停電
鳴海洸至×鳴海遼子


「な、なに?」

突然、エレベーターの電気が落ち、激しい衝撃と共にエレベーターが停止してしまった。

「停電…か?」
「停電?じゃあ、このエレベーターは…」
「当然、電力が回復するまでこのままだろうな」
「そんな…」

遼子の語尾が僅かに震える。

洸至は、とりあえず備え付けの緊急ボタンを押して、外部と連絡を取ろうとしたが
同じ状況の人たちが多いのか、中々繋がらない。
密閉された暗闇の中に閉じ込められた遼子は怯え、無意識のうちに洸至のスーツを握り締めていた。

空調も切れたエレベーター内に、次第にねっとりとした熱気が帯びてくる。
息苦しさを感じているのか、遼子の呼吸が次第に浅く短いものに変わっていく。
その息遣いが、側にいる男にどんな効力を与えているかなど、遼子に知る由もなかった。

「ふっ…んん…っ!」

突然、遼子は洸至に顎をつかまれ、何の前触れも無く唇を奪われた。
それは、甘い雰囲気が漂う優しいものではなく、全てを貪欲に奪い去ろうとする激しいキス。
繰り返し角度を変え、洸至の舌が「開けろ」というように遼子の歯列をなぞる。
朦朧とする思考のまま抗うことも出来ず、遼子は洸至を迎え入れ、絡めあう舌と舌が細い銀の糸を紡ぎだす。

「いや…お兄ちゃん…やめ…」
「この暗闇が怖いんだろ?遼子。…だからそれを忘れさせてやるよ。」

そう言って洸至は再び遼子の唇を塞いだ。
遼子の抗議の声はあっさりと洸至の唇に飲み込まれてしまい、隅々まで弄るようなキスは
遼子の思考を確実に奪っていく。

やがて洸至の唇が、遼子の耳朶にそして首筋にと落とされ、その先にある双丘まで移動する。
洸至は、器用に遼子のブラウスのボタンをはずすと、乳房を弄る。
しっとりと汗ばんだ遼子の肌が洸至の手に馴染み、遼子は熱い洸至の手の感触に、ピクンと小さく体を震わせた。





遠くで誰かがしゃべっている声が聞こえ、遼子はぼんやりと目を覚ました。
ふと見上げた視界の隅に、兄の後ろ姿が映る。

「お連れの方は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫です。妹なんですが、ちょっと暗いところが苦手でして。」

乱れたはずの衣服は元通りに身に付けており、遼子は一瞬、さっきの出来事は夢なのかと思った。
しかし、胸元に散る紅い印が、夢ではない事を物語っていた。






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