空き教室
リュウ×メグ


「め、メグ…」

リュウは、激しく後悔した。空き教室の扉を偶然にも開けてしまったことに。

「あっ…、り、リュウくっ……」

メグは自身の乳房を露に、まさに行為の真っ最中だった。メグのその年相応に成長した胸や真っ白な肌は、しばしリュウの視線を惹き付けて離さなかった。

「ご、ごめんっ!」

直後、ピシャリとドアを乱暴に閉める。壁に寄りかかり残像を消そうと試みた。しかし脳裏にはっきりと焼き付いている。ぜったいに見てはいけないものだった。いくら放課後に一つの教室にだけ明かりが点いていたとしても、気に止めることなく帰るべきだったのだ。
下半身に熱を覚え始めたリュウは、その場から走り去ろうとした。

「待って!」

驚き後ろを振り返れば、眉尻を下げ目いっぱいに涙を溜めたメグが、自分の腕を掴んでいた。

「このまま、帰らないで…」

伏せ目がちに呟くメグの身体は、いまだ胸元は開いたままで、小さく震えていた。

「い、いや…」

リュウはこんな時どうしたらいいのかさっぱりわからない。意識があらぬ方向へ飛びそうだ。だから、ちょっと勉強が得意だってなんの役にも立たないんだ、と混乱した頭の中で悪態をついていた。

「…お願い、来て」

メグに引かれるまま教室に入り机に腰掛ける。この部屋にメグの匂いがいっぱいに広がっている様な気がして、ますます胸の高鳴りが治まらなくなった。

「…っ、メグ?」
「リュウくん…お願い、軽蔑しないで…」

メグはリュウの身体を抱き締めていた。微かな嗚咽が、リュウの胸を締め付ける。

「…軽蔑なんてしない。いきなり開けた僕が悪かったんだ。本当に、すまない…メグ」

メグの背中にそっと腕を回す。お互いこんなにも近い間柄ではないはずだけれど、今はかえってこうして慰めない方が不自然な気がした。

メグが、小さく口を開く。

「どうしても、耐えられなかったの。…あたし、本当に…」
「どうした、メグ?」
「……リュウくんのこと…」

耳まで真っ赤にしているメグを見て、彼女が何を言いたいのか理解してしまった。こんなこと、今まで経験したことがなかったけれど。

「好き、リュウくん」

メグは顔を上げて、潤んだ瞳でリュウを見つめた。その時、リュウは自分の想いに確信を持つ。その赤く染まった頬に触れてみたいと、本能的に感じていた。

しんとした教室に、小さな水音と、微かな息づかいが響く。
二人は何も言葉を交わさずに、何度も深い口付けをしていた。メグはリュウの首に両腕を回し、自ら積極的に彼の唇を奪っていた。

「はぁっ…」

メグの開いたままの胸元に、リュウの手が触れた。びくりとメグは肩を震わせる。

「ん、んうっ……」

ゆっくりと揉みしだかれる。先ほど一人虚しく行っていたのと比べると、信じられない程に感覚が違う。

「メグの…柔らかい」
「あっ、ああっ…はあうっ…」

大好きな人に触れられる喜びを、メグは全身で感じていた。リュウの細くて白い指先が、メグの敏感な突起を捻る。

「ひあぁっ!」
「あ、ごめん…痛かった?」
「ううん…きもちいいっ……あ、あんっ」

リュウはますます止められなくなった。先端を集中的に弄れば、面白いくらいにメグの身体が跳ねる。滴る汗と、紅く染まった身体、悩ましげな声、その全てがひどく扇情的で、いつまでも眺めていたいと思った。

「ね、リュウくんっ……」
「なんだい?」

メグは、そっとリュウの手を掴む。その行き先は、メグの下半身だった。疼いて仕方のない身体を抑えるように、そこに強く宛がって懇願する。

「ここ…あ、おねがいっ!」
「…ああ、メグ」

リュウは普段の冷静な自分などとっくに見失っていた。ぐっしょりと濡れたメグの下着の中に侵入し、愛撫をする。

「あ、ああん…」

メグは机の上で悶える。疼きが最高潮に達し、自らの手で胸元を弄った。一人の時はいつも想像でしかなかったが、今は彼の手つきを再現することが出来る。

「あっ、あんっ、ふああっ」

まだ足りない。どんなに強く揉みしだいても、今は達することが出来ない。彼の、リュウのそれが欲しい。

「メグ…可愛いよ」

彼女の恥態を見て、リュウもまた自然に手が自身に伸びていた。ベルトを外し、何かに操られるように止められない衝動に従う。

「ここ、入れていいね」

メグのそこに指を一気に沈めた。

「やあっ!…はあっ」

何度か掻き回すと、耐えられないというようにメグの腰が揺れた。

「もう、欲しい?」
「うん…ちょうだいっ」

リュウはふっと口角を上げて、完全に勃ち上がった自身の先端をメグに宛う。

「んっ…」

メグの全身に力が入った。不安と恐怖が押し寄せ、涙が溢れる。

「く…っ」

突き上げたい衝動をこらえ、ゆっくりと押し進める。

「い、痛っ…あ」
「力、抜いて…」

リュウはもう一度唇を重ねた。メグの頬を伝う涙を猫のように舐めとる。

「ふう、っ…ん」
「動くよ」

リュウにはもう余裕がなかった。それはメグも同じだろうと思った。少しずつ律動を開始する。

「ああああっ!」

メグは一際高い声を上げた。

好きな人が、自分の中で動いている。最初は苦痛に顔を歪めていたが、いつの間にかそんなものは感じなくなっていた。先ほどとは違う涙がメグの頬を伝う。

「メグっ……僕も、キミのことが…」

リュウが先ほどの返事を口にしようとしていた。メグの中のリュウが、一際大きくなった気がした。

「…好きだっ」

「り、リュウくん…、んあっ!」

しんとした教室で、先ほどまで背徳的な行為を行っていた自分。それが、こんな結果になってくれるとは夢にも思っていなかった。

「あっ!ふっ、うれしっ、…リュウくんっ…」

メグは自らも腰を動かし、より一層の快楽を求める。部屋中に二人の淫らな音だけが響いていた。

「気持ちいい?メグっ」
「あんっ…はああっ、きもちいいよっ」

辺りは日が落ち、窓ガラスに自分達の姿が映っている。それに息を飲み、改めて自分たちのしていることを認識する。
メグからはとめどなく愛液が溢れていた。誰かの机を完全に汚してしまっている。

「やあんっ!…だめええっ」
「はあっ、メグっ」

リュウの動きが一層激しさを増す。メグは限界を感じた。

「あたしっ……もうっ、あっ…あああああっ!」

リュウから熱いものが注がれるのを感じた瞬間、メグは意識を手放した。

ーーーーーー

「リュウくん…赤ちゃんできたら、どうしよう」
「僕が責任を取るに決まってるじゃないか。そのつもりでキミとしたんだ」
「ありがと…リュウくん」
「ところで、メグ」

二人は帰路を歩いていた。メグは小首を傾げる。

「今日、何に耐えられなくて一人でしてたんだい?」
「えっ…」

途端メグは再び頬を赤く染めた。

「そんなの、言えないよ」
「そう。でも教室でなんて、よっぽどだったんだろう」
「やだ…リュウくん」
「白状するまで、帰さないよ」

リュウは微笑んで、メグの手を握った。

(ずっと、リュウくんといたいから…ずっと、言わないでおこう)

メグもリュウの手を握り返して、にっこりと微笑んだ。






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