妹は夜帰る
鳴海洸至×鳴海遼子


鷹藤の車が角を曲がり、見えなくなるまで遼子は手を振っていた。
それから、遼子が居候先のアパートを見上げる。
真夜中を過ぎ、アパートの住民も寝静まっているものが多いのか、殆どの部屋の灯りが消えていた。
遼子は兄の部屋の灯りがついていないのを確かめてから、ゆっくりとアパートの階段を昇り始める。
酔っているのか、足下をふらつかせながら階段を昇る。
階段を一段一段昇るたびに、微かにうめくような声が上げていた。
寝ているはずの兄を起さぬように、静かに玄関のカギを開けると部屋に入った。
リビングに灯りはついていない。

「遼子。遅かったな」

ほっとしながら靴を脱いでいると、ジャージ姿で寝ぼけ眼の兄が部屋から出てきた。

「あ…お兄ちゃん、起きてたの…?」

「お前が玄関のドアを開ける音で目が醒めた。鷹藤くんと取材…」

そう言いかけて洸至が言葉を切った。
遼子の胸元に視線を止める。
その視線に気づいて、遼子も自分のブラウスを見た。
段違いにボタンが留められたブラウス。そのせいでだらしなく胸元が開いていた。
そこから鷹藤につけられた紅い痕の端がのぞいていて、遼子は慌てて胸元を合わせる。

遼子が兄の様子をうかがう。
洸至は寝起きのせいか、まだぼんやりしているように見えた。
兄に服のことをからかわれる前に着替えてしまおうとそそくさと部屋へ向った。
動いた拍子に思わず腰がくねり、声が漏れそうになるが、奥歯を噛みそれを堪えながら、遼子が足を速めて
部屋に入ろうとした時だった。

「お前…取材、じゃなかったのか?」

洸至の言葉に遼子が足を止めた。声に心臓を鷲掴みにするような冷気が漂っていた。
まるで被疑者に尋問する時の声だ。

「え?しゅ、取材よ。もぉ、大変だったんだからっ」

遼子は笑顔を向けるが、兄とは何故か眼を合わせられなかった。
その遼子の行く手を遮りながら、洸至が遼子の部屋とリビングの間に立つ。

「ほぉ、その取材とやらはこんなところにキスマークが付いちまうような取材なのか?」
「えぇ?キスマー…あっ」

兄は遼子の顎を捕えこちらを向かせ、わざとゆっくりと薄赤い痕に指を這わせた。

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん、やめて…。」

避けていた兄の眼と遼子の眼が合った。
ほんの1時間前まで過ごしていた、鷹藤の部屋での遼子の痴態を見透かすような眼。
捕食者に射すくめられたように、遼子の動きが止まる。

「この、見えていない部分にも…同じような痕があるんだろうなぁ。見てやるよ。」

淡々とした声とは裏腹に、洸至は突然両手に目一杯の力を込めブラウスを引き裂いた。

「きゃぁあっ。……やめて、おにいちゃん!」

ボタンが跳ね跳び、遼子の白い肌が露わになる。
身体を隠そうとする遼子の両手を片手で易々と掴み頭上に持っていくと、遼子をリビングの壁に貼りつけるようにして 押しつけた。
遼子はブラを付けていなかった。
はだけたブラウスから、淡雪のように白い遼子の肌がさらけ出されている。程良い大きさの乳房の先には桜色
としか言いようのない蕾。
本来なら、その肌の上に あるのはその蕾だけのはずだが、遼子の肌の上には、紅い斑点のようなものが点在していた。
それが肌の白さを際立たせ、男を誘うように紅く淫らに浮き立って見えた。

「ノーブラかぁ…これも、鷹藤の趣味なのか?ん?こんなにキスマークも付けられて。 あいつも案外見かけによらず変態なんだなぁ」
「ち、違うの」

身をよじりながら遼子が兄に言う。

「…何が。鷹藤がお前にブラをつけて帰るなって言ったのか」
「もう止めて…」
「遼子、お前鳥肌が立ってるなあ。寒いから、じゃないよな」
「お願い、部屋にいかせて…」
「声が震えてるぞ。俺は何も触ってないのになあ。なあ遼子、さっきからお前の携帯鳴りっぱなしみたいだぞ」

遼子が帰ってきてからずっと、携帯のバイブ音に似たものが低く鳴り響いている。

「そ、そうなの、鷹藤くんよ、きっと、だから電話に出ないと」
「でも鞄はあそこだろ。音はもっと近くから聞こえるんだよ」

洸至が玄関に置いてある遼子の鞄に目を送った。それから、遼子の腰あたりに目を降ろす。

「んっ…お、お願い…部屋に行かせて」

視線に気づいた遼子の腰が、また跳ねるように動いた。

「お前のこの辺から聞こえるんだよ。携帯のバイブみたいな音が」

洸至が遼子のスカートをたくしあげる。右の太ももに小さなベルトが着けられ、ライター大の装置がそこに
挟まれていた。そこから伸びたコードが、白のレースの下着の奥に消えている。

「なんだよこれ」
「や、止め…」

遼子は必死に逃れようとするが、片手で押えているはずの洸至の腕は、万力のように遼子の腕を締め付けて
離さない。
洸至が遼子の太ももに手を這わせ始めた。

「やめっ…」

装置から出ているコードを辿り、コードが消えた部分まで指を這わせる。

「ひゃん…」

洸至がコードの先を呑みこんだ部分を下着の上から触る。そこは絞れるほどぐっしょりと濡れていた。
洸至の指に伝わる微かな振動。

「おい…こんなの挿れたまま帰って来たのか。ひどい変態だな、お前の相棒は。それとも、お前も喜んで
こうして帰って来たのか。わかるか?お前のここからすごくいやらしい匂いがしてるんだぞ。こっちの頭が
おかしくなりそうなくらいだよ」

洸至が指を強くそこに押し付けると、遼子の膝から力が抜けた。

鷹藤の部屋で散々啼かされた後に、泊らずに帰ると言った時、鷹藤が遼子の中にローターを入れ、それでも
帰れたら送ってやるよ、と言った。
鷹藤のその言葉に遼子が意地を張って、喘ぎ声をこらえながら帰って来たのだ。
だが、そんな事情を説明したところで、兄は止まってくれそうにない。
それに、こうして鷹藤に辱められることで途轍もない快楽を得ていたなんて、兄に言えるはずもない。

「お兄ちゃん、手、離して…。もう止めて…」
「大事に育ててきたお前がこんな風になっちまうなんてなあ。まったく悲しいよ…」

洸至が遼子の額に、自分の額をコツリと合わせた。

「…ごめんね、お兄ちゃん…」

「まったくだ…遼子がこんなに淫乱だったら、今まで俺が我慢してきたのは何だったんだよ」

「え…?」

間近にある洸至の眼が鈍く光ったように見えた。

「15年分の我慢のおかげで、今日は相当楽しめそうだけどな」
「お、お兄ちゃん!」

洸至が遼子を抱き上げる。
遼子は脚をばたつかせるが、そのせいで遼子の中にあるローターが内奥で暴れ、また新たな快感を送りだし結局は
嬌声をあげ身悶えするだけに終わった。

「きゃんっ…駄目…」

それを洸至が愉しげに見ている。

「…どこまでいやらしい躰なんだよ」

歩きながら洸至が遼子の頬に口づける。

「ずっとお前しか頭になかったんだ。お前が大事だからずっと我慢してきた」

洸至はベッドに妹を横たえた。遼子の頬に、首筋にキスを落としながら洸至が遼子にのしかかるようにして
妹の顔を上からのぞきこむ。

「お兄ちゃん、駄目、駄目なのよ、こんなこと」
「だけどなあ、こんな姿見て我慢しろっていっても、俺の忍耐も底なしじゃない」
「でも…兄妹なのよ。だからこんなことしちゃ駄目おねが…」

遼子が最後まで言い終わらぬうちに洸至が唇を重ねた。
話の途中だったせいで半開きだった遼子の唇に、洸至は舌を潜り込ませる。
遼子の舌を見つけると煽るように絡め、妹の唾液がまるで甘露な酒であるかのように吸った。
そうしながら、遼子の下着に手をかける。

「んっ、んっ」

執拗に絡みつく洸至の唇から遼子が逃れ、唇を離す。

「駄目!お願い!兄妹なんだから…きゃあ」

洸至の手を止めようとした遼子の手はあっさり押さえつけられ、兄に下着を剥ぎ取られる。

「濡れて重くなってるぞ、これ」
「…っ」

あまりの言葉に顔を赤らめ、遼子の抵抗する力が抜けた一瞬を見逃さず洸至が中にあったローターを引き抜いた。

「きゃあっ…」

それから遼子の蜜にまみれたそれをクリトリスに当てる。蜜に群がる蜂の羽音に似た音を立てながら、ローター
は遼子の粒に快楽の為の振動を送る。

「ひゃあああっ」

ただでさえ内奥を蕩けさせられ、快楽に敏感になっていたところへのダイレクトな刺激に遼子は白い喉をさらし、
束の間、意識が飛ばした。

「俺たち、兄妹じゃなかった良かったのにな…」

悶える妹を見下ろしながら、切なげに洸至が言った。
だが遼子はその姿に気付くことなく悶え狂っていた。

「あぁぁんっ…あんっ…」

まだ洸至がクリトリスに当てるローターの振動により、遼子は喉を震わせ、小さな喘ぎ声を絶え間なくその唇の
隙間から漏らしている。
胸の柔らかな肉に洸至が手を這わせても、もう抵抗するそぶりなどなかった。
遼子の腰はもっと決定的な何かを求めてせつなげに蠢いていた。
洸至が首筋から胸へ唇を落とす。遼子が敏感に感じそうな場所には、鷹藤が先回りをして所有の印を残していた。

洸至の眼が、不愉快そうに細められたが遼子はその様子に気付くことなく喘ぎ続けている。

「躰じゅう鷹藤のキスマークだらけだ…。そんなに良かったか?あいつに躰じゅう舐めまわされて」
「そ、そんなことっ…いわ…ない…で」

遼子が喘ぎながらも反駁する。

「鷹藤に抱かれたあと、すぐ俺に抱かれて悶える淫乱なお前だからな」
「ち、ちが…」
「男だったら誰でもいいんだろ?お前を気持ち良くさせれば誰でもいいんだろ」

言葉でいたぶられるたびに、遼子は身をよじり、息は荒さを増す。
洸至がクリトリスに当てたローターの目盛りを強にあわせた。ひときわローターが高く啼いた。

「きゃあああああああっ」

遼子が大きくのけぞる。息を求めるように大きく開いた唇の端から涎が一筋流れた。
洸至がクリトリスに当てたローターを亀裂に沿うように滑らせ、ローターを元いた場所にしまってやる。
ほんの1時間前まで、鷹藤の唇で、指で、鷹藤自身で啼かされた遼子の躰はまたすぐに熱を帯びはじめる。

「駄目、なか、なかでそんな強くしたら…いっちゃう!やあああああ」

妹の痴態に目を細めると、洸至がスカートを履かせたままの妹の足を大きく開いた。
内腿にも薔薇色の徴がいくつも点在していた。洸至の眉間に深い皺が刻まれる。

「どこもかしこも、だな…」

洸至が遼子の亀裂に口を近づける。
遼子の亀裂からはとめどなく蜜が溢れ、溢れた蜜は亀裂の下に薄褐色の小さくすぼまった場所を通ってシーツを濡らしていた。
それを見た洸至の動きが止まる。
何かいたずらを考えついた子供のような笑みを浮かべると、舌を亀裂ではなくその褐色の部分につけた。
予期しない場所に洸至の舌を感じ、遼子の腰が跳ねる。

「いやっぁ」
「散々濡れてるんだ。きれいにしないとな」
「そこ、汚いもの!駄目なの、お願い止めて!」
「その様子じゃ、さすが鷹藤もここは触ってないのか」
「いやっ、お願い!汚いから!お兄ちゃん、お願い本当に止めて!」

「お前の躰に汚い所なんてないよ」

鷹藤の唇ですら触れたことのない場所に、兄の唇を感じあまりの恥ずかしさに遼子は腰を動かし逃れようとした。
だが、がっちりとした兄の手が逃げられないように遼子の膝の裏を押えた。
そして、脚を開かせながら遼子の躰が折れ曲がる様に尻を掲げると、洸至が舌を這わせているところが妹の眼前に来るようにした。

「やぁっ…」

それを見ないように顔を背けたが、兄の大きな手が遼子の顎を掴み、眼前で繰り広げられている光景を見せつけるように固定した。

それはあまりに刺激的な光景だった。
薄褐色の部分を、兄が紅い舌先でちろちろとそそのかしている。
初めて目にする己の亀裂にはショッキングピンクのコードが呑みこまれていて、桃色の襞のあたりがひくつき快楽を
求めるように蠢いていた。内腿も、兄が舌先で転がしているところも、遼子の蜜で濡れて光っている。
眼をそむけたくなるほど、グロテスクでおぞましく、しかも淫らな眺め。
眼前の光景が遼子の視覚を犯す。一度目にしたら、遼子はそこから目を離せないでいた。

「すごい眺めだろ」

そこに口づけながら洸至が言った。遼子を流し見る兄は、共犯者の眼で遼子を見ている。
その眼に射られ、兄がこれからどんな快楽を自分にもたらすかと思うと、遼子の心が期待でぞわりと震えた。
兄の舌と、ローターが掻き立てる内奥からの堪えがたい程の快感が、遼子の理性を侵食していく。

「いやぁ…」

自分の中の情欲にまみれた心を否定するように遼子は声をあげる。

「見せつけたら、お前のあそこ、ひくついたじゃないか。お前も見ただろ?」
「そんなこと…ない…きゃあああっ」

洸至が今まで口づけていた場所に中指の先を入れていく。兄が優しく動かす指は、円を描くようにしながら呑みこまれてく。

「駄目!そこはそんなの入れる場所じゃ…いやあ…」

洸至の中指の第一関節まで、遼子の菊座は、するすると受け入れた。

本来なら何かを挿れる為の器官ではない場所に異物を挿入されることは、相当な痛みをもたらすと思っていたのに、
性器とは違うくすぐったいような不思議な感覚がそこから拡がってきていた。
ぬらぬらと光る亀裂の向こうで、兄の指が第二関節まで入っていく。

「根元まであっさり入ったぞ、欲しかったのか?」

ついに遼子のそこが根元まで洸至の指を呑みこんだ。

「やぁ…」

兄がゆっくりと指でそこをほぐす。

「すごい締まり方だよ」

痛みではなく、そこが快楽を求めるように熱を持つ。
ゆっくりと兄の指が引き出され、そしてまた呑みこまれていく。
ローターの入っている場所から肉の壁一枚隔てた向こうで、兄の指が蠢くのを感じていた。

「あ…」
「遼子、感じてるのか?ここはな、開発次第じゃ前よりも感じることができる。ここも性感帯なんだよ」
「性感帯って…やんっ…ひやあぁぁぁぁん…」

兄の指の動きが激しくなるにつれて、遼子の亀裂が熱を持ちまた蜜を溢れださせていた。

「感じてるんじゃないか、ここ。ほら、こっちもこんなにヒクヒクさせて」
「ちがうの、あ…あんっ…」
「こんな格好させられて、前にも後ろにも挿れられて感じてるんだろ。そうじゃなきゃ、こんなに濡れないよなぁ」

洸至がクリトリスを唇で覆うと、音を立てて吸いついた。

「きゃああああああああああっ」

クリトリスを兄の唇で、亀裂をローターで、その後ろを兄の指で責め立てられ、遼子が喉を晒し、あまりの
悦楽に悲鳴のような声を上げる。
ローターの低いモーター音と、兄の唇が立てる水音、叩きつけられる兄の指の音。
音と遼子を襲う快楽と、その全てが遼子を理性の果てへと急きたてる。
鷹藤との行為の最中にも感じたことのない凄まじい感覚に遼子は蹂躙され、それに呑みこまれていく。

「お、お兄ちゃん、もう…許して、お…おかしくなっちゃう…」

自分を見失うのが怖くて、遼子が震える声で哀願する。

自我が崩壊しそうなほどの快楽で、遼子の躰が、脳髄が蕩けていこうとしていた。
だが洸至は答えない。ただ、返事のかわりに、更なる強さで遼子のクリトリスを吸いたてた。

「いやあああ、いく…いっちゃうぅんっ」

その声を聞いた洸至が全ての動きを止めた。

「ひゃ…あ…」

昇りつめようとして、腰を振っていた遼子が快楽を絶たれて、眼を見開いて洸至を見た。

「お兄…ちゃん…?」
「一緒にいこう、遼子」

ずっと遼子を蹂躙し、優位に立っていたはずの兄が掠れる声で言った。
洸至が遼子の腰に、硬くなったものを押しつける。
行き場を求めて猛り狂う洸至の熱が、兄のジャージ越しに遼子に伝わる。
その熱さ、硬さ、逞しさを今すぐに欲しがる自分がいることに遼子は戦慄した。

「駄目…」
「兄妹だからか?」

洸至が挑発するように残酷な笑みを浮かべた。遼子にのしかかり、耳元に口を寄せた。

「…お前は兄貴とこんなことしてるから、感じてたんだよ。悶え狂ってたんだよ。俺と一緒だ。超えてはならない
一線を超えたところに行きたいんだ、お前も。そう言う意味でも、俺たちは兄妹なんだよ」
「そんな…」
「怖くないさ。俺も一緒だ」

遼子の亀裂から滴る蜜を、その後ろに洸至が塗りつけた。

「お兄ちゃん…?」
「…お前の後ろの初めてもらうぞ」

「やぁ…!!!」

遼子が抵抗する間もなく、むきだしになった洸至自身がそこに押し付けられる。
服の下に収められていたころより、それはさらに膨張し硬さを増している。

「力抜いて…」

入り口を凶暴なくらいの力で押し拡げて洸至自身が遼子の中に、本来なら何かを受け入れる器官ではないところに入っていく。
「ああああああっ痛いっ、痛い!」
「…くっ。遼子、締まってるぞ」

頭を打ち振り、遼子が苦痛にのたうつ。
暴れ回る遼子をベッドに縫い留めるように、洸至が遼子の掌に自分の掌を重ね、指を絡めた。
ゆっくりと、だが確実に洸至は奥へ進んでいく。

「はぁあ」

洸至のものを根元まで受け入れた時、遼子が苦痛の中で小休止したように息を吐いた。
その唇へ洸至が唇を重ねる。
舌を絡めながら、ゆっくりと洸至が己を引き抜く。

「…んん!」

痛みからまた遼子が声を上げた。洸至が引き出した後またゆっくりと押し入る。
そのうちに、遼子の痛みの声は小さくなり、それは微かな吐息へと変わっていた。

「あっ…」
「どうした」
「んっ…」
「感じてるのか?」
「ひゃんっ…」
「初めてで感じてるなんて、本当に淫乱な妹だよ、お前は」
「違う…きゃあぁん」

腰を打ち付けるリズムが上がる。
腰を動かしながら、洸至はコードの出た亀裂からとめどなく蜜が溢れているのを見て目を細めた。

クリトリスに親指を這わせ強く押す。

「やぁ、はあぁああん」

一度洸至に外された絶頂への梯子を、遼子はいままた昇り始めていた。
ローターが蠢き、悦楽をかき立てている肉の壁一枚向こうで、兄の猛り狂ったものが遼子を犯す。
どこで感じ、何が自分を狂わせているのかわからない程の快楽がそこから一気に押し寄せる。
しかもさっき寸止めされたせいで、遼子に押し寄せる快楽は倍増していた。

ベッドが激しく軋む音の合間に、遼子の喘ぎ声と、ローターが低く唸る音が混じる。

「ああ、いいっ、お兄ちゃん、すごい…いいの、いっちゃいそう」

遼子は、ただ快楽にまみれて堕ちているのか昇っているのかもうわからない。
洸至に突きあげられながら本能的に腰を振り、洸至を煽る。

「お前も凄いぞ、…ちぎれそうなくらい締めてくる。俺も…もう、もたない」

呻くように洸至が言った。その額にも汗が光る。

「あ、あ…私もっ…もう駄目…いく…今度こそいかせてぇ!」
「ああ、…中に出すぞ」

洸至がさらに肉を強く叩きつける。

「いく…いいの…お兄ちゃん、いいの、いっちゃう!」

湿った破裂音が部屋に響く。
と、洸至の内腿が震えた。

「きゃああ、熱い…あああああんんっ」

遼子は今度こそ弓なりになり、洸至の全てを受け止め、意識を飛ばした。
洸至が遼子の中から己のものを引き抜くと、遼子の亀裂から流れる透明な蜜と、洸至の精を受け止めた
すぼまりから垂れ出る白濁した液が混ざり合い、臀の谷間を伝いながら流れ落ちて行った。

里香が、編集部のブラインドを調節し、西日が入らないようにした。
それから席に戻ると、退屈そうに携帯でメールを打ち始めた。
コーヒーメーカーの傍では、城之内と中原はテレビを見ながら雑談している。
編集長室では樫村が新しくついたスポンサーに電話していた。
樫村の声や表情が朗らかなのは売上が好調だからだろう。

アンタッチャブル編集部の締切間近なのに漂うゆるい空気。見慣れた光景だ。
鷹藤は芸能人の密会写真のチェックも終わり、ぼんやりと編集部を見ていた。

そのけだるい空気の中、鷹藤の相棒、鳴海遼子は一心不乱にキーボードを叩く。
これもアンタッチャブル編集部の見慣れた景色の一部と化している。
鷹藤の視線に気づくと、鷹藤を見て艶っぽく微笑んだ。

あの日はやりすぎたかと思ったけど…。

あの日、鷹藤の部屋でいつも通り熱い夜を過ごした後、泊っていくものだと思っていたら、遼子が帰ると言いだした。
――最近、朝帰りすると、お兄ちゃん機嫌悪いから。
確かそんなようなことを言って、遼子はすぐに服を着て帰り支度をしだした。

なぜ、自分はあの日はあんなことをしてしまったのだろう。
溶け合うように躰を重ねた余韻を手放したくなかったのと、きっと、遼子の兄への微かな嫉妬だろうか。
とにかく、遼子を帰したくなった。
その時、以前勤務していたバイト先の忘年会のビンゴ大会の景品を鷹藤は思い出した。
もらったときは悪趣味な冗談にしか思えず捨てようと思ったが、物がものだけに捨てるに捨てられず困っていたものだ。
景品はピンクローターだった。
クローゼットの中からそれを探し出すと、遼子の前に置く。ほんの悪戯のつもりだった。

――これ挿れたら帰っていいぜ。
遼子の顔が青くなり、それから赤くなった。だが、挑発した鷹藤に負けたくなかったらしい。
自分からそれを亀裂に沈め、腰を震わせながら遼子は帰っていった。
着替える時も這い上がる快感に、ブラをつけることも忘れブラウスのボタンもかけ違えていた。
それはかなり刺激的な光景で、送っていく車の中でなんども押し倒そうと思う程だった。
だが、意地になっている遼子は、そのまま帰ると言い張ってアパートへ入っていった。

鷹藤はその翌日、怒られることを覚悟して出勤したのだが、遼子は怒っている様子もなく逆に晴れやかな顔をして来た。
それ以来、以前と変わらず接している。

ただ一点、変わった点と言えば、遼子が鷹藤の部屋で躰を重ねたあと部屋に泊らずに帰るのと、その際ローター
を中に忍ばせるようになったことだった。
…変な癖つけちゃったかな…。

「おい、永倉栄一が政界進出断念するってさ」

テレビを見ながら雑談する、中原の声がひときわ高くなった。

「やめるんですかあ?」

里香が声を上げる。

「地球党の旗揚げ、失敗しましたからね。突然支持団体の統率がとれなくなって、組織票が流れちゃったみたい
なんですよ」

城ケ崎が里香にわかるように解説する。

「へえ。なんでまた。途中まで破竹の勢いだったじゃないの」

中原が意外そうに言った。

「新興宗教系の票がまとまらなくなったみたいで、大量の票を落したらしいんです」
「じゃあ、永倉さんも本業の方に専念するってことか」
「そうでしょうね」

テレビでは永倉ホールディングスの代表永倉栄一が無念そうにマイクを握り、新党設立がままならなかった
ことを謝罪し、政界進出から身を引くことを表明していた。
遼子と鷹藤もその画面を見る。
二人にとって永倉は杉の子育英基金で世話になった恩人にあたる。
その恩人の失脚を、鷹藤と遼子は残念そうに見ていた。

「鳴海君、原稿進んでるか〜」

編集長室からご機嫌で出てきた樫村が、遼子に媚びるように肩をもむ。

「編集長、それ、セクハラですよぉ」

中原が笑いながらたしなめた。

「うちの編集部の稼ぎ頭だ。頑張ってもらおうと思って肩揉んだだけだって」

不思議なことに、遼子が入社すると同時に活発に送られていた、名無しの権兵衛のFAXは楠田とマーサの
一件以来止まっている。
ちょうど、遼子がローターを入れて家に帰ったあたりからFAXは送られてこなくなった。
名無しの権兵衛が絡んだ事件を記事にし、部数を伸ばしてきたアンタッチャブルにとって大きな痛手だったが、
その穴を遼子が埋めた。
持ち前の粘着質さを芸能スキャンダルの取材でも発揮し、数々のスクープをものにしていた。
一時は落ちたアンタッチャブルの部数もこのところまた伸びてきている。

「部数も好調だし、このままの調子で年を越せるように頑張ってくれよ!」
「はい!」

遼子がまたキーボードを叩き始めた。

「名無しの権兵衛が鳴りを潜めて一時はどうなるかと思ったが、鳴海君のおかげで部数が伸びてるからな」

ホワイトボードに貼ってある、右肩上がりのグラフを見て樫村が満足げに言った。

「しっかし、どうしたんでしょうね、名無しの権兵衛は」

マグカップ片手に中原が言う。

「陰謀なんかより愉しいことでも見つけたんですかねえ」

城之内もそれに関しては何も情報を掴んでいないらしく、不思議そうに首を傾げた。

平和だ…。
信じられないくらい穏やかで平凡な日常が続いている。
名無しの権兵衛が活発だった頃は、次々と事件が起きて、簡単に、あっけない位簡単に人が死んでいった。
FAXが途絶え、権兵衛の正体も意図も宙ぶらりんのままになったが、それはそれでいいのかもしれない。

目下のところ、鷹藤を悩ませる問題と言えば、遼子のクリスマスプレゼントは何がいいか、だけだ。
―――まあ、まだ1カ月あるし。クリスマスぐらい泊まってくれりゃあいいんだけどな。
…クリスマスプレゼントに遼子から何かもらうとしたら、それがいいかもしれない。
それくらいいいだろ?
キーボードを叩く遼子の横顔に、鷹藤はそう投げかけた。






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