理性の切れる音
鳴海洸至×鳴海遼子


「しろうちゃ〜ん!ふぇっふえええっん」

洸至の部屋に上がってからも、遼子はまだ泣いていた。
洸至は妹の隣に腰を下ろし、しゃくりあげる妹の背中をやさしくさする。

「遼子、大丈夫か?」

洸至が妹の顔をのぞき込もうとした途端、「お兄ちゃ〜〜ん」という言葉と共に、
いきなり遼子が洸至に抱きついた。

「りょ、りょ、遼子?」

急に妹に抱きつかれ、顔を胸にうずめられ、思わず動揺が言葉に出てしまう。

「ねぇ……お兄ちゃん……」

洸至の胸にうずめていた顔をあげて兄を見つめる遼子の目からは、まだ涙がとめどなくあふれていた。

「私って、色気ない?抱きたいとか思わない?」
「はぁぁ?」

あまりに突拍子もない妹の言葉に、思わずマヌケな返事をしてしまう。

「さっきね、しろうちゃんの部屋にいた女の人はね、キレイでね、スタイルも抜群でね、胸もおっきくてね…ふえええぇん」

話ながら、ついさっき自分が目の当たりにした光景を思い出したのだろう、また遼子が泣き出す。

「大丈夫。遼子は十分魅力的だぞ?それがわからない男の方がどうかしてるんだ。」

傷ついている妹を慰めようと口にした言葉だが、それは洸至の本心である。

「…本当に?」
「あぁ」

上目遣いで涙に濡れた瞳で兄を見つめる妹を、洸至はまっすぐ見つめ返して頷く。

「じゃあ…」
「ん?」
「お兄ちゃん、証明してくれる?」
「あっ?」
「今、魅力的だって言ってくれたよね?だったらお兄ちゃん、抱いてくれる?」

今、もしもさっき買った缶コーヒーを飲んでいたら、確実に吹き出していただろう。
それぐらい破壊力のある言葉を妹は口にした。
あまりにも甘美な誘いと、その衝撃にめまいがしてくる。

しかし、何とか最後の理性を総動員して、洸至は遼子と向き合う。

「遼子、お前飲みすぎだぞ。さっさとシャワー浴びてこい!」

そう言って遼子を脱衣所に押し込めた。

遼子がシャワーを浴びている間、先程の缶コーヒーを取り出すとリビングで飲みはじめた。
すっかりぬるくなってしまっていたが、そんなことはどうでも良かった。

頬を赤く染めた妹の顔、涙に濡れた瞳、荒い息、そしてその唇から紡がれたあまりにも甘い言葉。

夢には何度も見ていたが、それが現実となると、情けない程動揺している自分がいた。

あのまま、遼子を押し倒していたら……

そんな邪念を振り払うかのように、勢いよく缶コーヒーを傾ける。

シャワーを浴びれば、遼子の酔いも多少は覚めるだろう。
たとえ酔っ払いの戯れ言であろうと、たった1回だけでも、
あんな言葉を妹の口から聞けただけで満足だ。

クリスマスイブの、思いがけない遼子からのプレゼントに思わず頬をゆるませていると、
遼子が風呂場から出てきた音がした。

「落ち着いたか、遼子?」

洸至が声をかけながら、何気なく振り返った瞬間…

今度は確実に洸至はコーヒーを吹き出した。
そこには、バスタオル1枚を巻きつけただけの遼子がいた。

「お前…!なんて格好!!」

むせ返りながら何とか話しかけると、遼子が洸至の隣にちょこんと座る。

「ねぇ。やっぱり…色気…ない?」

遼子は酔いで蕩けた視線で、洸至を見つめる。

「…やっぱり、無いんだ…」

洸至が黙って答えないのを、遼子は肯定と受け取ったらしい。
俯いたまま遼子は立ち上がろうとした。
その妹の腕を洸至は取ると、そのまま体を引き寄せて抱きしめ、激しく口づける。

「んっ!」

その性急なキスに最初は遼子は戸惑っていたが、次第に洸至の舌の動きに答えるように深いものになる。
遼子の腕が洸至の背中にまわされ、きつく抱き合う。自然と遼子の胸が押し付けられる。
唇を離すと、遼子の目は潤み、恍惚とした表情で洸至を見あげている

この表情を見て、この状況で、色気が無い…という男がいるなら見てみたい。

どこかで洸至の中の「理性の切れる音」が聞こえた気がした。

「遼子…」
「うん?」

洸至の言葉を待っている遼子の耳元に洸至は口を寄せると、低くて甘い声でささやいた。

「証明してやる。」

耳元に囁いて、遼子に口付ける。

洸至は遼子を抱きかかえると、リビングから洸至の部屋のベッドまでいわゆる「お姫さまだっこ」をして遼子を運んだ。
そして遼子をベッドに横たえると、再び口づけをかわす。

「……綺麗だ。」

囁きと共に熱い吐息を溢すの唇がそっと、遼子の首筋に落ちる。
軽い痛みと共に甘い痺れが駆け抜けると、白い肌には所有の証となる紅の花が咲いた。

「はぁ…ん……」
「もう、お前が嫌がっても泣いても止めないからな。」
「ん…いいよ…」

愛しい妹の潤んだ瞳と、震える声。

舌を絡めるキスをしながら、洸至は遼子の肌に手を這わせる。
滑らかな肌をゆっくりと味わいながら、遼子の胸に手を這わせる。
両手で乳房を包むと、遼子の体がピクンと震えた。
その反応を楽しむように、洸至はゆっくりと遼子の胸を包み、柔らかくもみ始める。

自分の服を脱ぎ捨て、遼子のバスタオルもはぎ取ると、先ほどまで感触を楽しんでいた胸のふくらみを直接味わう。

「ふっ、あぁ」

両方の頂を唇と指で弄ばれ、遼子の口からは快楽の声が漏れる。

大きな掌が優しく包み込むように乳房を揉みしだき、熱い唇は啄ばむ様に優しく触れる。
そして、輪郭をなぞるように舌と指を這わせ、硬くなった乳首を摘み、
舌で丁寧に転がし甘噛みすると、遼子の唇から漏れる吐息が甘さを帯びる。

その変化を感じ取ると。洸至の手が内股を摩り上げ、蜜を滴らせる繁みへと伸びる。
スッ…と花弁をなぞると、そこはすでに潤っていた。

「……もう濡れてるな。」

意地悪く囁く洸至の台詞に遼子は羞恥心を煽られ、思わず顔を背ける。

洸至はゆっくりと、指を遼子の中にに差し込む。

「いっっ…」

しかし、初めての異物の進入に、僅かに寄せられた遼子の眉根が苦痛を訴える。

「痛いか…?遼子、力…抜け…」

だが、慣れぬ行為に遼子の身体は強張るばかりだった。

「……俺の肩を握っていろ。」

そう言って、洸至は身体をずらすと、遼子の膝を左右に開く。

「あ……いやっ…!!」

自分さえも知らない秘所を兄の目の前に晒され、思わず遼子の口から拒否の言葉が漏れる。
亀裂の間近に洸至の息遣いを感じ、更に遼子の身体が強張るが、熱く蠢く舌が押し広げられた花弁をなぞると
次第に遼子の強張りが解けていく。

「あふっ」

トロリと溢れ出る蜜を、勿体ないとばかりに吸い付くと、噛み締めていた遼子の唇から耐え切れないような甘い吐息が零れる。

洸至は、蜜壷を丹念に味わうと舌を抜き、もう一度遼子の中に人差し指を差し入れると、そこは先程よりは容易に進入を許す。
浅いところを探れば、バネ仕掛けのように妹の体が撥ねる。一本、二本と太さを変えて壁を探る。
主張する洸至の下腹部は早く入りたいと叫んでいたが、それを押さえつけて愛撫を深めるのは、楽しい苦痛だった。
柔らかな濡れた壁にゆっくりと力を入れる。
深く突いたり、浅くかき回したり、指を広げて四方に刺激を与えたり。
その度にあがる嬌声も心地よく、ますます苛めてしまう。かき回すたびに鳴る水音も、たまらない。

「遼子…、すごい色っぽいぞ。」

洸至が熱い吐息まじりの声で囁く。

「ん…おにい…ちゃん…」

遼子が熱に潤んだ瞳で兄を見つめる。

花芽を舌で転がしながら、蜜が泡立つほどに中を掻き混ぜてやる。
その度に中からとろとろと新しい蜜が溢れてくる。

「あっ…あぁっ!」

天井のザラリとした部分を指を曲げて擦ると、遼子の背が切なく反り、指が激しく締め付けられた。

「……ここがイイ、のか?」
「あぁ……やっ…そこ…あぁ!!!」

気持ちよすぎるのか、感じているのか、苦しいのか、遼子はぽろぽろと泣きながら喘いでいた。
洸至は指を前後に動かしながら、花芽をきつく吸い上げる。

「あぁっ!もう…もう…あぁぁぁん!」
「イクか?」

遼子は悲鳴と共に全身を震わせて達した。
胎内からゆっくりと指を引き抜くと、白く泡立った粘液が指に絡みついてる。
それすら愛しくてもったいなくて、洸至は一つ残らず大切に舐め取った。

「いい、か……?」

洸至の眼差しが再び、熱を纏う。

「…………。」

その台詞の意味を理解した遼子は静かに頷いた。

シーツを握り締めていた遼子の手が宙を彷徨う。
洸至は縋るように伸ばされた手を捉えると、遼子の白く長い指に己の指を絡めた。

「……遼子」
「お兄ちゃん…来て…」

洸至は遼子の脚を抱えあげると、熱く脈打つ自身を遼子の中に埋めていった。

「……か、はっ……あぁ」
「く……ぅっ。」

内壁を擦りながら埋め込まれる楔に、遼子の中が熱く絡みつく。
洸至は痛みに仰け反る遼子の身体を優しく抱き締め、苦痛に喘ぐ唇を塞いだ。
ゆっくり、押し広げるように腰を入れると、やがて遮るモノが行く手を阻む。
洸至がグッと腰を入れた瞬間、喉の奥から、くぐもった呻きが上がる。

絡めた遼子の指に力が篭り、立てられた爪が洸至の手に食い込んだ。

「……大丈夫か?」
「……う、ん。」

雫を湛えた目尻にそっと唇を落とす。

洸至の腰が遼子を気遣うようにゆっくりと抽出を始める。

「もう、少し……我慢してくれ」
「あ……あぁ……っ、ん。」

いつしか、遼子の唇からも嬌声が漏れ始める。
その声に誘われるように、洸至の刻むリズムも次第にスピードを増す。

律動が激しくなるに連れ、洸至の全身から汗が流れだし、雫となった汗は遼子の身体に雨となって降り注ぐ。
洸至を受け入れ、熱を持ち始めた遼子の身体の上で二人の汗が交じり合う。

「はぁっ!あぁっ!」

シーツをきつく握り絞めながら遼子は悶えた。

一定のリズムを刻みながら、洸至は遼子から立ち上る淫靡な芳香に酔う。

「遼子…」

遼子と指を絡めあい、深く口付けを交わす。
愛しい妹の喘ぐ姿に見惚れながら、洸至は遼子のすべてを感じようと、無我夢中で腰を叩き付けた。

「あっ!ああん!も…う…わた…し…また…ああ…んっ!」

遼子が兄の背中に腕をまわしてしがみつく。
遼子の最後の「おねだり」に洸至が激しく遼子の最奥を突き上げると、遼子は洸至をきつく締め付け、
絶頂を迎え、そのまま意識を飛ばした。

同時に、洸至も遼子の胎内に己の“想い”を全て注ぎ込んだ。

しばらくしてそっと遼子の胎内から自身を引き抜くと、
吐き出した精とともに、そこには赤い血が混じっていた。

「遼子…」

洸至は気を失った愛しい妹の唇に優しく口付ける。

「メリークリスマス…良い夢を」

クリスマスは悪くない、洸至はクリスマスが好きになれそうだった。






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