シチュエーション
氷を投げ入れると、ウォッカは蜂蜜色の渦を巻いた。 俺はそのウォッカを一息に飲み干す。 喉が焼けつくように痛み、肺は熱気に膨らむ。 ――あと 何発できるだろう? 蕩けそうな倦怠感に包まれながら、ぼんやりとそう考えた。 ※ 事の始まりは14年前、俺がまだ大学生で一人暮らしをしていた頃だ。 その蒸し暑い夜、コンパで誰も連れ帰ることが出来なかった俺は、目当ての女の子を想いながら悶々としていた。 その枕元へ突如、若い女の姿が浮かび上がったのだ。 始めは金縛りかと思った。だが女がベッドへと覆いかぶさってきたとき、俺は違うと気付いた。 それは幽霊と呼ぶにはあまりに肉感的で、芳しく、そしてあまりに美しすぎたからだ。 女は一糸纏わぬ丸裸で、肌は西洋人のようにうす白かった。 胸は掌から余るほどに大きく、腿は細く引き締まっているが腰は丸みを帯びている。 いい女だ。陳腐な表現だがそうとしか言いようがない。 女神像がそのまま具現化したような、男に本能的に抱きたいと思わせるカラダだ。 淫魔。 脳裏にそんな言葉がよぎる。 その瞬間、やつは俺の心を読んだかのようにうすく微笑んだ。 『こんばんわ。新鮮な精をたっぷり溜めこんでいるのは、あなた?』 女は俺の上へ覆い被さったまま手を触れてきた。 豊かな胸が震え、青白く光るような腕が俺の体に伸び、その表皮の全てからは 石鹸のようなえもいわれぬ安らぎの香りが立ち上っている。 俺の頭は緩慢にその情報を捉えていた。 女が触れると、俺の着ていたシャツの繊維は手品のようにはらりと解ける。 『…わぁ……』 脇にシャツがめくられた後、女はどこかあどけなさを感じさせる瞳でそう言った。 俺は高校時代には陸上でそれなりに鍛えていた。 女はその俺の胸や腹筋を撫ぜながら、じっと俺の目を覗き込んでくるのだ。 人に見つめられるということがどれほど緊張するか、この時俺は思い知った。 「はッ……、あ……は、ぁ…………っ!!」 胸を撫ぜられる、それだけで俺は疾走したように息を切らしていた。 女はそんな俺を母親のように優しく見つめ、今度は手を腹筋より下に差し入れてきた。 また服の繊維がほどけ、隠すべき部分が外気に晒される。 むうっと男の匂いが立ち上るのが俺自身にも解り、ひどく恥ずかしかった。 だが女は匂いに動じるそぶりもなく、ゆったりとした動作で逸物の根元をつまんだ。 奴がしなびたそこを扱きあげた瞬間、 「うっ!」 俺は物の中にひどい痛みを覚え、声を上げてしまった。 『お若いですね』 女がそう囁き、さらに扱く。俺の逸物にはその動きに合わせて熱い血が通い、 たちまちにそそり立ってしまう。 『ふふ、脈打ってる』 女の嗤いのあと、逸物はその白い手にくるみ込まれた。 『力は抜いておいて下さい。今、“通じさせて”あげますから』 女はそう言った。その不可解な言葉の意味を、俺はすぐに思い知る。 「ああっ!!い、いぃいイクッッ!!!」 数分後、俺は女のような声を上げてベッドでのたうち回っていた。 女の、人間であれば手コキと呼ぶべき責めは絶妙だった。 女の手の中はどんな女性器とも比較にならないほど心地いい。 逸物の真ん中にある硬い芯をすり潰され、その周りの海綿体をふやかされるような、 そんな感覚が脊髄を巡り続ける。 背中は汗にまみれ、足は力をなくして投げ出しながら、腰だけが深くベッドを沈ませた。 『すごい、まだ出てくるんだ』 やわらかく握られた逸物からは、コップに注げるほどの精が溢れ出ている事だろう。 女はその精の全てを桜色の唇で受け止めているようだった。 その飲み干す顔の、なんと幸せそうな事だろう。 やはり彼女は淫魔だ、とその時俺は確信した。 何時間が経ったのか、ひょっとしたら数十分しか経っていないのか、 女はようやくに俺の逸物から手を離した。 『お疲れさまでした。ちょっと、搾り過ぎたかしら』 女が俺の前髪をかき上げる。視界が汗で滲んでいる。 『うっとりしちゃって…おいしそう』 女はそう言って俺の上に跨りなおし、そっと秘部を覗かせた。 俺は思わず息を呑む。 滲んだ視界に映る、鮮やかな桜色をした薔薇の花。 極上の霜降り肉でもこんなに美味しそうに見えたためしはない。 『いただきます。』 女は俺の逸物に手を添え、目を閉じて味わうようにゆっくりと腰を落とす。 女の胎内は至高の世界だった。 熱いか冷たいかさえ感じられず、ただただポンプのように精液を吸い上げられた。 いくら若いとはいえ、一度果てればそれまでと思っていた射精が何度でも訪れるのは、 全く未知の体験だった。 『ああっ、凄っ、凄い!もっと、もっと奥へ、もっと沢山下さいっ!!』 女の方も良いのだろうか、髪を振り乱して笑みを見せた。 ――俺は、この娘に犯されている。 蕩ける思考の中、その考えだけが浮かぶ。 この淫魔を前にして、俺は今、生物学上オスとされた乙女でしかない…と。 そしてそれが心地いい。 その夜以来、彼女は毎日俺の夢枕に立つようになった。 彼女はリリスと名乗った。 だがそれは『日本人』というようなレベルでの種別であり、彼女固有の名は無いらしい。 ともかくも、俺とリリスは毎晩のように身体を重ねた。 俺は数年間女に飢えていたし、リリスは俺の精が気に入ったと言う。 お互い性にまつわる利害が一致したわけだ。 だが、俺とリリスの性欲はまるで桁が違った。 俺が若さにまかせて抜かずの4・5発をしても、リリスには前戯にすらならない。 枯れ果てて限界が来るのは俺ばかり。 そうなれば、自然と2人の時間は俺からリリスへの奉仕が多くなる。 たとえばベッドで脚を開いた彼女を後ろから抱きかかえ、首筋に舌を這わせながら秘部をくじる。 そうやって気分を高めながら回復を待つのだ。 『ああそこ、凄くいい…』 リリスは脚を開いてうっとりとした声で言う。 淫魔の性感許容量はやはり人間とは違うらしく、彼女はいくらGスポットを責めても、淫核を撫で回しても涼しい顔をしていた。 ……始めのうちは。 人間は、暫く食事を減らしていると胃が小さくなる。 それと同じなのかは解らないが、彼女も次第に俺の愛撫に反応を示すようになっていった。 『あらあら、今日は頑張るんですね』 出会って一年になる頃、クンニを続ける俺にリリスがかけた言葉だ。 俺はこの言葉に違和感を覚え、それは彼女の汗を見て深まった。 リリスには淫魔としての矜持がある、性に関して生半可なことでは動じない。 その彼女が俺のいつもの愛撫に対して、明らかな昂ぶりを見せているのだ。 「感じてるのか?」 『そんな、まさか…あ、……………ぃッ……!!』 返す言葉の最後、彼女はイく、という言葉を飲み込んだように見えた。 それにその事実に関わらず、彼女の恥じらいの場所は滴るほどに潤みきっている。 まるで人間の娘のように。 思えばリリスはこの時、俺という人間と親しくしすぎたのかもしれない。 精を貪るという本能を二の次に、人じみた愛撫に興じた。それが一年だ。 そうすれば淫魔も人間に近づくのではないか。 俺がその結論に至ったのは、リリスが身篭っていると知らされた後だった。 『淫魔に子供は、いらないの』 リリスは困ったような顔で腹を撫でた。 『仲間内からも色々と非難が出ていて……もう、ここには通っちゃいけないみたいです』 「そう、か……」 答えようがなかった。子種を生みつけたのも俺なら、彼女を人間に近づけたのも俺だ。 こういう場合は、男の責任の方がきっと重い。 『ごめんね』 今にも全てを背負い込んで消えそうな彼女に、俺は一つの提案をした。 「産んだ子供を預からせてくれないか。きっと幸せにしてみせる」と。 それから幾月か後。 朝日の差し込む部屋の隅に、毛布に包まれた泣き声が飛び込んできた。 俺は彼女を亜理紗と名づけた。 亜理紗は母親に似て見目良く、歳の割に発育も良くすくすくと育った。 性格にも素行にも全くの問題が見られず、淫魔の娘ということで気負いしていた俺が肩透かしを食らうほどだった。 …彼女が初経を迎えるまでは。 『ねぇもっとよ、もっと出るんでしょう?』 亜理紗に赤飯を炊いてやった日の翌日、俺は仕事帰りの路地で偶然に彼女を目にした。 彼女は路地裏で一人の少年を壁に押し付けていた。 相手はいつも仲良く遊んでいる同級生だ、喧嘩でもしているのだろうか。 そう思ってよく見ると、それは喧嘩などではなかった。 亜理紗は少年のズボンをずり下げ、手と口でもって精を搾り出していたのだ。 少年は泡を噴いて立ち尽くしている。幼い男根は痛々しいほどに屹立し、冗談の様な量の精液を足に垂らしていた。 亜理紗はその彼からなおも精を搾り出し、手にした昆虫採集用の瓶に白濁を溜めていた。 よく見れば犠牲者は少年一人ではない。地面にはさらに3人が下半身を露出させ、ぴくりとも動かずにいる。 俺は即座に踵を返し、その現場を後にした。そして公園で顔を洗い、頬をはたいた。 寝ぼけているのだ、そうに違いない、と思う為に。 現実は変わらない。 帰宅して亜理紗の部屋を覗くと、彼女は服を全て脱ぎ捨て、椅子に座りながら何かに耽っていた。 覗けばその左手には昼間の精液を溜めた瓶があり、右手は股座に差し込まれている。 もう随分長いこと自慰に耽っていたのだろう、椅子の座部は濡れて変色し、淫核は固くしこり立っている。 「亜理紗、何してるんだ!!」 俺は夢中でその右手を取った。指の先から飛沫が跳ね、メスの強烈な香りが部屋に漂う。 「あ、おとうさん…。おとうさん、おと……おと、こ。おとーさんの、みせてぇ……!」 俺は思わず右手を離していた。心の底からぞっとする目をしていた。 『淫魔に子供は、いらないの』 そうか、…そういうことか。 「れぇ。 お とうさん…?」 亜理紗は椅子から崩れ落ち、這うようにして俺の元へ近づいてくる。 西洋人形を思わせるぱっちりとした瞳、うすく朱の線を引く唇、齢13にして既にただ事ではない青い色香を纏わせたカラダ。 俺が作ったのだ。俺が、造ってしまったのだ。 このまま俺が逃げても、彼女はどこぞの男どもを喰らい続けるだけだ。 自分がなぜそんな事をするのかもわからないままに。 なら……俺が、せめて犯される理由のある俺が、彼女の相手をするしかない。 ※ ようやくウォッカが効いてきた。精力剤と喧嘩をして最悪な気分だが、身体は十分に熱い。 俺は意を決してリビングの扉を開けた。 そこには胡坐縛りに縛められ、二穴に轟音でうねるバイブレーターを捻じ込まれた愛娘がいる。 「おとぉうひゃん、ひんぽ、おひんぽ…くらひゃい……」 アイマスクと猿轡を外せば、途端に彼女は潤んだ瞳で懇願してくる。 まだ13の小娘ながら反則的なほど男心をくすぐる哀願。 俺は彼女の秘部から剛直を引きずり出し、代わりに痛いほどいきり立った逸物をその愛らしい割れ目に突き入れる。 熱くうねる胎内にたちまち射精感を覚えながら、俺はまた歯を喰いしばる。 ――あと 何発できるだろう? SS一覧に戻る メインページに戻る |