、ちょっとくらいなら…と欲望が勝ってしまいそうだ。
理性と欲望とが勝てもしない戦いをしている間も当麻の愛撫は続いていく。

「あっれー瀬文さん、溜まってるんスか?まだなんも触ってないのにビンビンですよ?」

高まるぅなんて呟きながら当麻は瀬文のそれを弄ぶ様に触る。
瀬文は自分の体の反応に戸惑っていた。
見えないせいだろうか?こんなには普段はならないはずなんだ。
自慢ではないが長く持つ方だ。
それなのにお世辞にも上手いとは言えない手つきにどんどんペースを持っていかれている。

「もっとよくしてあげます」

そう耳元で囁いた。

口か…悪くないな。餃子臭い以外は。
ところが瀬文の思った感覚はそれではなかった。

「ん…あ。キツイ…」

瀬文自身が当麻の中に入っていく。
クチュ…と水音が部屋中に、瀬文の頭の中に響く。
当麻も随分濡れていたのか、そう考えただけでも下半身に響く。

「あぁ…ん…」

視界を奪われた感覚だけの世界はこんなにも気持ちのいいものなのかと油断していたら当麻の腰つきに一気に高められてしまった。
もうコントロールがきかない。

「当麻!待て、動くな!!」
「ぁ…そんな気持ちいいんですか?」

瀬文の制止の声は快感だと捉え当麻はさらに激しく腰を使う。

「っく…ダメだ。出る…当麻、抜け!!」

中で出してはいけない、それが瀬文に残っていた唯一の理性だった。

「大丈夫、です。あぁん…つか早くないっスか?」

そう言いながら当麻はさらに瀬文を奥へと飲み込もうとする。

「抜けっ!!当麻!!!」

我慢の限界だった。
当麻の中に己の欲望を吐き出しながらいつものキャリーを引きながら猫背でバージンロードを歩く花嫁が脳裏にちらついた。

「…俺の人生終わった」
「はぁ?思いっきり中出ししといて何言ってるんですか?つかすんげぇ早いんですけど」
「あぁ?人の寝込み襲っておいて何言ってんだ?お前が大丈夫って言ったんだろ?」
「今日は大丈夫な日です。はぁ…せっかくいい気分だったのになんでこんな言い合いになっちゃうかなぁ。今日は遅いんでもう寝ます!おやすみなさい」

ぺこっと頭を下げて部屋を出ようとする。

「ちょっと待て!!これ片付けろ」

下半身を露出したままの瀬文を置いて。


数週間後、全快した瀬文に倍返しされたのは言うまでもない。






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