夢魔
鳴海洸至×鳴海遼子


「ただいま」

洸至の声が玄関に響く。
他愛も無い言葉なのに、遼子の心臓はドキリと音を立てる。

「お、おかえりなさい、お兄ちゃん」

しかしそれを悟られないように、遼子はつとめて普段どおりに振舞おうとする。

「今日は早かったんだね。仕事は一息ついたの?」
「ああ、とりあえず今日で張り込みと内偵は終わったよ。」

とある夜、いつもの部屋で、いつも通りに交わされているように見える、兄妹の会話。

「お兄ちゃん、ごはんは?」
「ん、食べてきた。」
「そ、そう。じゃあ私、お風呂先に入っちゃっていいかな…?」
「あぁ、いいぞ。」

気まずい雰囲気になってしまう前に、遼子はその場を離れた。

「はぁ…」

暖かい湯に身を沈めると、強張っていた身体から力が抜けため息が零れる。

「いつも通りのお兄ちゃん…だよね…」

遼子はそっと自分の肩を抱き、肩から肘に手を滑らせる。

遼子の脳裏には、一週間前の出来事がよみがえる。

兄が、自分のこの身体に触れた記憶。
その兄が与える快楽の波に溺れた自分の痴態。

しかし、次の日の朝、遼子が目覚めた時はきちんと服を着て、自分のベッドで眠っていた。
そしてそこには、前夜の享楽の名残の欠片は一切残されていなかった。
リビングで新聞を読んでいる兄も普段とまったく変わらぬ、いつもの兄だった。

だからそれは酔った自分が見た淫らな夢だと思った。

そう、夢に決まってる。
兄が、自分にあんな事する訳が無い。

そう思って、そのことを忘れるように努めた。
幸いそれから一週間、兄は張り込みや内偵やらで忙しいらしく泊り込みが続き、
帰ってきたとしても遼子とはすれ違いの生活だったため、兄と顔をあわせる機会がないまま
遼子は普段通りの生活を過ごすことができた。

しかし、その間も、遼子の脳裏には、兄の唇の感触、指の動き、耳元で囁く声、
自分を見つめる眼差しが、まるで現実のように何度も鮮明に蘇っていた。

「夢!夢!そう!アレは夢!」

そんな淫靡な記憶をあえて無視して、遼子は意識を切り替えようとする。

と、その時、いきなりバスルームの明かりが落ちて真っ暗になった。

「きゃっ、な、なに??停電?」

遼子は慌てて手探りでバスルームから出ようとしたが、浴槽から立ち上がった途端に
眩暈に襲われた。
どうやら考え事をしていた間に、長く湯につかりすぎてしまったらしい。

「おい、遼子、大丈夫か?」

遼子がバスルームの床にうずくまっていると、バスルームの扉の向こうから懐中電灯の光と共に
洸至の声が響く。

「ブレーカー上げたんだがつかないところをみると、停電みたいだな。…おい、遼子?どうした?」

返事がない事を訝しく思ったらしく、洸至が「入るぞ」と声をかけて、バスルームに足を踏み入れる。

「遼子!おい!しっかりしろ!」

顔を上げることも出来ずに床にうずくまる遼子の姿を見て、洸至は状況を把握したらしく、
一端バスルームを出ると、タオルと水のペットボトルを手に戻ってきた。
そして遼子の身体にバスタオルを羽織らせると、ペットボトルを遼子の口元まで持っていく。

「大丈夫か?ゆっくり飲め」
「ん…」

冷たい水が身体に染み込み、漸く眩暈が引いた遼子は、のろのろと顔をあげる。

「あ…り…がとう…おにい…ちゃん…。もう…だいじょう…ぶ」
「無理にしゃべるな。」
「ごめん…なさい」
「まったく…このままじゃ風邪ひくぞ」

そう言いながら、洸至はもう持っていたもう1枚のバスタオルで、濡れた遼子の身体を拭き始める。

「やっ!やだ…!」
「じっとしてろ。」

遼子は驚いて止めさせようとするが、まだ身体は重く、言うことを聞いてくれない。
兄の手を止めることもできず、そのまま身体を預けていると、少しずつ意識が戻ってくる。

「んっ!」

胸の部分にタオル越しの兄の手を感じ、遼子の身体が思わず反応する。

「どうした?遼子?」
「あ…何でも…な…」

次の瞬間、洸至の手のひらが遼子の胸の蕾に押し当てられる。
胸のふくらみをゆっくりと揉みしだく兄の手は、タオル越しとはいえ、先ほどとは違い
あきらかに遼子の身体に快楽を与えようとしている。

「あんっ!」

一週間前の記憶が蘇り、遼子の口から甘い声が漏れる。

「…感じているのか?」
「!?」

耳元に囁かれた言葉に思わず顔をあげた瞬間、遼子は洸至に唇を奪われる。

反射的に唇を閉じたが、洸至の舌はゆっくりと遼子の唇を舐めあげ、思わず吐息を漏らしたときに
スルリと口内へと侵入してきた。
やわらかくて暖かい舌が歯を丁寧になぞった後、戸惑う遼子の舌を探り出し、絡みつく。
流し込まれる唾液が溢れ、遼子の口元から流れるが、それでも洸至は口付けを止めようとしない。

深い口付けに遼子が意識を奪われている間に、洸至の手は遼子の身体を包んでいたバスタオルを
取り払う。

「んんんっ!!」

遼子は「ダメっ!」と叫ぼうとしたが、唇を絡めとられたままでは、それは言葉にならなかった。
そして今度はタオル越しではなく、直接肌を弄ばれる。
人差し指の腹で胸の蕾を優しく弧を描く様になぞられ、優しく摘みあげられると、
その強い刺激に思わず吐息がもれる。

「もうこんなに固くなってる…」

そう耳元で囁き、洸至の唇は遼子の唇から首筋へと流れた雫の後をなぞると、耳朶へ軽く歯を立てる。

「あっ…やだ…やめて…おにい…ちゃ…」
「素直じゃないな、遼子は…」

露になった遼子の白い胸元から鎖骨までを、洸至の唇と舌がなぞり胸元まで降りてくると、
敏感になった蕾に熱い息が吹きかけられる。
そして洸至は、いきなり遼子の蕾に強く吸い付いた。

「ああぁぁ!」

突然の強い刺激に、遼子は身をよじりながら声をあげる。

「あっ…はぁ…ん…」

一度あがってしまった声はもう止める事はできず、甘い響きとなって暗いバスルームにこだまする。

洸至の唇がたっぷりと片方の蕾を堪能し、反対側の蕾への愛撫を始めた時、遼子のわき腹を弄っていた
洸至の手がゆっくりと肌をすべり、太腿から遼子の足の付け根へとたどり着く。
その場所は、すでに熱い蜜が溢れていた。

「いやっ!そんな…触っちゃ…ダメ…んっ!」

次々に与えられる愛撫に意識を奪われながらも、遼子は何とか抵抗を見せる。

「おにい…ちゃん…お願い…やめ…」

けれど、足の間にはいつのまにか洸至の身体が入り込み、足を閉じることはできない。
洸至の指が、花弁の一枚一枚を確かめるように蠢く。

「いや…やめ…て…ああんっ!」

襞をなぞっていた指先が、ゆっくりと遼子の中に埋め込まれると、
遼子はその刺激に嬌声と共に背をのけぞらす。

「遼子、お前のココ…すごい濡れてるぞ…」
「そんなこと…言わない…で…」
「ほら…俺の指をこんなに締め付けて…離さない」

二本、三本と増やされる指を、蜜を滴らせながら受け入れていく。

「あっ…あああん…おにい…ちゃん…」

顔を出し始めた花芽を、親指で優しく擦り始めた頃には、もう快楽を欲する自分自身を
遼子は止めることが出来なくなっていて、甘い声で兄を呼ぶ。

その時、いきなり眩しい光が遼子の瞳を襲い、遼子は思わずぎゅっと瞳を閉じる。

「あぁ…停電、直ったんだな。」

洸至はそう呟くと、遼子の中を弄っていた指をずるりと抜いた。

「はぁん!」

突然なくなった刺激に遼子の腰が淫らに動き、先ほどまでの愛撫が痺れのように残り、
どうすることもできない疼きを生み出す。
そして遼子の身体の奥から、また新たな蜜が流れ落ちるのを感じる。

「遼子、大丈夫か?」

自分にかけられた声に、ほんの少し前まで自分を翻弄していた甘い響きがなくなっていることに驚き
遼子はゆっくりと瞳を開いた。
その視界に映ったのは、じっと自分を見つめる兄の姿。

風呂場でのぼせた妹を心配する、兄の姿。
いつもの、やさしい、兄の姿。

けれど、その瞳の中に、遼子は欲望を溶かし込んだ男のモノを見つけた。

「立てるか?」

自分を気遣う優しい声と、欲望を滾らせる男の視線。

「それとも…?」

洸至は少し首を傾げてそう問いかけると、自分の手を口元に寄せ、
そこに滴る蜜を遼子に見せ付けるように舐めた。

今まで自分の中をかき回していた兄の指、そしてそこに絡まった自分から溢れた蜜。
それを舌で舐めとる兄の淫靡な仕草に、遼子の身体の心はさらに熱を持っていく。

遼子の様子を見て、口元に笑みを浮かべながら、洸至は遼子へゆっくりと近づいていく。

「このまま…続きをするか?」

耳元に囁かれる、低い、欲望を煽る、男の声。

遼子が自分の中に蠢く欲望を抑えきれず、僅かに頷くと、洸至はゆっくりと遼子を床へと押し倒した。
床の冷たさに、遼子の背中がぴくりと震える。
あらわになった胸を隠そうとした両手は、兄に捕まり頭の上へと縫い付けられてしまった。
そのまま、洸至は動きを止めて、妹をじっと見つめる。

「キレイ…だな…」
「やだ…そんなに…みないで…」

ゆっくりと首筋から胸、胸から腹へと兄の視線が降りていく。

「どうして?本当にキレイだぞ?」

そしてゆっくりと足を左右に割り広げられ、遼子の秘所が、明るい照明の下、兄の目前に晒される。

「ほら、ココも…こんなにきれいじゃないか。」
「いや…」

うっとりと告げるような兄の声に、遼子は恥ずかしさで全身を赤く染めながら身を捩る。
しかし、洸至の視線は、遼子の秘所を捕らえて離さない。

「あん…いやぁ…」

直接触られている訳でもないのに、兄の視線と、吐息を感じて、遼子からは吐息が零れる。
そして蜜壷からはふたたび熱い蜜がとろけだす。

「こんなに濡らして…そんなに欲しいのか?」

兄に視姦され、言葉でも責められ、遼子の腰が淫らに揺れる。

「お願い…いじわる…しないで…」

涙をこぼして哀願する遼子を愛しげに見つめた洸至は、目尻の涙を唇で吸い取り、優しい口付けを落とす。
そして、遼子の足の間に身体をずらすと、花弁を舐め上げる。

「ひゃっ!」

いきなりの刺激に逃げ出そうとする遼子の腰を押さえつけて、あふれ出す蜜を喉の奥へと流し込み、
さらに舌を蠢かす。

「はぁ…ん!…あぁっ!」

先ほどまで指で弄ばれていた花芽はもうすでに膨らみ、愛撫をねだるかのように存在を主張していた。
それに熱い舌が唾液を絡ませ、舌先で軽くつついたかと思うと、また唇で優しく包み込む。

「やぁっ!!!」
「…気持ちいいか?」

遼子の唇から絶え間なく嬌声が漏れ始めると、洸至は目を細めながらそう問いかける。

「気持ちいいか?遼子」

洸至が言葉を発するたび、その熱い吐息が花芽にかかる。

「あぁ!いいっ!気持ち…いい…のぉ!」
「漸く素直になったな。じゃあ、ご褒美だ。」

そう言うと、洸至は舌を花芯の奥へをねじ込み、熱く蠢く襞を直接刺激し始める。

「ああぁ!」

遼子の足が震えだし、その時が近いことを告げる。
それを見た洸至は、最後の仕上げとばかりに花芽に強く吸い付き、軽く歯を立てた。

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

その瞬間、遼子の意識が弾け、頭は真っ白に染められた。

しかし、洸至の舌は、遼子から溢れる蜜をまだ貪りつづけていた。

「あぁ…いやぁ…」

休む間もなく与えられる刺激は、達したばかりの身体には強すぎるのか、遼子は身体を震わし身悶える。

しばらく遼子を貪っていた洸至は身体を起こすと、ベルトをはずし、ズボンのジッパーを下げる。
そしてズボンの中ではちきれんばかりになっていた自身を取り出すと、遼子に囁いた。

「遼子、俺も気持ちよくしてくれるか?」
「…ん…」

妹の熱に潤んだ瞳を見下ろしながら、洸至は遼子の脚を抱えあげると、
熱く脈打つ自身を遼子の中に埋めた。

「あぁっ!あっ!」

内壁を擦りながら埋め込まれる楔に、遼子の中が熱く絡みつく。

「遼子…お前の中、すごく気持ち良いぞ。」
「ああんっ!」

洸至は根元まで埋め込むと、ゆっくりと動き始める。
ぐちゅぐちゅと二人をつなぐ淫らな音が、遼子の喘ぐ声に混じってバスルームに響く。

「やっ!あん!」

遼子が兄の背中に腕をまわしてしがみつく。
洸至は遼子のすべてを感じようと、激しく腰を動かした。

「あっ!ああん!も…う…やんっ!ああ…っ!」

洸至が激しく遼子の最奥を突き上げると、遼子が締め付けた。

「くっ!」

たまらず、洸至が欲望を遼子の中へとぶちまけるのと、高く、長く響いた遼子の声が途切れ、
その身体が糸の切れた操り人形のように投げ出されたのは同時だった。
そして、放出を終えた洸至は遼子の上へと覆いかぶさった。

バスルームには、快楽に溺れた乱れた呼吸が響いていが、荒々しい呼吸が漸く収まり始めると、
洸至は改めて自分の下にある妹の姿に目を留めた。
透き通るような肌や、自分とまだ繋がったまま、蜜と白濁した自分のものを溢れ出す秘所を
あらわにした姿は、とても淫らで美しかった。
ゆっくりと自身を引き抜くと、その感触に遼子の身体がぴくりと反応したが、
その瞳は閉じられたままだった。

「遼子…」

その名を囁く。

「遼子…遼子…」

気を失っている妹の身体をそっと抱きしめ、頬をすり合わせる。

一週間前、酔って雌の芳香を漂わせて帰ってきた妹を無理やり抱いた。
ずっと思い続けていた自分のこの思い。
それをあの日、抑えきれなくなった。

こんな風に、瞳を潤ませるなんて。
こんな風に、甘い啼き声を上げるなんて。

一度堰を切って流れ出した欲望は、とどまる事を知らなかった。

何もかも、全部を知り尽くしたい。
そして、自分のモノにしてしまいたい。

そして何よりも欲しかったのは、身体でも快楽でもなく、ただ、自分を切望する
彼女の声だったのだろうか。

たった一度のはずだったその行為。
遼子の記憶が酔ってあやふやだった事をいい事に、何も無かったように装った。
そして遼子も、自分と兄の間に起きた事柄を、夢だと思い込んだようだった。

それで、終わるはずだった。

けれど。
あの時の、あの遼子の声は、ふとした瞬間に蘇り、洸至を追い詰めていった。
一度知ってしまった甘さを、忘れることが出来なかった。
そして、もう一度欲しいと思う気持ちを。

遼子によって苛まれる心は、遼子にしか癒せない。

また人として犯してはならない罪を重ねることになろうとも、もう手放すことは出来なかった。

洸至は自分のシャツを脱ぐと、まだ気を失ったままの妹の肩へとそっと着せる。
そして優しく抱き上げると、そっとその唇に自らの唇を重ねる。

「愛してる…」

こんな最低な方法で遼子を手に入れ、それを浅ましくも繰り返す自分は拒絶されて当然だろう。

「それでも…離さないからな?」

目覚めたら、いつも通り。
今日も、またお前がみた悪夢だ。






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