シチュエーション
![]() NGC2787は、何の変哲もないレンズ型の棒状渦巻銀河だった。 大熊座の中にあって、地球からの距離は約2400万光年。 7年前、私たちはその中心部で敵と遭遇した。 友好関係を結ぶ試みは既に意味のないものとなり、 この銀河のあらゆるところで、毎日のように白兵戦が展開されている。 昨日の任務では4人が帰ってこなかった‥‥‥ 781中隊は、この3ヶ月で既にその数を半数まで減らしている。 ラウンジでコーヒーを飲みながら、私はなんとなく予感していた。 地球からはるか離れたこの辺境の地で、近いうちに訪れるだろう自らの死を。 隣にいた女に気づく。顔は知ってるが話したことはない。目が合う。 同類。 私を見つめる目で、彼女の考えていることが分かった。 欲しいのはひと時のやすらぎ。それだけ。言葉は要らなかった。 手を取り、居住区に向かう。 歩きながら私の中で強烈な欲望がわきあがり、それは形になる。 気づいた彼女が、歩きながら触れてくる。そのまま手を離そうとしない。 逆に、服越しにその形をなでるように。 明らかな生の証を彼女は今欲しがっている。私も同じだ。 立ち止まる。 肩をつかんでこちらを向かせる。 彼女の表情の奥にあるもの、それは待ちきれない欲望。 背中を押し、通路の途中のくぼみに二人して入り込む。 そこは監視カメラの死角。警備員もこのブロックには来ない。 壁を背中にして私が立つ。 彼女は腰を落とし、排泄用のジッパーから私のものを取り出す。 迷うことなく口に含む。 私の尻にまわした手を基点に、長い黒髪が揺れる。 横からくわえようとして顔を傾けた時に、横顔が見える。 私の硬いものを、いとおしむようになめあげている。 そのままの態勢で動きをやめ、私を見上げる。 見つめ返す。 再び彼女は作業に没頭する。 喉の奥深くまで吸い込み、ゆっくりともどす。 先端の段差のところで唇を止め、舌をうごめかせる。 私が息を詰めたのに気づいて、一度、離す。 むきだしのそれは、細かく上下に動く。私の心臓の鼓動と同期して。 それは、私が生きていることの証。 再びくわえる。 ゆるやかに髪が揺れ始める。 泣いている。唇がたてる卑猥な音のすきまに、嗚咽がまじっている。 私はただ彼女の髪をなでていた。 それ以外に、私が彼女にしてやれることは何もなかった。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |