おあずけ
シチュエーション


欲望に溺れた人間の精気ほど美味しいものは無い。
干上がり絶命するまで泣こうが喚こうが食らい尽くす、それが種族の性。

だけどー

―世の穢れを何一つ知らぬかのような、慈愛に満ちた一人の少年に出会ったとき、淫魔は、淫魔であることを忘れた―

「ダメ?」
「ダメですよ…」
「どうしても?」
「…貴女は自然から精気を吸えるのでしょう? それで我慢してください」
「そうだけど…、ああ、私は目の前にご馳走があるのにおあずけされるままの犬なの?」
「はい」
「(こうなったら無理やりにでも)」
「…僕を押し倒して、力尽くで操を奪おう…って考えてませんよね?」
「ぎくっ…」
「…そんなことしたら、僕、貴女の事キライになりますから。口も聞いて上げないし、ご飯も作らないし、洗濯もしないし、お風呂にも一緒に入ってあげませんから」
「そ、そんなこと考えてるわけ無いでしょ! 見くびらないで!」
「本当…?」
「ほ、本当よ!」
「…フフ。式の終わる十日目まで我慢してくださったら、晴れて夫婦ですから…。その時は迷わず私の操を差し上げますよ。それまで我慢してくださいね?」
「する! 絶対するわ!」
「その言葉、信じますよ。例え貴女が魔族でも、私の想いは変わりませんから」
「(あー、もう可愛いなあ今すぐ押し倒して自分だけのものにしたいッ…!)
「ほらほら、目が血走ってますよ、サッキュバスさん。我慢我慢」
「ううっ…」






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