シチュエーション
![]() ばかみたい、わたし。 「せっかく会えたんだし。久し振りにやろうか」 ムードも何もないこんな言葉でホテルに誘われて、ついて来ちゃうなんて。 ……相当溜まってるのかな。 確かに、前の彼と別れてから半年くらいは誰ともしてないんだけど。 とりあえずお酒のせいだと思いたい。まだちょっと顔が熱い。調子のいいヤツの言葉に のせられて、限界量ぎりぎりまで呑んでしまった。 けっこう策士だったから、酔わせればこうなること、計算していたのかも。終電を逃す というのも、わざとらしいし。 あぁ、やだやだ。 新田くんとはちょうど三年前に別れた。 偶然再会したのは、今日……ああ、もう十二時過ぎてるから、昨日になる。お客さんが 三人しか入っていない映画館で、だった。フランスの古い映画のリヴァイヴァル。 作品も監督も有名じゃない作品。上映の最終日だというのにお客さんが三人しかいない んだもの、映画館の経営状態まで心配になってしまう。 最終上映は七時二十分からだった。いちばん後ろの列の、真ん中の席を選んで座った。 二十列くらいしかない狭い映画館で、客席にはわたしと、最前列に女の子らしき影がひ とつ見えるだけだった。 予告が終わって、映画がはじまろうとする瞬間。後方のドアから光が射した。 三人目のお客さんか、と思った。 すぐにその人は座った。わたしの隣に。 びっくりした。 こんなに座席が空いてるのに、どうして。痴漢とかされたらやだな。 警戒しつつちらりと顔を見る。中途半端な長髪の、不潔そうな男。気持ち悪い。 席を変えよう。 座席に置いたバッグを取って、そっと腰を浮かせる。その途端に男が、わたしの手首を 掴んだ。 「始まるから座ってろよ」 「なっ……、放してください!」 叫びたかったけど、まわりが静かだったから一応小声で。 掴まれた腕から全身へ鳥肌がたつ。変質者!触らないでよ! 「あれ、俺のこと忘れた?まち」 まち……ってわたしの名前、なんで知ってるのよ。 疑問に感じながらも座りなおして、変質者の顔をじっと見た。 暗がりの中でわたしを見つめるその顔。櫛を入れてない乱れた髪の毛に、無精ひげ。 本当はハンサムなのに、面倒くさがってだらしない格好ばかりしてた、 ゆえにモテなかった、あの男。 「新田くん……」 「なんだ、憶えてたか。ああ、始まっちまったぞ」 スクリーンには白黒の画面が映し出されていた。 ……観たいなぁとずっと思っていた作品だったのに。 映画どころじゃないっての、もぉ! 新田くんは映画の間ずっと、わたしの手首を掴んだままだった。 ヤツのおかげで映画の内容は憶えていない。 スクリーンを眺めながら、昔の想い出ばかりが頭を駆け巡っていた。 ふたつ年上の新田くんと別れたのは三年前、大学を卒業した年だった。 現役で四年制大学に入ったわたしと、二年浪人した彼は同期だったんだけど、出会ったのは三年になってから。 交際は二年間。変なひとだったから周囲に受け入れてもらいにくくて、彼はわりと孤立してた。 はじめのうちは理解者気取りで接していたわたしも、マイペースすぎる言動についていけなくなった。 ある日ついにストレスが爆発して、一方的に別れを告げたんだった。 去るものは追わず主義の人間らしく、会わなくなっても連絡ひとつなかった。 未練もないのかよって悔しくて、別れて正解だと心から思った。 彼のマイペースなところはすごく好きだったんだけど、同時に嫌いでもあった。 当時は、解放感がすごかったなぁ。四六時中べたべたしてたから、なんだか自由になった気がして。 ただ、もう愛してもらえないのかと思うと、それだけが残念だった。 今でも思うんだけど、わたしを当にイカせてくれたのって、新田くんだけかもしれないから。 「シャワー空いたぞー」 バスタオルで髪を拭きながら、新田くんが部屋に戻ってきた。備え付けの安っぽいバスローブを着ている。 狭いラヴホテルの一室。こんなところは久し振りだったりする。半年前まで付き合っていた上司との密会は、こんな安いホテルじゃなかったのよね。いつもいつも一流ホテルの、お高い部屋だったなー。 わたしはテレビをつけてニュース番組を見ながら、おとなしく待っていた。 酔いは醒めかけているし、厭だと思えばいつでも逃げられた。けど、期待してしまっている。 新田くんとのセックス。 「こんなの見てんなよ」 戦争のニュースが、男女の絡み合うエッチな映像に変わる。リモコン、取られた。 「別に、わたしの勝手でしょ。お風呂入ってくるっ」 テレビから、喘ぎ声が聞こえる。 彼の横をすり抜けてバスルームに向かおうとしたら、呼び止められた。 「まち」 わたしの身体を引き寄せる。そのまま、抱き締められた。 「綺麗になったな」 囁きながらくちづける。生温かい舌が、唇を割って入り込んできた。 彼の舌は生き物みたいに、わたしの口腔を行き来する。 このむず痒いような感覚、久し振り。 セックスはもちろん、彼はキスも抜群に上手なのだ。 膝から力が抜けて、へたり込みそうになったわたしの腰を強く抱き、彼のキスは続く。 唾液が一筋、わたしの口からこぼれ落ちた。彼の舌がそれを嘗め取る。 唇を強く吸われて、頭がぼうっとしてくる。たかがキスなのに、こんなに気持ちいいなんて。悔しい。 でも、昔から、彼に勝てたためしがなかった。 いつもこれで、絶対服従の態勢を取らされる。 抗えない。 「お世辞なんていいよっ……」 唇が離れたすきに、精一杯の虚勢を張り、わたしは言う。 「イヤ、本気」 キスはわたしの額から髪の生え際、耳に移っていく。 「もう、25……だっけ?」 「……っ……!!」 囁きが熱い吐息になって耳をくすぐった。敏感な耳たぶを彼の唇が挟み、舌先でチロチロとつつく。 「立派なオトナだよなぁ。スーツなんか着てたし」 濡れた舌が、首すじをゆっくりと舐めあげた。ああ……ぞくぞく、する。 「身体も成熟したのか、確かめなきゃな。俺以外の男と寝たか?」 ブラウスの上から胸を揉みしだかれる。その間も彼の舌は首すじをなぞっている。だめ、頭が……思考能力がなくなってく……。身体が熱くて、立っているのがすごく辛かった。 新田くんは乱暴に、片手でブラウスのボタンを外した。 性急にブラウスを脱がせて、白い下着をあらわにする。 「おお、オトナっぽい下着……」 からかうような声が、麻痺したわたしの思考に刺激を与えた。 「ちょ……っと、放して!」 まだシャワーも浴びてないのにっ! 「やだよ」 きつく抱かれて身動きがとれない。それどころか、堅くなった下半身を押し付けてくる。 「もうっ……強引なところ全然変わってない」 「まちは変わった」 不意に真剣な眼差しを受け、どきりとする。 大好きだった、この顔。 「な……なにが……?」 「胸が。大きくなっている」 一瞬ののちに。力いっぱい突き放すと、ヤツは机の角に足をぶつけて、呻いた。 シャワーを浴びる。髪も洗いたかったけど、ポンプ容器で置いてあったシャンプーとリンスの香りが好みじゃなくて、やめておいた。 あれしきのことで、下着が濡れるほどに蜜が溢れてしまっていた。 なんとなく屈辱。 身体の隅々までよく洗う。特に、温かく湿っているその部分は念入りに洗って、しっかり拭いておいた。感じてたことを気取られたくなかった。だって、悔しいもの。 汚れた下着を再びつけることには抵抗があったので、ヤツとお揃いのバスローブだけを身にまとって部屋に戻った。 テレビは消されていて、静かな部屋の中にかすかな寝息が聞こえている。 寝息? 大きなベッドに近寄ると、大の字をかいて新田くんが寝ていた。これは……マジ寝? 「おーい、新田ぁ」 耳許で囁く。けど、ちょっと眉をしかめただけで、目を開けない。 拍子抜けだけど、とりあえず、隣に寝てみる。 懐かしいな、なんだか。これって。 部屋に泊まった日は、疲れて眠る彼のこと、よく見てたっけな。 起きるのは彼のほうが早くて、よく愛撫で起こされた。気付いたら挿入されてて、気持ちよくてイキながら目覚める、なんてこともあったなぁ。 ここ数年付き合った男性って、本当に下手なひとが多くて。 自分勝手に触って突っ込んで、果てたら終了!ってカンジで。 新田くん以来、満足するまでエッチしてもらったこと、ないんだよね……。 あーあ。 ちょっと期待してたのに。 思い出したら、また濡れてきちゃった……。やだっ……。 そおっと指をあててみる。あんなに洗って拭いたはずなのに、もうぬるぬるになってる。わたし、やっぱり、溜まってる……のかな……。 クリトリスをやんわりと撫でる。じわじわと拡がる快感。次第に、強く擦る。 は……ぁ……。 熱い吐息が漏れた。 指の動きが、止まってくれない。中指が抵抗なく飲み込まれてゆく。 指を自分の内部に絡ませたまま新田くんを横目で見た。 予想はしてたけど、彼は薄目を開けてわたしを見ていた。 頬が上気するのが自分でもわかる。 「……自分で、イケるか?」 小声で意地悪く訊ねる。 自慰は、それほど頻繁にはしていない。でも、男のひととするより気持ち良い場合が多かった。 だけど多分、新田くんのセックスにはかなわない。 意識が遠のくほどの絶頂には、到底たどりつけないよ……。 「……イケない」 「じゃあなんで触ってんの?」 「……新田くんが、触ってくれないから……」 どうしてこんなこと言わされなくちゃならないの。 泣きたくなってきた。 哀しい気分で、熱いままのあそこから指を引き抜く。 新田くんはその手首を掴んで、自分の口元に運んだ。 「あ」 愛液がべっとりとついた中指を口に含む。 「や……やだっ」 温かくて、ざらついた舌が指に絡み付く。歯で軽く噛んだり、唇で吸ったりと刺激を繰り返す。 指なんかじゃ……足りないよ……。 「新田くんっ……も、やだ」 涙が溢れそうになる。 「我慢できない?」 「できな……い」 「泣くな」 彼はわたしの唇に、そっとキスをした。 バスローブの前は簡単にはだける。 一瞬でわたしは裸にされた。 「は……ぅ」 乳首が柔らかい唇に包まれる。その快感に全身が震えた。 右手は胸を愛撫し、左手は脚を擦る。面倒くさがりの彼なのに、こういうときは全身をフルに使うのよね。 「やっぱり大きくなってるなー」 乳首を口に含みながら、両手で胸をやわやわと揉む。気持ち、いい。 「あれから何人の男と寝た?」 そんなこと言いたくないよ。 「言わないと、やめるよ」 そう言いながら本当に動きを止めた。 「や……」 甘えた声を出しても、同じ質問を繰り返すだけ。仕方なく口をひらく。 「……三人くらい」 「いや、六人だな」 どきっとした。どうしてバレるのよー! 真偽はともかく答えたことで満足したのか、彼は胸への愛撫を再開してくれた。 「で、こんなヤラシイ身体に開発されたというわけか」 「ヤラシくなんか……な、ない……っ」 久しぶりの刺激に恍惚となりながら、ぼんやりと考えた。 同じ、乳首を責められるのでも。 他のひとにしてもらうのと、新田くんの愛撫とでは、感じかたが全然、違いすぎる。 新田くんの舐めかた、のほうが、よっぽどヤラシイ……っ……。 巧みな舌の動きが、身をよじらせるほどの快感を全身に伝えた。 思わず声が洩れる。 「ん……っ……!」 「まち、乳首弱いな。相変わらず」 胸の突起を強く吸ったあとで、乳房全体を舐めまわす。乳首を交互に甘噛みする。優しく、撫で擦る。 その執拗な繰り返しに、身体はとろけそうだった。 「ちょっと痩せた?」 右手が腹部に伸びる。脇腹を軽く撫でて、指は下半身へと向かった。 甘い期待に、吐息が洩れた。触って。はやく。 彼の右手は、からかうように繁みを何度も往復している。胸への愛撫も続いていたけれど、熱くなっている身体の中心に触れてほしくて、たまらなかった。 もじもじと、閉じ合わせた脚を動かす。意地悪な手は、そこを避けるようにして、太腿へと移動していく。 「新田……くんっ」 耐えきれずに名前を呼んだ。彼はなにも答えない。 唇が、胸から脇腹へと下ろされる。舐められてもくすぐったいだけだと思う、のに、今はくすぐったさも快感の大きな波となって、わたしを襲う。おかしくなりそうなくらい、気持ちいい……っ。 「あ……っ!」 彼の両手がわたしのひざを掴んだ。無理矢理、両脚を広げられる。 明るい部屋の中で、新田くんに、見られてる。 たぶん、もうぐしょぐしょになってる、その部分を。 「やめて。恥ずかしいよぅっ」 「まだ触ってないのに、こんなに濡れてるんだな」 「や……やぁ……っ」 頬が熱くなる。目を開けていられない。 「どうしてほしい?」 ……はやく、触って。 「言ってみな」 ……お願い、これ以上、じらさないで。 「言わないと、なにもしないよ」 言葉通りだろう。そういうひとだもの。小声で、わたしはつぶやく。 「……って」 「聞こえない」 「……さわ、って……」 「ココ?」 指の感触が、濡れた割れ目を撫で上げた。 「ひ……んッ!」 軽く触れられただけで、泣きそうなくらいに感じてしまう。 「こっちか?」 クリトリスを、無造作に指で押された。 「ぁんっ……!!」 それだけなのに、頭の奥が痺れる。 無意識のうちに弱々しい声で哀願していた。 「……もっと、さわって。お願いだから……」 「了解」 その言葉と同時に、指がずぶりと沈められた。 悲鳴にも似た声が遠くで聞こえた。自分の声だとは思えなかった。 「まち、こんなに濡れて、どうした」 「はぁ……んっ……」 「感じるか?」 太くて長い指がわたしの内部をゆっくりと掻き回す。同時に親指は、いちばん敏感な肉芽の部分に刺激を与えていた。 下半身はもとより、顔にも血液が集まっているみたい。とっても熱い。 「熱い……の」 薄目を開けて、やっとのことで答えた。 指の動きは巧みで、小刻みに振動を繰り返す。せつない痺れがヴァギナに拡がる。 自然と呼吸が荒くなった。 こんなのって。まだ、指、だけなのに。 こんなに、あ、っ。イイなんて……っ。 は……ぅう……。 「んん……ッ!!」 クリトリスを強く擦られた瞬間、わたしは達してしまった。 「まち、イったのか」 ぐったりとなった身体に問いかけられる。 「……ん……」 ああ、また思い出してしまった。 「新田くんってさ……。いつも、わたしがいちどイクまで、挿れなかったよね……」 彼は意地の悪い笑みを浮かべた。 「ああ。いちどイクと、次はもっと気持ちイイんだろ」 そうだった。 軽くイッたあとで挿入されると、怖いくらいに気持ちが良いんだった。 憶えていて、律儀にあの頃のやりかたを守ってくれた、の? 「おまえの泣き声が聞きたくて、絶対イカせてから挿れることに決めてたからなあ」 「泣き声って……」 「イッてからだと、ものすごくエッチな声出すだろ。まち」 そんな自覚ないよ。嘘でしょ? 「ま、そんなことどうでもいいんだよ。もう限界だよ、俺」 あ、そういえば。新田くん、まだバスローブ着てた……。ごめん、わたし、すっかりマグロになってたわ。 服を脱ぎ捨てると、ペニスが隆々とそそり立っているのがわかる。 もう見ることはないと思っていたのにな、コレ。久し振りに新田くんの、見ちゃった。 「えっと……、な、舐めようか?」 「いい、もう、すぐ挿れる。まちの膣(ナカ)、気持ちいいから」 そう言われると、悪い気はしないけど。 新田くんは性急に、仰向けのわたしへ覆い被さった。 亀頭を割れ目の入り口に、ぐりぐり擦り付ける。 「あー、嬉しいなーっ……」 新田くんがため息とともにつぶやいた。 「ずっと。まちと、やりたかった」 どういうつもりで言ってるのか、知らないけど。 それを聞いて、なんとなく幸せな気持ちになった。 彼のペニスがゆっくりと侵入してくる。 圧迫感と、粘膜のこすれる感触。 「あっ……はぁっ……」 根元まで入ってしまうと、わたしは大きく息をつく。 受け入れるのが半年振りだと、ちょっとだけ、痛い。 でも。やっぱり新田くんのサイズってわたしに合ってる、気がする。 気持ちいいよぉ。あーん。 浅く、深く、ペニスが動きはじめた。円を描くように動いたかと思うと、子宮めがけて突き刺さる。 「あ、あ、あっ」 何度も何度も突き上げられて、気が遠くなりかけた。 「はっ、は、はぁぁぁ……っ……。や、やぁん……っっ!」 動きを止めて、身体を折り曲げた彼がわたしにキスをする。舌を絡めてわたしも応えた。 挿入したままのペニスが、ぴくんと脈打つのを感じる。 「まち。そろそろ」 「膣内(ナカ)で出して、いいよ……。安全日だから」 「ま、まじで?」 「うん……」 明日あたり、生理だから。多分、だいじょうぶ。 そうじゃなかったら、挿入の前にコンドームつけてもらってたけどね。 「うわ……すげぇ嬉しい」 新田くんは、わたしの乳房を優しく揉んだ。再び堅くなった胸の尖りにキスをする。 そこ、舐められると。感じすぎちゃうから、やだ。 「ね。はやく」 また、イカせて。 「まち」 名前を呼ばれて胸が高鳴る。 どうしてかな、卒業のときには就職も決まってなかった、こんな情けない男と。 再会して、誘われて、簡単に抱かれちゃって……。 突き上げられて、ひぃひぃ言って泣いてる、わたし。 「まち……まち」 「くぅ……んっ」 抱き合いながら動ける体位になって、くちづけあいながら、腰を擦り付けてる。 動くたびにクリトリスも刺激されて、言葉にできないくらいの快感を生む。 「くふぅ……ん……。あ、あぁっ」 自分を客観的に眺めている醒めた意識と、この快感に抗えない肉体が、同時に存在してる。 おかしく、なりそう。 「まち、っ」 新田くんの動きが激しさを増した。胸を彼の顔に押し付けると、乳首を少し強く噛まれた。この状況以外なら痛かったかも……でも今は、変に気持ち、いい。あ……イキ、そぉ……、やだっ、や……っ!! 自分からも腰を振った。 いやらしく、欲望のまま。 「……っ!!あぁ……あっ……!!!」 高い声が、洩れた。 同時に、イクことができた……みたい。 新田くんも、わたしが跳んだ瞬間に、ぶるッと震えて、果てた。 裸のままで少し眠ったあと。 ふと目を覚ますと、新田くんも起きていたみたいで、目が合ってしまった。 なんだか照れてしまって、世間話なんてしてみたり。 三年振りだから、お互い知らないことも多いわけで。 偶然会わなければ、こんなことにもならなかったわけで……って、あれ? そういえば。 「新田くん、あんな映画、好きだったっけ」 フランス映画なんて趣味じゃなかったと思ったけど。 「好きなわけないだろ」 あ、やっぱり。 「おまえ見つけたから、後ついてっただけだよ。本当、会えて良かった」 うーん。 「今、俺、社長だかんね。悪いけど、また付き合って。っていうか、結婚しようぜ」 「は?」 いきなりなんの話? 社長?どこの会社よ、ソレ。 ……どうやら、また。 この男のマイペースっぷりに、付き合わなくちゃならないのかなぁ。 とほほん。 熱く語りはじめた新田くんを尻目に、わたしは、こっそり頭を抱えた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |