シチュエーション
![]() いつ見ても綺麗な指だなぁ…。 仲野はきっと数百万はするだろう指輪の入った小箱をあっという間に美しく包装していく。 知らず知らず滑らかな包装紙を操る指に、里香の目は引き付けられる。 一流百貨店の宝飾品サロンとはいえ平日の昼下がりは客も少ない。 いくつかあるケースに囲まれたブース中の一つで、仲野は商品の包装を、里香は訪れる客を待っている。 「忙しそうですね」 里香が声をかけると仲野は手を止めて里香に振り返った。 「そうだね、明日やっと休みでさ。久しぶりにゆっくりできるよ」 柔らかな口調、優しい笑み、年上の男の落ち着きを里香は仲野に見いだす。 入社以来ずっと彼に憧れていた。しかし今はもう一つ…。 やだ…また…。 最近仲野を見ていると自分の中の何かが疼く。 抱かれたい…。 はっきりと頭の中で形を作り始めている欲望と呼ぶものを、もはや自分でも認めないわけには いかなくなってきていた。 「よし、できた。じゃ、行ってきます。」 そういうと仲野はアタッシュケースを抱え売場を後にした。 30才のやり手外商マン。月に1000万程の売り上げを挙げる彼は若手のホープだ。 そして古くさい言い方だか甘いマスクのせいで女子販売員たちの噂の種でもあった。 「仲野さんほんっとカッコイイよねえ。モデルみたいな彼女いるらしいよ。でもすっごい遊ん でるって。まだ結婚も考えてないらしいねー。」 とは同僚の麻美のことばだ。 付き合いたいわけじゃない。ただ、あの唇に触れたい。あの指に触れられたい。そして…。 会社用の携帯の番号は事務所で盗み見れる。ただ電話をすればいいだけ。 そして言うのだ。 私を抱いて下さい…と。 「お疲れさまぁ」 仕事を終え、制服を着替えていると麻美が声をかけてきた。 「ねーねー今日ごはんしてかない?」 「ゴメン!予定あり!」 内心の動揺を気どられぬよう笑顔を取り繕い、麻美と別れると、里香はカフェへ飛び込んだ。 ホットティをオーダーし、バッグから携帯を取り出す。書き写してきた仲野の番号を、緊張で 震える指で一つ一つ入力していった。たったこれだけのことで心臓が踊り狂っている。 「お待たせいたしました」 全て入力し終わったところでホットティが運ばれてきた。 汗ばむ手で携帯を握り、一つ大きく深呼吸し、一口紅茶をすするといくぶん気持ちが落ち着いた。 …えい…! 里香は決意を固めて通話ボタンを押した。 呼び出し音が鳴る間、里香の手は震えっぱなしだった。突如、耳慣れた音が途切れる。 「はい、仲野です」 …出た!体が跳ね上がるほど緊張が頂点に達する。もう後戻りは出来ない。 「あの、売場の藤田です…」 「藤田さん?なんでこの番号…何か緊急?」 「ごめんなさい!事務所で見ちゃいました。どうしても話がしたくて。」 電話越しに伝わってしまいそうなほど心臓が早鐘を打っている。 「はは、いいよ。どうした?」 「会いたいんです、ふたりで…」 「ふたりで?」 いぶかしげな仲野の声。お願いです、そんな不審そうにしないで…。 「出来たら今すぐにでも」 「え?…ん…今すぐってのは無理だけど…」 「じゃ、あの…近いうちにでも…」 「なんだかわかんないけど…明日の夜ならいいよ?」 「ほんとですか!?」 はあ…なんて余裕ないんだろ…。 明日の約束を取り付けて電話を終え、程よく冷めてきた紅茶を口にすると、いくぶん気持ちが 落ち着いてきた。たった今仲野と繋がっていた携帯を見つめて里香は思う。 彼に恋する普通の女の子だとは思われたくない…。だってこの気持ちは恋の様で恋でないから。 彼にとって今の私は、彼女に立候補したがっている女の子という認識だろう。 それは違う。違うことをわからせたい。 紅茶を全て飲み干すと里香は何事もなかったかのように店を出た。 明日は彼を驚かせてみせる…! 翌日、閉店までの長い時間を何とか持ちこたえ、店を出ると待ち合わせた場所へ急いだ。 すでに仲野は到着している。 「遅くなってごめんなさい。」 「いいよ、お疲れさま、さあ乗って。」 信じられない。あの仲野さんとプライベートな時間を過ごそうとしている。 車の助手席に乗り込むと彼がいつも付けているプールオムの香りが鼻をくすぐった。 その香りでかろうじでこの状況が現実であることを認識する。 「私服だとずいぶん印象違うね、て、俺もか。」 いつもスーツ姿の仲野は、休日ということもあってタートルのセーターにコーデュロイのパン ツ、手触りの良さそうなコートを纏っている。茶系のコーディネイトがすごく似合う。 「ほんとですね…私、変、ですか?」 「いや…似合ってるよ。」 そういう仲野は前を見たまま微笑んでいる。 オフホワイトのショートコートに今は見えないけど黒の半袖ミニのワンピース。寒いけど我慢 してスエードの黒のミュール。黒いストッキングには踵に蝶のラメ。 このスタイルに少しでも彼が女を感じてくれるといいのだけど…。 「で、何か食べたいものある?なければ俺のお薦めでいい?」 「お任せします。」 「じゃ、イタメシにしよう。リゾットが旨い店あるんだよ。」 連れて行かれたイタリアンレストランは、都心から少し離れた場所にある一軒家のお店だった。 いかにも女の子が喜びそうな店。 席に着き、コートを脱ぐと仲野は半袖の里香を見て寒そう!と笑った。 深い襟刳りのぴったりしたワンピースはきっと自分を色っぽく見せてくれるはず…。 胸の下で結ぶリボンにもきっと視線を注ぎたくなる効果があるはず…。 軽い口当たりのワインとおいしい食事でたわいもない会話が弾み、里香は昨日の緊張などなか ったように楽しい時を過ごした。 しかし、時が経つにつれ、自分の言うべきことを意識し始めて、ワイングラスの細い柄を持つ 仲野の長い指に目が引きつけられる。また心臓が勝手に暴れ出す。 ゆったりと配置されているテーブルのせいで隣の客の話し声はあまり聞こえない。 今なら…言えるかも…。 里香は仲野の指に落としていた視線をゆっくり上げて瞳を見つめた。 「仲野さん、会いたいって言ったのは、お願いがあったからなんです。」 「うん?」 ひとつ呼吸を置いて切り出す。 「…私を抱いて下さい。」 「え?」 驚いて里香を見つめる仲野が、里香の真意を測れなくて困惑した笑顔になる。 「ずっとそう思ってたんです。彼女になりたいわけじゃありません。ただ、仲野さんと…。」 そこまで言って恥ずかしくて顔が上げられなくなった。かあっと顔が火照ってくる。 仲野の顔からは笑顔が消えて、真剣な面もちでうつむく里香を見つめている。 どう答えようか迷っているようだった。煙草を取り出して火を付け、ふうっと細い煙を吐く。 目はまた煙草を挟む長い指にに惹きつけられる。 「いや、俺はさ、昨日藤田さんから誘われて嬉しかったから今日会ってるんだよ。でも初めて 二人で会っていきなりそれは…。そういうことはもう少しお互いを知ってからというか…。」 「必要ないです。」 仲野の返答を聞いて鼓動は一気に落ち着いていた。 自分の中で違う自分が生まれようとしているみたいだ。 「ただ、単純にあなたが欲しいんです。駆け引きも何もいらない。仲野さんは…」 里香にまっすぐ見つめられて、仲野は呆然としている。 「私を欲しいと思いませんか?」 会計を済ませ、再び車へ乗り込むと、エンジンをかけたまま仲野は動こうとしなかった。 里香がああ言い切った後、灰皿に煙草を押しつけ、無言で伝票を掴んで席を立ってしまった。 払いますという里香を制して店を出ると何も言わずに車へ乗り込んだので慌てて里香も従ったのだ。 はあ、ダメ、か…。軽蔑されちゃったかな…。 落胆してシートベルトに手をかけようとしたその時、仲野の腕が里香の肩をつかみ、ぐっと体 を引き寄せた。少しでも動いたら触れそうなところに仲野の唇がある。 「本当に、ただ俺に抱かれたくて、今日来たの?」 至近距離で見つめられ、里香の心臓がまた踊り出す。 鼻孔を擽るセクシャルな香りに、体が絡め取られて動けないような錯覚に陥る。 「…そう…です。」 囁くように答えると、一瞬くすっと仲野は笑った。 「…んっ」 里香の唇が仲野の唇で塞がれる。片腕で体を、片腕で頭を抱きかかえ、柔らかな唇で里香の唇 を優しく吸う。まるで里香の唇が美味しい食べ物であるかのように。 ……なんて…キス。 キスだけで体が痺れるような快感が駆け上がってくる。待ち望んでいたものが得られる悦びに、 里香はとろけそうになっていた。何かに流されてしまう気がして夢中で仲野にしがみつく。 ふっと唇が離れ、閉じていた目を開けると、仲野は悪戯っぽい笑みをたたえ里香を見下ろしている。 腕を解き、里香から離れて車を発進させる。 走り出す車の重力に身を任せてシートに深くもたれる。 たった今もたらされたばかりのキスと抱擁を、もう反芻している自分がいた。 これから、私この人に抱かれるんだ…。 そう思うだけで里香の体の一部ははっきりわかるくらい潤んでいた。 ホテルの部屋へ入るなり里香は抱きすくめられた。普通の恋人にするように胸に顔を埋めら れ、彼の香りで包まれる。これだけでくらくらしてしまう。 憧れていた、抱かれたかった人にこうして抱きすくめられる幸福に里香は酔いしれていた。 「どうして?」 「え…?」 「どうして俺に抱かれたいなんて…?」 理由なんて…わからない…。 「いつの間にか…そう思ってた…」 コートを滑り落とされ、ふっと体が宙に浮く。履いていたミュールが床に散らばる。抱きかかえられて ベッドに運ばれ、優しく仰向けに寝かされた。また吐息のかかる距離でみつめられる。 里香をじっと見つめたまま、仲野の手が胸の下のリボンを解き、背中のファスナーをゆっくりと下ろしていく。 二度目の口づけ。車内の時よりもしっかりと抱き締められ、より彼の体温を感じる。 「シャワー、してから…」 かろうじでそれだけ言うと仲野は唇を離して首筋に顔を埋めた。柔らかな唇が微かに触れる感触に、 里香の性感がぞくり、と波立つ。 「先?後?」 「あ、後で…」 感じる場所で低く囁かれて、つい声がうわずってしまう。 「じゃ、お先に」 仲野はあっさり里香から離れ、里香のミュールを揃えコートを掛けるとバスルームへ向かった。 程なく水音が聞こえてくる。 たったこれだけのことで、もう里香の女の部分は痛いくらい感じてしまっている。この後起こ ることを考えると更に…。不思議と動悸は収まっていた。代わりに押さえられないのは快楽に 対する欲求…。シャワーの後の行為に疼く体を押さえ、里香はベッドに横たわった。 仲野はバスタオルを腰に巻いただけの格好でバスルームから出てきた。初めてみる彼の裸の胸 は思っていたより筋肉質で引き締まっている。 「お待たせ、どうぞ。」 恥ずかしくて彼を直視できない。逃げるようにバスルームへ飛び込み、潤んでしまった体を念 入りに洗った。 里香がバスルームから出ると部屋はすでに薄暗く、テレビのモニターだけが光っていた。 「あ、脱いじゃったんだ」 スリップ姿の里香に、仲野は落胆の声を出した。 「だ、ダメですか?」 「いや、あのワンピースを脱がせたかったな、と思って」 「あっ」 ぐい!と手を引いて里香をベッドへ転がす。 「でもこういう格好もそそるね」 馬乗りに抑えつけ、テレビを消すと、リモコンをソファに放った。 薄い闇の中、彼が自分を見つめているのがわかる。 「後悔しても、遅いよ?」 彼の言葉にビリッと体が反応する。里香を上から見下ろしながら、仲野はまた悪戯な笑みを 浮かべて続ける。 「抵抗しても、やめないからな…」 「んっ…」 何か言う間もなく唇を塞がれる。 さっきまでのキスがお遊びだったかのような深い、深いキス。 仲野の柔らかな舌が里香の舌を絡め取り、吸い上げ、啜る。 里香を抱くという強固な意志を持った言葉とキスに、魔法をかけられたように痺れていく。 「…う…ふぅっ…」 キスだけで息が荒くなってしまう。 まるで媚薬でも仕込んであるかのような舌は、里香を痺れさせ、体の自由を奪っていった。 「…っあ…」 首筋に唇を這わし、スリップ越しに乳房をそっと触れられただけで大げさな声が出てしまう。 「敏感だな…」 耳元で低く仲野が囁いた。 あなたにだけなんです。こんな風に乱れてしまうのは。 そう言いたくても次々快感が襲って言葉を成せない。手慣れた手つきでスリップの肩紐を下ろ され、ブラのホックを外されると、解放感と共に快感がやってきた。 仲野は露になった白い胸を撫でるように揉み、その先端を唇で捕らえる。 「は…っ…んっ…」 敏感な突起を含まれ、舌で転がされる度、足の先までジーンと快感が伝わる。思わず仲野の頭 を掻き撫でてしまう。 「こっち見て」 朦朧とし始めた頭で言葉に従うと、固く尖った乳首が舌で弄ばれ、暗闇にてらてらと光ってい る。そして自分を見上げる綺麗な顔…。 「や…あ…っ」 「こうされたかったんだよな…?いや、じゃないだろ?」 いっそうねっとりと舌で愛撫され、里香の体が震える。 すごい…私…おかしくなっちゃうかも…っ。 仲野は満足気に笑い、手は乳房に這わせたまま、再び上へ戻って深く口づける。 背中に回した手で滑らかな彼の肌の感触も感じる。 気持ちいい…こうしてるだけでも… だが、休む間もなく閉じていた太股の間に仲野の脚が割り込んできた。口づけたまま、手は乳 房から腰、内股へと滑っていく。そしてすでに意味を成していないスリップをたくし上げショ ーツの上から秘肉の割れ目をなぞった。ギクン、と里香の体が弾む。 「メチャクチャ濡れてるよ…どうしたの?」 薄いショーツはその中から溢れる蜜でぐっしょりと濡れていた。そこにぴったりと張り付き濡 れて透けている。恥ずかしい部分を覆う役目は消え失せ、より淫らに見せる小道具となってい た。仲野はそこに惹きつけられ、ルームライトを少し明るくすると里香の腰を自分の膝の上 に乗せ、太股を持ち上げて大きくM字に押し開けた。 「いやっこんなのはやめて…!」 予想以上に羞恥な姿にさせられ、里香は叫ぶ。しかしそれも仲野がショーツ越しに潤んだ 溝を撫で上げるまでのことだ。とたんに心も体も言うことを効かなくなってしまう。 仲野はそのまま里香の腰を持ち上げると、太股の間にゆっくりと顔を埋めた。 「ああぁぁっ…!」 薄い布越しに、暖かい唇と舌を感じる。舌がショーツの上を這う度、サテンの布がぬるぬると 秘所に刺激を与える。 ああでも…布越しじゃなくて…直に欲しいんです…お願い…! そう思った瞬間、里香の腰は降ろされ、脚は開けられたまま濡れそぼったショーツをゆっくりと引きあげられた。透明な糸が伸びて切れる。露わになった濡れた女の部分にふっと冷たい空気が触れた。 閉じ合わさっているはずの割れ目は、しとどに濡れてぱっくりと口を開け熱く充血して震えている。 「んんっ…。」 仲野の指がすっと割れ目の中をなぞる。 「ぐしょぐしょだね…かわいいよ。」 「あっ…んっ…」 3本の指で優しく円を描くように撫でられ、体がビリビリと反応する。しかし仲野はそのもっ とも敏感な部分と、奥に続く道には触れようとしない。 焦らされて、里香の頭は次第に快楽だけを求めていく。仲野の指がそこへ触れてくれないかと 知らぬ間に自ら腰を動かしている。 もっと強い快感が欲しい…!。 しかし指は巧みにそこへ触れないように逃れる。焦れた里香の反応を目で楽しんでいるのだ。 「触って欲しい?」 答えなど聞かずともわかりきっているのになんて意地悪なんだろう。 でもこうして言葉と愛撫で翻弄されることに、かつてない興奮と悦びを感じてしまっている。 「は…い…。」 私は今きっと、陶酔しきった目で彼を見つめている。 「じゃあ、もっと俺が触りやすいようにしてくれなくちゃ。」 「え…?どう…?」 仲野は脚からショーツを抜き去り、スリップもブラも脱がして、里香を壁に背を付けるように 座らせた。何をしたらいいかわからなくて戸惑う里香に指令を下す。 「膝を立てて」 言われるまま膝を立てる。だらしない体操座りのよう格好だ。仲野は正面から里香を見つめて、 次の指令を下す。 「腰をもっと俺の方へずらして…。」 やだ…こんな恥ずかしい格好…。 ひとかけら残っている理性が命令に背こうとするが体は言うことを聞いてくれない。 うつむいて言うとおりにしていった。頬が燃えそうなほど熱い。 「ちゃんと俺を見て。」 なんて残酷で甘美な命令。視線を絡ませることに激しく躊躇する。 彼の目を見てしまったら、自分がどうなってしまうか、もうわからない。 しかしそうすることによって、得られるはずのものへの誘惑に勝てない。 ゆっくりと伏せていた目を上げると憧れの人は、獲物をいたぶる美しい悪魔のような笑みを浮 かべて里香を見つめている。次の指令が下る。 「そのまま脚を広げて…。」 「そんな…」 里香は絶句する。明るい部屋で、自ら腰を突き出して脚を広げるなんて…! 抱き合う時に、そんなことを要求してくる男など今までひとりもいなかった。誰もがごく自然 に里香の体を求めてきた。こんな要求はいくら何でも尋常じゃない。 「…いや…出来…ない…。」 しかし触られなくともジンジンするくらい秘所は感じ、後から後から愛液が溢れ出している。 愛撫による快感だけではない。明らかに言葉によって性感を揺さぶられている。 私…壊れてゆく…。 「出来ないなら、これでおしまい。どうする?」 「いや!待って!……」 目の前で笑みを浮かべる男を必死でみつめた。彼の目が、さあ、と促している。 視線で射抜かれて、言葉で魂を鷲掴みにされている気がする。 私は蜘蛛の巣に囚われた無力な獲物…。 頭の中にそんな言葉が浮かんでは消える。それが真理であるかのように。 高鳴る心臓は爆発してしまいそうだ。軽い目眩が里香を襲う。 憑かれたように仲野の瞳を見つめながら少しずつ膝を開いていった。今まで感じたことのない 胸のざわめきで頭がおかしくなりそうだ…。 はしたなく濡れた女の部分を、仲野の目の前で見せつけるように開ききった。 「ひら…開いたわ…。」 呂律が上手く回らない。自分の心臓の音が激しすぎて上手くしゃべれているかもわからない。 仲野は開かれた秘所に顔を近づけ、俯せに寝ころんだ。仲野の吐息が秘所をくすぐる。 「太股を持って、もっと脚を上げて…。」 震える手で太股抱え、限界まで、広げた。こんな淫らな姿、自らさせられるなど初めての経験 だ。恥ずかしいのを我慢しているはずなのに、強要されることに痛いほど興奮している。 屈したくない…いいえ、違う。 逃げ出したい…いいえ、違う。 これで、これで触ってもらえる。 お願い…!早く触って下さい……! 「いい子だ。」 「あっ!!ううぅんっ!!」 仲野の指が割れ目を押し広げ、ぴん、と立っている突起をくるりと撫でた。 湿った水音と喘ぎ声だけが部屋に響く。溢れ出る愛液を指に絡め、塗り込めるように撫でまわ す。柔らかな襞をゆっくりとかき混ぜられ、充血した肉の芽をぬるりと擦られる度に、里香の 体は弓なりに反り返り、口からは嬌声がほとばしる。 しかしひとつ快感を得るともっと強い快感を欲してしまう。なんて貪欲な自分。 仲野は里香の秘所一点を見つめ、唇は今にも触れそうな所にあるのに、そこで留まったままだ。 …もっと激しく愛撫されたい……! 里香の気持ちを読んでいるかのように仲野が口を開く。 「舌で…して欲しい?」 その言葉に、里香の体はビクッと反応する。 「舐めて欲しかったら、お願いするんだろ…?」 迷うことなく苦しい呼吸の間に何とか哀願の言葉を紡ぎだす。 「は…あ…舐…めて…お願い…っ」 自ら脚をいっぱいに開きながら、潤んだ瞳で愛撫を懇願する里香に、仲野は満足げな笑みを浮 かべて里香の秘所に口づける。 「ああぁっ…!!」 割れ目を暖かい舌で深く抉り、襞を唇で啜り、秘壺の入り口に舌を差し入れる。 「き…もち…いぃっ…・!」 女の感じるツボを全て心得ているかのような巧みな舌技に、里香の精神は崩壊寸前だった。 電気のような鋭い快感が続けざまに体中を駆けめぐる。 先ほどの焦らし方とはうって変わって、仲野は肉芽に執拗に舌を這わせた。 唇で秘所全てにべっとりと吸い付き、舌は肉芽を上から、下から、畳みかけるように舐めまわ す。粘液でぬるりと逃げる肉芽を追いかけ、絡みつき、捕らえる。音を立てて啜り、ぬるりと 押しつぶし、唇の中でねっとりと転がす。最も敏感な場所で蠢き続けるぬめった舌…。 感じすぎて里香が逃げ出さぬよう、仲野は里香の腰をがっちりと押さえつけている。 もう…だめ…! 里香は快感の頂点へ向かって走り出していた。 「こっちを見て」 声に促されて見ると、自分の女陰を舌で愛撫し続けている仲野の顔…。彼を驚かせてみせるな んて考えていたことが愚かしい。自分より一枚も二枚も上手なのだ。敵うはずがない。逃げ場 のない牢獄に囚われてしまった気分だ。そう思うことに堪らなく甘美なものを感じて恍惚とする。 仲野は里香に見せつけるように激しくしゃぶりつく。ジュルッジュルッとわざと隠微な音をた て、触覚、視覚、聴覚三点で里香を追い詰めていく。 「は…あ…っ…!」 肉芽を唇と舌で蹂躙され続けながら、仲野の指がぬるりと蜜壺に侵入する。二本の指が柔らか な肉壁を押しやって体の芯に到達する。 「あっ…やあっ…あぁっ!」 指は里香のGスポットを正確に探り当て、微妙なタッチで刺激し始めた。同時に肉芽を這い回る 舌も更にねっとりと絡み付いてくる。 「あ…あ…いや…っ」 太股を持ち上げる里香の手はじっとり汗ばみ、全身がぶるぶると震えだす。 仲野の指使いは次第に激しさを増していく。里香の体の芯がパチパチと小さく弾けだし、頭の 中は真っ白になっていく。 「…いっ…ちゃうっ…」 仲野は仕上げとばかりに肉芽を強く吸い上げ、蜜壺を指で激しく掻き混ぜる。 「ああぁぁっ!!」 熱い奔流が里香を襲う。頭の中で白い光がスパークし消えていった。 きつく絞まった秘壺から指がぬるりと抜き去られた。全身の力が一気に抜けていく。 肩で息をしながらぐったりと崩れて横たわる里香に、仲野が近づく。 里香が目を開けた瞬間、里香の愛液で濡れた指を唇に差し入れられた。 「うっ…」 「舐めて」 「や…ぁっ」 いやいやをする里香の顔を制し、なおも口内へ指を入れる。里香は観念して指に纏わり付いて いる自分の粘液をおずおずと舐めとっていく。たった今いったばかりなのに、この行為にまた 疼いてくる自分がいる。 「そう、いい子だ。」 仲野が里香の乱れた髪を手で梳きながら言う。 「せっかく藤田さんが俺に欲情してくれたんだ。たっぷり感じてもらわないとね」 優しい口調の一方で、指を舐めさせるという被虐的な行為を強要するギャップに、里香の中の 何かがまた反応する。 この人にならもう何をされてもかまわない…ううん…そうじゃない、もっと…。 「まだこれからだ」 指を引き抜くと、ゆっくりと口づけた。互いを味わうように舌を絡ませあう。里香の唾液と仲 野の唾液、愛液が溶け合い、二人だけの媚薬が出来あがる。 お互いを貪りあいながら、僅かな唇の隙間から里香が呼びかける。 「なかの…さ…ん」 「…ん?」 「メチャクチャに…して…」 体を擦り寄せ絡みつきながら熱に浮かされたようにそう呟く里香に、仲野は思わず相好を崩す。 「はっ…かわいいな…」 「里香…です…」 「…里香…」 深いキスを続けながら、腕を、脚を、可能な限り絡ませる。里香の下腹に仲野の熱い肉体を感じる。 足りないの…これだけじゃ…貫いてください…熱いあなた自身で…! 里香は口づけたままぐっと体を入れ替え、仲野の上にかぶさった。 唇で仲野の体の線をなぞりながら少しずつ求めているものに近づいていく。 仲野はそんな里香の顔に手を添え、次の行動を持っている。 下腹部を伝い、そそり立つ熱く固いものに手を触れる。愛しそうに里香はそれを手で包み、先 端にくちづけた。 「ふ…」 ゆっくりと唇に納めていく。もう一つの心臓のように、仲野の鼓動を手と唇で感じる。 喉の奥まで飲み込むと、そのまま舌で舐め上げた。 「うっ…」 仲野が自分の愛撫で感じてくれている。口内にあまりあるそれを、唇を締め上げて上下する。 自分の知っている知識を総動員させて仲野を感じさせたかった。そうしないと、きっとこれは もらえない。早く仲野の欲望に火を付けたい一心で、里香は熱い固まりをしゃぶり続ける。 先端から仲野の味がする。里香はそれを丁寧に舐め取る。もっと味わいたい。私の愛撫で彼が 感じている証拠を…。 幹を舐め上げ、カリ首に舌を這わし、根本まで飲み込み粘膜で締め付ける。 お願い、早くこれを下さい。私の中に埋めて下さい…。 目の前のものを愛撫することに熱中しているその時、里香の体を再び快感が襲った。 横倒しにされ、太股の間に頭を強引に割り入れられたのだ。 「う…っんん…っ」 里香の臀部を抱え込み、わざとジュルジュルと音を立てて里香自身を啜り上げる。新たな快感 に、里香の唇の動きが止まる。 「続けて…」 はっとして固い幹を握り直し口に納めるが、下半身から伝わる快感ですぐに動けなくなってし まう。身を捩ろうとしても腰をしっかりと捕まえられていて動くことが出来ない。 「あ…あんっ…」 次第に自分の快感だけに意識が集中していく。男根は唇から離れ、手からもこぼれ落ちそうに なっている。仲野はそれを強引に里香の口内に差し入れ、自ら腰を使ってしごかせる。里香の 唇から唾液がこぼれる。 もう…待ちきれない…! 「く…ください…」 「何を?」 仲野は里香への愛撫を続けたまま、意地悪く問う。 「わ…私の中に…あなたを…ください…お願い…っ」 仲野は里香から離れ、仰向けに押し倒す。手早くゴムを付けて、力無く開いた太股の間の潤み きった溝に、たった今口に含まれていた熱い固まりを押しつける。 「これがほしいんだ?」 濡れそぼって充血した割れ目を幹の先端がぬらぬらと往復する。 里香は潤んだ目で仲野を見つめ哀願する。 「は…い…」 「やばいな…俺スゴイ興奮してるよ…。わかる…?」 そのまま里香にくちづける。 そう言いつつまだそれを埋めてくれない仲野は、本当に興奮しているのか…。 「は…やく…」 唇の端から漏れ聞いた里香の言葉に仲野自身がぴくんと反応する。そして潤みきっている蜜壺 に先端を押しつけた。 「あああぁ…っ!!」 柔肉の中に熱い固まりが少しずつ進入する。体を開かれる快感に耐えられず、里香は仲野にし がみついた。埋め込まれるものが深さを増すにつれ、行き場のなくなった愛液が溢れ出す。体 の中心から、ジーンと痺れるような快感が広がる。 やがて仲野自身は根本まで、深く里香の中に埋められた。仲野は腰をきつく押しつけたまま、 里香をしっかりと抱きしめ唇を吸う。里香の胎内が快感を求め、ひくついて仲野を締め付けて いる。貫かれただけですでにいってしまいそうだった。 「すごい…いいよ…里香の中…」 吐息に混じってそう言うと、仲野はゆっくりと腰を使い始めた。 「ああっ…!い…い…っ!」 里香の肉壁の感触を味わうように仲野はゆっくりと引き抜き、深く挿入する。自分のものが仲 野を離すまいと吸い付いている。何度も何度も、熱く固いものが閉じた柔肉をこじ開けるよう に入ってくる感触は、里香の思考を次第に奪っていく。 二人の呼吸が荒くなるにつれて、仲野の腰使いも激しくなっていった。腕できつく抱き締めな がら、体ごと揺さぶるように、里香を突き上げる。里香の開かれた太股が縋るものを探して震える。 仲野が里香の唇を塞ぐ。舌と下半身両方で貪られながら、沸き上がる快感に身を浸す。 「だめえ…っいっちゃうっ…!」 里香に二度目の絶頂が訪れようとしていた。 里香が気をやりそうになった瞬間、仲野は里香の中から自身を抜き去った。 「や…どうして…っ」 泣きそうになりながら意地悪い行動に出る仲野をみつめる。いかせてと叫んでしまいそうだ。 何かを企んでいるような仲野の表情に、息を飲む。 この男はまた何か私を辱めることを考えているのか…? そう考えると体中が痛いくらい興奮してくる。 「俯せになって」 荒く息をしながら、里香は言われたままの姿勢をとる。 「…あっ!!」 仲野は里香の腰を高く持ち上げ、猫が伸びをしているような姿勢をとらせた。この格好では里 香の女の部分は仲野に突き出されて丸見えになっているはずだ。 恥ずかしさで頭にかあっと血が上る。 「ひゃんっ!!…・あ…」 白い臀部を手で割られ、剥き出しになった女陰に仲野が吸い付いた。 「ああ…ふぅっ…・」 舌で溶かされて、里香の腰は力無く崩れようとするが仲野がしっかり支えている。 里香の入り口へぬめった舌を差し入れ、蜜をすくい取る。 そんな風にされたら…余計欲しくなっちゃう…! 里香の体がギクンギクンと反り返るのを見て、仲野は里香から離れた。 「本当はさっきこうしたかったんだけど…俺が我慢できなかったんだ…」 「……え…?」 「もう一度入れて欲しい…?」 あまりにもストレートに聞かれて決まっている答えを口ごもる。 「入れて欲しかったら…そのまま脚を開いて…」 「こ…このまま…?」 消え去ったはずの羞恥心がまた頭をもたげる。しかし仲野に抱かれたい以上里香の取る行動は 決まっていた。 おずおずと脚を開いていく。仲野の視線がそこに注がれていると思うと堪らなくなる。しかし この恥ずかしささえ耐えれば、また欲しい物が得られるのだ。 「そのまま、指で開いて」 これ以上ない恥ずかしい命令に里香は躊躇する。 「そんなこと…!」 「欲しいんだろ?」 「…う…っ」 肩と胸で体を支えながら、恐る恐る自分の女陰に両手を伸ばす。 口ではいやと言えても体は言うことを聞いてくれない。仲野を求めてひくつく肉襞に指をかけ ると、そこは熱く溶けきっていた。 震える指で、意を決して充血した桃色の肉を露出させる。愛液がつうと滴って落ちていった。 恥ずかしさに眉根を潜め、頬を紅く上気させ、震えながら自ら女の部分を見せつける里香の姿 は仲野の中の征服欲を大いに満たした。 「あ……」 「そのまま…」 開けた女陰の肉壁の入り口に、固いものがあてがわれる。 「はああぁぁ…っ!!」 強固な意志を持って、それがズブズブと体の中心に向かって進入してくる。 「ああ…本当に…すごい…な…里香の中は…」 体の奥深く貫かれ、里香の体が小刻みに震える。 全てを埋め込み、一瞬そこに留まったかと思うと、猛然と突き上げられる。 「う…あ…あぁっ…!!」 体が熱い。仲野に火を付けられ、燃えたぎっているようだ。パチパチと火の粉をまき散らしながら 自らを滅ぼしていく篝火を思っていた。全身にどっと汗が噴き出していく。 自分のものが仲野を食いちぎらんばかりに締め上げている。仲野のものが里香を壊さんばかり に貫いている。 「…あ…っ…ああっっ…」 仲野が突き上げる度に里香の中の何かが弾けて散る。意味をなさない言葉が口を突いて出る。 濡れた肉のぶつかりあう音が高く響く。 「は…里香…わかるか…?ここ…」 女陰を開く里香の指を、仲野自身に押しつける。ぬるりとした固い幹は、里香の中に幾度も消 えては現れ、徐々に激しさを増していく。 「あ…あ…わかる…っおかしく…なりそう…っ!」 力の限り里香に腰を打ち付けながら、荒い呼吸の合間に仲野は言う。 「めちゃくちゃにして…って…言ったろ…?」 貫かれる度仲野の汗が背中に飛び散る。体の真芯が突き破られてしまいそうなほどの激しさ。 息をつくのすらままならないほどの自分の鼓動。死にそうなほど感じている。 もうだめ…! 目の前に熱い炎が見える。里香に襲いかかろうとしている。 「ああぁっ…!や…やめ…っ」 里香を突きまくりながら、仲野は剥き出しになった里香の肉芽を指で嬲り始めた。 汗を滴らせ上気する仲野の顔には、快感と愉悦が踊っている。 「やめてえっ…!!こ・・壊れちゃうっ…!!!」 叫びとも泣き声ともつかない自分の嬌声。シーツを握る手がガクガクと震える。 頂点へ向かって燃えさかる火の中で、悟る。 私は、この男に、遂に征服されてしまった…。 「…里香…っ!」 切羽詰まった仲野の声。腰を打つリズムはどんどん激しくなっていく。里香の胎内で熱い固ま りが踊り狂う。 「いくぅ!!いっちゃううっ…!!」 「俺も…だ…!」 「あああぁぁっ!!」 狂いそうなほど熱い炎が、里香を焼き尽くしていった。 燃え尽きてしまったかのように、ぐったりと崩れる里香に寄り添うように横たわり、まだ燻る 頬に手を添えて仲野は見つめている。 その穏やかな笑顔は、やはり美しい悪魔のように、里香には見える。 「今度…いつ会おうか…?」 優しく問われて里香は思う。 魅入られて囚われてしまった獲物は、彼の言うことを素直に聞くしか、生きていく道はきっとないのだ、と。 「あなたの…好きな時に…」 獲物を完全に手中にして、悪魔は満足げに微笑む。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |