○月×日△曜日(非エロ)
上田次郎×山田奈緒子


山田奈緒子。
貧乳、貧乏、貧相の三貧マジシャン。……ふふふ、我ながらうまいこと書くな。
この天才的な頭脳は日常においても芸術的表現を無意識に……



あれ、何を書くんだったっけ。
そうそう、山田奈緒子だ。

もう出会ってから何年だ?
確かあいつが超能力だとかいっていんちきマジックを使い
金を騙し取ろうとしたところをふんじばって捕まえたのが2000年7月7日だ。
……とするともう六年にもなるのか。
先日まで延々(年々酷くなっていった)貧乏暮らしを続けた挙句、
池田荘の建て替えの為に部屋を追い出され、この広く、立派な、
俺の住まいの一角を貸し与えてやっている。
というのに賃貸料は一切払おうとしない。
仕方がないから代わりに家事をやらせているが、掃除、洗濯はともかく
料理の腕自体に問題はないのに壊滅的な味オンチ。
奴に常人の味覚を身に付けさせるべく三ツ星シェフ並みの腕を持つ俺が
時々料理を教えてやっているが、出来た料理を満面の笑みで完食するくせに
口から出るのは「まずい」「まずい」の……。



また話がずれた。
そう、山田奈緒子だ。

妙な奴だ。俺が女性に期待するもの全てにおいて
欠けている(もしくは貧しい)、「女」。
あんまりにも見事に俺の中の女の条件を損ないすぎているので
一緒に暮らしていてもまるでロマンも何も無い。
がさつ。無神経。思いやりのかけらもない。
図太く、しぶとく、執念深い。
少しは弱さでもあればまだ可愛げもあるが
貧乏以外にあの山田が弱く見えたことは今まで……――。



――……いや。
あいつはポ○モン、じゃなかった黒門島絡みのことになると、
極端に強情に、刺々しくなる。
いつもの山田を蹴ろうが殴ろうが曲がらない鉄板のような女とすると、
突き刺すように細いが、叩けば崩れる石でできた針だ。
そういう時、しょうがなく助けの手を差し伸べてやる時、
酷くあいつが弱く見える。
いつも俺を馬鹿にし罵倒している山田が
只でさえ小さいのに、もっと小さく見える。


もしも。もしもの話だ。
例えばキスなり抱きしめるなりすれば
俺たちの関係は簡単に変わるんじゃないだろうかと思うことがある。
普通に只の男と女になって、セックスもしたり
(俺のものが入るかどうかは大問題だが)。
結婚したり子どもが産まれたり。もしもの話だ。
もしかすると、そんな日が何時か来るのかもしれない。
そんな予感の欠片すら漂っていない現状が
嬉しいのか悲しいのかよく分からないが。
……まぁいいか。
帰ってきて誰かがいるのは結構、悪くない。
まぁそれが山田だろうがつぶれたような顔のパグ犬だろうが
どっちだってかまわないが、誰かがいるというのは、悪くない。

そういえば明日はあいつが料理するんだった。
一体どんなもの食わされるんだか……。






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