上田次郎×山田奈緒子
![]() 問題は山積している。 彼は著名な大学教授で、彼女は自称手品師。 彼は巨根で彼女は貧乳。 彼と彼女の歳の差は一回りは優にある。 どこをどう考えても共通点なんか無い。 だがそれでも彼らの間には布団があり、 彼と彼女は相対して正座し、顔をうつむけている。 だがやがて、諦めたように彼が言う。 「布団一組しかないぞyou。持ってきて貰え」 「なんで私が」 打てば響くように彼女が応える。 「お前頼め、上田」 「俺は部屋代払うんだぞ。そういう雑用はだな、youだ」 「なんでですか」 むっとした彼女は首を横に振る。 「私は頼みません」 「俺もだ」 彼が同じくむっとした顔で彼女を見る。 「じゃあどうするんだ。廊下で寝るのか上田」 「なんでだよ。youに決まってるだろ」 「女の子に、そういう事させますか普通」 「なにが女の子だ。女の子ってガラか」 眉間に皺をよせた彼女を見、言い過ぎに気付いた彼は咳払いする。 「…よし。じゃあこうしようぜ」 「お断りします」 「何も言ってないじゃないか」 「どうせ枕をやるからそっちの畳で寝ろとか言うんでしょう」 「なぜわかる」 「私も言おうと思ってたんです」 「そうか、じゃあ話は早いな」 二人は目にもとまらぬ早業でただ一枚の毛布を掴んだ。 「その手を放せ、この貧乳が!」 「お前こそ放せこの巨根め。毛布は私のだ」 「俺がこれで寝るんだよ。youはその髪巻いてれば充分だろう!」 「リスじゃないんだ。お前こそ、あの、表面積縮めれば大丈夫だろ」 「確かにそうすれば余分な放熱を防ぐことができ、風邪をひく確率を減らすことはできるが…って嫁入り前の娘の台詞じゃねえだろyou!」 「うるさいっ。そんな、私、嫁なんかいかないから関係ありませんよ」 「え?」 彼は毛布を引っ張る手をとめた。 「嫁に…来ないのか?」 「はい?」 「いや、何でもない」 「……」 「……」 一瞬流れた沈黙はすぐに破られた。 「とにかくだ、毛布をよこせ。よこさんか」 「黙れ。私のだって言ってるだろ、このバカ上田!」 いつまでこんな漫才を続けていれば気が済むのか。 いい加減先に進む気はないのか。 だが仕方ない。 彼はボケで彼女はツッコミだった。 そして彼女もボケで彼はツッコミでもあった。 この不毛な共通点が打開されない限り、問題は今日も解決する気配もない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |