番外編
「最近お前出てないから、顔出してこいって編集長に言われたんだけど、何のこと?」 「さあ?鷹藤君、それよりこれ見て!中原さんが入手した名無しの権兵衛が作らせたって 噂のあるAVなのよ。タイトルは『俺の妹は暴発寸前』」 「なんだそのタイトル」 「潰れかかっているAVプロダクションに、自分好みのAVを作らせたらしいの。 べ、べつに私がAVをほとんど見たことが無いから、いいチャンスだと思って見てる訳 じゃないんだからね。怪しい品だけど、もしそうなら、人物像のヒントになるかも しれないでしょ。当たってみる価値はあると思わない?でも鷹藤君みたいに、 飢えてる人には刺激が強いかしら」 「別に飢えてねえし。…なんだか普通のAVだなあ。SMとかじゃないし。 名無しの権兵衛っていうと、もっとすごいの考えそうだけど」 「普通なの?これってそうなの?私アダルトビデオあまり見たことないから…。 …いつも見てるんだ」 「いつも見てる訳じゃねえって。俺だってそんなに見る方じゃないから。 でも、男だったらさ、見るだろ、普通。遠山さんだってさ、あんたの兄さんだってさ」 「史郎ちゃんや、お兄ちゃんは見ないわよ!」 「ま、いいや。見なかったら見ないで逆に変だけど。取材だと思って、あんたも見ろよ。 俺もそうするから」 「み、見てるわよ。きゃっ。口でこんなことするの…」 「でもこのAV、ちょっと設定が変かな」 「そうよね、この女の人、相手のこと『お兄ちゃん』なんて呼んでいるものね。えっ!立ったままで」 「あんた、熱心に見すぎだって。これ、ジャンルは兄妹ものか。近親相姦って気持ち悪いな」 「熱心って、失礼ね。嫁入り前の可憐な乙女が取材のために頑張って見てるのよ! 個人的好奇心からじゃないわよ。それにしても、ジャンルとか詳しいじゃない」 「乙女って…。まあいいや。これくらい、男だったら誰でも…。あれ。この女優見たことがある気が」 「やっぱり普段から見まくっているから、女優の名前まで知ってるんだ」 「いや、そういう意味じゃなくって。…誰かに似ているんだ」 「わかった、高校の同級生とか」 「違うって。長い黒髪、切れ長の二重で大きな黒目、色白…。 この女優、俺の知ってる誰かより顎のあたりが長くて、目が小さいんだ。 だからわからなかったんだ。えーと、誰だ。この顔」 「だ、誰なの。手がかりなるかもしれないの!頑張って!」 「…」 「なんで黙るのよ。どうしてこっちを見るのよ」 「…」 「…鷹藤君、顔色悪いわよ。…どうして頭抱えてるの。ねえ、ねえってば」 SS一覧に戻る メインページに戻る |