シチュエーション
![]() 「ずいぶん殺風景だね。由紀の部屋って知らなきゃ 男の子の部屋って思っちゃうね、絶対。」 古い女友達は、私の部屋に入るなり、そう言った。 ついこの間のことだ。 濃い茶色の柄のカーテン。 ダークなフローリング、中間色のソファー。 パイプベッド。グレーのベッドカバー。 黒とシルバーの配色のコンポステレオ。 ここまでで、女の香りがかけらもない。 そこにいる女というと、 デニムのスカートとフリースって、 いつもの、色っぽくない地味ないでたち。 唯一、女っぽいと言えるかもしれないのは、 テーブルの上のアロマ。今日はカモミールの香り。 「由紀って、高校の時、全然男子に興味が無いって感じでさ、」 「そんなこと無かったよ。」 「うそ、誰から手紙貰っても、ゴミ箱にポイだったじゃない。」 確かに、そうだった。でもそれは少し意味が違う。 読んでしまって、その人の気持ちを知ってしまったら、 多分その人の好意を断れなくなる、と分かっていたから。 私は自分の弱さがわかっていた。 まわりの友達は、つかず離れずで男たちと付き合うすべを知っていた。 私はそれほど器用じゃなかった。みんながうらやましかった。 高校、大学と、私は特別な彼氏ができることもなかった。 一度だけ、なりゆきで夜を過ごしてしまったこともあったけど、 その人とはそれっきりだった。 私に残ったのは、好きでもない人と体をつないだ後悔だけだった。 会社に入って、企画室に配属。 あの人はそこにいた。自分でも情けないぐらいの一目惚れ。 既に結婚していて、私の気持ちを表に出すことは許されなかった。 少なくとも好きな人の為に精一杯のことをやろう。 気に入ってもらおう。 自分の感情を隠すために、クールに振る舞う芝居を覚えた。 たいして必要のない眼鏡をかけた。仕事のできる女になろうとした。 そうすれば、いつもそばにいて話ができる。 それだけが私の幸せだった。 そうだった。 あの日までは。 キスを交わし、腕に抱かれ、心も体も深くつながって。 決してそんな日は来ないと思ってあきらめていたのに。 あの人のぬくもりは、いつでも私にやすらぎを与えてくれた。 これでいいんだ。私が望んだことだった。 くよくよするなんてどうかしてる。 心の整理がついて、取り込んだままの洗濯物を片付け始める。 一段落したら、外の空気を吸いに出かけようと思った。 一応、携帯も持った。何のために?番号を教えてもいないのに。 言い訳は得意じゃない。特に自分には。 エレベータを降り、外に出る。晴れている。 とりあえず、アロマショップに行こうと思った。 3連休もあと1日。明日は何しようか。 とりとめもなく色々なことを考えていた。 突然、着信音がした。 まさか? そんなことはないよ、由紀。もう一人の自分が冷たく反応する。 見たことのない番号。歩きながら耳にあてた。 「もしもし」 この声は、、、 「もしもし」 「はい」 「由紀?」 「はい、そうです。」 立ち止まってしまう。あの人だ。 「ちょっと、会いたいんだけど。」 どういうことなんだろう?大丈夫なの?お休みの日なのに。 「少し時間が空いたから。」 理由はいらない。会えるなら。今、会えるなら、、 「今、、、どこにいるんですか?」 「君の後ろ。」 思わず振り向く。 そこに立っていたのは、まちがいなくあの人だった。 やっとのことで、かけよって抱きつきたい衝動を押さえた。 立ちつくす私を見て、近づいてくる。 「こんにちは」 「、、こんにちは」 変な雰囲気。二人とも妙にぎごちない。 沈黙を彼が破る。 「遠出しようか。車で来てるんだ。」 「えっ」 「だめ?」 「そんなことない。全然。」 つい、大きく首を振ってしまう。 時間はもてあますほどある。 「じゃ、お泊りの支度しておいで。」 予想もしない言葉に私は固まってしまう。 耳元に彼が口を寄せた。 「朝までず〜っと、由紀を可愛がってあげたいんだ。いや?」 私は耳まで赤くなっていたに違いない。 ぎりぎりのところで自分を取り戻して、言った。 「車は?」 「さすが。立ち直り早いね由紀は。車は、ほらあそこ。」 「じゃ、支度する間、車で待っててください。すぐ来ます。」 「そうだね、そうするか。」 部屋に戻って、荷物を詰める。 たかが一泊なんだから、たいした量にはならない。 下着をつめる時にふと手が止まった。 どれがいいだろう。 明るいところで見られても大丈夫なのは、、、、 いやだ。なんてこと考えてるんだろう。 適当に下着を選んだ。 そして、ジーンズではしょうがないので、それなりの服を選ぶ。 彼の服を思い出して、あんまりアンバランスじゃないのを。 ハートのイヤリングは忘れずにつけた。 鏡の前で、一応化粧する。すっぴんではあんまりだろう。 鏡の中の私は、ウキウキした表情を隠そうともしない。 はしゃぐ心が、手元を狂わせる。 口紅のラインが決まらない。やりなおす。 やっとできた。 時計を見ると結構時間がたってる。急がなくちゃ 助手席に乗ると、私を見て不思議そうに聞いてきた。 「あれ、眼鏡は?」 「コンタクトしてるんです、普段は。」 「そうなんだ。」 「なんか、違和感ありますか?」 「違和感はないけど、、怖くなくて、とてもよろしい。」 「そんなに怖いんですか?私、会社で。」 「いや、私にとっては単に可愛い女だから問題はない。」 はぐらかされる。でも、返す言葉に困ってしまう。 沈黙を救うように車が動き出す。 どこへ? 私の疑問を雰囲気で感じたのか、話し始める彼。 「やっぱり定番なら熱海でしょう。行く先は。」 「それってあまりにも古くありません?」 「そう。それが問題。ということで、那須のペンションにしたよ。」 「この季節、寒そう。」 「支障はない。ベッドの中で抱き合ってれば関係ないだろ?」 どうしてこう話がそっちに行くのか。男って嫌い。 車はかなりのスピードで走ってる。横顔を盗み見る。 この人と今、こうしていることが夢みたいだ。 「あのさ、」 「何ですか?」 「そのイヤリング、気に入ってくれてる?」 「ええ、とっても。それに初めて頂いたものですし、、」 「それに、とても刺激的だし、、って?」 私は彼の太ももを思いっきり平手でたたいた。 「ドライバーをそんなふうに扱っていいのか?」 「ヘンなこと言うから、、」 「できれば、もうちょっと上のほうを、もっとやさしく、、」 「知・り・ま・せ・ん!」 もう少し、あやしい雰囲気になるかと思ってたのに、 とんでもない成り行きだ。 でも分かってる。ちゃんと。 今、私たちは単なる恋人。他のことは何もいらない。 彼は、私にそう言いたくて、おどけて見せてる。 やさしさが私を包みこんでくれてる。 那須インターをいつのまにか降りて、並木道を走っていた。 小さな道に入り、ゴルフ場の横を通り過ぎて、ペンションの前に止まる。 荷物を持って玄関をくぐる。夕暮れが迫っていた。 「東京から来た山賀ですけど。」 「はい、こんにちは。確かに承ってますよ。一泊ですね。 道路、混んでませんでしたか?」 「途中、ちょっと渋滞に巻き込まれましたけど、なんとか。」 平然と答えてる、彼。やっぱり度胸あるな。 「じゃあ奥さん、疲れたでしょう。」 え、私のこと?あ、そうだよね当然。 「いえ、それほどでも。」 「よかった。じゃこちらにお名前を。」 山賀 誠一 由紀 不思議な思いで記入された名前を見ていた。 「ほら、行くよ。」 現実に引き戻され、部屋に案内される。 部屋の中は二人きり。言葉のとっかかりが見つからずにいた。 「お風呂行こうか。」 唐突に言われた。 「ここには露天風呂があるって言ってたよ。ちょっと汗流そうか。」 そうしよう、今日は体中ピカピカにして、、、あっ、、 「いくぞ。なにボーッとしてるんだ。」 「あっ、はい。」 着替えを持って、お風呂に向かう。 二つのお風呂があって、片方は露天風呂。 「いこう、あいてる。」 「?」 「二人だけで、はいるんだ。鍵がかけられるんだ、ここ。」 ひきずられるように中に入る。でも面白そう。 さすがにここで、彼の目の前で脱ぐのはつらい。 「先にはいってて。すぐ行くから。」 無理は言ってこない。手早く脱ぐと浴室に消えていく。 脱いだものを、下着を下にしてたたんでから、 小さなタオルで気持ちだけ前を隠して、浴室のガラスをあけた。寒い。 木の床と、そのまますっと入れる檜のお風呂。 ふちだけがかすかな段差になっている。ちょっと幅広で。 真正面だけ壁がなく、外が見える。近くの小川の音がする。 外はほとんど薄暗いのに、浴室はかなり明るい。どうしよう。 「そこの左手にスイッチがあるから。」 スイッチを押すと、灯りが消えた。薄闇になる。 桶でお湯をすくい、少し流してからお湯に入る。 「もっとそばにおいで」 そばに行く。並んで座る。 彼の手が私の頭を肩に押し付ける。 肩にもたれて、並んで外を見る。顔だけが冷たい。 「気持ちいいね、露天風呂って」 「そうだな」 ちょっと無言。 やさしいキスが降って来た。受けとめる。 唇を離して顔を見合わせる。 「来てよかった?」 「ええ」 肩にあった彼の右手が、いつのまにか背中に降りていた。 背筋に不思議な感覚が走る。 そのてのひらは脇腹を通過して、タオルの下にもぐりこむ。 右の胸をさわってる。おだやかな気分になる。 「、、、、、あっ」 突然乳首に触られて、声が出る。その声は暗闇に吸い込まれる。 今度は別の手がタオルをはずす。そして左の胸をつかまれる。 そして首筋にキス。 だめ、ダメだってば。私、変になりそう。 「そうか、由紀、そんなに気持ちいいんだ。」 ばれてる。なんでわかるんだろ? やわらかく揺り動かすようにしている二つのてのひらが、 時折乳首を刺激する。予想できないタイミングで。 そのたびに体がビクッとなってしまう。壁に声が反響する。 左の胸に置かれた手が離れ、私の左手をつかむ。導かれる。 その先にあったのは、とても硬いもの。 手のひらで包んだ。 それは手の中で大きく暴れる。 ピク、、ピク、、 「由紀のだいすきなもの、、、だろ?」 そう、私の中に押し入って来るときには、 とても幸せな気分にしてくれる。 動き始めると、今度は狂おしいほどの快感がもたらされて、 私はのぼりつめてしまう。 何度も、何度も、、くりかえし、、、 「何考えてるのかな〜、由紀ちゃんは。 もしかして、、これが入ってくるときの事思い出してた?」 だめ、どうして全部分かってしまうの。 「答えがない。しょうがない、ちょっとチェック。」 彼の手が下のほうに伸びてくる。 「だめっ、やめてっ」 間に合わなかった。 彼の指がひだの間に分け入る。 さっきから、ぬるぬるしてるのが、 自分でも分かるほどだったんだから、、 「由紀って、こういう女だったんだ。すごくスケベで、、」 「ちがいます、、、あなたがこんな風にしちゃったんだから、、 あなたの、、、せい、、だから、、、、あっ」 入り口のとこを触られてしまうと、話なんか続けられない。 それが面白くてイジワルしてるんだ、絶対。 そう思いながらも、彼の指がもたらす快感に、私は身を任せていた。 あ、指が離れる。 「ちょっと、体冷やそう。つかりすぎた。」 確かに、変なことするから、余計のぼせてしまった。 二人して風呂のふちに腰掛けて、ほてりを覚ます。 先ほどのタオルを見つけて、私は前を隠した。 彼は裸のまま。当然にょっきりと、、 目のやり場に困る。やっぱり変な形だと思う。好きだけど。 「出ようか?食事の時間だし。」 「うん、そうしよ。」 正直言って、助かった。 あまりにもむき出しの欲望と面と向かうのは、やはり恥ずかしい。 先にあがって、服を身につける。くつろげそうなもの。 遅れて彼。待って、手をつないで部屋に戻る。あったかい手。 「すぐ食事に行こう、のども渇いたし。」 「先に行って。これでも女には支度があるの。」 彼を追いやってから、トイレに。 だって、あそこがぬるぬるで、ひどい状態だったから。 ショーツも濡れてて気持ち悪いから、新しいのにした。 食事はとてもおいしかった。地ワインの味もそこそこ良かったし。 部屋に戻って、なりゆきというのか、 セミダブルのベッドの上で、服を着たまま二人でたわむれる。 突然、真顔になって、彼の『お話』が始まった。 とっても足の速いねずみがいました。名前はアシュトンといいます。 広い野原をかけまわって、、 こら、くすぐったくても動いちゃ駄目だって。由紀。 ちゃんとお話を聞いてなさい。そう。じっとして、御行儀よく。 こうしてアシュトンは野原をかけまわって毎日を暮らしていました。 いつものように走ってると、目の前にちょっとした山が現れました。 結構な高さがあります。それもふたつも。 頂上がなんだかとんがっていて、見たことのない形をしています。 アシュトンはどうしても登ってみたくなりました。 ふもとのほうから、アシュトンはゆっくりと登りはじめました。 ヨイショ、ヨイショ。さすがのアシュトンでも、走ることはできません。 なぜって?それは、けっこう急なのぼり道だったからです。 ヨイショ、ヨイショ。歩きながらアシュトンは考えました。 まっすぐ登るから大変なんだ。ぐるぐる回りながら登れば楽かもしれない。 さっそく行動に移りました。ぐるぐる、ぐるぐる。ほら、こうやってね。 やっと頂上にたどり着いたとき、 アシュトンは背中がかゆいのに気づきました。 そこで頂上の大きな岩に背中をこすりつけ始めました。 ゴシゴシ。ゴシゴシ。あれ、急に岩がふくらんできました。 おはなしはずっと続いていた。私の体の上で。 いつか、樹海を抜ける話にかわって、泉にたどり着く話へ。 そこには『ほらあな』があって、、、、 この頃には、私、とてもひどい状態で、 残りのショーツの数を考えてしまってたぐらい。 アルコールのせいもあったんだけど、正直に言うと、 さっきお風呂で握ったものが欲しくなり始めていた。 こんなこと、絶対、口にできないけど。 「はい、アシュトンの大冒険、前編はここまで。」 突然話が終わった。彼の手が離れていってしまう。 「ちょっと一休み。お風呂はいろうか。」 物足りないけど、、、、、。今夜はずっと一緒なんだから。 それに私、露天風呂の誘惑には勝てなかった。いろんな意味で。 行ってみると、うまいことに誰もいない。 彼が脱がせてくれる。私は、さっきと違ってなすがまま。 横抱きにされ、お湯の中まで連れて行かれる。 赤ん坊のように彼のひざの上で抱かれた。 とても落ち着いてしまう。 しばらくして体が熱くなった頃、 湯から出され、湯船と床の境目のところに乗せられた。 背中にぬるぬるした木の感触。 ここで?うそでしょ、、 すぐに、彼が入ってきた。 準備はできていた。十分に。十分すぎるくらい、、 とてもスムーズに入ってきた。奥まで。 でも、ちょっと動きにくいみたい。 私も、背中が痛くなりそうで、集中できないし。 「部屋に戻ろうか、由紀。ここじゃちょっと、な?」 「うん。」 同じ事、感じてたみたい。 部屋に戻って、どちらともなく服を脱いで、 無言で二人してベッドに入る。彼が上になって、 すぐに奥まで入れられて。私は幸せな気分になる。 今の私の気持ち。あなたに全て伝えたい。 心も体も全部満たされて、とっても幸せ、今。 あなたのことが、すごくいとおしく思えて、、、、 大好き、、、、大好きだよ。離れたくない、ずっと。 不思議。とっても気持ちよくて、 悲しいわけじゃないのに、涙がこみあげてきた。 次から次へと、あふれて、こぼれて、どうしても止まらない。 おかしいね、こんな幸せなのに。こんなにやすらいでるのに。 私、いつのまにか、子供のように大きな声を上げて泣いていた。 一度体が離れる。そのまま続けられる状態じゃなくなってる。 しゃくりあげている私。横から抱きしめる彼。 しばらく、私の髪をなでてくれていた。 私の高ぶった気持ちが、引き潮のようにおさまっていく。 彼の胸に頭を乗せて、鼓動をしばらく聞いていた。 おだやかな気分でいっぱいになって、目を閉じた。 のどの渇きを覚えて目がさめる。あれ、ここどこだっけ? そばのあったかさに気づいて、彼と一緒だと思い出す。 そうだ二人で『お泊り』したんだ。 外の自動販売機でウーロン茶を買って、戻る。 窓際のソファーに座って、きのうの出来事を思い出してた。 突然の携帯。車。おしゃべり。お風呂。アシュトン、、、 そう、ねずみのアシュトン。とってもセクシーな童話だった。 あれ?結局二度目のお風呂のあと、そのまま私寝ちゃったんだ。 悪いことしちゃった。彼、気持ちよくなってないもの、、 「今、、、何時、、?」 かすれた声がベッドから聞こえる。私が立てた音のせいだろう。 ウーロン茶を口に含んで、ベッドの彼におはようのキス。 ゴクッゴクッっておいしそうに彼。 「ねっ。お散歩いこうよ。」 枕もとの腕時計をみて 「人が起きる時間じゃない、、」 「せっかく高原まで来たのに、景色ちゃんと見てないよね。」 ちょっと反応がある。 「それに、腕組んであるいてみたい。人の目を気にしないで、、」 ちょっとしおらしいバージョンで言ってみる。窓の外を見ながら。 ベッドの上に起き上がる気配。私を見てる。 「よし、行こう。朝の散歩。」 ひっかかった。単純だ、男って。 服を着て外に出る。すっかり明るくなっているけど、かなり寒い。 腕にぶら下がるようにして歩く。結構、本音だったし。 ところどころの野草が、可愛いい花をつけている。 空気もきれいだし、誰もいない。車も通らない。 どこまでも歩いていけたらいいのに。 横道にはいる。ちょっとした林の中の道。緑のにおい。 少し奥まったところで彼の足が止まる。キス。 あいさつで始まって、すこしずつディープへと。 私の体の奥のほうが、うずきはじめてる。 背中の手が私のお尻にまわる。両手でわしづかみされる。 彼の腰にぐっと押し付けられる。硬いものが感じられる。 脈打ってるのがわかる。 そのままスカートをまくりあげて、ショーツの中に手が。 直接彼の手がおしりに触れる。だめだってば、そんなことしちゃ。 誰か来たら、恥ずかしい、、 むこう向きにされる。フリースの下からノーブラの胸へと手が移動する。 今度はお尻に硬いものがあたってる。両手が乳首をこねまわす。 「あっ」 刺激が強すぎて、下半身にダイレクトにつながってしまう。 濡れ始めた。たったこれだけの愛撫で。 片手がショーツの上からクリトリスをなでた、的確に。快感が走る。 「だめ、あぅ、、、」 今度は、入り口の近くを中心に、指が円を描く。 私の意識はどうしてもその中心部へ集中してしまう。 もう、ひだの中に粘液がたまり始めてる。 彼の指が入り口近くを強く押した。 ひだが押されて、中からあふれたものがショーツにしみていく。 「由紀、あそこ、びしょびしょだね、もう」 気づかれてしまった。その言葉で、また、よけいに感じてしまう。 「いじわる、、、」 彼の指が上下に往復を始めると、押さえようもなく声が出てしまう。 人に聞かれてはいけないと思うと、逆に高ぶってしまう。 ショーツが、、、ショーツがおろされてる。だめ。やめて。そんな。 「だめ、こんなところで、、」 「ほらさわってごらん。由紀の中に入りたい入りたいって言ってるよ。」 外に出された彼の固いものを握らされた。指から受ける感触が私の心を乱す。 下半身に火がそそがれる。あそこが熱くなる。欲しくなる。 突然に指をいれられた。 「うぅっ」 「ほら、由紀のもいれて欲しいって、、」 入れられた指を包み込むように、私の中がくねる。指を圧迫してる。 腰が動いてしまう。動きを止めようとするけど、できない。 抱え上げられ、ひざに引っかかってたショーツが脱がされた。 「ほら、体を前に傾けて、お尻突き出すように。」 私はもう彼の言うがまま。だって、彼の硬いものが早く欲しいから。 スカートがまくり上げられて、むき出しのお尻がひんやりする。 入り口にあたってる。彼のが。そして貫かれた。一気に。奥まで。 頭の先まで衝撃が走る。体中がばらばらになりそう。 私の両手がつかまれた。身動きできない。犯されてるみたい。 動きが始まる。ゆっくり、それからだんだん早く。 出入りのたびにピチャピチャと音がしてる。 あっ、わたしのすきなとこにあたってる。あたってるよ、、 私は頭の中が半分白くなってしまって、 大きなあえぎ声が出てるの、わかってる。でも、止められない。 彼の動きが速くなる。こんどは、奥のほうが、、、すごい、、 「ああっ、だめ、、もう、、だめっ、、いっちゃう、いっちゃう!」 「由紀! 由紀!」 彼が動きを止めて、ぐっと奥に突き入れてくる。 同時にピクンピクンってしながら熱いものが私の奥にそそぎこまれて、 それが感じられた瞬間、私もいってしまう。 呼吸が元に戻って、彼が体を離した。 私の粘液と彼の精液が混じったものが垂れてくる。大量に。 何かがそこに押し当てられた。とりあえず止まった。 「ありがと」 「でも、それ、由紀のショーツ、、」 当然ショーツはぬるぬる、着替えなんてもってないし、、。 しょうがなく、ショーツなしで帰ることになってしまった。 歩き始めた途端、彼の手が後ろからスカートをめくる。 「やめてったら。」 手で押さえる。 「いや久しぶりのスカートめくり。いいなあ。 子供の頃と違って、新鮮だし。なにより由紀のお尻、丸見えだし〜」 「ばか」 どうしようもないやつなんだ。こういうところ、やっぱり、男。 部屋に戻る階段だって、先に行かすのに一苦労。 それでも散々ぼやいてたっけ。 部屋に戻ったら、そのまま私、ベッドに押し倒された。 「お掃除しなきゃ。」 何言ってるんだろ? 「中のほう、ちゃんとね。」 その言葉が終わらないうちに、彼のものが入ってくる。 グッと奥まで。ゆっくり引き戻されて、また奥に。 「あっ、うっ」 さっきの興奮がまだ残ってて、また火がついてしまう。 「だめだよ、感じたら。おそうじなんだから。」 急に抜かれる。だめ、抜かないで、お願いだから。 枕もとのティッシュを抜く音。私のあそこに当てられてる。 「はい。お掃除完了。」 たしかに散歩のときの分はすべてティッシュに吸い込まれた。 「すっきりしたろう?じゃ、朝ごはん食べに行こう。」 「待って。このままじゃ駄目でしょ?」 「いいよそのまんまで。」 なんてこと言うんだろ。この人。自分の言ったことわかってる? 私、そんな趣味ないんだから。 「別に、誰にもわからないだろ?二人だけの、ヒ・ミ・ツ。」 確かにこのぐらいの丈のスカートなら、外から分かるわけも無い。 大丈夫かもしれない、、 「じゃ、合意ってことで。行こう。」 ひきずられるように部屋を出る。 OKしてないんだけど、私。 ダイニングは、家族連れとカップルであふれてる。 一組のカップルは、こっちが見てても恥ずかしいくらい、 無言でうつむいたままトーストを食べてる。 ゆうべのこと、思い出してしまって、顔も見られないんだろ。 それに引き換え、こっちはとんでもない事態。 なんで、こんなことになってしまったんだろ。 何も覆うものがない状態って、なんか落ち着かない。 「あのさ、」 コーヒーを飲みながら彼。 「な〜に?」 平然を装う私。 「今朝の散歩、気持ちよかったね。」 魂胆みえみえ。 動揺を押さえ、「そうね」と軽く流す。ちょっと間があく。 サラダに手をつけたとき、また彼が話し出す。 「アシュトンの話、途中だったよね、そういえば。」 思い出してしまった。つい。 「どこまで話したっけ、ゆうべ。」 じわっ。濡れてくる。だからダメだってば。 「続きはまた今度でいいから。ねっ、今は違う話、しよう?」 「そうだねこんどゆっくりとしよう、あの続きは。」 私をじっと見つめながら言う。 その目が私を犯してる。 体を貫かれたような気がして、また感じてしまう。 朝食の味なんて何もわからなかった。 彼の言葉だけで感じてしまった自分も情けないし。 「ごちそうさま」って言って、先にダイニングを出る。 追いかけるように彼。 さっさと階段を上る私。部屋に入る。彼も、遅れて。 「由紀、言いにくいんだけど、、、」 「なんですか。いまさら謝っても許しません。絶対。」 「ちがうよ。由紀のスカート、、」 彼がスカートの後ろを指差す。 鏡の前に行って肩越しに見た。 ちょうどあそこのあたりに大きなしみができてる。やだ。 「もう、ばかっ!」 帰りの車で、いっさい口をきかなかった。 当然のむくいだ。私にあんなことしたんだから。 私のプライド、ずたずたにされたし。 スカートにあんなしみ作って、自分が女だと思い知らされて。 意地でも無視してやる。話し掛けられても無言。 彼、絶句してる。いい気味だ。もっと困らせてやる。 2日間、とぎれなく私をいたぶった罰だ。 それを全部感じてしまってる、わたしもわたしだけど。 無言のまま、車だけは東京へと近づいている、着実に。 右手一本だけでハンドルを握る彼。 そっと、あいてる彼の左手を握った。 私を見てる。怪訝な面持ちで。 「危ないから前を向いて。」 あわてて正面を向く彼。考えてる。 「、、、、怒ってないの?」 「もう、落ち着いたから、大丈夫。」 「よかった、、」 そういうそばから私の太ももに手が伸びる。 「それがいけないんだってば!」 「はい、すみません。」 私のマンションの前で車が止まる。 降りようとした彼を押しとどめる。 「ここでいい。」 「でも、、」 彼のおでこにチュッとキスをした。 「とっても楽しかったよ。また行こうね。お泊り。」 荷物を持って下りて、ドアをバタンと閉めて手を振る。 未練を残して彼の車が発進した。 遠くの角を曲がるまで見送る。 部屋まで送ってもらったら、私、絶対言ってしまう。 「帰らないで、、」って。 そして泣いて叫んで、彼を引き止めてしまう。 そうならないようにする自信なんて、、全然無い。 部屋に帰る。私一人の部屋。暖めてくれる人もいないベッド。 明日、また会えるんだよ由紀。だから、我慢するんだよ。 私は自分自身に、そう話し掛けていた。いつもと同じように。 「山賀君とは、君のほうから別れて欲しいんだ。」 私は自分の耳を疑った。 海外事業部長から社内メールが来たのは、今朝だった。 接客室に招かれ、そして突然、この言葉。 「私の友人が、那須に遊びに行っててね。 山賀君を見かけたんだ。そして同伴の女性も。 彼は、奥さんだと思ってたようだけど、 話を聞いてるうちに、私には君だとわかった。」 「山賀君にはニューヨーク支社に行ってもらう。 支社長のポストだ。栄転になる。 私が無理を言って企画室から引き抜く形をとる。 根回しも済んでる。そして、君には企画室に残ってもらう。 誤解しないで欲しい。ペナルティじゃないんだ。 まして、人の恋路を邪魔する趣味は、私にはない。 私は単純に、君たちの才能を惜しんでる。 このままにしておいても、 いずれ君たちのことは、どこかで分かってしまうだろう。 そして会社は有能な社員を二人同時に失う。」 ちょっとした偶然が、私たちを引き裂こうとしている。 目の前の役員が、彼の才能を惜しんでいるのは確かだ。 そして私に協力を求めているのも。 私が断れないのも。 そんな私が悲しい。すべてが終わろうとしてるのに。 「わかりました。」 人事異動が公表された。 「もう、会いたくない」 私はそれだけ繰り返した。 それ以上のことばで、私の思いを嘘で塗り固めたくなかった。 1ヵ月後、山賀は奥さんとニューヨークに旅立った。 半年後、若い子たちに業務を教え込んでから、 私は円満退社した。そして、全く分野違いの会社に入った。 新しい会社で、一人の男の人が私に気を使ってくれた。 そしてその優しさにくるまれているうちに、 いつのまにか一緒に住むようになっていた。 あたたかさに飢えていた、のかもしれない。 「どうして、私と、、?」 「さびしそうで放って置けなかったんだよ、君が。」 「わたし、、、」 「いいよ、つらいことは話さなくて。 正直言うと、聞いたら嫉妬するよ、俺。必ず。だからいい。」 いつもそばにいてくれる人。私を包んでくれる人。 これでいいんだ。傷ついた私をまるごと愛してくれてる。 やっとたどり着いたんだ。そう、この腕の中が私の居場所。 「行きたくないよ〜」 「わがまま言わないの。接待ゴルフも大事なんだから。」 「俺が居ないほうがいいのか?由紀は」 「もう、馬鹿なこと言ってないで。遅れるよ。行かないと。」 やっとのことで大きな駄々っ子を送り出す。 あーあ、こっちだってつまんないんですよ〜。 せっかくのお休みなのに、今日はひとりぼっちだ。 とりあえず、お洗濯しようか?それとも、、。 ファー、眠いや。 ゆうべ寝かせてくれなかったし、、、 もう一度ベッドに入ろう、やっぱり。 携帯が鳴った。 「由紀?」 この声、、、、 「由紀なんだろ?」 忘れていた感情が瞬間的によみがえる。切なく。 「今、成田に、、、」 体があのときの刺激を思い出している。 あの人の愛撫、ぬくもり、快感、、 「由紀、聞いてるのか?」 、、もう携帯からの音も聞こえない。 まわりの景色が消える。暗闇が私を包む。 かすかに見えるのは、遠くまで広がる静寂の迷宮。 出口の無い回廊で、私は立ち尽くす、、、いつまでも。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |