シチュエーション
さて、聞いて欲しいことがある。それは、簡潔に言うとこうだ。 『淫魔が我が家に住み着いた。しかも毎日、俺の精子を搾り取ってくる』 ……おい、何でそんな人を憐れんだ目で見てるんだ。残念ながら、俺は正気だ。 まぁ、いいさ。それより聞いてくれ。 その淫魔。夜中に不法侵入をしかけてきたかと思ったら、人のことを拘束して、無理やり童貞を……。いや、それは気持ちよかったから別にいいんだが。そらもー滅茶苦茶に気持ちよくて、馬鹿馬鹿しくてもうオナニーなんてしてられない……って違う! とにかく、その淫魔。俺の童貞を食ったばかりか、そのまま我が家に住み着いて、更に俺を『下僕』呼ばわりし始めたのだ! 申し遅れたが、俺の名前は平正直助。人呼んでスケベ。まぁそう読めるから仕方ないし、実際にそうだから俺も否定はしていない。 で、だ。下僕?にされた俺も詳しくは知らないが、どうやらその淫魔である彼女。ミオ……ミオ、えーと。ミオ……名前はなんて言ったっけ――? 「ミオ=ソーティスって言ってるでしょうが!このド低脳!」 がっつーん、と目に星が散りそうな勢いで、俺の脳天に踵ストライク。 そ、そう。なんか勝手にこんな風に心を読んで、蹴っ飛ばしたりブン殴ったりして来るこの暴力女……ではなく可愛らしいお嬢さんは、ミオ=ソーティスと言って、淫魔の世界の次代女王候補らしい。 で、実際の女王を決める修行の為に、人間界での拠点と上質な精が必要なそうだ。これもよく分からないが、要するに、俺の……ほら、何ていうか……精液?が必要らしい。 「頬を赤らめるな、キモいっ!」 ずびしっ、とまた鋭い蹴りが脇腹に。人間ってスゴイネ。だんだん慣れてきたヨ。 ……まぁ淫魔の世界なんて眉唾ものだけど、俺はそれに下僕として協力して、毎日彼女の精液を捧げたりする日々を送っているのだが――。 「うっ……!はぁ、はぁ……い、いくよ……ミオたん……!」 「『たん』とか言うな!」 自室のベッドに腰をかけた俺を見上げながら、ミオが睨み付けて来る。その眼前には、唾液にぬめる俺の息子。まだ日も上がったばかりの時刻だと言うのに、俺はこの強気そうな紅髪の少女の奉仕を受けて、その顔を盛大に汚したいという欲望に駆られていた。 「……ちょ、ちょっとした冗談だって。ミオ、そろそろ……」 ねちっこく延々と、既に二十分はフェラチオをされている。そろそろ俺のナニも、ふやけきって蕩けてしまうのではないだろうか。そんな心配をしてしまうくらい、俺はミオの手腕で焦らされ続けていた。 だが、懇願する俺を見て、彼女は不敵に笑う。こういう顔をする時は、大抵ロクでもないと、既に体感して理解している。内心で溜息。 「ふっふーん……どうしようかな。このまま生殺しでもいいんだけどねー。溜めに溜めて貰った方が、私としては嬉しいしー?」 言いながら、玉袋を手でやわやわと揉み扱いて来る。ペニスには全く触れる様子もない。おそらく軽くシェイクされればそれだけで射精できるというのに、限界まで張り詰めた男性器に刺激を加えるような様子は見えなかった。 ――気持ちいい、気持ちいいのだが、もどかしい。 思わずなんか支離滅裂な一句を詠んでしまうほど、俺の状況は切迫しつつある。だって自他共に認めるスケベでエロスな俺が、こんな美少女に生殺しですよ!? 「そんな、ひどい……」 「誰もそんなイエスノー的なループ会話なんてしないわよ。っていうか、もっとしゃきっとしなさいよ。と言うよりもナヨナヨするな、キモい」 「そんな、ひどい……」 もう1回泣き真似をしてみたが、この鬼に通じる訳もなし。 「へー、鬼、ね。そう。じゃあ私は鬼だから――」 ……あ、しまった。どうやら今の心を読んでいたらしい。 ミオの怒りの笑いに、俺のペニスは思わず縮こまってしまっていた。ミオはにこにこと笑みを浮かべながら、すっと立ち上がり離れていってしまう。そして、部屋を出る直前、 「焦らすくらい、普通よね。私、鬼なんだし。あ、そうそう。勝手に抜いたら――殺すわよ?」 「……サー、イェッサー」 有無を言わさぬその言葉に、俺は下半身丸出しのまま、思わず敬礼してしまっていた。 数時間後。俺は普段通り、一人の学生としての生活に戻っていた。昼休み、机に突っ伏しながら様々なことに頭をめぐらせる。 もう俺も高校三年生であり、まだ始まったばかりとは言え、そろそろ進路も考えなくてはならない。ならない時期のだが――。 「ええいっ、こんなモヤモヤした気分で考えられるかっ!」 瞬間、談笑していたクラスメート達の視線が自分に集中した事に気づくが、後の祭り。 心の叫びが口から出てしまった俺の事を見て、唖然としている。 「あ、はは……ま、気にしないでくれ……」 苦笑いと共に、俺は逃げ出すように教室を後にした。そのままの足で、屋上へと向かう。 「あー……い〜い風だ」 屋上から見上げる空は快晴で、春と夏の狭間の肌触りの良い風が吹いていた。 今の時期、ここは皆が昼食をとったり談笑したりで賑わうスポットで、俺も心安らぐ空間としてお気に入り……って、誰も居やしねぇ! 騒がしさと心地よさが混同しているはずの屋上。誰一人として居ないその空間には違和感があった。それに何よりも、風+女の子=定番のアクシデントが成り立たない。 「……あー。直助?」 四つん這いになって全身で落ち込みを表現する程、深い悲しみに包まれた俺。横からふと聞きなれた声が届き向き直ると、そこにはミオの姿があった。 しかも何故か、ここの制服である白と緑を基調にしたセーラー服。スカートとツインテールの髪を風になびかせながら、怒られた子供のような、どこか落ち着かない雰囲気。 そんな様子で立つ彼女は、なんというか、素っ裸とは違う妙な色気があると言うか……俺のエロスハートを刺激するものがあっ――。 「ごーーーるぁ!そのエロ思考から、少しは離れんかーい!!」 アーッ! 俺は綺麗に右回し蹴りを顔側面に受ける瞬間、紺色のスカートから覗いた白のパンティを見逃さなかっ……た……。 「――で、何の用だよ。そんな格好までしてさ」 奇跡的にたいしたダメージもなく、仕切りなおして彼女と会話する。『……直助。アンタって、不死身?』とか聞かれたが、ただエロの為ならタフになれる一介の男の子なのである。 俺の問いかけにしばらく沈黙をして、ばつが悪そうな表情を見せてから、ミオは静かに口を開いた。 「えーっと……ほら。私、ちょっと、短気だからさ。朝も、さっきもあんな事しちゃったし……」 本当にちょっとなのか?という所は突っ込まないで置くべきなのだろう。そんな俺の考えを知ってか知らずか、彼女は言葉を続ける。 「だから、ね。そのお詫びっていうか、何ていうか……その……」 そこまで言うと、頬をやや赤く染めて、俯き気味に指先を所在なさそうに弄りだす。普段の強気な様子からは考えられない可愛らしさがあった。 「うん。で?」 「――ここまで言ったら分かりなさいよ、このスケベ!バカ!スケベ!!」 「え、ええ?なんで怒られるっていうか、スケベって2回言う必要は!?」 顔を真っ赤にして怒涛のようにまくし立てるミオの勢いに、いつ拳やら足刀やらが飛んできてもおかしくないと身構えていたが、それはいつまでたっても訪れなかった。 少し落ち着いてくると、ミオが泣きそうな雰囲気になっていることは俺にも察せられた。ついさっきまで怒っていたのに、一体、どういう事なのだろう? 「あー、ミオ。何かよく分からんけど、俺が悪かった。すまん」 理由とかそういうのは分からなくても、女の子を泣かせる……ってのはダメだと思う。だから自然と、俺の口からはその言葉が出ていた。しかし、 「……アンタが謝ることじゃないでしょ、バカ」 ミオはすぐに雰囲気を取り戻し、ふたたび罵倒されてしまう。が、その語調は先ほどまでと違って優しいものだった。そして、彼女は大きく深呼吸をする。 「ほら、はやく済ませちゃいましょ。せっかく、人除けしてるんだし」 「いや、だから何を――」 その答えが来るよりも早く、ミオの唇がの眼前に迫っていた。 重なる唇。柔らかな感触と、仄かに香る女の子独特の良い匂い。しかも、キスをしている相手は、強気でがさつでどこか怖い所もあるが、間違いなく美少女。 状況を飲み込みきれず混乱する俺を尻目に、軽いキスだけで彼女は離れた。そして、普段通りの不敵な笑みを浮かべ、俺の腰元に屈みこんでくる。 「決まってるでしょ。こういう事……よ♪」 止める間もなかった。学生服のチャックをおろされ、まだ半立ち程度にも達していないペニスが外気に晒される。思わず周囲の目を気にしてしまったが、彼女が淫魔である証明の一つなのだろう。確かに人の気配はなく、遠目にも誰も見当たらなかった。 「ん……ちゅっ……」 「おふっ!」 そ、そそそそうこうしている間に、瞳を閉じたミオが、綺麗とは言いがたい俺のペニスに舌を伸ばしていた。唇でゆっくりと皮を剥き、舌で突き、ざらりとぬるぬるとした表面を擦り付けながら舐め上げてくる。 その粘着質な愛撫に、間をおかずして息子はどんどんと、天を突くように起き上がってゆく。それを追いかけるように、ミオの顔は上下して、舌は隅々まで責め立ててきた。 「ミ、ミオ……あんまり綺麗じゃない……ぞ……くっ!」 夜のシャワー後ならいざしらず、学校の昼休み。もちろん、何度かトイレにも行っているし、それなりに汗もかいている。だと言うのに、それを気にも留めず、ミオは熱心に舌を這わせていた。 だが、俺の言葉を受けてか一瞬だけそれを止め、顔をこちらに向けてにこりと笑う。 「だーいじょうぶよ。それに、こういうの……『そそる』んじゃないの?」 いや、でも、女の子にそんな汚い事をさせる訳には……。 「大正解だ。物凄く興奮する」 思わず、即答してしまっていた。ってか心と体が全く一致してないが、もう気持ちいいから良い事にしよう。うむ、ミオが問題ないなら俺はそれでいいじゃないか。 「アンタって面白いわねー……ちゅっ」 気をよくしたのか、くすくすとミオは再開する。 学校の昼休み。まだ、大量の生徒どころか教師達も校舎にはいる。そんな中、屋外で、見た目だけなら誰もが羨む様な美少女に口で奉仕させ……更には、色んなもので汚れた所を掃除させている。 これで興奮しない男がいるのか!いや、居ないと俺は断言する!! 「んっ……もう、十分みたいね。それじゃ、本格的に――」 俺の体は精神と同じくらい正直であった。完全に勃起したペニスに舌を這わせていたミオが、一度だけ口を離した。 そして、その小さな口を先端に近づけ、柔らかな唇を押し付けながらゆっくりと飲み込んでゆく――。 「……つぅ……!」 脳天に、電気が走ったような快楽。腰が震えそうになるのを堪える。 唇がゆっくりとペニスの外側を蹂躙しながら進み、先端は徐々に熱い粘膜と舌による二重の快楽に晒される。本当に腰が砕ける所であったが、なんとか耐えしのいだ。 だが、ふと下を見れば、ミオの紅の瞳が、何かを企んでいるような色をしていた。 瞬間、 「っ……!」 喉奥まで一気にペニスをくわえ込み、そして亀頭まで唇を戻す。舌を裏筋やカリ首にあてながら、少しばかり顔を旋回させるような動きを交えて、激しく前後させて来たのだ! あまりに強烈な快楽に膝ががくがくと震え、思わずミオの頭を掴んでしまっていた。だが、力の入らない手でその動きが止められる訳もなく、むしろその動きが加速してゆく。 「ミ、ミオっ!」 我慢などできるはずもない。俺の上ずった叫びを耳にした彼女は更に奥までくわえ込み、律動するペニスを完全に口内粘膜で捉えたまま離さない。 射精された精液を彼女が嚥下するたびに、口腔がゆるやかに動いて更に快楽を与えてくる。そのせいで勢いはなかなか留まらず、まるでストローか何かのように精子をすい終わられた時には、俺はもう腰がたたず座り込んでしまっていた。 「ふふ、ごちそーさまっ。気持ちよかった?」 「み、みりゃ分かるだろ……」 俺は、そう答えるしかなかった。ああ、このまま眠って午後はさぼってしまいたい。 『あれ?鍵、かかってないじゃん?』 『本当だ。おかしいね、確か今日は屋上、入れないはずなのに』 『でもラッキーかも?だってほら、一番乗りって事じゃん!』 ん?あれ?なんか、誰か入ってくる雰囲気のような――。 「……お、おい、ミオ。さっき、人除けがどーとか……」 唾液でぬめったままのペニスを急いでしまい、ズボンをはきなおす。少々気持ち悪いが、仕方ない。言葉を投げかけた先のミオは、後ろ頭をかるく掻きながら、 「あははー。私、魔法って苦手なんだよね。だから人除けも、不完全っていうか……」 「そっかー。こいつー。あははー。 ――って、笑ってる場合じゃないわい!とりあえず、お前は目立つから隠れろ!」 明らかに不満そうな表情だったが、言われるがままに、人目につかない上部にある貯水タンクの方向へとミオは隠れた。程なくして、何人かの生徒達が入ってくる。俺の事を見て首をかしげていたが、特に気にもせず離れて言ってくれた。 俺は見つからぬよう、ミオの元へと急ぐ。そして、不満げな表情の彼女に問いかけた。 「お前、どういう事だよ。女王候補ってくらいなら、魔法でなんか色々できるんじゃないのか。耳が大きくなるとかは論外だぞ」 詰問に、彼女は平然と肩をすくめて答える。 「別に。苦手なだけで使えない訳じゃないし、今はそう必要にもならないわよ」 「いや。さっきのアレ、誰かに見られたら俺は折檻程度じゃすまないんだぞ!?」 よくても停学……いや、下手をしたら難癖つけられて退学なんて可能性も。どちらにしても、あまり学校に心地よくいられるとは思えない。 だが、 「別にいーじゃないの。バレなかったんだし、気持ちよかったでしょ?」 これである。ここがエッチな悪魔と人間の差というものなのだろうか。 「確かに、気持ちよかったですけどね。そういう問題じゃ……うう……なんで俺はこんな奴に……」 泣き真似をする俺を見て、彼女は溜息をついた。そして、口を開く。 「……じゃ、もう学校ではこういう事するの、やめる?そうすれば、安全だけど――」 「いや、是非やろう。またやろう。いつでもやろう」 リスクを恐れてエロが満足できる訳がないじゃないか。俺は何を考えていたんだ。これは健全な男子高校生としての欲望に従っているだけであり、決してやましい行為では――。 「そういうスケベでバカな所、私、嫌いじゃないわよ」 俺の内心の言い訳を見たのかどうかは分からないが、ミオは満足げに笑っていた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |