774号室の客
鷹藤俊一×鳴海遼子


長かった夏が終わり、秋が駆け抜け一足とびに冬が来ようとしていた。
その木枯らしの吹く中を遼子と鷹藤が並んで歩いている。
取材を終え、鷹藤お気に入りのラーメン屋で夕食を済ませた後の帰り道だった。
会社帰りの二人が辿るいつも通りのデートコースだ。

だが、ただ一つ違う点がある。
寒そうに首をすくめ歩く鷹藤は、いつもと違い黒のスーツを着ていた。

大物芸能人の結婚会見というどうでもいい取材だったが、華やかさを演出しようということか、記者会見
に出席する報道関係者にもドレスコードを設定しそれに準じないと入場させないとのことだった。
そう言う訳で、鷹藤も何年かぶりにスーツの袖に手を通したのだ。
そして四苦八苦しながらなんとかネクタイを締め出勤した。

スーツになると普段のラフな格好の時より色黒で精悍な風貌と、細身で引き締まった体型が際立ち、雑誌
カメラマンと言うよりはモデルと言っても通用しそうだった。
実際、アンタッチャブル編集部にこの姿で出勤した時、里香は素直に感嘆と称賛を、美鈴は冷ややかな視線の
奥にある驚きを隠さなかった。

その鷹藤の姿を、こちらもスーツ姿の遼子がチラチラと見ていた。

遼子がめかしこむときは、いつもあの白のレースがついたどう見ても流行遅れのドレスだった。
しかし、結婚会見の取材に白はNGだろうということで、取材当日に遼子は急遽美鈴に見立てもらったスーツに変更となった。
美鈴の見立てはさすがというか見事というか、スーツのシックな色は引き締めつつも躰のラインの
優美さを印象付け、程良い丈のスカートは脚の長さを際立たせていた。
それに合わせて髪を夜会巻きにセットしたので、肌理の細かさと肌の白さが殊更に強調され、
うなじには艶めかしさすら漂っていた。

「なんだよ、人のことジロジロ見て」
「そんな風に観てないわよ。べ、別に鷹藤くんなんかに見惚れてなんかいないんだから」

その言葉に鷹藤の足が止まる。
遼子は足を止めることもなくスタスタと歩み続けているが、後ろからでも遼子の耳から首筋が真っ赤に
なっているのが見えていた。

「へえ…俺に見惚れてたんだ」

隣に鷹藤がいないことに気付いて、遼子が歩みを止め振り返ると、スーツ姿の鷹藤が小首を傾げて遼子を
見ていた。
その鷹藤の姿を見て、誰と重ね合わせたのか一瞬遼子が戸惑ったように見えた。

「あんたはあれか、スーツ着て、ちゃんとした格好した男に弱いんだ。…あんたの兄さんもそうだったな」

その鷹藤の声で意識を引き戻されたのか、顔を赤らめながら遼子が言った。

「そ、そんなことないわよ」
「そういや遠山さんも、高そうなスーツ着てたしな」
「何よ、やきもち妬いてるの?男の嫉妬は見苦しいわよ」
「俺は別に気にしてないけど。ねえ、スーツ着てる男が好きってことはさあ…」

鷹藤が遼子の元へ早足でやってきた。そして遼子の耳元で囁く。

「どうやって脱がせるか考えたりしたんじゃねえの」

「た、鷹藤くんじゃないんだから、そんなこと考えたりしないわよ。鷹藤くんこそ、ちょっといい女を
見たら、この女の服をどうやって脱がせるかとか考えてるんでしょ。いやらしいんだから」
「そりゃ考えるよ」

鷹藤があっさりと認める。

「スーツ姿のあんたもいいよ。それも髪をこうしてアップにしてると、うなじがきれいに見えて…。
逆にいやらしく見えるかもな」

遼子の首筋を指で愛おしげに辿る。

「そんな冷たい手で…」

恥じらいつつ、身をすくめた遼子に目を細め、鷹藤がネクタイを緩める。

「そういや、こういう恰好してるあんたも初めてだし…。都合のいい事に」

鷹藤が言葉を切って、視線を横に送った。
遼子もその方向を観る。
駅前の繁華街からひとつそれた路地裏に、ライトアップされた建物があった。入り口横の「空室」ランプに
灯りがともっている。

「ラ、ラブホテル…ってまさか」

遼子が上目遣いに鷹藤の眼を見る。
鷹藤が微笑んで遼子の眼を覗きこむ。と、遼子の腕を取った。

「いいじゃん。俺らラブホ行ったことないもんな。それに明日は休みだし」
「ちょ、ちょっと鷹藤くん〜!!」

そして遼子は鷹藤に引きずられるようにしてラブホテルの門をくぐった。


「お風呂おっきいのねえ〜!すごく広いわよ〜」

入るときには嫌がったそぶりを見せてはいたが、部屋に入った途端、初めての経験に生来の好奇心
旺盛な部分が刺激されたのか、遼子は延々部屋の探検を続けていた。

「鷹藤くん、お風呂一緒に…」

鷹藤の方へ遼子が目を向けると、スーツ姿のまま、鷹藤がベッドに腰掛け不貞腐れたような顔をして
遼子を見ていた。

「あれ?どうかした?」
「入って30分も探検する程の部屋かよ」
「だって、ラブホテルって初めてだし、いろんなボタンあるし、TVも大きいし…」
「子供じゃあるまいし。ま、初めてだからしょうがないか。でもさ、カラオケとかいろんなもの
あるけど、ここに入ったらみんなアレしかしないんだぜ」
「あ、アレね」

遼子があっさりと聞き流す。
今度はソファーに座り、カラオケのリモコンを手に遼子が遊びはじめた。

「あんた、わかってやってるだろ…」

ベッドから鷹藤がゆらりと立ち上がると、遼子の後ろから覆いかぶさるようにして抱きしめた。

「た、鷹藤くん…」
「ねえあんた、年下の男焦らして遊んでるの?」
「違うわよ…」

鷹藤が遼子の耳たぶに息がかかる程近くで囁く。

「別に初めてじゃないだろ、…こんなところで何されるかと思うと怖いの?」
「怖くなんて…」
「それとも、どんなことされるかと思って期待してるの?」
「…違うってば」
「ふぅん」

鷹藤が意地悪く微笑んだ。

「今ちょっと間があったけど…。怖さよりも期待の方が大きいんだ」

遼子の耳が紅に染まる。その耳を鷹藤が舐めあげる。

「ひゃっ」
「じゃあ、期待にこたえてやらないとな」

「待ってよ、お風呂…、そうよせっかく大きなお風呂のあるところに来たんだから、先に
お風呂に入らないと」
「今日は風呂いらないだろ。このまましようぜ」
「だって…」
「せっかくのスーツなんだ、脱がせる楽しみってやつもあるだろ?」

鷹腑の腕の中で遼子が振り返り、恥ずかしそうに鷹藤を見つめた。

「このまま?」
「嫌か?」

遼子は無言だが、鷹藤を見つめる視線は何かを求めるかのような熱を持っていた。
鷹藤はそれを了承と受け取り、遼子に口づけた。
軽く口づけただけですぐに深いものに変わっていく。
ソファーの上で、舌を絡ませながら、鷹藤がジャケットを脱ぎ捨て、遼子のジャケットも脱がせにかかる。
遼子の舌がいつもより激しく鷹藤を求めていた。その脚が鷹藤の腰に蔦のように絡みつく。

「あんた、このシチュエーションに興奮してんのか」
「そんなことないってば…あっ」

首筋に唇を落としつつ、鷹藤が遼子のスカートの下に手を這わせる。
ストッキングを履いた光沢のある脚を下から上へじっとりと撫で上げた。
遼子の息が期待で上がっていく。

鷹藤が体を起すと遼子の膝に手を置き、太ももをゆっくりと開かせる。

「色、変わってるんだけど」

黒のタイトスカートを着たまま脚を開かされた相棒の淫らな眺めに、ほくそ笑みながら鷹藤が言った。

「だって」
「下着越しでも匂うくらい濡れてるんだぜ」

言葉を使う職業のせいで言葉に対して敏感なのか、それとももともとの性質なのか、遼子は言葉で
責められることに殊のほか弱かった。
今の一言で触られた訳でもないのに、遼子の腰がぶるっと震えた。
鷹藤がそこに顔を近づける。
女の匂いが濃厚になる。
そこから漂う熱が、鼻先に感じられるほど近くまで顔を寄せると、鷹藤はそこで止まった。

「鷹藤くん…?」
「どうしてほしい?教えてくれよ。そうしたらしてやるから」
「やだ…」
「じゃ、一晩このままがいいのか」

しばらく遼子は無言だった。だが、鷹藤の熱を脚と脚の間に感じながら、ただ見つめられるだけの状況
に遼子の腰がじれったさそうに微かに動き始めた。

「して…」

喘ぐようにして遼子が言った。

「どうやって。指?それとも」
「指じゃない方…」

遼子は気付いていないかもしれないが、下着の股の部分の染みがさっきより大きくなっている。
その様子を見て、興奮しつつも、鷹藤は平静を装った声で言った。

「わかんないなあ。俺に教えてくれよ」
「いつもしてくれるじゃない…意地悪しないで…お願い」
「あんたの口からそれを聞きたいんだって」

遼子の喉が震えた。それから微かな声で言った。

「…舐めて…」

「どこまでスケベなんだよ、あんたは」

そう言うと、鷹藤はストッキングの股の部分に指をかけた。そこをつまんで少し穴をあけると、
そこから指を入れ、左右に大きく引き裂いた。

「いやあ、やだ、鷹藤くん、やめて…!」
「これがあると舐められないんだ。仕方がないだろ」

股の部分だけが大きく引き裂かれたストッキングの切れ間から、中心部分が変色して湿り気を帯びた
白の下着が見えていた。
下着の上から舌をそこに充てる。
たっぷりと蜜を含んだ布からも、遼子の味がした。

「あんっ…」

嫌がっていたはずの遼子から甘い息が漏れる。
しばらく下着越しに舐めた後、股ぐらの部分をずらして、遼子のそこに舌を入れた。

「ひゃぁんっ…ああっ」

待ちかねた刺激に、遼子が小さな悲鳴を上げた。
派手な水音を立てながら、そこから溢れる蜜を啜り、ついでにクリトリスも啜りあげる。
そこに吸いつきながら、鷹藤は指を出し入れし始めた。

「ああああっん…」

叩きつける指の股にまでしみこむ程の蜜を溢れさせながら、遼子は乱れ啼く。
湿った音が二人の耳を打つ。破廉恥な音が部屋に響き、それと共に遼子の鼻からも甘い声が漏れ続ける。

「ほんっと、やらしいよな」

遼子の中を指でかき乱しながら顔を上げ、相方の姿を見た鷹藤が眼を細める。

「やん…あっ…だって…」

上目遣いで遼子が鷹藤を見た。
遼子を挑発するように鷹藤が微笑む。

「欲しい?」

遼子の喉が鳴る。

「じゃ、自分でやって見せろよ。あんたも、スーツ姿の男とやりたいんだろ?」

遼子を挑発し続けている鷹藤も、いつもと違うシチュエーションに興奮し、痛い程張りつめている。
それを顔には出さずに、言葉で遼子を煽り続ける。
鷹藤がソファーに座る。
熱に浮かされたように遼子が鷹藤のベルトに手をかけ、チャックを降ろすと鷹藤自身をそこから出した。
遼子のスカートかあら光沢のあるシフォン生地のブラウスの裾がはみ出て、そこからのぞく白い肌が
鷹藤を誘う。
その下に手を入れ、ブラジャーのホックを片手で外すと、遼子の胸を揉み始めた。

「ん…。ふっ…」

胸を揉まれ、眉根を寄せながら遼子が鷹藤の腰に顔を寄せる。唇は半開きで、遼子の興奮を伝えるように荒い吐息がそこから漏れる。
熱い吐息が鷹藤自身に近づくと、遼子の口がそれを包む。

「…っ」

いきなり根元まで口に含むと、鷹藤自身を舌とすぼめた唇で扱きあげる。
鷹藤の背をむずがゆいような快感が駈け上がる。
どうしたら鷹藤を心地よくできるか、などという考えは遼子にはないらしい。
ただ、眼の前のものを口内で嬲りたいという本能だけでそれを咥えていた。

「んっ、んんっんんっ」

首を振り咥え扱きあげながら、遼子腰も揺れている。鷹藤が股ぐらに指を伸ばす。
器用に下着の股の部分を避けると、亀裂に指を入れた。

「んんんっ」

咥えながら、遼子の喉が震えた。それでも鷹藤を離すことなく、舌と唇で裏筋を嘗めている。
指を2本に増やす。湿り気のある音を立てながら遼子のそこをいじくる。

「んふっ」

鷹藤に追い込まれながらも、遼子も淫らに鷹藤自身に吸いついていく。
遼子の舌の刺激に思わずため息が漏れた。最初は咥えるだけで精いっぱいだった相棒は、今は咥えるたびに
鷹藤を射精直前まで追い込む。

…このままだと挿れる前に出してしまう。

「もう、いいから…」

掠れる声で遼子に囁く。

蕩け切った遼子の眼が咥えながら鷹藤を見た。
遼子のまるで熱病に浮かされたような眼。情欲に支配されつくした雌の表情。
その表情で鷹藤はあやうく射精しかけた。

―――まったく。犯罪だよその眼は。

遼子の顎に手を添えると、ゆっくりと鷹藤自身から引き離す。遼子の唾液が名残惜しそうに鷹藤自身と
己の唇の間に光る橋を作った。
遼子を立たせると、鷹藤はソファーの向いにある猫足のドレッサーへ促す。
よろめきながらそこに辿りついた遼子の手を天板につかせ、腰を突きだすようにして立たせる。
遼子の紅潮した顔が鏡に映る。

「やったことのないやりかたでやろうぜ」

遼子の耳元で鷹藤が囁いた。

「だめ、そんなの…恥ずかしいよ…鷹藤くん」

だが蕩け切った遼子の瞳には期待が籠る。

尻を突き出した遼子のストッキングと下着を一気におろし、外気に晒す。
亀裂から垂れた蜜が糸を引いて輝いた。
鷹藤も遼子の唾液に塗れ、部屋の灯りを受けてぬらぬらと光る鷹藤自身を、一気に遼子に沈めた。

「ああんっ」

快楽から下を向いた遼子の顎に手をやり、鏡へと顔を向ける。

「ほら、挿れられて喜んでるあんたの顔、ちゃんと見ろって。すげえ顔してるよ」
「いやっ」
「後ろから突きたてられて、口開けてよがってるんだぜ」

せっかく夜会巻きにした髪もほつれ、おくれ毛がうなじにかかる。半開きの唇からは途切れない喘ぎ声。
その声と、喘ぎ紅潮する遼子の顔がまた鷹藤を煽った。

「やんっ、あっ、あっ」

取材用にシックなスーツに身を包んだ二人が、躰を打ちつけ合う。
アダルトビデオもかくやという刺激的な光景が、二人の視覚を刺す。

「んんっ、奥に…」

眉根を寄せ、切なげに快楽に耐える相棒の顔は鏡越しに見ると更に淫らさを増していた。
後ろから立ったまま鷹藤に貫かれ、揺れる自分の像を遼子もチラチラと見ていた。

「鏡で自分がやられところ見てるんだ。どれだけいやらしいんだよ、あんたは」
「やめて。そんなこと…あ、ああ、そんなにいじわる言わないで…」

遼子の膝が震える。鷹藤自身に掻き回されながら鏡越しに見る己の痴態のせいで酷く興奮し、いつも
より早く達しようとしていた。
腰を打ちつけながら、ふたりはずるずると床へへたりこんでいった。

「あ…」

床に倒れ込んだ遼子から引き抜くと、今度は正常位になってまた重なった。

「きゃああんっ」
「あんたがさ、かわいいから、ついいじめちまった」
「あ、あ、鷹藤くん、あああ」
「あんたが嫌いだったらこんな風なことできねえって」
「や、いやあ、いきそう、あああっ」
「あんたが好きだから」

鷹藤が遼子と唇を重ねる。
悦楽の中、鷹藤にしがみつくように遼子の腕が鷹藤の首に廻される。

「んっ、いくっ…いっちゃう」
「いけって、一緒にいってやるから」
「きゃ、ああっ」

鷹藤の背が震え、腰が何度か痙攣した。
そして遼子も足を震わせながら、鷹藤のものを全て受け止めていた。

「この季節にストッキングなしで変える羽目になったじゃない」

風呂上がりの躰をバスローブに包んだ遼子が鷹藤の前に仁王立ちになり怒っていた。

「大丈夫だって。ほら」

鷹藤がストッキングを差し出した。

「鷹藤くん、どうしたのこれ?」
「今のホテルには置いてあるんだよ。フロントに頼めば持ってきてくれる。あんたが風呂
入ってる間に頼んでおいたんだ」
「そうなの。ありがとう」

「あと、これも頼んでおいたんだ」
「セーラー服に看護婦の制服…?」

ソファーの上に置いてある制服を眼にして、怪訝そうに遼子は恋人を見た。

「今のホテルにはこういうのも置いてあるんだよ。これも頼んで持ってきてもらったんだ」

胸元がはだけたYシャツ姿の鷹藤に微笑まれ、遼子の頬が思わず紅く染まる。

「ま、まさか着ろなんて言わないよね」
「せっかくラブホ来たんだから楽しもうぜ」
「疲れたから寝ようかな〜」

ベッドに潜り込もうとした遼子の手を鷹藤が掴む。

「きっと楽しいから」

鷹藤がまたも微笑む。

「そ、そうかしら」
「そうだって」

柔らかなその表情にほだされて、遼子は結局セーラー服に手を伸ばしていた。


「774号室の客のことなんですが」

男は胸元から警察手帳を取り出し自分の写真の部分をホテルのフロント係に見せて言った。

「何かの捜査ですか?」
「捜査の性質上あまりはっきりとは言えないんですがね。差し支えなければ、あの部屋の客が何をオーダー
したか教えていただけますか」

いかつい風貌に上背のある黒いスーツ姿の男が、フロント内にいた。

警察手帳も本物のようだし、何より男から漂う威圧感がこの男が官憲の側の人間であることを告げていた。
シティホテルであれば個人情報保護法やプライバシーの問題から令状のない捜査への協力はしないが、
ここはラブホテルだし、客の住所氏名など個人情報は何もない。
オーダー内容の確認だけならさしたる問題はなさそうだった。
フロント係が部屋番号を入力するとモニターにオーダー内容が表示された。

「ああ、ストッキング一点だけお買い上げですね」
「ストッキング?」
「伝線でもしたんでしょうね。結構買われるお客さん多いんですよ。あとコスプレ衣裳2点貸出ですね」
「コスプレ?」

男の眉間に深い皺が刻まれた。

「2点までなら無料なので、利用されるお客様が多いサービスでして」
「で、その衣装は」
「セーラー服と…ナース服ですね」
「セーラー服…」

男は頭痛でもするのか額をおさえ、親指でこめかみを揉みほぐしていた。

「なるほど、ね…。ご協力ありがとうございました」

礼を言って男は出て行った。フロント係は男の背中を見送った。
その背中が何故か妙にくすんで見えた。

部屋でのオーダー内容が必要になる捜査…。麻薬か売春か。
そんな風に見えない二人だったが。
人は見かけによらないのは、この仕事をしていれば厭というほど目にしている。
またどこかの部屋からオーダーが入ると、フロント係の頭から774号の客のことなど消えていた。






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