ある少女たちの噂話 奇声
シチュエーション


「今のは、隙間男っていう有名な怪談よね・・・・・・恐ろしいわ。やっぱり霊はいるのよ!
あたしってほら、霊感強い人じゃない?見えちゃうのよ、そういうの・・・・・・もう集まってきてるわよ?ここにも。

じゃあ、あたしの話を始めるわね。これも、霊感の強いあたしが実際に体験した話よ。
あたしが女子中学校に通ってた時の話よ。結構有名なお嬢様学校で、中学では珍しく全寮制だったの。
寮は5階建てで、あたしの部屋は4階だったわ。その寮は『出る』っていう噂が結構あったの。
あれは8月の暑い日、夜の1時くらいだったかしら。学校が夏休みで、寮にはあまり人が残っていなかったの。
あたしが机で黒魔術の練習をしていたら、天井から音が聞こえてきたの。『ギシッ・・・ミシッ・・・』ていう、軋むような。
音はそうね、ちょうどあたしのベッドの真上くらいから聞こえたわ。天井に『何か』の気配を感じたあたしは、
耳を澄ませてその『何か』の様子を探ったわ。そしたら、聞こえてきたの。女の甲高い奇声が。

『アッ・・・・・・・アァッ・・・・・・!!・・・・・!!』

天井を軋ませながら、『何か』が声を出してたの。
直感的に、無念のうちに死んだ女の霊だと悟ったあたしは、呪文を唱えてお祓いを始めたわ。
すると、あたしの呪文に共鳴するように、天井の軋む音が早くなっていくの。そして、女の奇声はいつしか、
獣のような叫び声に変わっていたわ。

『アアアオ゙ーーーッ!オ゙ホオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!』

って。
そしてあたしが天井に向かって、『梵!』と念じると、霊魂は

『イ゙グヴヴウウウウウウッッ!!』

と悲鳴を上げて、
そのまま昇天したみたい。音がしなくなったの。あたしは粛々と、女の無念を想ってベッドに横たわったの。

その時だった。体が重くなって、まぶたがすーっとあたしの意思に逆らって降りてきたの。
それからしばらくの間、あたしは意識を失っていたみたい。急に身体が軽くなって目を開けたの。そうしたら。

さっきの霊が、まだ成仏していなかったみたい。廊下に『いる』のよ。『ダメッ!ウアア、ダメエエェェ!』って
廊下から聞こえてきたの。幸い、寮の4階には強い霊能力をもつあたし以外みんな帰省していたの。
だから友達がとり憑かれる心配はなかったのだけど、呪文もお祓いも効かない強力な霊だと、いくらあたしでも
乗っ取られちゃうかもしれないでしょ。だから、ドアの内側に手製のお札をいくつも貼って、一晩耐え切ることにしたの。

そのあとは、冥界のような有様だったわ。一晩中、『ウアア、イグ、イッヂャウノ゙ォォォ!!』とか

『フカイノォ!オクマデトドイテルノォ!!』

とか

『ソコォコスッチャダメへェエエ!』

とか、とにかく騒霊現象の嵐。
明け方近くまで続いたのだけど、大きな悲鳴が10回目くらいになったところで、静かになったわ。
朝になって、廊下のゆかを確かめてみて驚いたの。床はいたるところがビショビショ。それだけじゃないわ。
エクトプラズムと思われる、白いねばねばした液体もたくさんこびりついていたの。
後日、偶然その日残ってた5階の女の子にその話をしたのだけれど、その女の子は顔を赤くして、

『知らない、そんな声は聞いていない、自分はずっと寝てたからわからない』

って否定してたわ・・・・・・。
あるいは、あたしの類稀な霊感が、冥府から『何か』を呼び寄せてしまったのかもしれないわね・・・・・・。」






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