夏一夜物語
シチュエーション


ザァーーーーー!!

視界を遮る雨の中、一人の少年が廃屋で雨宿りをしていた。
夏休みに祖父母が住む田舎を訪れ、裏山で遊んだ帰りの事だった。
大雨は一向にやまない。全身ずぶぬれだ。暖を取るすべは無い。夕闇は迫り、寒さが心身を襲う。
そういえば、この村には美しい女の魔物が出ると聞いた。
美貌と魔性の肉体で魅了し、男の精気を吸い尽くすという。
魔物でもかまわない。この冷え切った身体を誰か暖めてほしい。

寒さと睡魔が限界まで達し、うとうとと眠りかけたその時、突然の雷鳴と共に小屋の扉が開き、一人の女が入ってきた。
四つか五つくらい年上だろうか。とても背が高い。
女は少し派手な花柄の着物を着ていた。不思議な事に、外は大雨だというのに少しも濡れていない。

「おやおや、まだ子供じゃないか。アタシかい?紗希っていうんだ。アンタに呼ばれて来たのさ」

誰だろう。この女の人が魔物?まさか…それにしても…ゾッとする程美しい人だ。

「寂しかったのかい?でも、心配ないよ。一晩付き合ってやるからさ」

紗希はおもむろに帯を解き、着物を脱ぎ始めた。
突然の事に少年はうろたえた。

「さあ、アタシをよく見るんだ」

恥ずかしさのあまり顔をそむけていたが、まるで言霊に操られる様に女に目を向けた。
真っ白な肌と、腰まで届く黒髪。その美しい裸身と顔立ちに心を奪われる。
少年は心の底から“抱かれたい”と思った。

「そんな格好じゃ風邪ひくよ。あっためてやるから、裸になりなよ」

少年は、言われるがまま服を脱ぎ横たわった。
両手で前を隠し、目をつむる。

「震えているよ。寒いのかい?それとも怖いのかい?」

紗希は少年の両手首を掴み、大の字に広げた。

「優しくしてやるから心配しなくていいよ」

紗希は、静かに少年に身体を重ねた。

長い脚と腕が絡み付き、ぎゅっと少年を抱きしめる。
苦しさで一瞬息が詰まるが、とても暖かくて心地よい。
もっと強く抱きしめて欲しい。
初めて合わせた女の肌。滑らかで吸い付くようだ。
そっと目を開くと、優しい笑みを浮かべた紗希が見つめていた。
うっすらと紅を引いた唇が近づく。
やがて蜜の様に甘い唾液が流し込まれ、口の中いっぱいに広がる。
すると、抑えきれない程の性欲がみなぎる。

―もう、どうなってもかまわない。

紗希の肉体がゆっくりとうねり、肌を摺り寄せる。
柔らかな乳房が胸の上で弾む。
少年は、まるで少女の様なか細い声で喘ぎ、身悶えた。

「気持ちいいかい? 」

あまりの気持ち良さに応える事すら出来ず、首を振るだけだ。

「かわいいねぇ。もっともっと気持ち良くさせてやるよ」

紗希の細くしなやかな指が少年の股へ伸びる。

「うふふっ。まだ子供だと思ってたけど」

冷たい感触が心地良い。

「女は初めてだろ?悪いけど奪わせてもらうよ」

紗希は、少年の先端を優しく剥くと自分にあてがった。

「いいかい?いくよ。これが女のカラダだよ」

ぬるりとその中に滑り込む。
暖かく、とろける様に柔らかい肉ヒダが少年を優しく包み込む。
紗希はゆっくりと、ゆっくりと腰を動かした。
全身が痺れる程の快楽が襲う。

「男の子なら少し我慢しな」

もがく少年を紗希は押さえ込む。
少年も紗希にしがみ付いた。

紗希の腰の動きが激しくなる。
もう限界だ。

「いいよ。出しちまいな」

ビクビクッ!

少年の身体が小刻みに震えた。

とくん…とくん。

紗希の中で脈を打つ。

「ああ、おいしい。もっとおくれよ」

快楽の余韻に浸るまもなく、紗希は再び腰を動かし始めた。

「夜が明けるまで放してあげないよ。うっふふふっ」

不思議なことに、その後、何度達しても萎える事も精が尽きる事も無かった。
この狂おしい夜が永遠に続いて欲しい。そう願った。
そして、いつの間にか疲れて眠ってしまった。

朝、少年は差し込む日の光で目覚めた。
小屋に紗希の姿は無く、すっかり乾いた服が着せられていた。
あれは夢だったのだろうか?
身体には紗希の肌の感触と、ぬくもりが残っている。
きっと、朝まで自分を暖めていてくれたのだろう。

夏が終わろうとしていた。
田舎に居られるのも今日までだ。もう、帰らなければならない。
少年は再び小屋に立ち寄った。
紗希に再び会えるかもしれないと思った。
だが、二度と会える事は無く、少年は小屋を後にした。
あの夜の事は一生忘れないだろう。
外には一輪の花が風に揺れていた。






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