鳴海洸至×鳴海遼子
![]() 鳴海家のリビング。エプロン姿の遼子がお盆を手に入ってきた。 「お兄ちゃ〜ん、ラーメンできたよ」 ジャージ姿の洸至が、熱心に雑誌を見ている。 「食べるときくらい雑誌置いて…あれ?お兄ちゃん何見てるの」 「ここにおいてあったぞフ○イデー。へえ、有名女優が年下イケメン俳優と熱愛ねえ…。 これ、お前のだろ。遼子、お前ゴシップに興味あったのか」 「普段なら見ないんだけど…お兄ちゃん見て、この年下イケメン俳優って、鷹藤君に似てると思わない?」 「髭もないし、鷹藤君より幼く見えるが…。確かに似てるな」 テーブルにラーメンを置くと、雑誌を見る洸至の隣に遼子がやってきた。洸至の手元にあるフ○イデーを覗き こむ遼子の顔が近くなる。洸至がチラッと遼子に視線を向けたが、遼子はそれに気付いていないようだった。 「似てるでしょ?しかもこの人ドラマで三流週刊誌のカメラマン役演じてたのよ〜。それなのに自分のプライベート 撮られるなんて、皮肉よね」 「似てるな…。この隙だらけな感じが鷹藤くんそっくりだ」 「あ…それも似てるかも。でも鷹藤くんに似て、男らしそうだし、優しそうだし…」 「やけに鷹藤に肩入れしてるな」 遼子の顔に洸至が探るような目を向ける。 間近で目が合ったせいか、それともそれ以外の理由からか、遼子が顔を赤らめ兄から目をそらした。 「あ、相棒だからよ」 「相棒か…それだけの理由か」 「そうよ」 「俺はてっきり、鷹藤とお泊りしたいと考えているのかと思ったよ」 洸至が遼子に柔らかな笑顔を向ける。 「まさかぁ。そんな訳ないじゃない、もう、お兄ちゃんったら」 いつもの兄に戻ったようで、遼子もホッとして笑みを返す。洸至の肩を遼子がぺちぺちと叩いた。 「そうだよなあ。じゃ、取材の為の資料なんだな、これ。『女の子の為のラブテクニック講座―初めてのあなた でも安心』」 「お、お兄ちゃん!それどこから」 「ここにあったけどな。へえ、お前初めてなのか」 「まさか、この年で初めてな訳ないじゃないっ。最近、高齢処女って言葉もあるから、そういう人向けの本が出てるのよ。 それを記事にするための資料であって、もしわたしが鷹藤くんに誘われてその時に何も知らなくて、 いい年してセックスしたこともない上にマグロかよ、って思われたらどうしようなんて思って買った訳じゃ ないんだからね。あくまでも取材用の資料なんだから」 「その割に実用的な箇所に付箋がつきまくってるぞ。『乳首を舐めながら、彼のモノを触ってあげて』 『サオやタマタマを同時に責め…』」 あまりの内容に洸至が言葉を切った。熱のこもった眼で遼子を見つめる。 兄と目を合わせられなくて、遼子が俯いた。 「こんな本で勉強するより、実践なら俺がおしえてやるって言っただろ…」 すぐそばにいる遼子ににじり寄る。 「お、お兄ちゃん〜!!!!…あっ…だめ…」 優しく腕の中に遼子を抱くと洸至が床にそっと押し倒した。 「大丈夫。初めてでも、気持ち良くしてやるから…」 「あんっ…んっ…」 「怖がるなって…」 「あ…いいっ…」 「うわっ」 鷹藤がベッドから跳ね起きた。 「なんでまたこのパターンなんだよ…」 自分に似た俳優のゴシップを、遼子が話した時鷹藤の心は浮き立った。 普段は芸能ゴシップに関心のなさそうな遼子が、その男が鷹藤に似ていると言うだけでフ○イデーを買ってきて 記事を読みふけっていたのだ。 ―――もしかしたら、遼子は俺に関心があるのかもしれない…。 そんな浮き立つ心を抱えながら眠りについたら、鷹藤は遼子の夢を見た。 だが、それはまたも遼子の兄主演のものだった。 「しかもアイツの初めてが兄さんって、何て夢だよ…」 鷹藤はまたいつかの夜のように涙ぐんだ。 しかも自分が主演じゃないのにまたしても籠る熱を感じ、情けなさに目頭が熱くなりながらも 鷹藤は枕元にあるティッシュに手を伸ばした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |