お菓子の食べ方2 チョコレート効果
シチュエーション


『チョコレート効果』

黒っぽくて渋めのパッケージに書かれた商品名は、
簡潔と言うか、お菓子にしては不思議な名前だった。
職場の休憩室にある自販機に突如として現れたお菓子に、
B型の奇妙な物が好きな性質をくすぐられ、
あっさり購入してしまった。

パッケージには

『健康とおいしさを考えた大人のチョコレート』

などというちょっと怪しげな文句が書かれていて、
更にあたしの好奇心を刺激した。

「ほらほら、見て〜 『大人のチョコレート』だって!」

一緒にいた仲間にきゃあきゃあ言いながら見せて、
パッケージを開けてみんなに配った。
10センチもないスティック状のチョコレートは、
ビターチョコのような色の濃さで
味も甘さ控えめの『大人の味』だった。
あたしは甘いミルクチョコが大好きなんだけど、
これは何だか苦めでも、とっても美味しくて気に入ってしまった。

その後も何度か購入して、今日もヤツと部屋でくつろぎながら、
のんびりとかじっている。
ポリポリという音に、ヤツがあたしに話しかけた。

「なに食べてるん?」
「『大人のチョコレート』。ふふふ、アヤシイでしょう〜?」
「・・・お前、ホンットに変なモン好きだな。それもネーミングだけで買ったんだろ?」
「失礼な。ま、最初はそうだけど、でもコレは本当に美味しいんだから!食べてみる?」
「いらないよ。俺が甘いモン好きじゃないの、知ってるだろ?」
「そっか。可哀想にね〜 こんなに美味しいもの好きじゃないなんて」

ポリポリかじるあたしを尻目に、「好きじゃないモン喰えんでも可哀想でも何でもない」とか
ぶつぶつ言いながらヤツがそばにやってくる。

あたしの横に座ると、

「やっぱ、それ、頂戴」

と、ヤツが急に言い出した。

「え、甘いもの好きじゃないじゃん」
「いいから」

訝しく思いながら、箱から一本取り出す。

「はい」

個別包装してあるスティックチョコを、ヤツに差し出した。

「開けて」
「それくらい自分でしなさいよ。何甘えてんの?」
「いいから」

ちょっとむっとしながら、ビニール包装を破ってやった。

「ほら」
「端っこくわえて、食べさせて」

差し出した手と、表情がかたまってしまった。

「・・・冗談・・」
「本気だよ」

お菓子を前に、妙に本気な眼差しでヤツが言う。
あ、ヤバい。この目、こないだと同じだ。

やつのペースに、引き込まれてく・・・

「・・・イヤ・・・」

蛇に睨まれたカエルのように、途端にすくんでしまう。
何時もの強気が何処かに行って、ヤツに従ってしまいそうな予感。

「嫌じゃないだろ?だって、目が期待してる・・・」

すっと顔を寄せて来て、耳許で囁かれた。
これで、スイッチが入ってしまった。

かたまってしまったあたしの手からチョコを受け取り、

「はい」

ヤツがあたしの口元にチョコをつきつける。

「手、出しちゃダメ。口だけ運んで来て、ぱくっとくわえるんだよ」

心臓が、一回飛ばして打った。
あたし達は、たかがチョコを目の前にして、一体何をしてるんだろう。

催眠術にでもかけられたみたいに、あたしは震えながら唇を寄せる。

ぱく・・

「すっごいいやらしい顔してた、今・・・」

熱っぽくヤツに言われて、羞恥心でいっぱいになる。
目が、潤んで来た。

「俺がもう一方をくわえたら、お互いにかじっていくんだよ・・・」

そう命令して、ヤツもチョコの端をくわえた。

カリ・・・ポリ、ポリ・・・

10センチもないチョコをかじるのに、随分時間が経った気がする。
もう食べ終わるという時に、ヤツがあたしの頬を両手で包み込んだ。

「んん〜〜〜!!」

逃げられないようにされて、体がビクッと跳ね上がる。
チョコレートを口におさめた流れで、ヤツの舌が侵入して来る。

「んっ・・・んぅ・・・んん・・・」

チョコレートが官能に溶けて、甘味を増した。
どろどろに溶けたチョコと、舌が、口の中でからみあう。
あたしは体の力が抜けてゆくのを、何となく感じていた。

ヤツが唇を離した時、飲下せないチョコレートの雫が口の端を伝った。
舌を出して、ヤツがねっとりと舐めとる。

「うん、美味しい。確かにこれは食べられないと可哀想だ、俺」

しれっとヤツが呟いた。

「・・・・・バカッ!!信じらんないっっ!!」

顔がかぁっとなるのを感じた。何なの、コイツ!

それでも、あたしの体はもはや力なんて入らない。
こんな状態では抵抗なんて無駄みたい。
怒りを感じる一方で、あたしの思考はまったく別の事も考えていた。

甘いチョコレート。
どろどろのチョコレート。

「・・・おんなじくらい、甘くてどろどろに溶けるくらい、してあげるよ」

あたしの考えを読んだかのように、ヤツが言った。

ふたりの夜は、まだ、始まったばかり。






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