魔術師とサッキュバスと復讐と
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シチュエーション


セルディアがディーナを背後から羽交い締めにした。といってもディーナは潤んだ目でされるがままであったが。
仰向けに寝ころんだセルディアの上でディーナもまた仰向けになって腕をおさえられ、セルディアがからみつかせた足で太腿を大きく開脚させられていた。

「これでもう、おまえはベナン様にされるがまま」

耳元でセルディアにささやかれると、ディーナは頬を染めた。しかし抗おうとは決してしない。
それどころか、胸を這ったベナンの舌に体をびくつかせて、小さく喘ぐ。
側に座って反対側の胸を舌で責めていたフィリアが、そのまま舌を滑らせ、ベナンの舌に自身の舌を絡ませながらベナンが愛撫していた乳首を一緒になって舐めた。
二枚の舌による攻めで、ディーナははや、腰をがくつかせた。
サッキュバスに塗り込まれた媚薬が、ディーナを限界付近までに追いやっていたこともあった。
時間をあまりおかず、ディーナが泣き叫び始めた。自らの虚を満たして欲しいと泣いて乞うたのである。

「ディーナ、あなたがこんなにかわいい人だとは知りませんでした」

ベナンの言葉と共に、ディーナの望んでいたものが入ってくる。
陰茎を一度も入れたことのなかったはずなのに、自らの中を優しく熱く固く押し広げられる感覚だけでディーナは絶頂に達した。
それが指ではとうてい届かない奥まで入り込んでくるので、腰がたまらなくうごいてなすすべもなく再度絶頂に至った。
入ってきたものが、敏感すぎる膣壁を、特に叫び出しそうな快感が走るざらつく特別なところを、こそぎあげて出入りすると、ディーナは訳がわからなくなった。
下腹で、腰で、背筋で、胸で、脇腹で、熱い快感が生まれて消えないまま次の快感がおおいかぶさり、大波となってディーナを翻弄した。
そんな銀髪のディーナをうらやましそうに見ながら、ディーナの脇腹を舐めていたフィリアは、突然腰を抱えられた。
見るとベナンがフィリアの腰を持ち上げ、フィリアの体をディーナをまたがせて、うつぶせにかぶせるように置いた。
尻をベナンに向けて、ディーナの上にのったフィリアは惑乱する銀髪の戦士に唇を奪われる。
テクニックもなにもなく舌をいれて吸うディーナに応えながら、後ろを確認しようとして、フィリアもまた貫かれた。
毛ほどの痛みもなく、ただ入るべきところに入り、埋まるべきところを埋める、そういった当然さで、肉はフィリアの中に入ってきた。
訳のわからないまま、フィリアは爆発した快感に背をのけぞらせて、目を見開き歯を食いしばった。

「いろいろと情けないですが、これでもインキュバスですので」

ベナンが笑う。それは覚悟を決めた笑い。そして新しい術を始めてみせるときのはにかみの笑い。
股間から二本目の陰茎が生え、フィリアを貫いていた。さらに三本目が生え、ディーナの尻の下に潜っていく。

「あああああ、入ってくるぅ、そんなぁぁ、何かがはいってくるぅぅぅぅぅ」

ディーナを満足そうに、そして切なさそうに見ていたセルディアが、顎をのけぞらして喘いだ。
もう一度自らを満たしてくれることを切望していたセルディアの中に、ベナンの肉が滑り込んだのだ。
またもや湧いた充実感と喜びと快感がセルディアの疑問を押し流していく。

「……あなた方三人を、……私で……つなぎました」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ひぃぁぁぁぁぁかかかか」

言葉と共に、三人の中にはまりこんだ肉が同時にずるりと奥まで突き入れられ、女達は綺麗に揃って声をあげた。
妙なる楽器のごとく、ベナンの腰の動きでリズムをとって、揃って声をあげていく。

「あなた方の……三人の絆を……犯しますから」

女達がその言葉で、耐えきれぬように互いの体を固く固く抱き合う。
涙を流し、だけど心の底から安心した表情で、快楽に身を任せて、体をうごめかせる。

「ディーナ、はぁぁぁ……フィリア……くはぁぁぁぁ、ずっとずっと……はぁ……ベナン様と共に……」
「うれしいぃぃぃ、ディーナとぉぉぉぉ、セルディア様とぉぉぉ、ベナン様にぃぃぃ繋がれたのぉぉぉ」
「繋がれたままぁぁぁぁぁ、一緒にぃぃぃぃ、堕ちますぅぅぅぅぅ」

ベナンは三人の尻を抱え、奥の奥まで突き込み、三人の中でベナンの肉が奥まで伸びる。
満たされた上にさらに満たされることを知って、二人の顔が未知の快感へのおそれで歪む。
そんな二人をセルディアが抱きしめた。

さらなる突き込みで、ベナンの肉は、同時に三人の子宮口にはまりこんだ。

「うはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「あああああああああああああああ」
「またぁぁぁ、またほしぃぃぃぃぃぃぃ」

どくんと一つ大きな拍動を下腹で感じた後、下腹の中で爆発するぬくみと快感で三人は狂乱した。
ディーナは白目を剥いて、声もなく体を震わせ、そのまま気を失った。
フィリアは、ディーナの腕を血が出るほど握りしめた後、そのまま固まって気絶した。
セルディアは、おこりのように体を不定期に震わせ、涎を垂らしながら眠った。
やがてフィリアの背が破れ、黒い羽根が広がる。ディーナの背からも黒い羽根が生え、セルディアの羽根と絡まった。
尾は、すでに他の二本とからみついて、よじった一本の紐のごとくベナンの腰に巻き付いている。
ベナンは尾をゆったりともてあそびながら、女達の子宮にただひたすら精液を注いだ。
丸みを帯びた女達の尻を愛で、背中や二の腕に舌を這わせながら、拍動のままに精液を撒き続けた。
陰茎の拍動が小さくなっても女達の髪をいじりながら、悠然と女達の中に止まった。
最後の拍動からしばらく経って、ようやく陰茎を引き抜き、女達から離れる。

「ごめんよ」

そう言うとベナンは振り返り、後ろに静かに控えていたエイダにキスをした。

「……少し妬けるわ」

ベナンは弁解せず、エイダを抱き寄せると丁寧にキスをした。
そして、その隣に無言で座っていた少女、リオンに目を向けた。

「あたしを犯す?それとも殺す?」

全裸であったがリオンは悪びれることなく、ベナンの目をまっすぐ見据えて言った。

「いいえ。あなたは逃がしてあげます。どこへでも行くといいでしょう」

ベナンは首を振った。

「お人好しだね。あんたを騙して信用させた上に背後から毒剣で刺したのよ?」
「それであなたを殺せば、あるいは犯せば、私にとって何かの帳尻が合うとでも?」

斜に構えた笑みを浮かべて言い切ったリオンにベナンは逆に尋ねた。
リオンの顔がこわばり暫時沈黙がおちる。
やがて頭をうなだれさせたリオンから小さな声が漏れてきた。

「復讐……したいとか思わない?」
「あなたもしょせん、暗殺の道具です。道具を壊しても暗殺者は別の道具を探すだけです」

ベナンの身も蓋もない言葉に、怒りを浮かべたリオンの顔があがる。

「わ、私だって好きで道具をやってるんじゃない!」
「でしょうね。使い捨て扱いでしたから」

残酷すぎるベナンの言葉に側にいたエイダのほうが悲しそうな顔をした。リオンはただまたうつむいただけ。

「念のために確かめておきますが、盗賊ギルドからの派遣というのは嘘ですね?」

またもや落ちた沈黙に臆することなく淡々とベナンは話を進める。

「元ギルドに属していた探索者くずれのクソ野郎に仕込まれただけ。仕込まれついでに犯されたけどね」
「だから、彼女達とは違い、あなたは男を知って本当に男を憎んでいるんですね」

眠っている三人をちらりと見てベナンは続けた。
こくりとリオンは肯いた。

「……ちなみに聞いておきますが、その男とは髭を生やしたキザな中年男だったりはしないですね?
少年も少女もどっちも好きな上に、彼らを痛めつけるのが好きで、おまけにある女侯爵の愛人でもあるという」

ベナンの言葉を聞いていたリオンの目がまん丸に見開かれる。
それは、言葉以上に雄弁な返事だった。

「なるほど、それで彼に指示されたのですね。
親しげに近づいて背後から刺せと。間抜けでお人好しの魔術師だから、多少術がうまくても怯えるなと」

続くベナンの言葉にリオンはただ息を呑むだけだった。
そのベナンの目に、また疲労感がたゆとう。怒りを欠いた憂いと悔いと疲れは魔術師を老けたように見せた。

「ならば、私があなたに刺されるのは、……やっぱり甘さのせいというわけですね」

深々と重いため息をベナンは吐いた。エイダがベナンに寄り添い、そっと手を握る。

「あ、あのクズ野郎を……」
「知っています。彼の睾丸が片方つぶれているのはご存じですか?」

驚きに口を震わせるリオンに、ベナンは憂鬱な光を目に漂わせながら、力なく笑った。

「タワーに行く前、私が握りつぶしました。彼は私の母の弟でして、王族を犯してみたいと私を襲ってきた時にやりました」

エイダとリオンの顔に驚愕の表情が浮かぶ。それに構わずベナンは続けた。

「愛人の女侯爵には、私より三つ下の息子がいます。その息子は私より少しだけ王位継承順位が低いのです。
それが酷く気に入らなかったようで、王宮にいた頃は卑しい女の息子といって虐められたものです。
その通りだったので誰も助けてくれませんでしたけども。
ところがどう転んだのか、……母に似て、顔だけはよろしかったからでしょうね。
叔父上が女侯爵に取り入りまして、私は和解という名目で女侯爵の屋敷に連れ込まれました。
後はリオンにはわかるでしょう?」

呆然とした顔のままリオンは力なくうなずいた。

「犯される寸前で、エイダのお母さんの連絡で助けが来ました。たぶんそこで私は一生分の運を使い果たしたんですね。
素っ裸で私を押し倒していた叔父は、助けに来た戦士に剣を突きつけられて硬直しました。
その時、やるべきではなかったですが、私はここぞとばかり復讐をしました。幼く無謀で我慢が足りませんでした。
母の弟だから命まではとれなかったんですけど、全てに怒っていたのです。
私は命乞いをする叔父の睾丸を蹴り潰したのです。今思えば、中途半端でやる必要のない復讐でした。
それ以来、彼らは逆恨みをして、私を何度か暗殺しに来ました。暗殺者を返り討ちしたことだってあります。でも、なんにも変わりません。
命を狙い返したこともあります。叔父が土下座して許しを乞うた一週間後に、送り込まれてきた暗殺者が無関係な人まで巻き込みました。
国が滅びたら滅びたで、ここぞとばかりに暗殺者を送り込んできました。
女侯爵の息子を王家の血筋をひく正当な後継者として立てたんで、私が邪魔になって、余計に本気になったんですね。
私も気をつけていたつもりですが、まさか迷宮の探索途中で謀殺を試みるとは思いませんでした」

ベナンが言葉を切ってリオンをあらためて見据えた。

「結局、彼女達もあなたも、元から捨て駒だったんですよ。……いや、彼らにとっては自分以外はみな誰も捨て駒ですけどね。
……探索もせず、戦にも加わらないから、こんな馬鹿な手まで……。他国の下級貴族の身内まで巻き込むなんて
ほんとうに、彼らは……。ここまで愚かだとは……。叔父上、ヴェスティエ侯爵……」

ベナンは額を押さえて嘆く。その言葉にエイダの眉が動いた。

「ヴェスティエ侯爵……。そう、だったんだ。……だからなんだね」
「エイダ?」

ベナンとリオンが、涙を流し始めたサッキュバスの顔を驚いてみた。

「魔が襲ってきたあの日、近所の人を率いて町を脱出しようとした母を、侯爵の家来が邪魔したわ。
侯爵の脱出の盾になれ。時間稼ぎなれって。下賤なものは高貴な我々のために死ぬのが最上の奉公だと。
抗議した母を、女侯爵の部下が無礼討ちにして、私達は逃げ遅れて……」

涙しながらたんたんと語るエイダを見ながら、顔を蒼白にしたリオンが首を横に振る。

「あ、あたしはただ、成功すれば、もうあの野郎の相手をしなくていいって言うから……」

ベナンとエイダの目に、炎のような怒りはない。どうしようもない悲痛が有っただけだった。

「それで、あなたはサッキュバスになったんですね」

エイダはうなずいた。
言葉にならない悲哀がベナンとエイダに流れ、やがてベナンの声に厳しさが表れ始めた。

「復讐に意味など無いと思っていました。復讐しても何も生まないってわかっていました。
でも、復讐が頭から離れないのです。あの時、命を捨ててでも叔父と女侯爵をこの手で殺したかった。
エイダ、それが私のやり残したことです」
「なるほどな」

突如扉の方から声がした。それは不敵な笑みを浮かべて半分ほど開いた扉に寄りかかったラミィだった。

「たいした紳士だ、ベナン。復讐の制限は確かに必要なことだ。やりすぎの復讐は身を滅ぼす。その通りだ」

話を切り、ラミィは笑みを深くした。

「だが、魔と人はいくさの最中。敵を殲滅することは復讐ではない。人に魔の恐怖を刻み、気概をへし折るのは、魔の正義だ。
それにそのようなクズは、我らが名をあげるのに絶好のカモだ。存分にやるがいい」
「ラミィ様……」

呆然とするベナンにラミィは真顔で断言する。

「もし、おまえがやらぬというなら、私がやる。老若男女一切構わず吸い尽くし、恐怖の伝説を作って見せてやる。
なに、男を吸いたくてうずうずしているのは、そこに山ほどいるからな。どうする?」

ラミィの指す扉の開いた隙間からは、サッキュバス達の爛々と光る目が無数にあった。
ベナンはしばし驚いていたが、やがて決意の色を浮かべて首を横に振った。

「いいえ。これは私の復讐です。ラミィ様といえど、これだけは決して譲れません」

それは対立を避けてきたベナンの本当に久しぶりの対決と拒否だった。
だが、ラミィは怒りも不快感も表さなかった。ただ満足げな笑いを浮かべただけである。

「よかろう。指揮はおまえがとれ。魔術の極意、特等席で見せてもらうとする」

それだけを言うと、ラミィは出て行き、扉が閉まる。

沈黙が落ち、やがてベナンがポツリとつぶやいた。

「リオン、あなたはどこへでも行きなさい。もう語るべき事はありません」
「次に会えば、女のあなたでも命尽きるまで犯して吸うわ。行って全てを忘れて修道院でも入りなさい」

わずかに敵意が籠もった固い声でエイダが続け、二人が立ち上がる。
目覚めていた三人のサッキュバス達が二人に寄り添う。
甘いときは過ぎたとばかりに、五人は無言で戦意をみなぎらしながら、服をまとっていった。
そして着終わった五人の淫魔がリオンに目も向けもせず部屋を出て行こうとして、リオンはたまらず叫んだ。

「待って、お願い!あたしにも、あたしにも何かできることを手伝わせて!」

魔術師が振り返りもせずにつぶやく。

「これからは悪夢の時間です。淫魔ならぬ人の身で出来ることはありません」
「じゃあ、あたしも犯してサッキュバスにして!あたしだけが、罪を償うことも復讐することも出来ないなんてイヤだ!」
「リオン、これまであなたは男に復讐してきたじゃない」

金髪の女僧侶だったサッキュバスが笑う。

「淫魔に堕ちて、なんの罪を償う?」

銀髪の女戦士だったサッキュバスが嘲る。

「我らは愛と絆で再び結ばれた。だからベナン様の赴くところに我らも赴くだけのこと。だがリオン、おまえには何がある?」

黒髪の女騎士だったサッキュバスが、鋭く問う。
リオンは大きく深呼吸して目を閉じた。サッキュバス達は、影のごとく静かに答を待った。
やがてゆっくりとリオンの目が開けられる。

「あたしの復讐、間違っていた。ベナンに氷づけにされて、ベナンに暗殺の道具って言われて気がついた。
あたしが男を憎み、ベナンを男だからって刺したことが、それ自体があいつの思い通りになっていることだってわかった」
「それで?」

エイダが続きをうながした。

「あたしの復讐はベナンを愛すること、愛して守って幸せになること。
償いはサッキュバスになること。男を憎みながら男を受け入れて殺すサッキュバスがあたしにはお似合い。
だから、ベナン」

再びリオンは、目を閉じ、手を組んで、審判を待った。

「あたしを、堕として」

リオンは、なんの曇りもない心で待った。いつも心にわだかまった悲しみと自己否定が嘘のように消え去っていた。
不意にすぐ前からベナンの声がした。

「リオン、男を憎んでいてはサッキュバスにはなれませんよ。サッキュバスは人間の女より激しく深く男を愛する魔界の女だそうです。
……そしてあなたに言われて私も気付きました。私のあなたへの復讐は、男を憎む心にこそ行うことを。
陳腐な言い方でしょうが、悦びを教えましょう。そして堕ちたのなら、共に征きましょう」

目を開けたリオンの前にいたのは、茫洋とした目の優しい魔術師。
そして誇り高き女騎士が気品有る笑顔を浮かべ、銀髪の女戦士が怜悧ながら爽やかな目で彼女をみつめている。
金髪の女僧侶は慈愛を込めて微笑み、黒髪の女性は優しい顔でベナンに寄り添っていた。
リオンは自らをベッドに倒すベナンの手に嫌悪を感じなかった。
優しく重ねられる唇に安堵すら感じた。固くこわばった何かがほぐれていき、解放感をかんじていた。
胸を這う手が、柔らかな快感を呼び起こした。自らの乳房を嫌っていた心がいつの間にか消えていた。
胸の先端がそっと吸われ、驚くほどの悦びが体にあふれ、涙すらにじむ。
彼女は、男以上に自分の女である体を嫌っていた。けれども、今は女であることを許せた。
胸を吸うベナンを見ていると胸の中に温かいものが湧いた。愛しいんだと自覚するとさらに温かくなった。

「ベナン、かわいいね」
「抱きしめたくなるでしょ、おっぱいを吸ってるベナンを見てると」

優しい黒髪のサッキュバスが寄ってきて、そう言いながらベナンの頭をなでた。
リオンは肯いて、ベナンの頭を胸に抱く。
ぞくぞくするような愛しさがさらに湧いて背筋を降り、リオンの股間を熱くした。
リオンはその初めての感覚におののいた。
ベナンの手が脇腹をくだる。またぞくぞくするような感覚が湧いてリオンは身をよじった。
脇腹の手が舌に代わり、ベナンの頭が降りていく。
股間を熱くする感覚が続くようになり、とろりと何かがこぼれるような感覚をリオンは股間で覚えた。

(濡れ……た?)

その感覚が消えぬ間に、ベナンの手が股間を這い始めた。
思わず足を閉じようとして、鋭い快感がわきおこり、反射的に足が開いた。
一番敏感なところに舌が這い、ついばまれて吸われた。
胸のほうに伸びてきた両手が、胸をおおい、乳首をつまむ。

「つぁっ!……ふわぁぁぁぁん」

声が漏れるともうどうしようもなくなった。
股間の舌に操られるように腰が浮いて震えてしまい、乳首をもてあそぶ手によって容易に太腿が動いてしまう。

「ああああん、っはうぅぅぅ、……ひゃぅん、……あんあんあんああああん」

音を立てて愛液をともに陰核が吸われ、リオンの頭が白いスペークを起こす。

「あはあ、あああああいいぃぃぃぃぃぃぃぃ」

叫びと共に腰が跳ね上がって、踊り狂い、唐突に落ちた。
全身が脱力し、荒い息をつくしかできないリオンの頭がベナンに優しくなでられる。

「リオン、あなたを堕としますから」

再び、この上なく優しいキスが与えられる。入ってくる舌ですらゆっくりと丁寧で、リオンはもどかしくなり、舌を自分から重ねた。
そんなリオンの中を肉がスムーズにゆっくりと埋めていく。
それはリオンを奪った男とは全く違う、気遣いと愛にあふれた熱い肉だった。
膣が震えるような熱い感触があふれ出て、下腹を浸し、脊髄を駆け上って、濃密な快楽の頭への噴出となった。
いつもの冷え冷えとしたおぞましさではない、腹の底からの熱い歓喜はリオンの心の何かを粉々に打ち砕き、それすらも快感に加わって昇っていく。
リオンは何かを叫び涙を流し続け、ともすれば力が抜けそうな手足で自らを抱く男にしがみつく。
男の裸の背にひきつれた傷跡が触れた。リオンは自らが付けたものだとなぜかわかった。
快感の中で、ひときわ熱い本当の悔恨が燃え上がった。涙が熱さを増して流れ落ちる。
いつしか叫びは謝罪の繰り返しになり、それに応えるかのように三度目のキスが与えられる。
リオンの中が全部ぎちぎちに埋められて、リオンは燃え上がって壊れた。
リオンの腹の中で熱く優しい波がぶちまけられ、リオンは心地よく引き裂かれる。
おぞましい汚液だったはずのものが、体を隅々まで浸していく熱い海となり、それだけでリオンは再び昇った。
腹から押し寄せる熱い波に何度も繰り返し昇り、やがてリオンは幼子だったとき以来久しぶりに、何の憂いも忘れて、男に抱かれて眠りについた。
黒い羽根と細く黒い尻尾を生やしたのを気にもとめずに。






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