お皿
シチュエーション


私、以前、さる御旗本に奉公してたんですよ。
どこの御家かって?それは勘弁してください。一応守秘義務とかありますから。
それでまあ、そこの旦那様とデキちゃいましてねぇ。奥方様の目を盗んでは色々とお情けを
頂いておりました。よくある話です。

あれはいつ頃だったでしょうか……奥方様がお友達の皆様と歌舞伎見物にお出かけになっ
た時だったと思います。
私が蔵の掃除をしておりましたら、いつものように旦那様がお出でになられまして。
高価な掛け軸や家宝のお皿なんかもありますから、蔵の中は堪忍していただきたいのです
けど、旦那様ったら「その方が緊張感があって良いであろう」とかおっしゃいまして。
首筋に舌を這わせながら、胸に手を入れてこられましたので、私も持っていたハタキを思わ
ず取り落としてしまいました。乳首を、こう、キュンって抓られましてね。それだけで体の奥に
火が点いてしまったんです。
何しろ、その頃は奥方様も薄々感づいていらっしゃったみたいでして、なかなか逢引きの出
来ない日が続いていたんですよ。
帯を緩めましたら、旦那様は私の襟元を大きく開かれましてね。両方の乳房を、こう、捻るよ
うに揉みしだき始めました。
私は全身が痺れて息も絶え絶えな有様です。腰も勝手にくねり始めちゃって、声を漏らさな
いようにしていた積もりでしたけど、何処まで上手くいっていたことやら……。
そのうち旦那様の片手が乳房から離れましたので、ああ股の方を触っていただけるんだなと
思いまして、着物の裾を大きく捲り上げました。
そうしたら、そこはもう水浸しで、指を差し入れた旦那様が「これなら直ぐにでも出来るであろ
う」とおっしゃる程でございました。
私も、もう我慢が難しく思っておりましたので、旦那様の言われるままに裾を絡げて四つん這
いに……はい、そのまま尻を上げて旦那様のお情けをおねだりいたしました。そうしたら直ぐに
差し込んでいただけまして、余りの気持ち良さに気が遠くなりかけました。
それから旦那様に何度か突かれていた、その時でございましたね。奥方様が蔵にお出でにな
られまして。ええ、正に抜き差しならないって奴でした。
今考えますと、お出かけそのものが罠だったのでしょうね。「この泥棒猫」って金切り声を上げ
られまして。側の棚から色んな物を投げてこられました。
私も普段でしたら避けるなり出来たと思うんですけど、あの時は旦那様に四つん這いで貫かれ
た姿勢でしたし、頭もぼうっとして満足に動けませんでした。
それで奥方様の投げられた、10枚組のお皿を収めた桐箱の角が額に当たりまして。打ち所が
悪かったんでしょうね。気を遣る前に逝ってしまいました。

私が急に動かなくなりましたので、旦那様も奥方様も我に返られた様子でした。お二人で私をど
うするか話し合われてましたね。
結局私の死体と凶器になってしまった桐箱を中身ごと使われなくなっていた裏庭の井戸に放り
込みまして、私は「家宝の皿を割ったので怖くて逃げ出した」って事にされました。実際には、高
価なお皿ではありましたけど、家宝と言うほどの物ではありませんでしたけど。

それから御家の方は段々傾き始めまして……そうなりますと私の噂に尾鰭が付いて広まるのも
早うございました。結局御家はお取り潰しにこそなりませんでしたけど、禄高は減らされて衰退し
ていったそうでございます。

え?何で9枚かって?
実はあのお皿、奉公に上がりたての頃に1枚割っちゃってたんですよ、私が。誰にも気付かれて
なかったつもりだったんですけどねぇ。

ええと、何枚まで数えてましたっけ?






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