僕の彼女は死んだ
シチュエーション


僕の彼女は死んだ。
留学から帰ってくる際に乗った飛行機が不運にも事故にあったからだ。
僕は今、その飛行機が墜落した樹海にいる。
この樹海は自殺の名所として知られている場所だ。
一度入ったら出られない、というこの樹海に、僕はいるのだ。
僕の彼女を含め、多くの乗客たちはこの樹海にて消息不明になっている。
そして僕がここにいるのは、自殺のためだ。
墜落事故から数日たった後、乗客の何人かが救出された。僕の彼女はその中に含まれていなかった。
生存の見込みは殆どないと言われている。
僕はそのニュースを聞いたとき、生きる意味を全て否定されたように感じた。
最初の数日は、なぜ自分ばかりがこんな目に、と世界を呪った。
それから数日は自分の生きる意味を探し続けた。
そして今――何も見つけられなかった僕は、自らの命を絶とうとしている。
せめて、彼女と同じ場所に逝きたいとおもった僕はこの樹海を自殺の場所として定めたのだった。
僕は墜落現場を探して歩き続ける。同じような木がひたすら並んでいる光景が広がり続けるその先に、その場所があった。
僕は彼女の死体を探した。この期に及んで、まだ僕は彼女を信じられなかったのだろう。
少しでも彼女が生きている可能性があるなら、それに賭けたいとおもったのだ。

しかし――その結果には意外な形で裏切られた。彼女の死体が見つからないのだ。
僕は飛行機から出て、食事を取る。「一本で僕、満足!」がキャッチコピーのバーをかじりつつ、彼女がどうなったかを考えた。
まず、考えられるのはこの飛行機の外に彼女がいる、というのだ。
または、いくつかあった焼死体のなかに彼女のものがあった。考えられるのはこの二つだ。
僕は、彼女が生きている可能性に少しでもすがりたかった。だから、前者の説を信じることにした。
食事を終え、僕は飛行機の回りを歩いた。人が出ていった痕跡が少しでも見つかれば、とおもったのだ。
見つけた。血痕が残っていた。飛行機から遠ざかるように、血の痕による一筋の道があった。
僕はそれを辿って足を進めた。また同じ光景が広がる道へ歩き始めた。
しばらく進むと、血痕の道の方から、女の声が聞こえてきた。
僕は駆け出した。この時、僕はとても生きる気力に満ち溢れていた。数時間前まで自殺を考えていたとは思えないほどだった。
僕は走る。ひたすらに、そこに彼女がいると信じて。しかし、近づくにつれ、その声が喘ぎ声であることがわかってきた。
この声は果たして彼女の物なのか?それとも彼女は犯されているのだろうか?僕は不安になり、走るスピードをさらに上げた。
先に見えたのは、洞窟だった。この洞窟から、女の喘ぎ声が聞こえる。
僕は意を決し、中を除いた。そこにあったのは、彼女が白濁にまみれ、見ず知らずの男の上に乗っている姿だった。

「あ……しょうちゃ……んっ」

彼女がそういうと、男の姿が変わっていった。20代程に見える姿が、どんどん干からびていく。
彼女の結合部から精液が溢れはじめた。ぼこぼこと音をたてて精液は零れていく。零れるにつれ、男はさらに干からびていく。
そして、結果として男はミイラのような姿になってしまった。
僕は情けないことにその光景に恐怖を覚え、足がすくんでしまった。
失禁寸前までパニックを起こした僕を、精液にまみれた彼女は優しい表情でそっと抱いた。耳を胸に押し付ける形になり、とくんとくんと彼女の心臓の音が聞こえてきた。
そうしてしばらくをすごし、彼女は僕を数時間前までいた絶望の底へと押し戻す一言を放った。

「しょうちゃん……わたし、サキュバスになっちゃった」


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