無声
シチュエーション


やかましい女は好きではない。
実際、おとなしそうな女を襲って強姦しようとしたときも、顔に似合わない凄まじい悲鳴をあげられたのですぐに逃げ帰ってしまった。
おとなしそうな子なら、恐怖で声も発しないであろうとタカをくくっていたのが間違いだった。
俺は女の声、あの高いキーを持った声が嫌いなのだ。なんとも耳障りである。大声などもってのほかだ。
しかし、女体というものは大好きだ。

「まったく、女は黙っていれば最高なのに・・・」

近くに止めていた車に乗りこみ、覆面を外しながらその言葉を呟いた俺は良い案を思いついた。

(女を眠らせてしまえばいいのだ・・・)

眠っている女ならば声を発しない。なぜこんな簡単なことに気付かなかったのだろう。
そこで俺は、犯している最中でも女が声を出さないよう、次に狙う女はその意識を奪うことにした。

ターゲットはすぐに決まった。
というのも、俺のバイト仲間の女子大生だからだ。名前は理穂という。
顔見知りを襲うのは避けていたが、意識を奪っている間にコトを済ますのだから問題ないであろう。
彼女はとびっきりの美人であり性格も良い方だ。それゆえ当然バイトの男連中から人気がある。
それでも、男に甘えたりする様子は全くなく、明るくて気さくな性格なので女たちからの評判も悪くないようだ。
だが、正直俺は彼女があまり好きではない。
社交的でありおしゃべり好きな彼女は、当然のごとく俺にも話かけてくる。

「背高いですよねぇ、バスケ部とかに入っていらっしゃったんですか」
「この時間帯はあまりお客さんが来ないから、少し楽ができていいですよね」
「私、夏休みに友達と京都に行くんですが、何かお土産を買ってきてもよろしいでしょうか」

などといったどうでもいいことを、女特有の高い声で俺に話してくる。時には笑い声を交えてだ。なんと耳障りなことか。
しかし、理穂の容姿、とりわけその体はグラマラスで素晴らしいものである。
大抵の男なら抱きたいと思うはずだ。俺も例外ではない。

(どうせ眠らせるのだから理穂のやかましい性格など考慮せずにいいだろう・・・)

そう思った俺は、理穂をターゲットに決めたのだ。

俺はバイト帰りの理穂を襲うことにした。辺りは真っ暗な時間であるから都合がいい。
シフトが同じ日は、方向が一緒のため何度か理穂をバイト先から彼女の家まで送ったことがある。
だから帰宅ルートは分かっている。「いい人」を演じ続けていたことが功を奏したわけだ。
襲う場所は途中にある公園にした。人気のない夜の公園をいつも彼女は通るので、俺はそこで覆面をかぶり待ち伏せていた。
ポケットの中には、裏ルートで入手したクロロホルムを染みこませたハンカチがある。
調べたところ、クロロホルムというやつは何分か嗅がせなければいけないようだ。
即効性のあるスタンガンにしようか迷ったが、理穂の肉体に傷は付けたくないのでこっちにした。

数十分くらい経って、理穂が歩いてきた。
それにしても一人で夜道を歩くなんて、まるで危機感がないらしい。
俺は物陰に隠れ、彼女が通り過ぎるのを待った。
理穂が俺の隠れている場所を通り過ぎ後、俺は背後から忍び寄った。
そして、左腕で理穂の腹を押さえ、手にしていたハンカチで彼女の鼻と口を覆った。

「んぐっ!?んぅぅぅーーっ」

理穂のくぐもった声が聞こえた。くぐもっている分マシとはいえ、やはり女の声は慣れない。

「んぅぅ、うぐっーーっ、んーー」

思いのほか理穂は抵抗してくる。今も両腕で俺の右腕を引き離そうと必死になっている。
そこで、俺は腹を押さえていた左腕を離し、もっと上の方に持ってきて理穂の両腕を何とか押さえ込もうとした。

「むぅ、んっーーー、ふぐぅぅぅ」

俺は男の中でも体格的に恵まれている方なので、難なく理穂の抵抗を防ぐことができた。
彼女の両腕は、俺の左腕一本で押さえ込まれている。

「ほむぅぅーー、んぅぅ、ふぅぅーーーっ」

腕を封じられた理穂は、それでも何とかハンカチを振りほどこうと、激しく首を揺らしている。
俺もさらに力を込めた。

「むぐぅ、うぐぅぅぅ・・・・ふぅぅぅ・・・・」

ようやくクスリが効いてきたのか、理穂の抵抗は弱まり、くぐもり声もおさまってきた。
そこで俺は、理穂の胸の上で留めている左腕を少し下の方にずらし、彼女の豊満な乳房を服の上から揉んでみた。
実にいい感触がした。こんなに揉んで気持ちのいい胸ははじめてかもしれない。

(早く自宅に連れ帰って、直にこの体を堪能したいものだ。)

もう理穂を手に入れたかのように思っていた。
だがその瞬間、

「んんーーーーーーーっ!!んぅーーーっ!!」

という凄まじいまでのくぐもり声が聞こえた。
貞操の危機を感じたのか、理穂は最後の力を振り絞ってクロロホルムから逃れようとしているみたいだった。
俺は予期せぬ出来事に焦ってしまった。
獲物をここで逃すわけにはいくまいと、鼻と口を押さえる力を大きくした。

「んーっ、むぅぅぅ、うぐ、ゴホゴホッ・・」

理穂はくぐもり声と一緒に咳き込むまでになった。クロロホルムの強烈な匂いにやられてきたのだろう。

(だとしたら、もう一息だ。)

そう確信した俺は、理穂にクロロホルムを嗅がせ続けた。無論もう胸を触るようなことはしなかった。

「ゴホッ・・・んうぅぅ・・・ふぅぅ・・・・」

割とすぐに抵抗する力も声も弱まってきた。最後に振り絞った力もそう大したことはなかったようだ。

「んむぅ・・・むぅ・・ん・・・」

理穂の頭が俺の胸にもたれかかってきた。
顔を覗き込んでみると、目はしっかり閉じられている。目には若干涙があった。それにしても綺麗な寝顔だ。

俺はついに理穂を眠らすことに成功した。

(これで、女の声に悩まされることなく女を犯すことができる)

細心の注意を払いながら、俺は理穂を車まで運び、エンジンをかけ自宅へと向かった。






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