淫魔女王
シチュエーション


「お祖母ちゃん。お祖母ちゃんはお祖母ちゃんなのに、何でちっちゃいの?」

まだ翼も生え揃わぬ幼い孫の問いに、淫魔女王は苦笑した。
たしかに角と翼を除けば、女王の姿は面前の幼子と大差ない。人間ならば
せいぜい姉くらいにしか見えぬだろう。

「儂は子供の頃たくさん食べなかったから、大きくなれなかったのじゃ。
お前は、たくさん食べて大きくなるのだぞ」

は〜い、と可愛く答える孫娘に重なるように、女王の脳裏に少年の姿が浮かぶ。
あの人に浅ましい姿を見せたくない。まして、あの人を食べてしまうなんてとんでもない。
遙か昔、育ち盛りの食欲と乙女心の板挟みとなった煩悶も、今となっては滑稽な限り。

(でも、今でもお慕い申し上げておりますよ)

淫魔女王から漏れたとは到底思えぬ呟きは、幸い誰の耳にも届かなかったようだ…。






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