澱みの時
瀬文焚流×当麻紗綾


瀬文は、知らぬ間にチイに記憶を刷りこまれていた。
チイと瀬文は友人で、主にエロい話で盛り上がるのが二人のマイブームであるー

かなり馬鹿馬鹿しいのに、瀬文は違和感を覚えながらも電話でチイの話を聞いてやるのだ。

「当麻が感じるポイントがさ」
「当麻が好きな体位が…」
「当麻がモノほしそうな顔で見るんだ。僕のをくわえるのが上手くてー」

イライラしている自分がわかり、そういう話をなぜ聞いてやるのか、分からなくなるたび、不思議といつものことなんだ、と納得している自分に戻る。
繰り返し、繰り返し…

今日もまた、チイからの電話が鳴る。
一瞬、なぜこいつと友人になったのか?と思うのだが、それはとても一瞬すぎて瀬文は気がつかないでいた。
記憶が操作されていることにー

そしていつものように、電話に出てやる瀬文がいた。
…が、今日はいつもの電話とは少し様子が違うらしい。

「ハアッハァッ、おい、瀬文、当麻のあえぎ声、聞きたいだろう?聞けよ!感じてるみたいだぜ!ハァッ」

「ンンッ、ゥンッ、ャ、嫌…電話、切ってよッ…」

ヤッている最中に電話をしてきたのは明らかだ。瀬文は一瞬でチイに嫌悪を覚えたが、やはり一瞬だけで、頭が拒否しているのだが、なぜか聞いてやらねば、と思う自分がいる。

「ン、ゥンッ、イヤ、やめ…左利き…」

瀬文は頭がなぜ混乱するのか、自分で理解出来ずにいた。
おかしな感情が瀬文の頭を駆け巡る。

ー当麻。職場でいつも顔を合わせている、あの当麻。
…あの当麻が。チイと。ヤッている。…。

イライラして、いつものチイらしい電話じゃないか、と自分を抑えようとする。…だめだ。
なぜ、イラつくのだろう。…いつもこうじゃなかったか、チイはこういう奴だけど、友人じゃないか…  


…だめだ!


ほとばしる感情は、瀬文に本当の感情を想い起こさせた。


…こいつはムカつく。俺はこいつのことを生理的に受け付けねえ!!

なんで今まで友人だと思っていたのだろう?信じて疑わなかったのはなぜだろう?
…そして当麻は、なぜあんなやつと付き合っているのか。

…あいつらしくねえ…

瀬文は電話を切ると、イライラしながらシャワーをあびた。
そのあいだ、先ほどの声が頭の中でこだました。(ン、ゥンッ、イヤ、やめ…左利き…)
…感じている、当麻の声…
いや、考えるな!
頭を冷やしたくて、しばらくシャワーに打たれて煩悩を断ち切ろうとしていたその時、玄関でチャイムが鳴った。

あわてて身体を拭き、タオルを取り合えず腰に巻き、玄関に出る。

…!!!

「何してんだ、お前」
「…きちゃ、悪いいんすか」

そこには、今までチイとヤッていたはずの当麻が立っていた。

唖然としていると、

「おじゃましますですーーー」

と平然と当麻が上がりこんできた。

「お、おい」

瀬文はあわててとめようとしたが、当麻はズカズカとあっという間にベットに座り込んでいた。

当麻の声が、再び頭を駆け巡る…(ン、ゥンッ、イヤ、やめ…左利き…)
断ち切るように頭を振り、瀬文は冷静になろうと勤めた。

「おまえ…お楽しみの最中じゃなかったのか」

「…ああ、ちがいますよ、お楽しみってよりも、儀式っすね、全っ然感じないんで」

「え……そう、なのか」

「そうっすよ、あったし、なんで左利きと付きあっってるのかさえ、たまに忘れるんですよ…でも求められちゃうと、仕方ないんで」

「…で?なんでここに来たんだ?しかもヤッてる真っ最中に」

「…ああ、それなんすけど」

当麻は、姿勢を正すと、おもむろに瀬文を見据えた。

…そして、とんでもない事を言う。

「やるんなら、瀬文さんとやりたいなと思いまして」

ドクンと心臓が跳ね上がった気がした。
瀬文の頭の中の良からぬ考えを、見透かされたような気がした。

さっき聞いたばかりの、電話越しの当麻の声が、頭にこびりついているのを、こいつは知っているんじゃないかとさえ思えた。

当麻はおもむろに脱ぎ始める。あまりに平然と脱ぐので、瀬文は思わずその手を止めさせようと掴んだ。

…!!
当麻が、、、震えている?

一瞬にして当麻の顔が赤くなる。顔をさっとそむけ、手を掴まれたまま、当麻は小さく言った。

「…優しく、してください」

…この状況下で、止めたらそっちのほうがおかしい。
瀬文は迷うのをやめることにした。


やさしく、指を動かすたび、当麻の中から蜜があふれだす。

「ハァアンッ、アン、ァアッ瀬文さッンっ…!」

凄く感じているその声は、先ほど電話越しに聞いた声とは比べものにならないほど艶めいていた。

指を早く動かしてやると、身体をのけぞらせ、止めないで、と懇願する当麻は凄くかわいくて、こいつが地位のものかと思うと我慢がならなかった。

信じられないくらいの愛液が出て、当麻が全身で感じているのがわかる。

ひくついているそこに、強く突き上げるようにしてやると、あまりの当麻の感じように、いつもの瀬文では考えられない速さで果ててしまった。
しかしそれは当麻も同じで、二回目の頂点にすっかりバテている…


翌朝、再びエッチを済ませた後で当麻が言った。

「あたし、こんな感じたの初めてです。自分の身体がどうかしちゃったのかと思いました。
左利きとのエッチは、苦痛でしかなかったのになんでっすかね。なんなら、毎日瀬文さんとしたいくらいサイコーでした。これ、病気なんすかね。でもほんと、サイコーでした。これが女の悦び?なんですかねえ?」

あまりにしゃべるので、瀬文は口をふさいでやった。

「…ん、」

当麻は目をとじ、再び二人はベッドに倒れる。

「…ン、ン」

舌をからませ、当麻は胸を揉まれながら、再び蜜があふれ出てしまった。
二回戦に突入しようとした、その時…

「どすこい電話だよ!ちぇけらっちょ!」

表示は、チイだった。二人は、顔を見合わせる。…同じ事を考えたに違いない。二人は同時ににやりと笑った。

「おい、さや、どこにいるんだよ?昨日は…」チイの声が固まった。

電話口からは、ヤッている二人の声が聞こえていた。……






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