瀬文焚流×当麻紗綾
きっかけは忘れた。 記憶の儚さを思い知った上で、その存在をより強く自分に刻み込みたいと思った。 心で、身体で、五感の全てでその存在を感じたかった。 互いに同じ気持ちであれば、躊躇うことは何もない。 二人にとって、それは必然だったのだろう。 当麻の肌の上を、瀬文の手がすべっていく。 「瀬文さん、そんな触り方出来るんすね」 「…どういう意味だ?」 眉をしかめると、 「今までぶたれたことしかなかったんで、瀬文さんの手には」 と笑う。 「手、大きいですよね。暖かくて気持ちいいです」 当麻の安心しきった表情に、自然と瀬文の顔もほころぶ。 その大きな手で胸を揉みあげるようにすると、甘い吐息が漏れ、さらにその先端をつまむと、びくんと身体がはねる。 「……ん、ふ…っ」 桜色に染まる頬。 普段の当麻からは見られない艶っぽい表情に、瀬文も徐々に煽られていく。 全身への丁寧な愛撫を経て辿り着いたそこは、充分に潤っていた。 「指、入れるぞ」 「ぁ、……っん、あぁっ…」 自身のたてる水音が恥ずかしいのか、顔を隠す仕草がいじらしい。 「隠すな」 手を繋いでやると、痛いほどに握り返してくる。 「………あっ、あ、っ……せ、ぶみさ……んっ、あぁっ」 与える刺激に素直に反応する当麻がたまらなく愛しくて、瀬文は優しくキスをした。 「当麻、いいか?」 「はい」 「いくぞ」 当麻のなかに、瀬文が少しずつ進入してくる。 「は…っ、あ……ん…、んっ」 「痛く、ないか?」 息を詰める当麻を気遣うと、 「思ってたよりは、平気…っ、みたいです。なんか、圧迫感というか、異物感というか、入ってんなっ…て、いう、感じ、します…」 「瀬文さんは、どうですか?あたし、気持ちいいですか?」 と返してくる。 「正直、たまらん」 素直に答える瀬文に、当麻がぎょっとする。 「瀬文さん、なんか可愛いっすね」 「うるせえ。…ゆっくり動くぞ」 ゆるゆると抜き挿しを繰り返す。徐々に圧迫感が和らいできたのか、喘ぎに艶が戻ってきた。 「あっ、あ、あ、んっ、んぅっ、ん、せぶみっ、さ、ぁっ」 当麻のそこは、奥を突かれる度にきゅうきゅうと締め付け、瀬文をせきたてる。 「とう…まっ、」 「あ、あんっ、ん、せぶみさ、せぶみさん、あっ、」 何度も名前を呼び、しっかりとしがみついてくる当麻。 その存在を確かめるように力強く抱きしめて、瀬文は達した。 「いやー、セックスってなかなか恥ずかしいもんですね。やっぱり偽物の記憶とは違います」 そんな記憶も書き加えられていたのか。 思わず口から出そうになった言葉を瀬文は飲み込んだ。 今重要なのは過去ではなく、これから進む未来だ。 「偽物の記憶は、忘れさせてやる。お前は俺だけ覚えとけ」 そういって抱きしめると、当麻は満足そうに微笑んで、胸の中で頷いた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |