眠りの森の姫
上田次郎×山田奈緒子


…戦いを終え、心身ともに疲労困憊した上田は、
「疲れをとるにはやっぱり風呂だろう!」

と、『火星』の小屋へ向かった。
あそこに行けばユニットバスもあるしという安易な考え方だった。
小屋に入り、とりあえず服を脱いだ。テーブルの上に脱いだ衣類を畳んで積み上げる。
全裸になった上田は、『加瀬』の肖像の視線に恥かしさを覚えながらもユニットバスのドアに手をかけた。


…何だか、嫌な予感がした。

「…まさか」

と、勢いよくドアを開ける。

そこに横たわる、びしょ濡れの奈緒子。

「you!おい…っ」

思わず駆け寄る。青ざめて、まるで溺れたような姿。
まさか、山田が『溺れる者は藁をも掴む』のトリックに気付いて、同じ方法で命を狙われたというのか?

恐る恐る、顔に触れる。

───冷たい。

慌てて首の、頸動脈に触れると、弱々しいながらも脈はあるようだ。

良かった、死んではいない。

そう思うと一気に安心した。
一瞬だけ、山田の葬式で大泣きする姿がよぎった自分が恥ずかしくなり、同時に腹立たしさが込み上げてきた。

よくよく考えたら、なんて間抜けなんだろう。裸でオロオロしていたなんて。

「まったく、こんな所で何やってんだ…」

上田は、立ち上がると高い位置から奈緒子を見下ろした。

溺れて気絶しているだけで、命に別条はないようだか、どんだけ水を浴びたのか、奈緒子は本当にズブ濡れだった。
ブラウスは水を吸って肌にまとわりつき、スカートは恥ずかしい程足に張り付いていた。
いつもロングスカートの奈緒子の足など見たことがなかったが、シルエットを見た感じでは、程よい肉付の綺麗な形をしている。
いつも真っ直ぐでサラサラな髪も乱れ、露が滴り、それが首筋を流れて鎖骨のお皿に溜まっていた。
真っ白なブラウスは濡れたことによりうっすらと透け、中の様子が擦りガラスを通したように見える。


───よく山田の部屋で目にする、見慣れた…下着。

そう意識した途端、ハッと我に返った。
そして気付いてしまった。


───今自分は、完全に山田を女として見ていた、初めて。

自分がこんな貧乳女に何を考えているんだとうろたえながらも、視線は奈緒子から離せない。意識する程、奈緒子の薄く透けて見える下着が際立って見える。
その部分を見ないようにしても、今度はスカートが張り付いてあらわになった太股が目に入る。

体の、上田自身のコンプレックスでもあるその部分に血が上るのを感じた。

「おぅっ」

───このままではいけない。

そうだ。
山田がこんな所でこんな格好してるのが悪いのだ。そこに運悪く俺が入って来てしまっただけだ。俺は悪くないぞ。俺は悪くない俺は…

そう、自分に言い聞かせながら上田は冷静になろうと深呼吸した。奈緒子をとにかくユニットバスから運び出す為、奈緒子を抱き起こそうと体を近付ける。

「おい、遅いぞ上田」

本気でビクッとなる。


目を閉じたまま、奈緒子が喋った。

「…貴様、気絶したフリか。汚いぞ」

上田は平静を装い言い換えした。内心はバクバクしていた。奈緒子が目を開けたら、全裸の自分は完璧に変質者か犯罪者である。

…しかし、奈緒子の言葉は後が続かなかった。

───こいつ、寝言か?

未だ無言の奈緒子。上田の推測どおり、やはり寝言のようだ。先程より、少し顔色が良くなっている。声を出して呼吸したせいだろう。
しかし、間一髪と言うべきか奈緒子がまだ気がついていないおかげで上田血祭りは免れたようだ。

しかし、無性に腹立たしい。
俺が今、どんな思いでお前と対峙しているか分かっているのか?しかも全裸で。
対決で疲れて風呂に入ろうと思ったのになんて仕打ちだ。この貧乳女め。

「うるさいぞ」
「おぅっ!?」

…また目を閉じている。

「貴様、俺を馬鹿にしてるな……」

奈緒子の寝言など日常茶飯事だか、状況が状況だけにこの一言に上田はキレてしまった。
考えてみれば、いつも俺はこいつに馬鹿にされていた。ちょっと手品が出来るからっていつも偉そうにして。かわいげがないやつだ。そもそも憎らしさと悔しさと、いろんなものが疲労困憊の体に込み上げてきた。
狭いユニットバスの中、二人だけ。
この密室とも呼べる空間に男女が二人。
無防備に横たわる、びしょ濡れの奈緒子。

ふぅーっと息を吐き、奈緒子を見下ろす。

「山田。もし寝てるフリなら、今のうちに起きて謝れば許してやる」

───無言。


「フフフ、俺がその気になられば、お前なんかどうにでもできるんだぞ…」

不敵な笑みを浮かべ上田が呟く。

奈緒子の、徐々に温かくなって来た頬に触れた。あどけなさの残る頬の輪郭を大きな手がなぞって行く。

「山田〜、起きないと」

むぎゅっ。

頬を軽くつねってみた。口角が引っ張られて、まるで笑っているような顔。
それでも奈緒子はまだ目を閉じている。完全に気付いていない。

「山田ぁ、起きないのか?」

挑発するような声で問う。
眼鏡の奥の瞳がギラギラと血走っていた。上田のタガが外れた。


横たわる奈緒子の、濡れて張り付いて服の裾に手が伸びた。大きな手がスカートの中からブラウスをズルリと引き上げる。
上田の息が荒くなっていく。
それと同時に、裸だというのに寒さも忘れた体が熱を帯びて、充血していった。
奈緒子の、頬よりももっと透き通るように白い腹部が覗く。焦らすようにゆっくりと肌があらわになっていく。その奥に上田の手が滑り込んだ。
固く粗い手触りの布の下に、柔らかい肉の感触。

「…ぉう」

思わず声を漏らす。
上田にとっても、奈緒子にとっても恐らく初めての経験であろう。必要以上に想像していた以上に、それは刺激的な瞬間だった。
一気に上田は熱くなった。
手の中のものを確かめるように、力を込める。下着まで冷たくなっていたがその中から体温が伝わってくる。貧弱だが女性らしい柔らかさ。もって触ってみたくなる。

「…山田、こんなことされて、まだ目を覚まさないのかお前は」

興奮に息を荒げながら奈緒子の表情をうかがう。
気を失っている様子はまるで眠りの森の姫。
自分の置かれている状況を知らずに、安らかに目を閉じている。

『かわいそうな姫。
悪い魔法使いが糸ぐるまの針を刺そうとしているのに気がつかない。』

上田は欲張りにもさらにブラを捲り上げ、直に奈緒子の胸に触れた。柔らかい肉の中央に突起を感じて、それが何か分かると、いよいよ上田は張り詰めた。
硬く痛い程に充血した自分の部分を、もう片方の手で触れる。脈打ち、天を仰ぐように反り返ってた。

上田は奈緒子の胸をいたぶりながら、自分を慰め始めた。
片方の手では慣れた自分のものを感じながら、もう片方の手ではまったく新たな経験をしている。冷静になんてなれたかった。夢中になっていた。
柔らかい肉をなぶりながら、手のひらを刺激している突起を、軽く指で転がしてみた。

「…ん」

奈緒子が吐息を漏らした。


「…感じているのか?」

さらに突起に触れる。
眉間に皺を寄せ、嫌がるように頭を動かした。さっきまでとは様子が違った。明らかに反応していた。

頭に血が上った。
手の、動きが速くなる。

これ以上、触っていては山田が目を覚ましかねないと思ったのか、上田は服の中から手を引き抜いた。

そして今度は両の手で、服を捲り上げた。
奈緒子の、両胸が上田の目に晒された。
少女のような、微やかな胸だ。白い肌は上田に触られた部分だけが少し赤みを帯びていた。それが純粋なものを卑猥に見せていた。
上田はゆっくりと胸に顔を寄せると、舌を出した。

舌先で、奈緒子の乳首に触れた。


ドクンッ

体を電流が流れるような感覚が走った。一気に達してしまいそうになり、上田は体を引いた。
口の中で、さっき舌に感じた感触を味わう。ゾクゾクした。さらに体が充血していくのが分かった。

口元に怪しい笑みが浮かんでいた。

上田は奈緒子の膝を立たせると、びしょ濡れのスカートを捲り始めた。上半身よりも下半身はさらに水気を含んでいた。布が擦れる度にビチャビチャと音がする。
ズルズルとスカートが大腿まで捲り上げられる。初めてみた奈緒子の足は白く、すらりとしていた。水滴が滑らかな肌を濡らしてなまめかしくみえる。上田はさらにスカートを押し上げた。

腰の辺りまでスカートを捲ると、奈緒子の下半身があらわにされた。
白い肌に無垢で慎ましい、白い下着を着けていた。上田も見覚えのあるような質素なレースの付いたパンティー。それだけ見ても特に何も感じなかったか、身に着ける事でそれは卑猥なものとなって上田を興奮させた。
生地はすっかり水を吸って肌に張り付き、薄い布が奈緒子の秘めた部分を隠しているだけ。

「あぁ…」

あまりの興奮に思わず声を漏らした。

今の自分を客観視したら…そう考えると恐ろしくなった。だから今はただ夢中になっていた。もうこの手の中の欲望は押さえが効かなかった






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