シチュエーション
レンガつくりの街並みが、瓦礫にかわってゆく。 破壊の樹は、もうこの町までその根を伸ばしていたというのか。 戦士には俄かに信じがたかった。 あれだけの兵を集めて焼き払った怪物はこうも簡単に蘇り、休む暇だけを与えて、次には全てを奪っていった。 街の人々が持ち物すら抱えずに逃げ惑う中、戦士はその相手には小さすぎる大剣を構え、人の流れをかわす。 逃げ惑う人々を捕らえる破壊の樹に、表情はない。ただ、吸い尽くすのみであった。 「いやっ!いやぁぁぁっ!!」 年端もいかぬ街娘が、『樹』の蔓に足を絡めとられ、這い蹲った。 茶けた緑色のうねりが、街娘にのしかかるように迫る。 その太い先端がぐねぐねとうねりながら、枝分かれするように形を変えていくった。 グシャアァァァ!! 半透明の粘液に包まれた蔓が、悪魔の掌が開くようにその先端を開く。 繊毛のようにこまやかな細い蔓たちが、涎をたらしながら街娘の身体を弄り始めた。 「助けて!イヤぁぁぁぁ!」 彼女の衣服の隙間を縫うように、先蔓はその全身を絡みとってゆく。 「あ……ぁ」 街娘の衣服は、粘液を吸って音も無く溶かされていった。 街娘の全身ををびゅるびゅると弄る蔓先は、溶けかけの衣服を跡形を残したまま破り、 その隙間から彼女の体の細部にまでわたってその先々を伸ばした。 「あぁっ……あぁぁっ!!」 その先々は、彼女の全てを弄った。歳の程よりたわわなその乳房を、臀部の割れ目に前と後から沿って尻の穴を。 そして蔓は、彼女の芯へと無理やりもぐりこんでいった。 『目的』を達する。ただそれだけのために……。 破壊の樹が蠢く。土のむき出した石畳の街を、餌食を求めて這い廻っている。 餌食は、彼女だけではない。逃げ遅れた街の人々どころか、破壊の樹に立ち向かった者の殆どが、 もはやただの餌食としてその身体を弄ばれ、『目的』を達されようとしていた。 あの戦士の大剣も、その地に虚しく転がっている。 破壊の樹を包囲するように布陣していた王国軍の兵たちも、今やその半数を蔓によって奪われていた。 「魔導師団はなにをしている!?」 王国軍の軍団長と思しき豪勢な鎧をまとった男が、誰にともなく問うた。 「勢合詠唱、間に合いません!後方待機の命令を要請します」 「ならば単騎でも奴の動きをとめろ、即術法(インスタント)の使い手だけでも、前に出すんだ!」 兵隊長が強い口調で魔導師団長に命じた。 そのころ前線では、白兵戦による刈り取りが延々と続いていた。 「糞が!なんどぶった切ってもキリがねえ」 「なんなんだこの魔物は」 前線の兵士がいきりたって破壊の樹を睨みながら、口々にそう言った。 言いながら、身体は休ませない。切っても斬っても、破壊の樹の蔓はすぐとはいわずとも再生した。数の差がありすぎた。 「魔物じゃないわ」 兵士の一人の女が、腕に巻きついた蔓の先端を引きちぎりながら、 「吸精種よ」 と答えた。 隣国マルンを滅ぼした謎の怪物は、『魔物』ではなかった。 植物の様な身体をもち、人に限らず魔物の精までをも吸って生きる怪物……。 その存在、その名は、遙か昔に書かれた偽りの史書のなかにあった。 「神族に近いらしいけど、私もよくは知らないわ……」 「エティア戦記か」 大柄な男の兵士が呟き、その先を続ける。 「戦記では、次に襲われた村の戦士は生き残ったな」 「ケッ、たかがバケモノ一匹に、ドレル軍一個軍団潰されてたま……!?」 痩せ狼のような男の兵士が、蔓に背後をとられ、そのまま破壊の樹に捕らえられた。 「ジェイド!」 「うわぁぁっ!」 蔓は、すぐさまにジェイドと呼ばれた兵士を侵食していった。 「カラダが…カラダの力が……!ぁぁぁ……」 「ジェイド!」 「よせ!今は戦いに集中しろ!」 「ジェイドとは村の幼馴染だったんです!」 「ならば生き残って仇をとるんだ!」 「彼を見捨てることは……出来ません!」 破壊の樹の懐に、女の兵士は飛び込んだ。女の兵士は……そのまま、餌食となった。 「!?エリル?エリィィィィル!!」 後方が『根』に侵攻されたという報せを、前線の戦士が聞くことはなかった。 王国軍の残存戦力、この時点で、3/10……。 「ああっ!いやぁっ!」 「す、吸わないでぇっ!」 「ぐっ!ごぁぁぁっ」 「ハァッ…ハァ…」 老若男女を問わないどころか、人畜を問わず、果ては魔物の類まで、破壊の樹はその餌食とした……。 「エリル……今、俺もいこう」 大柄な男の兵士が、剣を構える。 「うぉぉぉぉぉぉ!!」 破壊の樹の幹めがけて、彼は単身、喰らいつくように剣を振りかぶった。 ……破壊の樹は、貫かれた。 「……!?」 大柄な男の兵士は、‘それ’が破壊の樹を貫いたときの衝撃にその身を跳ね飛ばされ、石畳の上に腰を打った。 「なんだ……あれは?」 暗雲立ち込めるこの街の空には、一人の巨人の姿が現れていた。 しなやかに腕を組んだ巨人の肩部から生えた2本の、先端が槍の様で鞭の様な物体が伸び、 破壊の樹の幹をど真ん中で交差するように貫いている。 背中に生えた一対の黒い甲翅と、もう一対の真紅にく輝く膜翅。 すらりと伸びた脚部の先端は鸚鵡のような鍵爪状の形をしており、 その頭部には、歳増したヘルゴートのような、大きな一対の巻き角が生えていた。 家々の背丈より遙かに大きくスマートなその身の丈は、まるで、偽書の伝説に登場する巨人のごときものであった。 巨人の肩からのびた角の様な物体が縮み、その先端が、樹の幹で留まる。 巨人は舞降りた。肩から伸ばした貫いたものをうねらせながら、ゆっくりと破壊の樹の幹へ歩み寄っていく。 破壊の樹の蔓が、動きを止めた。 巨人は樹を抱いた。気の幹の上ほどにある口の様な器官に、巨人は顔を寄せた。 紫色の淡い光りに、破壊の樹が包まれていく。 蔓が、葉が。破壊の樹が萎れていくのが、兵士達や捕まっている街の人々に、目に見えて分かった。 『赤い部屋』の中で、女は呟いた。 「皮肉なものね。吸いに来て、こんな目に遭うなんて」 巨人の槍鞭がうねるのをやめた。破壊の樹は、枯れ果てていた……。 「あなたが消えても続くわ。命をかけた、餌の取り合いは……」 ……てな感じで、人間と共生する淫魔ネタとして、 こうゆう巨大ロボットモノの話ってどうだろうか。(つけた名前はテキトー) ■求世のスティーラアム■ ……古の預言偽書に存在していた半植物型巨大生命体・『吸精種』が、異世界コンタオル・デルに降臨する。 破壊の根に街は蹂躙され、ただでさえ魔物の脅威のもとで暮らしてたデルの民は、 絶望のどん底に突き落とされながら、エサとして狩られるだけの日々を過ごしていた。 だがある日、食器を洗ったりぐらいしかやることのない青年、志家田免蔵が、 青い光の玉を追いかけていた赤い光の玉に激突され、異世界デルへと導かれる。 赤い光は免蔵に語りかける。 「ねえ、私とひとつになりましょう。私、あなたがほしくなったの……」 救世主VS吸精種……。互いを吸い尽くす戦いが、今、始まる。 □登場メカ 『スティーラアム』 コンタオル・デルに迷い込んだ人間の科学者と淫魔族の立ち上げた人類救済機関『SCBS(スクブス)』が開発した、 アドゴーレムと呼称される亜人型巨大兵器の一体。全長約13m。重量は不明。 淫魔の妖力と、それを高めるスペルミックエナジーと呼ばれる力を主動力としており、 その真の力を発揮するには、男女の性的行為による良質な気の高まりを必要とする。 種武装は貫通触手槍テンタクル・スナッチャーと、背中の羽根の4枚を変形させた翅甲剣と翅光刃。 □主な登場人物 『アンゼリカ・インヴァシサス』 アドゴーレム・スティーラアムの操縦を務める淫魔族の美しい女性。 性格は自主族としては至って普通の、妖艶で高尚な性格な淫魔だが、 エサである人間や魔族が滅ぶのを防ぐために人類に協力している。 『志家田免蔵』 食器洗いの男。通称シケメン。無責任で野暮だが情には熱い。 異世界人であるその特異なスペルミックエナジーの性質から、スティーラアムの操縦者の片割れとなる。 だが操縦者とは名ばかりで、スティーラアムのコアでアンゼリカに吸われまくることが本職(?)となっている。 □その他の設定 『吸精種』 偽書に記されていた、遙かいにしえに滅びたはずの半動物・半植物の生命体。 様々なカタチのタイプが存在する。 他の生命体の精気を吸い取ることによってその生態をなしており、 吸精種に吸われた人間は廃人化するか、もしくはあらたなる吸精種の『種実』へと変貌する。 同じ吸精生物である淫魔とは違い知性を持たないために、遙か古代にニッチを一部共有する淫魔の先祖によって滅ぼされたが、 何者かの策略で、巨大化による更なる力を得て復活した。 その身は恐るべき再生能力をもち、対物破壊的な弱点は無効化されているに等しい。 ただ、精気を逆に吸い取られる事には弱い。 そのため、人類側にとって有効な攻撃手段はアドゴーレムの吸精機能を置いて他にない。 後半では淫魔を取り込んで知性を獲得し、更なる脅威となる。 SS一覧に戻る メインページに戻る |