鳴海洸至×鳴海遼子
![]() 鄙びた温泉街だった。東京から何度か電車を乗り継いで辿りつける所にそこはある。 江戸時代からの温泉地だったが、時代の波に乗り遅れ、時間が止まったような風情の街だった。 セピア色にくすんだ街並み。閑散とした目抜き通り。 今時の若い女性には敬遠されそうな街だったが、数百年もの間湧き続けている温泉の質がいいということで、 遼子がこの温泉街を選び、普段世話になっている洸至へと1泊2日の温泉旅行をプレゼントしたのだった。 宿に着くと、洸至が宿帳を書いた。 鳴海洸至遼子。二人の名を連ねて書く。 まるで夫婦みたいだと洸至はひとりほくそ笑んだ。 それから部屋の鍵を受け取ると、仲居が先導し、二人を部屋へ案内した。 百年以上磨かれ続け、黒壇のごとく艶を持ち光る廊下を、洸至は遼子と並んで歩く。 歩きながら遼子が洸至に囁いた。 「お風呂は24時間入れるのよ。ご飯はお部屋だし。あとね、予算の関係でお兄ちゃんと一緒の部屋だけど…。 いいよね?」 洸至に異存があるわけがなかった。 荷物を解くと、お互いに見ないようにして浴衣に着がえ、それぞれ風呂に入り、その後閑散とした街を二人で ひやかし歩いた。 遼子はここぞとばかりに何度も湯に入り、地元食材がふんだんに使われた豪華な夕食で腹を満たしたあとも すぐにタオルを手に大浴場へと繰り出した。 妹のはしゃぐ様子を思い出しながら洸至が部屋でビールを飲んでいると、フロントから電話が入った。 「お連れ様がのぼせられたようでして…。気付くのが遅れて申し訳ございません。 ご心配のようでしたら、お医者様をお呼びしましょうか」 和服姿の女将は、一分の隙なくセットされた頭を、何度も下げながら洸至に謝った。 風呂に入り過ぎてのぼせたようで、遼子は脱衣場で貧血を起こして倒れていたらしい。 「いえ、結構です。妹が少し欲張って入り過ぎたんでしょう。部屋で休ませておけば大丈夫だと思います。 こちらこそご迷惑おかけしたようで、すみませんでした」 平身低頭と言った風情の女将を宥めると、洸至がそう言って女湯の前で浴衣姿の遼子を引き取った。 妹を横抱きにしながら、旅館の廊下を歩く。 すれ違う客が、軽々と女一人を抱いて歩く洸至を驚いた顔をして見る。 洸至の後ろを氷と水を載せたお盆を持った仲居がついて歩く。 「気がつかれたこちらを飲ませてください」 仲居はのぼせる客に慣れているようで、すぐに氷水の入った盆をもってきたのだ。 「まったくなあ、久しぶりの温泉だからって欲張って入るから…」 洸至が妹の上気した顔を見入る。 部屋に着くと、仲居がドアを開けてくれた。 次に仲居が開けた襖の向こうを見て、洸至が絶句した。 布団がぴったりとくっつけられて敷かれているのだ。 まるで初夜の新枕だ。しかもご丁寧に枕元にティッシュと行燈の形をしたランプ。 仲居が枕元にお盆を置くと、 「ごゆっくり」 と言って部屋を出て行った。 別に仲居は含みがあって言ったわけではないだろうが、洸至の頭の中で様々な意味が渦巻く。 宿帳に書いた「鳴海洸至遼子」の文字が過ぎる。 思いっきり夫婦と誤解されたようだった。 洸至の喉が思わず鳴る。 しかしその後眼を閉じ、煩悩を振り払うように頭を振った。 「少し冷まさないとな…」 横たえた遼子の隣に肘枕をついて添い寝し、洸至は女将から借りた布張りの団扇で、妹を扇ぐ。 ぐったりとした様子の遼子だが、爽やかな風を感じ、心地良さそうに目を閉じている。 眠りながら熱さから逃れるように首を振る妹を見て、洸至が今度は浴衣の襟元を緩めてやる。 普段は陶器のような白さを湛えた妹の肌が、今は熱さのせいかほんのり桜色に染まっていた。 まだ熱が逃げきっていないのだろう、遼子はうっすらと汗ばんでいた。 洗面所で濡らしたタオルで、額、頬、首筋を拭いているうちに開いた胸元が眼に入った。 「拭いてやるだけだからな、拭いて…」 やましさを打ち消すようにひとり事を言いながら胸元の奥へタオルを持った手を入れた。 柔らかな膨らみ間にも汗が光る。妹が風邪をひかないようにそこを拭く。 親指の先が柔らかな肉に触れた。洸至の動きが止まる。 そこの熱く吸いつくような感触に、洸至の躰が一気に熱を持った。 妹の様子を窺うが、まだ気付いた様子はない。長湯が起した貧血のせいで、意識と無意識の間を漂っているようだ。 手をそのまま柔らかな肉に這わせる。乳房の頂きの上を滑らす。洸至にタオルで撫でまわされているうちに 遼子の知らぬところで躰だけが反応していたのか、洸至の指にコリッとした感触があたった。 「んっ…」 その声で洸至は動きを止めた。遼子は敏感なところを触れられ、無意識のうちに声を出したようだ。 まだ目は閉じたまま眠るような表情で横たわっている。 その遼子の様子に、洸至の動きの大胆さが増した。 最初は気付かれぬように、ささやかな動きだったのが、いつしかタオルを脇に置き己が手で遼子の肌を 撫でまわしていた。 浴衣の襟元は肩まで開き、半球の乳房から臍までが露わになっている。裾もはだけ、浴衣の帯はただ腰に巻き つけられた紐と化していた。 妹はまだ発汗していた。その汗を、洸至は今度は舌で舐めとることにした。 額から垂れる汗、首筋を流れる汗、胸の谷間にうっすらと湧く汗…。汗を舐めとり、肌を舌で濡らす。 こうすればもっと早く熱も逃げるだろう。上半身を上から下へ辿った舌を、今度はまた上へ滑らす。 そうしているうちに、汗など流れていない妹の唇に洸至は唇を重ねた。 ここは乾いているから、湿らす必要があると思ったからだ。音を立てながら、妹の唇をねっとりとついばむ。 半開きの妹の唇へ舌を割りいれた。 妹の乾いた喉を唾液でうるおす為に、洸至は舌を送り込む。 くちゅっ…。くちゅ…。粘体の生物が這いまわるような淫らな音を立てて妹の舌を吸う。 まだ妹が目覚める様子はない。 今度は唇を首筋から鎖骨、鎖骨から柔らかな乳房へと滑らす。 まだ汗でしっとりとしている肌を味わいながら、乳房の頂きを吸う。 左右の乳房を中央に寄せると、音を立ててその頂を交互に吸い始めた。熱を帯び、硬さを増した頂きに湿り気を与えて 熱を早く逃がしてやるためだった。 「んんっ」 眉根をひそめ、遼子が白い喉を晒した。 「遼子…」 「冷たくて…気持ちいい…」 遼子がうっとりとしたように微笑むと目を開けた。 「おにい…ちゃん…?」 遼子のぼんやりとした視界には、黒く強い髪を揺らめかせながら己の乳房を吸う兄の姿があった。 「おに…!」 抵抗の言葉を上げる前に、遼子の唇を洸至が唇で塞ぐ。 はだけた浴衣から露わになった白の下着の中に指を潜り込ませ、既にうるんだ亀裂に洸至は一気に指を埋め込んだ。 兄に抵抗する前に、遼子の躰を快楽が貫いた。 「はんっ」 洸至は妹の唇を舌で犯しながら、指で亀裂を掻き回す。 遼子の腕が洸至の躰を押すが、洸至の指が作り出す快楽に抵抗する意思を集中することができずに、ただただ 翻弄されていた。 洸至の胸を押す力が弱まるにつれ、遼子の太ももが無意識のうちに開き始める。 その様子を見てから、洸至が唇を離した。 だが、指は更なる激しさで水音を立てながら動かしたままだ。 「だめ…だめ…、んっ…こんなことしちゃ…」 涙を浮かべ、時折走る快楽に身を震わせがら遼子が拒否を示すように首を振る。 「のぼせて倒れたお前を介抱してただけだよ」 嘘ではない。いまはそこからかけ離れた行為になっているとはいえ、当初そのつもりだったのは確かだ。 「かい…ほうでこんなこと…し…ああああんっ」 洸至が話しかけながら、指を遼子の中で曲げた。躰が蕩けるポイントを過たず突いたようだった。 遼子は言葉にならず、最後は嬌声に変わっていく。 「俺のことが嫌いか?」 「はぁっ、はあああああっんんっ。す、好き!だけどきょうだ…いだから、お兄ちゃんとして好きだから、 こんなことしちゃ、ああああっん、だめっな…んっ」 指の付け根を叩きつけるようにして、抜き差しはじめると、遼子は快楽の為喉を晒す。 それでも健気に兄に訴えようとする妹がいじらしくて、洸至はもっと深い悦楽へ遼子を叩き落とすことにした。 「俺もお前が好きだよ。だから兄妹以上のことをお前にしてやりたいんだ」 妹の両手を片手で抑えながら、遼子の浴衣の帯を取った。浴衣がはだけ白の下着だけをつけた躰に、行燈の形をライトから出される柔らかな光が淫靡な陰影をつける。 洸至の舌で散々弄ばれた乳房の頂きは遼子の意に反して屹立し、汗と唾液で濡れた肌が洸至を誘う。 その帯で妹の両手を頭の上で縛り上げると、今度は下着に手をかけた。 「湿ったままだと、風邪引くだろ?」 口調だけなら妹を気遣う兄のものだ。だがその眼は獲物を食らい尽くす捕食者の眼だった。 下着を剥ぎ取ると、妹の膝を開かせる。遼子も必死に抵抗しているが、すでに快楽にほだされたあとで、遼子の 意志よりも快楽を求める本能が主導権を握り始めていた。 洸至が軽く力を籠めると遼子膝がゆるゆると開く。 「ああ…」 遼子が絶望の声を上げた。 だが、洸至はその中に含まれた微かな期待にも気付いていた。 もうそこはすっかり濡れ、薄茶色のすぼまりにまで蜜が滴り、ライトの光を受けて叢がてらてらと輝いていた。 「濡れてるじゃないか。このままだと気持ち悪いだろ?きれいにしてやるから」 洸至の舌がそれを舐めとる。汗よりも塩気の少ないその体液を、丁寧に丁寧に舐めとり始めた。 亀裂の形をなぞり、硬さを増すクリトリスをそそのかしながら、漏れ出る蜜をすべて吸い取る。 「いやっ…だめぇ…」 戒められた両手で、遼子が洸至の頭を押そうとするが、洸至はその両手を左手で軽々と押しのけると、 臍のあたりで抑えつけた。 温泉街の夜の静寂の中、湿った音が部屋に響く。 抵抗していたはずの遼子からも荒い息が漏れる。遼子の膝に入れていた力が抜け始め、右手で抑える必要がなくなると 洸至は右手の指をまた亀裂に入れてやる。一気に二本、根元まで入れた。 「きゃっんんんんんっ…・」 遼子が軽く達したようだった。 「遼子、声、堪えなくてもいいぞ」 「いやっ…お兄ちゃん、もう…やめて」 洸至はこたえることをやめた。洸至は兄妹のくびきなど忘れさせる程の快楽で、妹の口を封じることにした。 洸至がクリトリスに軽く歯を立てる。 「きゃあああっ」 敏感になり過ぎた小さな粒に、大きすぎる刺激。間髪いれずに洸至が猛然と指を抜き差ししはじめた。 そのままクリトリス全体を唇で覆うと吸い続ける。そして舌でつつく。 泡を立てて蜜が飛び散る。吸いつき、跳ねる淫らな水の音。 切れ目のない悲鳴めいた啼き声を遼子があげる。 「やぁ、あああっ、ああああっ、いいいっ、いいいのぉ、いく、いっちゃう!」 付近の静寂を切り裂くように遼子が啼いた。 両手を戒められ、浴衣が肩にしか残っていない姿で遼子はしばしのけぞると、それから弛緩した。 「すごい姿だぞ…。もう、こっちも我慢できないんだ…」 遼子の太ももの間に身を入れ、遼子の上に洸至がのしかかる。 下着を下ろすと、洸至の猛りきったものが姿を現した。遼子のとば口にそれが当たる。 「誰にも許されないよ…こんなこと」 蕩け切り、力が入らない状態ながら、遼子は最後の抵抗をする。 「許されなくたっていい。俺はお前と秘密を分けあえて嬉しいよ…」 「だめ…」 遼子が眼をそらし、顔を横に向けた。 「俺だけの秘密だったんだ…」 遼子の頬に洸至が額をあてた。 「ずっと…ずっと好きだった…遼子、この秘密…少しだけでも分け合ってくれ」 囁く洸至の声に嘘はなかった。 遼子の瞳が揺れる。 ただ躰の欲望だけではなく、洸至がずっとしまっていた想い。それが遼子の心も揺らした。 「…秘密…だよ。二人だけの」 戒められた両手のまま、遼子が洸至の頬を包む。 洸至は、今度は優しく遼子と唇を重ねた。 同時に洸至自身を遼子の亀裂にあてがうと、奥深くへ埋めはじめる。 「はあっ…おおきい…」 「きつくて熱いよ…遼子」 せり上がる快楽に震える妹の唇を貪りながら、洸至はゆっくりと奥へ奥へ自分自身を送っていく。 「あああっ」 あまりの快楽に、遼子が眼を閉じ吐息を漏らす。 付け根まで自身を送り込んだ後、洸至は動きを止め遼子を抱きしめた。 「全部入った…すごくきつくて気持ちいいよ」 「しちゃいけないことなのに…どうしよう…気持ち良すぎておかしくなりそう…」 「おかしくなろう、二人で」 ゆっくりと抜き差しを始める。たゆたう波のようにゆったりと二人の躰が揺れる。 「はあっ」 性急さのない抜き差しは、すぐには追い詰めないが、じんわりと全身に快楽をひろめていく。 遼子の肌がまたもじっとりと汗ばんできた。 重なり合う洸至の躰にも汗が浮く。洸至が遼子の腕を戒めた帯を外す。遼子が洸至の首を抱いた。 洸至の動きに呼応するように、遼子も腰を振り始めた。 緩慢な動きが波のように快楽をひろめ、それは性急な時のものより深く大きく遼子を呑みこみ始めたようだった。 「はあ…。ああ…いい」 遼子の息が上がっていく。快楽の果てへ、遼子はもう一度昇り始めていた。 遼子の躰がもう一度熱を持ち始めたのを見計らって、洸至が猛然と突きあげ始めた。 「いやっ。ああああっ、すごい、ああっ」 洸至が突きあげながら遼子の腰を上げる。 「見ろって。全部入ってるの見えるか」 遼子が結合部を見る。遼子の亀裂から、蜜をまき散らしながら洸至のものが抜き差しされている。 「ああっ…」 顔を赤らめながらも、遼子はそこから目を背けなかった。 「感じてんのか、いやらしいな、いま、すごく締まったぞ」 「いやっ。いじわるいわないで…」 遼子の背に手を廻し、洸至は妹の躰を起した。 座る洸至の上に、遼子が乗る。今度は洸至が下から突き上げる。 布団に寝ながらの行為より、奥に当たるのか遼子の声がひときわ高くなった。 「ああっだめ、もう…」 「こっちも駄目だ。締まる…」 切なそうな顔で洸至を見ると、まるで快楽の向こうへ行くのを恐れるように遼子が兄の口を貪る。 「いこう、一緒にいこう遼子」 激しい破裂音を立てて洸至が下から突き上げた。 「きゃあっ…ああああああっ」 洸至の腕の中、遼子の力が抜けた。 「鳴海さん、もうすぐ突入です」 その声で洸至は気がついたようだった。それまで、モニターを見る片山の隣で珍しく洸至がぼんやりしていた。 いま二人は公安のワンボックスカーの中にいた。 外側は電気工事用車両に見えるが、中にはぎっしりと盗聴用電子機器、通信機器が積まれている。 モニターの中では、黒づくめに眼だし帽とヘルメットをかぶった男たちがハンドガンを持ち、とあるビルの 前で突入準備をしていた。 新興宗教団体と結びつき、武装強化しはじめた過激派集団の武器庫への急襲作戦だった。 洸至と片山は直接の突入要員ではないが、公安として組織の監視にあたっていた関係から、この突入に立ちあう ことになっていた。 モニターの向こうの光景を、耳にイヤホンを差し飛び交う無線を聞きながら洸至が冷たい目で見ていた。 「まったく…なんで今日なんだ。もっと先の予定だったろうが」 洸至のこの一言が、片山には意外だった。 それは突入の性急さに怒るというより、本来の休暇を取りあげられた怨嗟の声に聞えたのだ。 今まで洸至がそんなことで不平を言うのを聞いたことはなかった。 「ここ2、3日でやつらの倉庫への武器搬入が活発になり、以前からのテロ計画を前倒ししたと見なされて 今日の突入になったようです」 「本当なら今日は…まあいい」 「あ、遼子さんと旅行でしたっけ」 洸至が片山を睨んだ。 片山は口をつぐみ、モニターに視線を注いだ。 その横で洸至はぶつぶつと独り言を言っていた。 「温泉だったんだぞ…ふたりで…同じ部屋のはずだったんだ…。なかなか休暇があわなくてようやく…」 片山は聞えないふりをした。 「もし遼子がのぼせたら…そうしたら俺は…。どれ程楽しみにしていたと…。パンフレット片手にどれ程 イメージトレーニングしたと…」 ここで片山が下手な相槌を打てば、洸至に撃たれそうな気がした。それ程の不機嫌さだった。 「突入開始30秒前です」 片山と洸至のイヤホンに、女性職員の低い声が入った。 隣の洸至を眼に入れるのが恐ろしくて、片山はその声とモニターに集中することにした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |