シチュエーション
ドサッ! 「うぅ…また負けたぁ…」 私は大の字になって後ろに倒れた。 「おい、もう止めようぜ。これで何試合したと思ってんだよ。」 そう言ってコイツは剣を鞘に入れようとする。 「うるさい!私が勝つまで何回でもやるのよ!」 「はぁ…お前何でそんなに俺に勝ちたいんだよ…。」 「アンタに成績でも魅力でも負けて…その上剣の腕でも負けてるなんて私のプライドが許さないのよ!」 「お前のプライドなんてしらねーよ。しかも何だよ魅力って…」 コイツは半分呆れた目で私を見る。それを見た私は無償に腹が立った。 「と、とにかく!私は全てにおいてアンタに負けてるのが嫌なの!分かったならさっさと準備しなさい!」 「あー分かった分かった。今日はもう遅いから明日また相手してやるよ。だから今日は帰ろーぜ?お前も疲れたろ。」 私は辺りを見渡した。確かにもう日が暮れていて、私のお腹の虫もすごい音で鳴いていた。 「う〜…。絶対よ!絶対明日にここに来なさいよ!来ないと絶対許さないんだから!」 「ハイハイ。…ったく、『絶対』を三回も使うほどくやしのかお前は」 「う…うるさい!明日は絶対負けないからね!!」 私がそう言うと、ソイツは少し笑って帰っていった。 「あ〜イライラするー!」 私は家に帰ると、やり場のない怒りをベットの枕にぶつけていた。 どうしてアイツに勝てないのだろう?なぜ何もかもアイツに負けているのだろう?考えれば考えるほど怒りが沸き上がり、そう考えてるうちに、どうして私はアイツに勝ちたいと思っているのだろう、と疑問が浮かんできた。 「ハァ…」 思えばアイツがこの町にくるまでは私が何でも一番だった。 学校の成績はもちろん、剣の腕前は男泣かせと言われるほどで、告白は毎日のようにされていた。 もう私に敵う人間なんてこの町にはいないと思っていた時に、ある家族がこの町にやって来た。 それがアイツの家族だったのだ。 奴は私の記録をことごとく破り去り、一気に人気者に上っていった。 それが気に食わなかった私は、アイツに挑戦状を叩き付けて、ものの見事に負けてしまってた。 「はぁ…」 私は二度目の溜息をついた。どうしても勝ちたい…。 あんな新参のボケェーっとした奴に全部負けたままなんて嫌だ。 そうじゃないと私には何も残らなくなってしまう。それだけは絶対に… 「そんなにあの人間に勝ちたい?」 私は予想もしない声に一瞬ビクッとなった。 そしてその瞬間、目に入ってきた物に驚きを隠せなかった。 「ひ…人が浮いてる!?」 そう、そのままの意味で人が浮いていた。 黒い目、紫色の髪、きわどい服に豊かな乳房、そして背中に付いてる黒い翼、それは人というより「悪魔」を連想させる姿だった。 「ねぇ、あなたは何でそんなにあの人間に勝ちたいの?」 悪魔は私にの元へと迎いながら私に問い始めた。 「あ…あなたには関係ないでしょ?…。」 私は弱々しくもその悪魔に抵抗の言葉の放った。 すると悪魔はクスクスと笑い、 「それが関係ない訳じゃないのよねぇ…。」 と言い出した。 「ど、どういう事?」 私は訳が分からくてその悪魔に言った。すると悪魔は私にこう言ったのだ。 「私が貴女の願い、叶えてあげてもいいのよ?」 「え?」 そう悪魔が言った時、私の思考が止まった。 …夢を叶える?私の?なんで? 「私が、あなたの願い、叶えて、ア・ゲ・ル。」 悪魔はいやらしくもう一度、その言葉を言った。 私は色々疑問が出てきたのだが、『夢を叶える』という彼女(悪魔)の言葉だけが強く印象に残ってしまい、ついこんな事を口走ってしまった。 「ど…どうやって!?」 すると彼女はニヤリと笑い、私に近付いてきた。 「あなたにはまだあの人間に負けてないものがある。でもこれを実行するにはあなたの身体をワタシに貸してくれないといけない。だからもしあなたが私に全てを委ねるというのならば、絶対にあの人間に勝たせてアゲル。」 彼女はそう言うと私の前に座り、私に答えを求める様に見つめてきた。 身体を委ねる…。 私にはその言葉の深い意味が理解出来ず、またどういうことをするのかも分からなかった。 しかしまだ私にもアイツに勝てるものがある。それを教えてくれるならば私はそれが悪魔でも構わないと思ってしまった。 そして私は決意してこう言った。 「か…身体を委ねます…。」 「ウフフ…。」 彼女はそう言うと私に抱き付き、 「ち、ちょっと何す「いいから黙ってなさい…」 私の唇を奪った。 SS一覧に戻る メインページに戻る |