ウソでもいいから
-1-
上田次郎×山田奈緒子


美味い。



俺の一日はこの一杯のエスプレッソから始まる。

まさに至福のひとときだ。

タバコをくゆらせながら英字新聞に目を通す。

天才物理学者といえど世界情勢のチェックも怠らない。

穏やかな時間がゆっくりと過ぎていく。



ピンポーン



こんな時間にセールスか。俺の部屋を訪ねてくる者はセールスマンしかいない。

何故なら俺には友達がいないからだ。この前は追い返すつもりが50万の羽毛布団を

買わされた。天才は同じ過ちを二度繰り返さない。居留守を使う。



ピンポーン、ピンポーン



しつこいな。俺はいないぞ。



ピポピポピポピポピンポーン



さすがに腹が立ってきた。今日はきっちりと追い返してやる。

少し熱くなりながら玄関へと向かう。



「どちら様?」俺はドア越しに尋ねる。



「おう、ようやく起きたか上田」聞き覚えのある女の声。



あいつか・・・



「ただいま留守にしております、ご用の方は・・・」

「寝ぼけた事言ってないで、とにかく開けろ上田」



俺は渋々ドアを開ける。



「しばらくぶりだな、元気だったか上田」俺の目を真っ直ぐに見据えながら

奈緒子は言った。



「要件はなんだ?」こいつはセールスマンよりタチが悪い。さっさと追い返すに限る。



「上田、今日はお前とセックスしに来た」



幻聴か?聞き間違いか?



「上がらせてもらうぞ」ヤツは靴を脱ぐと部屋の中へと消えた。



・・・罠か?



頭をフル回転させながら部屋に戻る。



「これは、なかなかおいしいな」



俺のエスプレッソを勝手に飲みながらヤツが微笑んでいる。

俺は様子を窺いながら、少し距離をおいてソファーに座る。



「シャワーを借りるぞ上田。お前はその間にこれでも読んでおけ」



奈緒子は鞄から一冊の雑誌を取り出すと俺に渡した。

付箋の付けてあるページをめくる。



今週の特集 セックスで女は綺麗になる

赤鉛筆で、ある一文に線が引いてある。

ー 女性ホルモンの分泌が増え、胸が驚くほど豊かに ー



これかっ!

あいつにとって俺は単なる豊胸マシーン・・・ 。ふつふつと怒りが込み上げ、

俺の中で何かが音を立てて崩れていく。



いいだろう、お前の望む通りにやってやろうじゃないか。



30分程経った頃、奈緒子はバスルームに入ったままの格好で部屋に戻ってきた。

バスタオル一枚の姿を予想していたので、意外だった。



「ずいぶん長かったな」

「お前もシャワーを浴びてこい」



奈緒子は俺とは目を合わさずにポツリと言った。



「さっき浴びたよ。朝風呂は俺の趣味だからな」

「そうか・・・」

「早く寝室に行こう」



俺は強引に奈緒子の腕を掴む。

寝室に入ると俺は奈緒子をベッドに突き飛ばした。



「きゃっ」



奈緒子のロングスカートがめくれ、白いふとももが露わになる。

奈緒子は真っ赤になりながら慌てて裾を直す。

俺は奈緒子に覆いかぶさる。

奈緒子は身を固くして、小さく震えている。



「・・・初めてなんだから、もう少しやさしくしろ」

「お前・・」

「それから、ウソでもいいから好きだって言え上田」



まわりくどいことしやがって・・・



「お前が言ったら、言ってやるよ」

「・・・・・・」

奈緒子が黙ったまま目を合わせてきた。
大きな瞳が睨むように俺を見つめる。
唾を飲み込む音が聞こえ、奈緒子は意を決したように口を開いた。

「う、上田・・・す、す、好」

言いかけた言葉を塞いだのは俺の唇だった。
軽く奈緒子の唇に触れ、耳元で小さく囁いた。

「好きだ」

その瞬間、固く強張っていた奈緒子の身体から力が抜け、ベッドに身体が沈む。
2度目のキスでは、深く舌を絡ませる。
最初は驚いていた奈緒子も、少しずつ積極的になってきた。
キスをしたまま、俺は奈緒子の服を脱がせる。
そして奈緒子の胸に手を伸ばした。

・・・・・・ない。

いや、あった。
これだ。
まさかこんなに小さいとは。
これをどうやって揉めというんだ。

だが、揉んで大きくなったという事例はいくつもある。
優しく乳腺を刺激するんだ。

「・・・っあ・・」

俺が胸を揉んで(乳腺を刺激している)と、奈緒子の吐息が熱を帯び、甘い声が漏れ始めた。
そして、俺が胸の先端の突起に触れると、奈緒子の身体がびくっと小さく震えた。

カーテンの隙間から入った朝日が、奈緒子のあらわになった上半身を照らす。

…きれいだ。

華奢な首筋、浮き出た鎖骨、小さいながらも形の良い乳房。
その先端にある桃色の突起はすでにピンと上を向いている。
何より俺を興奮させたのは、今まで見たことのない、奈緒子の紅く頬を染め恥ずかしそうな横顔。

「う、上田さん…。そんなに見ないで下さい…」

…やばい。
今まで何とか理性でつなぎ止めていた衝動が爆発しそうになる。
初めてだと言う奈緒子を気遣うことなく、本能のままに犯してしまいたい。

…いいや、だめだ。やっと手に入れたんだ。
今まで何度も奈緒子を好きだ、抱きたいと思いながらも行動に移せなかった。
やっと手に入れたこいつを、傷つけるような真似はしたくない。

「you、きれいだ」

奈緒子は驚いたように俺に視線を合わせる。

「ほ、ほんと…」「貧乳だけどな」

俺はいつものようにからかってみせた。
奈緒子の表情から笑みが消え、さっきとは別の意味で顔を赤らめる。

「う、うるさい!こっちだって巨根で我慢してやるんだ。貧乳くら…ふぁっ!」

緊張がほぐれた奈緒子の胸の突起を軽く弾いた。

「っ上田さ…、あっ!んんっ」

小粒だがつかみやすい突起を指先でつまみあげる。
奈緒子の息が荒らぐ。
そのままグリグリとこね回す。

「やっ…!待っ、うえだぁ…あんっ!」
「君でもそんな声をあげるんだな」
「上田さん、お願い…待っ」
「待たない」

こいつに心の準備などさせたら、何年かかるか分かったもんじゃない。

「君が望んだのは確か、こうする事だったな」

奈緒子を見つめたまま、左手で片方の乳房を揉みあげる。
俺の手にすっぽりと収まってしまうサイズだが、思った以上に柔らかい。

「んっ…はぁ」

初めは奈緒子の本にあったように、乳腺を刺激するよう優しく揉みしだく。
その感触を楽しみながら、恍惚としている奈緒子の表情を伺う。

…しかし、こいつ。
奈緒子の口はさっきから半開きのままで、吐息やあえぎを絶え間なくこぼしている。
ただ乳房をそっと揉んでいるだけなのに、この反応の良さは俺が良く利用――いやいや、
いずれ来るときのために、予習に用いていた動画教材に出ている女性なみだ。
いくら俺でも彼女たちの大半は演技であそこまでしていることくらい知っている。
すると奈緒子も?

…いや、それはない。
初めての奈緒子にそんな余裕はないだろうし、何よりこいつのキャラからしてあり得ない。
と、いうことは…はは〜ん、こいつ。

俺は意地の悪い笑みを浮かべ奈緒子にささやいた。

「youは感じやすいんだな」

ボッという音が聞こえたかと思うくらい奈緒子は赤面した。

「な、な、な…!そ、そ、そんなこと…」
「ないか?本当に?」

俺の心に加虐心が芽生える。
さっき優しくしようと思ったばかりだが、まぁ、許容範囲内だ。
それに、他でもないこいつが悪い。
こいつの目は男を誘っている目だ。

俺は胸を揉んでいた手に力を込めた。
指の隙間から、少ないが、奈緒子の胸肉がはみでる。

「あぁっ…!!はぁ、はぁ…あぁんっ」

奈緒子から一際大きなあえぎがあがる。

「これでも君は感じ易くないのか?」
「はぁっ…え?うえださ、ああぁんっ!」

瞬間、奈緒子の躰が跳ねた。
形を保っていた方の乳房の先端に俺が吸いついたからだ。
小さな乳首が俺の口の中をコロコロと転がり回る。

「やぁ…っ!吸っちゃ、ふあぁっ」

片方で乳房を激しく揉みこねる。

「あっ、あっ…だめぇ」

また片方でも乳首を飲み込む勢いで吸いつける。


「ああぁっ!!」

奈緒子の悲鳴のような声が響く。
ジュルジュルと俺の吸いつく音も、室内に響く。
奈緒子の形の良い乳房は片方はグニグニと変形し、もう片方は吸われる勢いでピンと伸びている。

「ふぁあっ…だめぇ、んんっ!!」

固く勃起した乳首を軽く噛むと奈緒子の躰が小刻みに震えた。
そのまま舌を尖らせレロレロとなめ回してみる。

何を隠そう初めて味わう女性の乳房だ。 
しかも相手が長年待ち望んだ奈緒子のものとなると、
この行為は俺にとっても十分魅惑的なものだった。
現にズボンの股間は張り裂けそうに膨らんでいる。

…しかし、もう少しの辛抱だ。もう少しで俺の計画は成功する。

揉んでいるほうの指で乳首をクリクリとこね回し、一方で吸う力もさらに強める。

「ああぁっ…!!うえださ、わ…たし…もぉ!!」

奈緒子から限界の訴えが聞こえるが無視する。
奈緒子のなだらかな丘を、俺の唾液がゆっくりと何筋も伝うのが視界の端に入った。
そのままそっと奈緒子の様子を伺ってみる。
奈緒子も視線を感じたのか、きつく瞑っていた目をうっすらと開けた。
快感で唇を噛みしめ、躰は桃色に染まり、汗で美しい髪が顔に貼りついている。

俺は奈緒子に問いかけた。

「ひもひひひか?(気持ちいいか?)」

行為はそのまま、視線は奈緒子から離さない。
奈緒子は、一瞬躊躇ったのち、小さく何度もコクコクと頷いた。
俺の心に何とも言えない満足感がわき上がる。

…頃合いだな。

しかし、計画はまだ完成していない。
俺は手を休め、口を乳房から離した。ツーと唾液が糸を轢く。
恥ずかしそうにその光景を見つめる奈緒子。俺は奈緒子に極めて優しい笑顔を向けた。
期待と羞恥に満ちた目で奈緒子は見つめ返してくる。

「はぁ、はぁ…上田、さん?」
「悪かったな」
「…え?」「君があんまりかわいいもんだから本来の目的を忘れていた」
「か、かわいい?」

こみ上げてくる笑いを必死に噛みしめつつ、俺は両手を奈緒子の両胸にそっと添えた。

「舐めたりしても意味がなかった。そんなんじゃyouの豊胸に効果がないからな」

瞬間、奈緒子の顔色が曇る。
俺の笑みは意地の悪いものに変わっていただろう。そのまま胸を優しく揉み上げる。
まだその先端は俺の唾液でヌラヌラと光っていた。

「どうだ?youの家にある豊胸マシーンより効きそうか?」

奈緒子はつらそうに、切なそうに唇を噛みしめた。

少し意地悪が過ぎたか?
しかしここまできたら、奈緒子を陥落させたい。屈服の台詞をこいつの口から言わせたい。

もう何分こうしているのか。
奈緒子の乳首を濡らしていた俺の唾液もすっかり渇きつつある。
奈緒子はさっきから小さく吐息を洩らすだけで、これといったことは言ってこない。
だが腰を時折うねり、太股をこすり合わせるその姿は、限界が近い事を如実に訴えていた。

…まだか!?早く言え!俺の方も限界なんだ。

意地の張り合いでこうなるまで何年も掛かった俺と奈緒子だ。
もしかして永遠にこのままなのではなどという、馬鹿げた不安が脳裏を過ぎったその瞬間。

「……ない……さい」

奈緒子が何か言葉を発した。慌てて視線を合わせる。
奈緒子は顔を真っ赤に染め、しかしその瞳は強く俺に訴えかけていた。

「……何、だって?」

深く息を吸い込んだ後、奈緒子がゆっくりと答える。

「…ぃじわる…しないで、くだ…さい」

これが聞きたかった。
この気の強い女の降伏した姿を見たかった。恥辱に染まった表情が見たかった。
……もう少しいけるか?

「ん〜?どうして欲しいんだ?はっきり言わなきゃ分からないぞ」

奈緒子の目に涙が溜まる。

「…うう〜!!もぉ、やっ……!」

奈緒子にとってこれ以上は本当に無理なのだろう。
その綺麗な顔をくしゃくしゃに歪め、奈緒子の頬を涙が伝った。

「なっ!?わ、わかったから…泣くな!!」

俺は慌ててその涙を拭った。頬に汗で貼りついていた髪もそっと退けてやる。

「すまなかった。少し、虐めすぎたな」

苦笑しながら奈緒子を見る。もう奈緒子から涙は流れていなかった。
代わりに鋭い目つきで俺を睨んでくる。

「この馬鹿上田が!!サド上田が!!」

クツクツと笑いがこみ上げてくる。俺は愛しさを込めて奈緒子を見つめた。
奈緒子もその視線にあてられたのか、罵倒を止める。

「さっきも言っただろう?かわいすぎるyouが悪い」

その台詞に赤面した奈緒子が顔を逸らす。

「熱でもあるのか?上田さん、今日変ですよ」
「こんな時くらい素直になろうと思っただけさ」

うっと口ごもる奈緒子。俺はその頬にそっと手を添える。

「わ、私はマゾじゃないんだからな」

(そうかな?)

その問いは面倒を避けるため心にしまい、俺は奈緒子に口づけた。
奈緒子の汗で濡れた髪を左手で撫でながら、その唇を貪る。
固く閉じられた唇を舌でこじ開け、奈緒子の舌を探る。
初めは驚いて舌を引っ込めていた奈緒子も、徐々に俺の舌に自分のそれを絡めた。
おずおずとした舌の動きが何とも可愛らしい。時折苦しそうな吐息が重なった唇の隙間から洩れた。
ピチャピチャと舌の絡みあう水音がいやようにも俺の欲望を高める。
奈緒子の髪を撫でていた左手を、そのまま躰のラインに沿って下げていく。
火照った頬、小さな肩、微かな膨らみ、細い腰、そして…。
奈緒子のロングスカートに手をかけ、ホックを探りあてる。
外そうとしたその時、重なった唇を無理矢理離し、奈緒子が俺に訴えた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「…何だよ」

訝しげに奈緒子を見る。奈緒子は小さな声で言葉をつむぎだした。

「えっと、その…私、だけ、素っ裸になるのって、恥ずかしいんです…けど…」

奈緒子の意図する所が分からず首を傾げる。しばし考えた後、俺なりに思いついた答えを口にした。

「ふっふっふっ…youは服を着たまましたい、と。なるほど、そういうプレ…」
「お前も脱げって言ってるんだ!この、ど馬鹿!!」

奈緒子の怒声により俺の言葉は遮られた。奈緒子は顔を赤らめ、自分の台詞に照れている。
俺は暫し奈緒子の顔を見つめた後、ゆっくりと躰を起こした。

密着していた躰が離れ、それだけなのに妙な虚無感に襲われる。
一刻も早く奈緒子と再び躰を重ねたくて、俺は乱暴に自分の上着を脱ぎ捨てた。

熱くなった上半身が外気に触れ、自分がいかに興奮しているかを思い知らされる。
奈緒子は目のやり場に困っているのか、キョロキョロと目を泳がせている。
そんな様子が可笑しくて俺は思わず吹き出してしまった。

「君が脱げって言ったんじゃないか」
「う…そりゃ、そうですけど…」
「何も初めて見る訳じゃないだろう」

何しろ出会って数日で、俺はこいつにパンツ一丁姿を披露済だ。

「上田さんは恥ずかしくないでしょうけど、私は見るのも、見せるのも恥ずかしいんです!」

俺だって女性の、しかもこいつの前で素っ裸になるのが恥ずかしくないわけじゃない。
けど、まぁ…こいつの方が恥ずかしいのは確かだろう。だが、それでも…。

「…見たいんだよ」
「え?」

奈緒子と目を合わせ、切実に自分の気持ちを訴える。

「君の事が好きだから、君の裸が見たいんだ。……変か?」

自分の言った事が可笑しくて軽く自嘲する。だが奈緒子は俯いて、小さく答えた。

「……変じゃ、ない…です」

フッと笑みがこぼれる。そのまま奈緒子のスカートのホックを外し、細い腰を浮かせてそれを脱がせた。
ついでに靴下も脱がせ、それをベッドの下に落とすと、
とうとう奈緒子が纏っているのは純白の下着一枚になる。

紅潮した奈緒子の躰にその白はとても映えていた。思わず目を細めてまじまじと見てしまう。
奈緒子はその視線に気付き、今更慌てて胸を隠した。

「ほ、ほら!上田さんも…!」
「あ…あぁ」

今度は奈緒子の言いたいことを正確に理解する。
俺はズボンのチャックを下げて、ベッドの端に腰掛け、一気に脱ぎ捨てた。
奈緒子の方を振り返ると、一人だけ寝転がっているのが嫌だったのか、躰を起こして俯いている。

「ぜ、全部脱ぐぞ?」
「ど、どうぞ…」

奈緒子が俯いたまま答えた。
再び端に腰掛け、自分の股間に目を遣る。
ブリーフの上からでも俺の欲望はありありとその姿を垣間見られた。

……何を恥ずかしがってるんだ!俺は。

自分を奮い立たせ、とうとう俺はブリーフを脱ぎ捨て、素っ裸となる。
勢いよく飛び出し、ピンと天井を向いた自分のペニスに、ため息が出そうになる。
常人と比べて大きすぎるそれは、俺にとっては最大のコンプレックスだ。
女性が喜ぶ所か、逃げ出す大きさのそれから目を離し、覚悟を決めた。

大丈夫だ。きっと。奈緒子なら受け入れてくれる。

柄にもなく赤面したまま、奈緒子の方に体をむき直した。
震えそうになる声を必死に押さえ、ゆっくりと口を開いた。

「…you、全部、脱いだぞ」
「…そうですか」

奈緒子は俯いたまま顔を上げようとしない。
二人の間に沈黙だけが横たわる。
ずいぶん長く感じられたが、一瞬だったのかもしれない。
俺が言葉を発し倦ねていると、奈緒子からの小さな問いが響いた。

「あの…見て、良いですか?」

心臓がドクンと跳ね上がる。握っていた拳に力を入れ、返事をする。

「も…もちろんだ」

奈緒子が顔を上げる動作が俺の目にはスローモーションで映る。
奈緒子は顔を45度ほど上げた所で目を留めた。
その瞳には俺の猛ったペニスが映し出されている。

今度は本当に長い沈黙に場を支配された。その間も俺の欲望は衰える事無く、時折ビクビクと脈打っている。奈緒子は目を丸くしたまま固まっていた。

…頼む。何か言ってくれ。「無理です」とか「ごめんなさい」とか何でもいいから。
この沈黙は気まずすぎる。

俺が大きなため息を吐きそうになったその瞬間、やっと奈緒子から言葉が発せられた。

「お…大きすぎませんか?」

答えにくい質問に俺の頭の中で様々な言い訳が思い浮かぶ。
しかし俺の口から出たのは、何とも間抜けな言い分だった。

「こ、こ、これくらい…ひょ、標準くらいだと思うが?」

嘘八百だ。俺は今まで生きてきて、自分レベルの逸物を見たことがない。

「そんな訳ないじゃないですか!」

当然奈緒子にもその嘘は見破られる。だが、俺の頭には既に別の言い分が用意されていた。

「き、君は男のココを見たこともないくせに、し、知ったような口を利くじゃないか。これが普通なんだよ!」

この台詞を受けて、奈緒子がいつもの調子で口答えた。

「なっ!馬鹿にしないで下さい!!男の人のそ…!……その、そこくらい見たことあります」
「何?!……あぁ、何だ、分かったぞ。どうせ、お父さんとか…昔の話だろう?」

奈緒子がムッとして俺を睨む。いつの間にかいつもの口げんかが始まっていた。

「ち!違いますよ!」
「じゃ、じゃあ誰のを見たって言うんだよ?え?言ってみろよ」

俺の中に妙な危機感が芽生える。

「……矢部さんと…」

奈緒子の口から飛び出た名前に、思わず俺は奈緒子の肩を掴み上げていた。

「矢部さんに何かされたのか?!?」

俺の剣幕に奈緒子が驚き、怯えているのが分かる。俺自身も動揺で顔が青ざめていた。
だが、今の奈緒子の発言は俺にとって至極重大な問題になり得るものだ。
奈緒子が肩を抑える俺の手を離そうと藻掻くが、か弱い力ではビクともしない。
しかたなくそのままの状態で奈緒子は答えた。

「ちょっ…何勘違いしてるんですか?!…違いますよ!」
「何?!」
「や、矢部さんと石原さんが温泉入ってる場に偶然居合わせたことが合って…ほら、糸節村の事件で
上田さんが捕まってる時ですよ。…その時にチラッと見えただけです」

……糸節村?あぁ、こいつが霊能力者の振りをしたせいで散々な目にあったあの村か。
あの時にそんな事があったとは。

「…他には?」「え?」「他には無いんだな?」

奈緒子が暫し考えた後、口を開く。

「あ!宝女子村の事件の時に、前田さんの死体の…その…」
「…あぁ、あれか」

俺の服を着ていた死体が、本当に俺なのか確かめるために奈緒子と矢部さんがとった行動を思い出した。
「それだけか?」「……それだけ、です」

俺は安堵のため息を洩らし、奈緒子の肩から手を離した。
俺の爪の後が残る肩を、奈緒子が痛そうにさする。そしてそのまま俺に怒鳴りつけた。

「痛いじゃないですか!!何勝手に勘違いして怒鳴りつけてんだ!!」

俺は先程の緊張が解れ、気の抜けた表情で奈緒子を見た。奈緒子は依然、怒り続けている。

「だいたい!矢部さんと私に何かあるわけないだろ!!この馬鹿!」

俺は奈緒子に分からないよう小さくため息を吐いた。
こいつは知らないんだろう。
矢部さんと奈緒子が仲良く話している度に、まして矢部さんがふざけて奈緒子を逮捕するため手錠を
掛けようと、その細い手首を握っているのを見たときなど、俺がどれ程の嫉妬に悩まされているのかを。
そして、当の矢部さんは俺のそんな様子に気付いた上で、俺の反応を愉しむ意味合いもこめて奈緒子に
絡んでいることを。
あげく、矢部さん自身も奈緒子のことをそう憎からず思っていることなど。

「ちょっと!聞いてるんですか?!上田さん!」
「ん?…あ、あぁ」

こいつ、まだ怒っていたのか。俺の気のない返事に奈緒子が黙る。
不思議に思い奈緒子を見ると、奈緒子は俺の瞳をジッと見つめ返してきた。

「もしかして…妬いたのか?」
「は?」「矢部さんと何かあったのかと思って妬いたんだろ!えへへへ」

(はっ!誰が君みたいな貧乳貧乏強欲マジシャンにやきもちなど妬くか!!)

いつもの俺なら、こう答えただろうな。だが、今日は自分に嘘はつかないと、最初に決めた。

「あぁ、妬いた」
「えへへ……え?」

奈緒子が笑うのを止め、驚いたように俺を見る。

「意外か?君が他の男に何かされたのかと思うだけで、身が焼かれるようだった。俺の男に君を触られたく
ないし、触らせたくない。ずっと俺の目に見える所に縛り付けて、俺だけのものにしたい。独占欲は人一倍
だからな。これから君は苦労するぞ」

真剣な表情で奈緒子を見ると、耳まで真っ赤にしていた。

「…あ、ありがとうございます…。うれ、しい…です」

奈緒子なりの精一杯の返事に微笑んだ。奈緒子は視線を逸らし俯くと同時に声を上げた。

「…あ!」

奈緒子の視線の先に目をやる。そこにあった俺のは俺のペニス。
そこは、今の口論で先程の勢いをなくしていた。と言っても、半立ち程度の勢いはあるが。
せっかく良いムードだったんだが、他でもない、元はと言えば俺の嘘から始まった口論だ。

「だ、大丈夫だ。すぐに元に…おおぅ?!」

奈緒子が責任を感じることはない。そう言おうと思ったんだが、俺の言葉は奈緒子の意外すぎる行動で
遮られた。
奈緒子がその細い指で俺のペニスを優しく握っていた。

「you!!な、何を?!」

思わず声が裏返る。

「すいません。私のせいですよね。責任、とりますから…」

奈緒子は恥ずかしそうに俺を見上げる。

な、何だ?この夢のような状況は。…いや、事実何度か夢にまで見た状況だ。
まさか奈緒子が、自分から、俺の…俺の…。

俺はカーッと顔が熱くなり、慌てて奈緒子の手を俺のペニスから離した。

「いいんだ!君はこんなことしなくても!!は、初めてなんだからこういうことはこれからゆっくり…」

少しだけ勝っていた理性に、本能が微かな後悔を訴える。
いや、いいんだ。これで。泣きそうなもう一人の俺を必死に奮い立たせた。
だが、奈緒子は再び手をペニスに伸ばした。

「大丈夫です!雑誌で予習しましたから」

…例の貧乳改善法の載っていた雑誌か。やばい、もう一度振り切る理性が残っているかどうか…。

奈緒子は髪を片方の耳にかけ、ゆっくりと腰を屈める。心臓があり得ないほど脈打つ。

「亀飼ってるし、手先は器用だからたぶん、大丈夫だと思いますけど…痛かったら言ってください」

……亀?!何言ってるんだこいつは。実はこいつもかなり動揺してるんじゃないか?!
俺は軽い混乱状態にあった。それでも何とか奈緒子を抑止しようと手を伸ばす。

「山田!!俺は…本当に…」「嬉しかったから!!」

奈緒子が俺の言葉を遮った。その大きな声に正常な意識が少し呼び戻される。
奈緒子は俺を見上げて、切なそうな笑顔を浮かべた。

「さっき上田さん言ってくれたこと、本当に嬉しかったから…。だから、上田さんにも喜んでもらいたいん
です」

奈緒子の口から飛び出した珍しく素直な言葉。
俺は、感動したのだろう。もう、奈緒子を止めようとは思わなかった。

奈緒子は優しく微笑んで、再び俺のペニスに顔を向ける。
そして、添えていた指でゆっくりと、竿の部分を擦り始めた。
優しく添えられた指先が、本当にそっとペニスを上下しているだけなのに、俺のペニスは激しく脈打つ。
急に蠢いたそれに、奈緒子はビクリと肩を揺らしたが、すぐに手の動きを再開させた。
だんだんと指に込められる力が強くなっているのを感じ取る。
上下に扱く速度も速まり、それに比例して俺の息も荒くなる。

「痛く、ないですか?」

奈緒子は不安げに俺の表情を伺う。

「あぁ…気持ち、いいよ」

俺の答えに安堵したのか、奈緒子はうっすらと微笑んだ。
シュッシュッと俺のペニスが扱かれる音が響き、その音を奈緒子が立てているのだと思うと、妙に興奮する。

「あの、上田さん」
「はぁ、はぁ…何だ?」
「えっと、何か先のほうから出て、きた、んですけど…」

躊躇いがちに奈緒子が尋ねる。我慢しきれず溢れた液体を疑問に思ったようだ。
俺は、怖ず怖ずと奈緒子に頼む。

「触ってみて、くれないか?」
「わ…かりました」

奈緒子が亀頭の先端に空いていた方の手で触れる。

その親指が溢れた液体に触れ、クチュクチュと厭らしい音を立て、粘着質なそれが奈緒子の指に絡みつく
様が見てとれる。
奈緒子はそのまま亀頭を優しく撫でる。時折指先に力を込め、グリグリと先端を刺激した。
ぎこちないが、本人の言うとおり、手先の器用さが役にたっているのかもしれない。
自分でするのより何倍も激しい快感が俺を襲った。

「上田さん、ネバネバしたのが一杯出てきました」

逐一報告する奈緒子に、羞恥心が刺激される。

「君が、上手だからだ」

奈緒子が嬉しそうに俺を見る。その後、ペニスに視線を戻した奈緒子のゴクリと唾を飲む音が聞こえた
気がした。

「あの、上田さん…今からあることをしますけど、その…驚かないで下さいね?」
「you、何を…?……な!?お、おい!……うっ!」

俺は奈緒子の行動に目を丸くした。
奈緒子はペニスの先端、俺の我慢汁が溢れている部分にそっと口づけていた。
眼前で繰り広げられている光景を、とても信じることができない。

ずいぶん長い間、奈緒子は俺のペニスの先端に口づけた後、その唇を離した。
奈緒子の唇と、ペニスの間に、俺の腺液が糸状に橋架かっている。

ドクンと、胸が高鳴るのが分かった。 妙に顔が、いや、全身が熱い。
奈緒子が俺を見上げたまま、小さく舌を出し、口の回りをペロリと舐め上げた。
奈緒子の舌に俺の腺液が舐めとられる様が、俺の目に艶めかしく映る。
ゴクンと唾と一緒にそれを飲む音が奈緒子から響き、その瞬間奈緒子は顔を歪ませた。

「まずっ!」

美味いわけがないだろう。興奮と混乱がない混じった目で奈緒子を見る。

「…you、本当に無理は…」

口では奈緒子を止めながらも、俺の体は動かない。
おそらく片手一本で阻止できるであろう奈緒子の行為を、俺はさらさら止めさせる気などなかった。
奈緒子は俺の言葉に耳を貸さず、再びペニスに向け顔を降ろす。
今度は唇ではなく、舌が先端に触れる。
クチュッという水音が響き、奈緒子はぎこちなく舌を動かし始めた。
予想外の快感に声が出そうになり、慌てて息を吐く。
先端の割れ目に沿って奈緒子の舌が上下すると、腰のあたりから何かがはい上がるような感覚に襲われる。
奈緒子は小さな口を精一杯開けて、亀頭を口に銜える。
そのまま口をスクロールし、限界までペニスを銜えこんだ。

うっと思わず声が洩れてしまう。俺は堪らず奈緒子の頭を掴んだ。
より一層ペニスが口の中に押し込まれたのか、奈緒子の目が急に潤い、そのまま俺を見上げてきた。

…やばい。涙目の奈緒子。口には俺のペニス。大きすぎる逸物を頬張り、苦しそうな表情。

欲望以外の感情がもの凄い速度で失われていく。
無意識に、奈緒子の頭を自分の方へ強く引き寄せていた。

「…っ山田!!」
「!?!……んーっ!んんー!!」

奈緒子から苦しそうな声が挙がり、俺はハッとしてその手を離した。
口をペニスから離し、苦しそうに咳き込む奈緒子。
俺は自分の行動を思い出し、申し訳ない気持ちで奈緒子を見た。

「すまない、苦しかったな…」

奈緒子は涙目のまま首を横に振った。

「大…丈夫、です。もう一度、やってみます」








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