Dance Dance Exhibition
シチュエーション


週末。
駅前のロータリーで人を待っている私。

時計をちらちらと気にしながら立っている私は、何のへんてつもない、『彼氏を待っている女』でしかない。
でも、周囲の男たちからの無思慮な視線が集まり、私の肢体に突き刺さる。
スカーレットのスーツ。短いスカート。
白い薄手のブラウスに包まれた大きな胸。
背が高く、凹凸の目立つボディは、派手な服と相まって否応無しに人目を引く。
いつもなら、こんな派手な服は着ないのに、彼の言いつけ……いいえ、彼の命令通りに私はこんな格好で立っている。
約束の時間まで、あと五分。もう二十五分も、こうして衆目に晒されていることになる。
これも彼の命令。約束の時間より三十分前に、待ち合わせの場所にいること。
きっと彼は、どこかで私を見張っているはずだ。私が、恥ずかしさに耐え兼ねて逃げ出したりしないように。
何気ない風を装って私をちらちらと見つめながら通り過ぎるサラリーマン。
無遠慮に「すげー」とか言いながら見ている中高生の坊やたち。
私を指差す小さな子供をおしとどめる母親。
ああ、早く、早く来て。正面のビルの壁に埋め込まれたデジタル時計を見る。
約束の時間は、もう過ぎている。でも、ここから動くことはできない。

「……来た」

見慣れた車がすべりこんでくる。助手席のドアを開け、シートに滑り込む。
人々の視線からようやく解放され安堵する私の太股を撫でる彼の手。
スカートの裾をたくし上げ、脚の付け根まで触れる指先が、約束の履行を確認している。黒いパンストの下には、何も穿いていなかった。

「言いつけ通りにしてきたようだな。ふふ、こんなに濡らして……」

ブラも、ショーツも着けてこないようにとの命令。そんな姿で人々の視線を浴びつづけた私は、既にそこを湿らせてしまっていた。
私のそこを確かめると、彼はハンドルを掴み、アクセルを踏んだ。
車が走り出す。私を、次のステージに連行するために。

「今日は……どこ?」
「○○市だ。駅前に、大きなゲームセンターがある」
「……」

二つ隣の街の名前。
ゲームセンターと聞いて、今日自分が何をさせられるかを悟る。

「わかっているだろう? 靴を替えておけ」
「……はい」

足元に転がっている紙袋。中身は、かかとの低い靴。今履いているものと同じような派手な色合いのそれは、私を包むスーツによく似合っていた。

(また……踊る、のね)

ふと車窓の外をよぎった青い案内板が、○○市に入ったことを私に告げた。

彼が言っていたゲームセンター。
一階フロアは、クレーンゲームの類が面積のほとんどを占め、片隅に、今では見向きも去れなくなったプリクラの筐体が数台、寂しそうに置かれている。

エスカレーターに乗り二階へ。短いスカートを手で押さえることは禁じられている。
内心、泣き出したいくらい恥ずかしいのを顔に出さぬよう、努めて平静を装う。
若い男の子達の目にとまったらしい。下着を着けていないことまで知られたりしないとは思うけど、恥ずかしくてたまらない。

目的の装置は、二階フロアに置かれていた。
少し前に流行したダンスゲーム。
音楽に合わせて、画面に表示される矢印の通りにステップを踏む、至ってオーソドックスなものだ。
ブームが去ったせいもあって、プレイしている人はいない。だが、それでもたまにプレイする人がいるのであろう、デモンストレーションの画面にはそれなりのハイスコアが表示されていた。

「あれを上回るまで、続けるんだ」
「はい」

このゲームならそれなりの自信がある。あの程度のスコアなら超えられるのはまちがい無い。

「上着は、私が預かろう」
「……はい」

スーツの上着を脱いで彼に渡す。それを受け取った彼が、百円玉を機械に入れる。
ごくり、と生唾を飲む。音楽が始まった。

アップテンポな派手な音楽に合わせて踊る私。
上、上、右、右、左、下……
かかとの低い靴はこのゲームのためのものだ。リズムに乗って踊りつづけるうち、次第に私のアクションも大きなものになってくる。
まず一曲クリア。ファンファーレが鳴り、次の曲の開始が表示される。
ブームが去ったとはいえ、プレイヤーが派手に踊るこのゲームは人目を引くものだ。
増して、背の高いグラマーな女……自分で言うのは何だけど、美人が踊っているのだ。
一人、また一人とギャラリーが増えてくる。

「やるじゃん」
「背ぇ高いよな」
「胸もでけぇぞ」

男の子達の無遠慮な声が届く。ブラを着けていない胸が、ジャンプするたびに揺れるがそれを押さえることもできない。
人々が集まってくる。身体を動かすことで激しいビートを打ち続ける心臓の音がさらに跳ね上がる。体温が上がり、汗が噴出す。薄いブラウスが肌に張り付き始める。

「……おい、あの女、ノーブラじゃねぇのか?」
「……本当だぜ」

気付かれてしまった。汗で張り付いたブラウスの背中に、ブラのラインが浮き出ないことに。何人かの少年が、筐体の横に、そして前の方に移動してくる。

「本当だ、見える、乳首、見えるよ」
「すげぇ! 巨乳じゃん!」

その声は、踊っている私の耳にも聞こえるくらいだ。周囲のギャラリー達にも聞かれてしまっているだろう。

今にも逃げ出してしまいたいのを必死で堪えて、私は踊りつづける。
ここで逃げても、罰としてもっと恥ずかしいことをさせられるだけだ。
一刻も早く開放されたければ、可能な限りノーミスで、高いスコアを取るために踊りつづけなければならない。
前の方から見ている男の子たちが、床にしゃがみこんで私を見上げている。
短いスカートの中を覗き込もうとしているのだ。
いや。見ないで。
そこだけは。
ああ、お願い、気付かないで。

「何色だ?」
「わかんねぇよ」
「ストッキングと同じじゃねぇのかな?」

曲にあわせ、画面の表示にしたがい踊りつづける私。
タン、と跳ねる。「←」と「→」を同時に踏むために、足を開いて着地する。

「履いてねぇ!?」
「うそっ!?」

気付かれた!!
タイトなミニスカートは、ぎりぎり今まで私のことを隠してくれたけど、足を開き気味にしての着地の一瞬、めくれあがってしまったのだろう。
低い位置から見つめている男の子たちの視線には、パンストの下に透けて見える茂みが、くっきり見えてしまったのだろう。
周囲の皆がざわめく。ノーブラ、ノーパンの女が踊っていると。
ああ、早く、早く終わらせたい。焦る気持ちがミスを呼ぶ。
彼の口元にいやらしい笑みがうかぶ。このままゲームオーバーしたら、また振り出しに戻ってしまう。

曲のテンポが高まる。難易度の高い曲だ。ジャンプして、足を派手に動かさないとクリアできない。それは、しゃがみこんで私を見上げる少年達の視線に、局部を晒しつづけることを意味する。

「ぬ、濡れてるよな?」
「おぉ、染みてるよおい」

私のことは何もかもばれてしまっている。それでも、踊りつづけないといけない。ああ。
彼らの声を聞かないよう、聞かないようにしても無意味なことだ。そう思えば思うほど、彼らの声が耳に届いてしまう。視線を肌で感じてしまう。

パパッ。

何かが瞬いた。カメラのフラッシュ!?

「いやあっ!?」

私はとっさに、胸を押さえてしゃがみこんでしまった。無論、ステップなど踏めない。

ミス! ミス! ミス! そしてゲームオーバー……。

誰かが私の腕を掴んで引き上げる。彼だ。

「行くぞ」

無理矢理に私を立たせ、引き連れていく彼。

「何だよおっさん!」

少年達が何か騒いでいるが、強引にそれを振り切って私をゲームセンターから連れ出す彼。駐車場に停めておいた車に押し込まれる。スカートの中をまさぐられ、視姦され続けた事で濡れきったそこをチェックされる。

「くく、惜しかったな」

彼の手には、小型のデジタルカメラが握られていた。

「まぁ、合格だ。ホテルに行くぞ。可愛がってやる。そうだな……ホテルにつくまで、自分でし続けろ。1回イくごとに、回数を増やしてやる」
「……はい」

いつの間にか暗くなった街を走る車の中でオナニーを始める私。いつも利用しているホテル……二つ先の街に着くまで、私は痴態を晒し続ける……。






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