浴衣
瀬文焚流×当麻紗綾


「―――じゃあ、僕は雅ちゃんがまっているから☆そして、もうこのまま此処へは帰ってこないのでよろしく!」

そう言って浴衣姿の係長は同じく浴衣姿の当麻と瀬文を置いて部屋を出てゆく。

「・・・」
「・・・・・」

広い和室には二人っきり。

事の始まりは、係長の「事件が一段落着いたことだし、みんなでパァーと旅行でも行こうよ!費用は僕が全部出すらさぁ〜」とか気前のいい一泊二日の温泉旅行。
それになんとなしに付いて行ったのが悪かった…。

蓋を開けてみれば、旅館に着くなり行き成り「光ちっぃv」とハートマークを飛ばす雅ちゃんが何故か待っていて係長を出迎えてきた。
実はこの旅行…慰安旅行を隠れ蓑にした不倫旅行だった。
それにまんまと、当麻達は利用されたのだ……。

「……ホントいっちゃいましたね」
「………ああ」

なんともいえない空気が嫌で二人は会話を交わし始める。


「まぁ、瀬文さんも茶菓子でも食いねぇ…」

当麻は目の前に置かれている菓子箱から煎餅を取り出しバリバリと齧り出す。
そのあと、流し込むようにお茶をガブガブ飲む。

「…――何処に居てもお前はうるさいっ」

当麻のガサツな姿に思わず、何時ものように瀬文は突っ込んだ。
――が、

「――!」

その時偶然瀬文は目にしてしまった。

行儀悪く膝立てた当麻…の、
捲れた浴衣から白くてやわらかい脚が堂々と出されている。


――――エロい。

不本意ながら思ってしまった、

「――もっもう、俺は寝るぞ…っ!」

その感情をかき消すように、瀬文はそう言って一人布団に潜る。

「――あっ、わたしも」

後を追うように当麻も床に就く。

……――ねっ、寝れねぇっっ!!
あんなものなんぞ見るんじゃなかった!
・・という、か…あんなものに興奮するのかっ!?俺……。
瀬文の頭は『あんなもの』こと当麻の脚でいっぱいになってゆく。
・・・・白い、やわらかい、触りたい、舐めたい!…って!俺は何をっ!

二時間近く経つというのに、瀬文は当麻の脚がチラついて結局寝付けないでいた…。
そればかりか、益々変な気分になっていく…。

悶々としている中、ゴソゴソ隣の当麻がうるさい。

―――あんだけ夕飯も茶菓子も食ったのに、腹でも減って寝れネェーのか?

人の気も知らず呑気になんだよと思った瞬間…、行き成りガバッ!と後ろから抱きつかれた。

「―――!ぇ゛!?」

瀬文は精一杯首を捻って振り向く。
―――目の前には当麻の顔。

「なっ、なんだ…!?」
「…夜這いですよ」
「はぁっっ!?」
「夜這い!今から私は瀬文さんを夜這いするんです!」

当麻はドヤ顔で宣言する。
そして驚きすぎて固まった瀬文の体を、いいようにまさぐりはじめた。

「…っ」

そっきまで想像していた当麻の生脚がスルリと絡まる。

――すげぇ…スベスベで気持ちいい。

「何すんだよっ!ヤメロ!なんでこんなことっ!」
「なんでって…瀬文さんの浴衣姿に欲情したからですっ!襟から覗く、胸元の鎖骨がエロいんだよ!」
「――はっ!?」
「ハゲの癖に鍛えた好いカラダしやがって!」
「なっ!てめぇっ俺はハゲてぇ…」
「―――兎に角、好きってことなんすっ!……瀬文さんが」
「…!……」
「……いっ、いけませんか?」

当麻の抱きつく腕に力がこもる。脚もより絡みつき、ふにゃりと肉感が伝わる…。

――……っ、そんなこと言われて、そんな刺激されたら…。

「――――当麻ぁっ!」

たまらなくなって瀬文は当麻をひっくり返し、覆いかぶさった。

「――!?きゃあっ!あっ…あっん…ひっっ」

当麻の首筋に顔を埋め、思いっきり吸い付く。
……この日餃子を食べていない彼女からは、何時もと違ってなんともいえない女の香りがした。いい匂い…。

瀬文は勢いよく当麻の浴衣を剥ぐと、むき出しになった乳房を貪る。同時に膝を立たせ、空いた片手で腿裏を撫で回す。

・・・・・想像より、やわらかくってたまらない。

腿の付け根から足先までネットリゆっくり瀬文は手を何度も往復させた。
当麻の滑らかな柔肌を楽しむ。

「あっ、いゃっ…っ、なんか瀬文さんの手つきヤラシイ…瀬文さんの変態!エロオヤジぃ」

火照った顔で当麻がそう言う。
瀬文は埋めていた乳房から顔を上げ、

「変態は兎に角……とっくに三十路過ぎた男がこんな事していたら確かに十分エロオヤジだな…」

と自虐するも、開き直っているのか…また顔を戻し当麻の乳に舌を這わせ味わう。

「――ひゃっ!」

瀬文は当麻の股を開くと、そこに手を差し込み濡れているのを確認するや否や自身の硬いものを半ば強引にねじ込む。

「あ゛ぁ―――っ!!」

…当麻は声にならない声で喘ぐ。

「――あっ!あ、あっっ、あっ、ああ」
「―――当麻…」

視線が絡まる。
腰を動かしながら、二人は深い口付けを交わし続けた。


ようやく互いの唇が離れた途端、

「ふあんっ…せっ、せぶみ…さんって、近くで見ると結構ホクロあるんですね」

当麻が口を開く。瀬文の頬をさすりながら。

「・・・だからなんだ…よ」

瀬文は当麻の口元に手を伸ばし、垂れている涎を拭ってやる。

「いやぁ…なんか、顔にホクロが多い人って老化が遅いらしいですよっ」
「へぇ・・・」
「だから」
「だから…なんだ」
「だから……こんなに下半身元気なんですね」
「…てめぇ――コラァッ!」
「―――あっ!ああっあ゛、ソレ駄目っ」


瀬文が当麻の中を抉る。
――――酷く疼いて彼の熱を感じた。

「……っせぶみサンっ――!」
「当麻……」
「―――瀬文さんっ!」
「当麻…当麻、当麻当麻まっ、とうま…とうまっ!」

うわ言のように瀬文は繰り返し当麻を呼ぶ。
何度も揺さぶり勢いよく突き上げる。

「ああっ、あ、あぁっ瀬文ぁさんアン……あっあ!っ!!」

当麻は絶頂し、瀬文の腰に巻きつけている脚を、水揚げした魚の如くピクリとはねさせた。

「―――っ!当麻ぁ…!!」

瀬文も当麻の奥へ欲望を開放する。
……長い射精を終え、ぐったり当麻の胸に倒れた。


―――情事後。

「……瀬文さん」

起き上がった当麻が、瀬文を呼ぶ。

「……なんだ」

当麻より、ほんの先に起きていた瀬文はヨレヨレの浴衣を拾って羽織っていた。

「あの……その…」

凄く、気まずそうな当麻。

「なんだ」
「…―――これ、不味くないすっか?」と言って当麻が膝立ちして見せる。

・・・・当麻の股から先ほど瀬文が注いだ白い物…精液がドロリと腿を伝い膝に流れ、下に垂れている。

「―――あっ…」

瀬文は『しまった』という顔をした。

「ヤバイっすよね!布団……苦情きますよねっ!怒られますよね!弁償とか…カンベン!てか、これって犯罪すかね、中にいっぱい出されちゃったら溢れて、布団汚しちゃいました罪?」

「――――っ」

―――!ヤバイって、そっちかよ。

当麻の見当違いの答えに、ガクリと肩を落とす瀬文。

「・・・・それは俺が、なとかしておくから…てか、まず、お前を綺麗にしておかないとっ」

瀬文は濡らしたタオルで当麻のカラダを拭きながら、傍に落ちているぐちゃぐちゃの浴衣を見てこう思った。

――――――当麻は好きだが、浴衣は嫌いだ。

――…こいつは人を狂わせる。

そして深い溜息をついた。






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