ラング家
シチュエーション


「――――ということで、西野梢さん、アナタを当ラング家のメイドとして採用いたします」

俺のすぐ右横で、金髪ショートヘアのメイドが不機嫌そうに書状を読んでいる。
視線を正面に戻すと、とても緊張しているのが明らかに分かる、黒髪セミロングの少女。

「あ、ありがとうございます」

その少女――西野梢は、俺に向かって深々と頭を下げた。
そして、さっきの金髪メイドから住み込みにおける色々な注意事項を聞くと、一礼して部屋を出た。

「で」

直後。

「色々と説教させてもらいましょうか、エキュアル様」

振り返り、より一層不機嫌な顔になったメイド――ロサの姿が、そこにあった。

「別に他意はない。器量もよさそうだし、真面目な性格だったし。メイドとして申し分なかったから雇っただけだ」
「そうですか、ってことは私の仕事っぷりが気に入らないと」
「そんなことは言ってないだろう」

ロサはものすごく不機嫌そうである。

「じゃあ何で人を増やさなければいけないんですか」
「お前が元々メイドじゃなかったからだバカタレ」

いつものことだ。
そう言ってやれば、ロサは反論できなくなる。
そしてその頬を、そっと撫でてやる。

「そうだろう?」

返事はない。ただ、彼女の顔がほのかに赤くなっただけ。
俺はニヤリとしながら、その首にかけられた黒い首輪に目をやった。

「……首輪さえなければ……」

悔しそうにつぶやくロサ。

「首輪さえなければ、何だ?」

俺は椅子から立ち上がり、左手で頭を撫でる。
そして右手で、彼女の左胸を優しく揉んでやる。

「えっ!?……ううっ……あ……」

バカ正直な奴だ。
生意気なセリフを吐いたくせに、結局感じているんだから。

「精力を吸いつくして殺してるとでも言いたいのか?この淫乱メイドめ」

罵倒しているはずなのに、ロサの目は潤み、息遣いが熱を帯びる。
そりゃそうだ。彼女は元々、サキュバスなのだから……

「え、えきゅ、いや、ご主人……様……」
「ん?謝るなら今のうちだぞ、ロサ」
「あ……あのっ……もう……我慢が……っ」

まあ、いつものパターンでも興奮させてくれるのが彼女のいいところでもあるのだが。


設定補足

エキュアル・ラング…ラング家当主。21歳。ラング家は「法具」と呼ばれる、魔力を込めた道具を古来から作ってきた家系であり、
先代(父)が法具作成中の事故で死去した後、圧倒的な才能と魔力で他家の面々を納得させ、当主を受け継いだ。

(ちなみに)ラング家の魔力の源は「狡賢さ」であるので、なるほど痒いところに手が届く法具が作られやすいわけである。

ロサ(ロサ・R・シャルル)…ラング家のメイド、というか元サキュバスの召使い。エキュアルを襲おうとしたのが運の尽きであった。
圧倒的な魔力の前に打ち倒されるならまだしも、部屋に仕掛けてあったトラップ法具で捕らえられ、精力吸収能力の研究台に使われた挙句、
精力吸収能力を奪われる首輪を付けられてメイドとなった。ただ本心では、エキュアルとのセックスは大好きらしい。

西野梢…新人メイド。ラング家が名家だということしか知らない。なーんにも知らない。

ラング家は現在、「家と力場と魔方陣ごと引越し機(ラング家の遺産)」を使って日本に来ている。
日本人の梢がメイド希望として面接に来たのはそのためである。あとロサは2188歳(肉体年齢はエキュアルにあわせて21歳)で梢は18歳。






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