ラビリンス(迷宮) 第三夜
シチュエーション


私は、サンフランシスコから成田に向かう便に乗っていた。
由紀との2度目の夜から、既に1ヶ月が経とうとしている。

朝、私はコーヒーを飲みながら、昨夜の由紀を思い出していた。
二人で過ごした時間の中、すべてをさらけ出していた彼女が可愛いと思った。
おそらく数ヶ月のうちに、心から彼女を愛してしまうに違いない。
たとえ、たどり着く場所が、出口のない迷宮であったとしても。

海外事業部長からお呼びがかかった。
話を聞いて、前の晩の余韻が一瞬にして吹き飛んだ。

シスコの支社長が急病で倒れた。
正式な後任が決まるまで、ピンチヒッターが欲しい、と現地から希望が来てる。
シスコ支社に何年か籍を置いたことのある私に、白羽の矢が立った。
次長がいるはずなのにと思ったが、次長は現地採用のアメリカ人だという。
はんこを持ってないのが、支社長代理になれない理由なのか?
そんなジョークが浮かんだが、口にすることはやめた。
理事クラスに頭を下げられては、嫌といえるはずもなかった。
期限は1ヶ月。
即OKして、企画室の業務引継ぎに1日。支社の現状のブリーフィングに1日。
3日目には成田から飛び出すという強行スケジュールだった。

シスコ到着から4週間が経過した。つじつまだけは何とか合わせた。
そして、約束どおり、本社から新支社長が到着。
商工会議所の6Fで、夕方、地元の有力者を集めてパーティーを開いた。
一応の顔つなぎが終わって、夕暮れの Golden Gate Bridge を眺める。
突然、気づく。この1ヶ月、街の景色を見る事さえ無かったことに。
そして、日本で待っている一人の女のことも。不思議な切なさと共に。

到着ロビーから家に電話を入れた。軽い気持ちで、企画室にも電話した。
驚いたことに小山内が出た。まだ朝の7時半だというのに。

「お帰りなさい。」

私はそのことばを聞いただけで、全てを理解した。
確かに到着便はメールで知らせてあった。
だが、私の声を少しでも早く聞くために、小山内はそこで待っていた。
来るかどうかもわからない私の電話を、彼女は待っていた、、、

「これからそちらに戻る。9時ごろの予定だ。
 お偉いさんに挨拶したら、すぐブリーフィング、」
「はい、昨日のうちに用意してあります。」
「わかった。じゃ。」

私の動揺をそのまま見せるのに、ためらいがあった。
由紀のようには素直になれない自分がそこにいる。

帰国挨拶を済ませて企画室に戻った。彼女を見る。

「もう、よろしいんですか?会議室はおさえてありますから、いつでも。」
「みんな。1時間で終わらせるから、電話は折り返しにしてくれ。頼む。
 行こう。大特急で済まそう。」

書類を持った彼女と一緒に2フロア上の会議室に向かう。
彼女がテーブルに書類を置く。同時に、私が部屋の鍵をしめる音。
こちらに振り返った由紀を、思いっきり抱きしめる。
突然のことに、体をこわばらせている。
でも次の瞬間には私の背中に腕を回し、顔を胸にうずめてくる。
肩が震えている。素肌に着た私のシャツが濡れるのがわかる。
耐えてきたさびしさが私にぶつけられる。
由紀の香りがした。

どれぐらい、そうしていたのだろうか。
あごを持ち上げるように由紀の顔を上向きにして、
軽いキスをしてからゆっくりと体を離した。

少し距離をおいて、彼女はハンカチで涙をぬぐいながら私を見てる。
上から下まで、記憶と照合するように。
突然、由紀が「クスッ」と笑った。なにがあったんだ?

由紀の視線を追う。
私のズボンの一部が変な形に盛り上がっていた。
そういえば仕事オンリーの1ヶ月で、こいつのケアはしてなかった。

由紀が近寄ってくる。無言で、私の前にひざまずく。
ズボンのファスナーに手を掛ける。

「由紀、、?」

おもわず声を掛ける。
由紀は私を見上げて、先ほどの問いかけに答える。小さな声で。

「お願い。」

ファスナーを降ろして、やんちゃ坊主をなんとか引き出した由紀。
なんのためらいなく、唇で迎え入れた。
いかにも普通のことのように、薄い紅色をした由紀の唇に、私のものが。
目の前に展開されるシーンの強烈さも手伝って、強い快感が私を襲う。
私の分身は強烈な硬さになる。実際、痛く感じるほど。
彼女の口の中で、とても激しくピクンピクンと脈打っている。
その脈動さえいとおしむように、由紀の薄紅色の唇が私にまとわりついている。

私の尻を両手でつかむようにして、由紀の顔が動き始めた。
唇が、舌が、そしてのどの奥も、
すべてのパーツが意志をもって、私を包み、粘りつき、さらに絡み合う。
私に快感を与えるために、由紀は体のすべてを投げ出す。

唾液と唇がもたらす卑猥な音の中に、かすかに由紀の喘ぎ声が混ざり始めた。
この行為そのもので、由紀はまちがいなく感じ始めている、、、
私は、呆然として、ただ由紀の髪を撫でていた。

今、由紀は、私の快感のための奴隷ではない。
自分自身が、この行為の中に、快感をむさぼることに目覚めてしまっていた。
彼女の欲望は、より深い快楽を求めて加速する。自らのために。
そして、それは同時に私のためでもあった。

由紀のうめき声が響く。

「うっ、うっ、んんんっ」

私も押さえきれず声を出してしまう。

「由紀、いいよ、、、由紀、素敵だよ、、」

由紀の唇は性器と化している。
私のものから、すべての快感を享受しようとして、あやしくうごめいている。

終わりが近づいてるのがわかる。もう耐え切れない。
放出に備えて、ずっと下の根元のほうが硬くなっていく。

「由紀、出るから、、、」

由紀は小さく首を横に振る。このままでいいのか?

「由紀、、本当に、、」

喘ぎ声をさらに大きくしながら、由紀は動きをやめようとはしない。

そしてそのときが来た。
由紀の口の中で、それは断末魔のように脈打ちながら、
大量に精液を吐き出し始める。
由紀は動きを止め、それを受け止めようとしている。
少し仰向きのその顔は、目を閉じ、
注ぎ込まれるものをいとおしむ、穏やかな表情をたたえている。

こんなにも私を愛してくれている由紀がそこにいた。
私をコントロールしていたものが、音を立てて砕け散る。
ありのままの自分が、言葉になる。

「大好きだよ、由紀。」

由紀がちょっと口を離した。
私の目の前で、口の中のものをそのまま飲み込んでしまう。
のどを通過する私の精液に、首を少し傾げ、満ち足りた声を出す由紀。
そして、再び私のものを手にとり、先のほうを咥える。
キレイに舐めまわして、そして、、、

私を濡れた目で見上げる。

「欲しいのか?」

私は由紀に聞いたのだろうか?
それとも自分に?

由紀を立たせてテーブルのほうに向かせ、タイトスカートをまくる。
ストッキングとショーツを、もどかしく一度におろす。
由紀は自ら上半身をテーブルに伏せ、無防備な下半身を私に向ける。
太ももまで透明な液体がたれている。
私が見つめていることで、余計感じているのか、
誘いかけるように、ひだがあやしく動いている。
次々と愛液が吐き出され、くさむらと太ももを濡らす。

由紀の背後から、一気に貫く。奥まで押し付ける。
満たされなかった月日を補ってやれるぐらい奥まで。
由紀は自分の右手を口に押し当てている。
それでも声が漏れるのを、完全には押さえ切れない。
くぐもった由紀の声と、私の息遣いが部屋を満たす。

少しずつ前後に動く。
不自由な体勢なのに、私の動きに合わせて、由紀の腰がくねる。
尻、そして腰をわしづかみにして、膣を蹂躙する。
由紀の体は喜んで私の暴虐を受け入れる。
手を強く噛んでいることが意味をなさないほど、由紀の声が大きくなる。

既に刺激の頂点に近いところにいた二人にとって、
そう長い時間は必要なかった。

「あっ、あっ、あっ、、もう、ダメっ」
「由紀、、由紀、、いくよ、、」

私が再び大きな脈動とともに精液を吐き出し始めた瞬間、

「ああああああああっ」

由紀の体が大きくのけぞる。由紀も絶頂を迎える。
私の脈動をつかまえるように由紀の収縮が同期する。
二つの動きがおさまっても、私たちは残る感覚に身をゆだねていた。

由紀の抱いていた愛情のエリアに、
私の愛情は、完全に、隙間もなく、オーバーラップしてしまった。
それは同時に、出口のない迷宮に二人が踏み込んでしまった瞬間。

逃れることすらかなわない、ラビリンスに。

 『ラビリンス(迷宮)』 完






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