妙なカレー味 続編
瀬文焚流×当麻紗綾


お互い、絆以上の何かがあるのは感じていた。
けれどあたし達に甘ったるい関係は似合わない。


……と思っていたのに。



未詳を出て、二人は黙って歩く。
寒いはずの夜風が今は心地好い。
帰り際に瀬文にとられた手はまだ繋がれたままだった。

しっかし、瀬文さんて普通に手繋いだりするんだ、ウケる。
と繋いでいる張本人である当麻は思った。

……さっきまではもっと凄いことやってたけど。

思い出して身体が熱くなる。
繋いだ指先から瀬文に悟られそうで、必死で違うことを考えた。

「…俺の家で構わないのか」

気がつけば、いつの間にか駅に着いており、瀬文がようやく口を開いてそんなことを言った。


……瀬文のくせに。


「…いちいち聞くなよハゲ。あっタクシーいいなぁ。乗りたいなぁ」
「…ハゲてねぇ。電車で帰るぞ」
「ケチ!ドケチハゲ!」
「うっせぇトンマ!」

それからは、いつものくだらない会話をしながら瀬文の家へと向かったので、ようやく調子を取り戻すことが出来てホッとした。

けれど、罵りあいながらも解かれない手が妙に熱かった。



瀬文は玄関の鍵を開け、先に当麻のキャリーを中に入れた。
その後当麻を室内に入れると同時に体をくるりと反転させた。

「………っ!」

瀬文は当麻の背を玄関のドアに押し付けると、噛み付くようにキスをした。

強引に舌をねじ込まれ、当麻は声をあげることもできない。
それと同時に先ほどまでの熱が急激に蘇ってくる。


瀬文がようやく唇を離す。
明かりも着けず、靴も脱がずに行われる性急な行為に文句を言ってやろうと、当麻は肩で息をしながらたどたどしく口を開いた。

「…この、筋肉バカ…急に…っぁ!」

瀬文は当麻に最後まで言わせず、今度は耳を舐めあげる。

「ちょっ…んぁっこんなとこでっ…!」

「…もう待てない」
瀬文に低く掠れた声でそう言われた途端、当麻は力が抜けてしまい、もう抗うことなんて出来なくなった。
当麻を腕の中に閉じ込めた瀬文は思い出したように玄関の鍵をカチャリと閉めた。

「…っあ!」

瀬文は何の前触れもなく、当麻のスカートの中に手を入れ、下着の上から指を這わせた。

「…おまえもうぐしょぐしょじゃねぇか」
「…やぁっ…うっさい…、…ぁんっ」

敏感な所を摩られ、また密が溢れ出す。


いつの間にか瀬文の手は当麻の胸元に移動しており、服の上からやわやわと揉まれる。

スーツの上着を脱がされ、ブラウスのボタンを外され、下着は上にずらされる。

あらわになった胸の先端は既にツンと立ち上がっていた。

瀬文は片方の胸の先端を口に含み、もう片方を手で揉みしだく。
舌で突つかれたり柔らかく吸われるたびに、体が無意識にびくびくと震える。

「…あ…あぁ…あんっ」

「…感じてるのか」
「…っ…ちがっ…っや」

あぁもうハゲのくせに、ムカつく。
ムカつく、のに…

「あぁっん…!」

瀬文の愛撫に当麻は嬌声をあげてしまう。

待てない、などと言ってた割に瀬文は余裕だ。
一方当麻は、瀬文に全身を激しく、しかし隈なく丁寧に触れられ、意識が飛びそうだった。
やけに甘い自分の声はどこか遠くから聞こえてくる。

「…っん…!」

口内で乳首を転がしていた瀬文の唇が横にずれ、当麻の白い胸元をきつく吸い上げた。

瀬文は暗がりでも分かる紅い跡を何度も付けてくる。

――まるで、瀬文さんの所有物になったみたいだ。


痺れる脳で当麻はぼんやりと思った。

「…はっ…せぶみさっ…!」

瀬文の指が下着の中に入り、当麻の中に入れられたのが分かった。

先程瀬文に言われた通り、そこは十分すぎるほどに潤んでいたので、瀬文の指をいとも簡単に呑みこんだ。

「ゃ…あ、あ、…あぁん…」

瀬文の長い指は、すぐに当麻のいい所を探り当て、執拗にそこを刺激してくる。

「…んぁ、ぁ…ぁ…、ダメ…っ」

当麻はもうどうしようもなく感じていて、ドアの外に声が漏れるかもしれないのがわかっているのに喘ぐ声を抑えられない。

「イケよ」

瀬文が指を一層早く動かす。

「イ…イヤあっあぁぁぁ…!」

「――大丈夫か?」

当麻はくたりと力が抜けてドアに背を預け、瀬文の腕に捕まりかろうじて立っていた。

「…、先パイ、激しすぎっす…」

恥ずかしさを隠そうと、当麻は茶化すように言う。
しかし、

「何言ってんだ。……俺のことも満足させろよ」

瀬文が当麻の敏感になった耳元で低い囁くので、それだけでまた体中が熱くなった。


当麻は瀬文に抱き抱えられ、部屋のベッドに下ろされた。

されるがままに服を脱がされ、一糸纏わぬ姿になる。

シャツを脱ぎ捨てた瀬文は、しばらくジッと当麻を眺める。

「…や、見んな…」

瀬文の視線に耐え切れず、手で体を隠すようにする。
しかし瀬文は何も言わず、当麻の手を剥がし、シーツに押し付けた。

「…当麻」

瀬文は熱の篭った声で言うと、再び深く、強く口づけた。

瀬文は唇を離すと今度は全身に音をたてて口づけていく。

「…とうま」

時折漏れるように、いつもと違った意図で自分の名を呼ばれ、当麻は心も体も酷く疼いた。

「…挿れるぞ」
「ひあっ…!」

先ほど達したばかりで敏感になっていた当麻に瀬文は硬く張り詰めた自身を挿入した。

突然の圧迫感に当麻は思わず瀬文の首にしがみついた。
瀬文は当麻の頬を優しく撫で、軽くキスを落とした。


「…動くぞ」

当麻の狭いソコをほぐすように瀬文は浅く抜き差しする。

全身を貫く甘い疼きに、当麻は無意識に腰を揺らしてしまい、更にきつくしがみつく。

「んっ、んっ、せぶみ、さんっ」

次第に早くなる瀬文の動きに、強烈な快感が走る。

瀬文と限りなくゼロに等しい距離にひどく満たされるのが分かる。
このままでいたい。
このまま、溶けて離れられなくなったらいいと思った。

ほんとはずっと、こうしたかった。



「当麻…ずっと、こうしたかった…」
心を見透かしたような瀬文の言動に心臓がドクリと跳ねる。

「…あたしも、です、せぶみさ…やぁっ…ん!」

瀬文は最奥を一気に突き上げる。

「悪い…もう、手加減できん」
「あっ、あっ、あぁっん!」

瀬文は衝動のまま自身を深く突き上げる。
もう瀬文から余裕は感じられなかった。

当麻はもう限界だった。


「あっ…せぶみさ、っあぁ、も、だめ…!」
「とうま…!」
「せぶみさ…っあぁぁ……!」
当麻が達する締め付けに瀬文も限界を感じ、昂ぶる熱を吐き出した。

「………んっ…」
「気がついたか?」

起きたらすぐ横に瀬文さんがいた。
少し眠っていたようだ。

「……おはよーございやす」
「…まだ夜中だ」

「「………………」」

妙な沈黙が流れる。


ふと、瀬文が目線を当麻に向けた。

「当麻、一応言っておくが、……別に勢いだけでしたわけじゃないから」

珍しく歯切れ悪くそんなことを言う瀬文がなんだか可笑しかった。

「わーかってますって」

当麻はそう言って瀬文の腕に抱き着き、ついでにチュッ、と軽くキスをした。

――悪くないなぁ、こういうのも。



「…お前は、確信犯か」

暫くの沈黙の後、瀬文はそう言うやいなや、当麻の首筋に顔を埋めた。

「えっ…ゃ…ちょ、せぶ…」
「お前が悪い」
「何言って、…ぁっ…!」



二人の夜はまだまだ始まったばかりである。






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