鳴海洸至×鳴海遼子
![]() 「やっと会えたのに、そんなことできないよ」 その手を洸至の手が優しく包む。 「お前と俺だけの秘密だ。これを抱えて俺は自首するよ」 遼子がうなずいて、洸至を見つめる。 本心を見透かされたような気になり、洸至は一瞬たじろいだ。 やましいなんて気持ちは忘れたはずだったのに、 遼子の視線で、それがまだ自分のなかに残っていたことを自覚させられる。 しばらくすると、遼子は瞳を閉じた。 遼子の瞳が閉じられたことに、洸至はほっとしていた。 このまま、すぐ衣服をはぎ取り、のしかかりたい衝動にかられながらも、 洸至は自制する。 もう、手の中にあるのだ、何も急くことはない。 ゆっくりと顔を近づけ、妹に口づける。 遼子の背に手を回すと抱きしめた。 ずっと夢見ていた妹の唇は、緊張のせいか乾いていた。 まるで砂漠のような、その唇に潤いをもたらすそうと、舌で唇の形をなぞり、 洸至の唇で覆う。 唇の合わせ目に舌を送りこみ、挨拶をするように撫でまわした後、 遼子の口内へ侵入させた。 いきなりの侵入に戸惑っているようだったが、洸至の舌を受け入れ、 兄の真似をして舌を絡ませてくる。 そのつたない動きが洸至の中の何かをかき立てた。 舌を送り、歯の形をなぞり、遼子の舌と絡め合わせる。 遼子の舌の柔らかさ、温かさに心が震え、洸至ですら胸が高鳴る。 夢中になった洸至の口づけの激しさに、遼子の息も荒くなっていく。 胸の奥からの遼子の息は、そのまま洸至の口へ送り込まれ、 その息の甘さに洸至は陶然となっていた。 口づけでも、こんなに甘露なら、遼子の全てを味わいつくしたら、 俺は、離れられるのか。 ――だったら、離れられないようにするまでだ。 不意に、唇を離した。 受身でありながら、遼子も口づけに没頭していたのか、 離した瞬間、名残惜しそうな顔をしていた。 「お兄ちゃん…?」 「服、脱がせても、いいか。見たいんだ、遼子を」 少しだけうつむいた後、遼子がブラウスのボタンに手をかけた。 「俺にさせてくれ」 自分をじらすように、自制しながらひとつひとつボタンをはずす。 急ぎすぎないことで、逆に自分を昂ぶらせていた。 ブラウスを脱がせ、その下のキャミソールを脱がせ、ブラジャーのみに なった時、遼子は恥ずかしそうに自らの肩を抱いた。 そっとその首筋に手を触れる。 電気が走ったように、遼子が震えた。 そのまま、首筋から、鎖骨へ、鎖骨から胸へと指を滑らせる。 隠すようにしていた手をひきはがすと、ブラジャーに包まれたふくらみに 手を触れた。 遼子の体がまた震え、唾を飲み込む音が部屋に響く。 ブラジャーのホックに手を伸ばし、はずすと、それを取り除けた。 「きれいだ、遼子」 ただ、口をついたのではなく、本心からだった。 白く輝いているような裸身。 はずかしさのためか、少し朱に染まった頬と、乳房にある桜色の突起が彩りを添える。 子供の時はもっと小さかったこの胸。 いまでは俺の手からこぼれそうになっている。 親指で先端を撫でながら、全体を手で包み、優しく握る様に指を動かすと、 遼子が思わず体をくねらせた。 本当は恥ずかしく、また、兄とこうしていることへの抵抗感や嫌悪感があるのだろう。 体をくねらせながらも、遼子の腕は洸至を押しのけるような動きをする時がある。 それを抑えているのは兄を自首させたい一心なのか。 だが、それを忘れさせてやるのも、優しさのひとつだ。 そんなものにとらわれて、快楽を味わいつくせない不幸から妹を 救ってやるのも兄の務めだ。 先端を撫でる指の動きを速めていくと、遼子の体のくねらせかたが 理性で抑えきれないものへと変わっていく。 遼子の唇の奥からも、意図しない声が漏れ始めた。 洸至は乳房へと顔を近づけた。 ブラジャーから解放された時より、先端の形は明らかに変貌している。 「遼子、固くなってるぞ」 遼子は恥ずかしげに、顔をそらした。 だが、期待するものがあるのか、息は荒い。 その期待にこたえるように、洸至はそこを唇に含んだ。 「んんっ」 舌で先端を転がしながら、もう片方の手で洸至の舌の恩恵に預かれない方を 弄んでやる。 そこは歓びの形を示すべく、洸至の手の中でどんどん固さを増していく。 わざと吸いつくような音を立てながら、妹の乳房をむさぼり続ける。 立てられる音が羞恥をそそるのか、顔をそむける妹がまた堪らなく美しかった。 遼子は気づいていないかもしれないが、腰が何かを求めるように動いている。 それを確認すると、洸至は太ももへ手を這わせた。 「いいか」 緊張した足の筋肉は、拒否を示している。 初めてからくる恐怖が、そこに表れていた。 「いいよ」 だが、遼子の自我がそれをねじ伏せた。 「恥ずかしい…」 「何言ってる。本当にきれいだぞ」 スカートをなんとか脱がせると、ストッキングを降ろし、 最後の一枚を剥ぎ取った。 今まであせらないように、自分を焦らし、昂ぶらせてきたが、 遼子の裸身を見たことでブレーキが効かなくなりそうだった。 だが、カメラの向こうのギャラリーのためにも、みっともない真似はできない。 遼子とお前には、時間をたくさんやったのに、まだ、手もつないでない。 手をこまねいている間に、大切なものが奪われるのはよくあることだ。 なあ、鷹藤。 落ち着いて自分も服を脱ごうとするが、思いのほかもたついてしまった。 「私のこと、脱がせてくれたから、今度は私がするね」 遼子が洸至に口づけながら、ワイシャツを脱がせ、ベルトをはずす。 ズボンのホックに手をかけた時、その動きが止まった。 ズボンの上からでもわかるほど屹立した洸至のものを見て、怯えに似た色が、 遼子の顔に浮かんでいる。 「初めてか」 「うん…」 解っていたこととはいえ、改めて妹の口からそれを聞いて、洸至は歓喜の中にいた。 「大丈夫だ。怖くないから。あとは俺がやるよ」 ズボンを脱ぎ、下着を全て取ると、顔を背けている遼子へまた口づける。 胸へと手を伸ばし、またその感触を楽しんだ。 そして、太ももへ手を伸ばす。 指を滑らすと、皮膚を通して緊張が伝わってくる。 遼子が洸至の首に腕を廻してきた。 「力、抜いて…」 太ももの内奥へ指が到達した。 茂みに触れ、そのまた奥へと指を伸ばす。 もう、濡れている。 溢れるほどではなく、ひそやかに。 指でそれをすくい、遼子自身の形をたしかめる。 つややかに濡れた部分をたどりながら、目的の場所にそれを塗りつけた。 「ああんっ」 初めての感触に、遼子の体に思わず力が入る。 いま、洸至が撫でさするそこもまた、乳房の先端と同様に、 欲望により形が変わる。 お前はどんな形になるのか、教えてくれ。 声ではなく、指で語りかける。 指ですくったものを、また塗りつけ、それから、指を動かしつつける。 強くなく、弱くなく、優しく、震えるように、指で語りかける。 そうすると、そこは素直に答え始めた。 かわいらしい、小さな桃色の種子の形を示す。 形を教えると、蜜をどんどん溢れださせてくれた。 遼子のここは、素直に答えている。 だが、遼子自身は、どうしたらいいかわからなくなっているようだった。 恐ろしいことをしているはずなのに、体がもっと、もっとと求め続けている。 自分の理性を離れて、体がひとり歩きしようとしている。 その恐怖と、体の芯から求める快楽とに引き裂かれそうな顔をしていた。 「遼子、怖いのか」 指を動かしながら語りかける。 「ああ、んん、んふっ、おにいちゃん、どうしよう。ああっん」 「何も考えなくていい」 「ああ、ん、でも、でも感じちゃ、だめ、なのに」 「だけど、お前の体は、そうは言ってないぞ」 「いやっ。あっ。ん」 「指、入れるからな。欲しがってるんだ、お前が」 「んん、いや、駄目…。ああああん」 遼子が思わず大きな声を立てた。 洸至が遼子の中へ中指を送りこんだのだ。 遼子が口で抵抗するほどには、遼子自身は抵抗していなかった。 あっけない程やすやすと受け入れた。 遼子に聞こえるように音を立てながら指を抜き差ししはじめる。 「聞こえるか、この音」 猫が水を呑む様な、はしたない音が部屋中に響く。 妹のものとは思えない、濃密な雌の匂いが部屋に立ち込めた。 「いやっ。ああ、うんっ。はずか、しい」 「もっと素直になれ。俺が手伝ってやるから」 送りこんだ指の感触から、増やせそうだと思った洸至は、 もう一本添えた。 「ん、何っ、あんっ、怖い」 「大丈夫、壊れないから。怖がらなくていい」 遼子に快楽をもたらしながらも、洸至も興奮で息が荒くなっているのを感じた。 「わかるか、指が二本入ってる。お前の中に」 「やめて、そん、な、こといわないで」 「教えてやっただけなのに」 指を抜きさしする速度を上げる。 水音に交じって、濡れたものを叩きつけるような音が響き始めた。 「いや、ああっ、ああああ、んん、どう、し、よう」 「大丈夫だ。怖くない」 優しく語りかけるが、遼子には聞こえているだろうか。 「あ、お兄ちゃん、おかし、く、んっ、あああああああんっ」 遼子の裸身がのけぞり、硬直した。 それから息を吐いて、ゆっくりと弛緩する。 遼子の目じりから、一筋涙がこぼれおちた。 それを洸至は舌で舐めとり、そのまま、口づけた。 淫らに遼子の舌を絡めとり、しばらく楽しんでから唇を離した。 「どうだった」 「おかしくなっちゃった…。わたし、こんないやらしい人間だったなんて」 「すごくかわいかったよ、遼子」 遼子は洸至の胸に顔を寄せ、表情を隠した。 「いいか。遼子」 洸至は耳元に口を寄せると、かすれる声で囁いた。 「お前の中に入りたい」 遼子のためらいの時間は、思ったより短かった。 「いいよ、お兄ちゃんの全部、受け止めるから」 洸至は胸の中の妹の顔を見た。 遼子を騙していたつもりだったのが、遼子は最初から、 洸至をもっと大きな意味で包んでいたことに気づき、愕然とした。 「いままでしたこと、全部か」 胸の中で小さくうなずいた。 「お父さんとお母さんのことも、他の人のことも全部。 誰かが受け止めてあげないと、お兄ちゃん、ずっとひとりぼっちじゃない」 「そのために…?」 「そうじゃなきゃ、できない。…お兄ちゃんとこんなこと。 体ごと全部、頂戴。そしたらきっと、お兄ちゃん、もう寂しくないよ」 遼子が洸至の頬を慈しむように、指を這わせる。 「来て…」 「ありがとう、遼子」 遼子の頬に、そっと口づけると、遼子の太ももを押し広げる。 「怖いか?」 「大丈夫…」 遼子に洸至自身をあてがった。 「少しずつ進めるから、痛かったら言うんだぞ」 一度絶頂を迎えたそこは、滑らかに洸至を受け入れた。 「あ、ああ、お兄ちゃん…」 熱く潤む感触に、洸至の内腿に鳥肌が立ちそうになる。 どれ程熱望したかわからない、妹との行為は、夢見た以上の 快感をもたらしている。 「力、抜くんだ、遼子」 「ん、うん…」 最初はすんなりと受け入れたそこも、奥へ行くにしたがい、 包み込む肉の圧が強くなって、洸至を押し戻すかのように抵抗する。 その抵抗を無視して、洸至は進めた。 ベッドに投げ出された遼子の手に、自分の手を重ねる。 そして指を絡め合わせると、しっかりと握った。 組み敷いた、妹の顔を見つめる。 眉間にしわを寄せ、痛みに耐え続けている。 痛みの声を出すのを、じっとこらえる表情すら美しい。 自分がこれほどの快感を味わっても、遼子に苦痛しかもたらしていない。 不平等さに胸が痛んだ。 「お兄ちゃん、気持ちいい…?」 「ああ、最高だよ」 頬に口づけた。 奥に行くにつれて、どんどん抵抗が強くなり、洸至の快感も強くなる。 思わず強く腰を送ってしまった。 「あっ、ああああああ、痛いっ」 遼子がのけぞった。 「大丈夫か」 「いいから、来て。最後まで、来て」 目には涙がにじんでいる。 兄を気遣ってか、痛みの声はもう、上げまいとしているようだった。 その体を抱きしめ、そして洸至自身をなお奥まで送りこむ。 激しく打ち付けたい心を抑えながら、ゆっくりと遼子の根元まで収めた。 洸至は全体が包まれ、あまりの心地よさに陶然としている。 父や母を殺した時、あとに残ったのはむなしさだけで、 達成感も安らぎも何ももたらさなかった。 人として、超えてはならぬ一線をまた越えてしまったはずなのに、 洸至の心は感じたことのない安らぎに満ちていた。 人に包まれる安心感。妹の中でそんなものを感じるとは思わなかった。 「遼子…すごく、いいぞ」 「お兄ちゃんが気持ちいいなら、嬉しいよ」 無理して笑顔を作った、妹のけなげさに愛おしさが増す。 深くつながったまま、また遼子の口をむさぼった。 もっと激しく動かしたいのを、抑えるかわりに、遼子の唇を犯す。 ひとしきり、舌を絡ませた後、耳元にささやいた。 「遼子、もう、我慢できないんだ。動いて、いいか」 胸の下で遼子はうなずいた。 「いくぞ」 最初はゆっくりと、根元まで入ったものを抜きだそうとする。 その時、遼子の柔らかい肉が、手放すまいとするかのようにうごめき、 洸至の快感を誘った。 痛みをこらえてうめく遼子に対し、洸至も思わずこらえきれぬ快感から、 うめいた。 兄と妹が溶け合うなか、熱い吐息と、快楽と苦痛のうめき声、 湿った音、二人の汗、それらも混じり合う。 優しく、ゆっくりと動いていた洸至も、快楽に呑まれ、打ち付ける 速さがあがり、強さが増していく。 妹の苦痛を気遣いながらも、もう本能に抗えなくなっていた。 痛みを堪え続けているはずの遼子も、苦痛だけではないものを感じ始めたのか、 息が弾み始めている。 「あ、あ、あ、あ、あん」 リズミカルな嬌声とともに、眉間のしわが消え、とろんとした目で洸至を見つめる。 「おに、い、ちゃん、あ、あ、あ、また」 「いいぞ、変になっても」 「あ、あ、奥から、あ。どう、し、よう」 「俺も、変になりそうだ」 「あ、あ、んんっ」 内腿に鳥肌が立ち、もう間もなくだと、体が洸至に告げる。 終局に向けて疾走しはじめた体に対し、この快楽をすこしでも引き延ばしたいので、 また口づけて気をそらそうとするが、徒労に終わりそうだ。 もう、お互いに快楽に呑まれるしかないのだ。 破裂するような音と、激しい水音、ベッドの軋む音が響き渡る。 「あ、あ、ああ、ああんっ、いいっ、こんなに、あっあっ」 もう、洸至に答える余裕はなかった。 「ああっあっあっ、んんふっ、どうしよう、また、あ、ああっ」 遼子がまたのけぞり始めた。 破瓜の前に一度絶頂にならされた体は、またも貪欲に快楽を貪ろうとしている。 「いや、あああ、んんんんっ、ああっっっ」 堪え切れなくなる寸前まで、洸至は腰を打ち付け続け、背筋に予感が走った時、 一気に引き抜いた。 遼子の腹に欲望を吐き出す。 全てを出し終わると、遼子の上に重なり、力を抜いた。 遼子は荒い息をしながら、あらぬ方向を見ていたが、徐々に焦点が結ばれ、 洸至を見つめた。 「お兄ちゃん、私、また」 「俺だっておかしくなりそうだった。一緒だよ」 腕の中の遼子の、目に頬に口づけする。 「初めてなのに…」 「次は、きっと、もっといいぞ」 遼子の耳元で囁いた。 兄への思いから、一度だけと思って身をささげたはずの遼子の眼が 一瞬妖しくきらめいた。 全てが終わった後、服を着て、出て行こうとする洸至。 「お兄ちゃん、行かないで」 あの時のように、洸至の背中に遼子がすがりつく。 「もう、離れないで。たった二人の兄妹なんだよ。もうひとりにしないで」 「自首、しなくていいのか」 背中の遼子がうなずいた。 「ずっと一緒に居て」 「いいのか、全てを捨てることになるんだぞ」 「ずっと一緒に居たいの」 遼子へと向き直り、抱きしめる。 その時、カメラの方へ目を向け、微笑する。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |