Poolside
シチュエーション


「おまたせ」
「遅かったな」

水着に着替えて、彼と合流。やはり男の人は着替えるのが早い。彼はもう着替えて、私を待っていてくれた。

「仕方ないじゃない。髪をまとめたり、いろいろすることがあるのよ。女には」
「そうだな」

長い髪がいい、といつも言っている手前、こう言われると返す言葉がないみたいね。

「言いつけどおりにしてきたか?」
「……見てわからない?」
「ふむ……そうだな。それでいい」

シャワーを浴びてきた私を見て、満足そうにほくそ笑む彼。
ワンピースの水着。鮮やかな色が人目を引く。ワンピースと言っても、背中が大きく開いているのでそこそこ露出度は高い。
もっとも、ハイレグの度合いはそれほどでもないから、一見それほど過激ではないように見えるかしら。

問題はその中身。
胸をサポートするパットも、股間の内布も意図的に外してある。
もちろん、ニプレスもアンダーショーツも身につけてはいない。
濡れた水着が肌にぴったり張り付いてしまえば、私の体の秘めやかな部分の微妙な凹凸が、リアルに布の上に浮かび上がってしまう。
すべて、彼のリクエストどおり。

私たちの横を通り抜ける男たちの視線が、私の肌を撫でていく。
アンダーショーツを穿いていないことまでは一目ではわからないかもしれないけど、胸の先端は別。

「ふ。感じているようだな」
「……ええ」

彼の言葉を否定できない。たわわな膨らみの先端に浮きでた突起。彼の手で触れられてもいない筈なのに、私が興奮していることを示してしまう私のカラダ。

「それじゃあ、まず、プールサイドを一周してこい。俺は飲み物を調達してくる」
「……はい」

ドリンクを売っているスタンドへ歩いていってしまう彼。一人残された私は、覚悟を決めてプールサイドを歩き始めた。
胸も、股間も隠したりせず、堂々と見せつけるように歩いてくること。
そこまで指定されたわけではないが、彼の意図は明白だ。

(……ああ……)

馬鹿な男たちの視線が、遠慮なしに私の全身を愛撫する。
声をかけてくる坊やたちをいなしながら歩き続ける。ようやく半周。
強い日差しのせいか、水着がだいぶ乾いてきた。肌にぴったり張り付いていた布が、わずかに浮いている。

「……仕方ないわね」

ふと見ると、子供用の浅いプールが目に入った。小さな子供たちが水をかけ合って遊んでいる。丁度いいわ。子供たちの仲間に入れてもらおう。

「ねぇ、お姉さんも一緒に遊んでいい?」
「いいよ! それ!」
「きゃっ!」

いきなり両手で水をかけてくる。私も笑いながら応戦。子供たちと一斉に水のかけ合いになる。もう全身ずぶ濡れ。もちろん狙いどおり。

「それじゃ、楽しかったわ」
「もっと遊ぼうよ!」
「待っている人がいるの。ごめんね」

キミ、どさくさにまぎれて私のおっぱい、三回も触ったでしょう? 怒らないから、チャラにしてね。
再び素肌に張り付いた水着。限りなく裸身に近い姿を晒しながら、私は歩いてゆく。

「遅かったな」

その台詞二回目。彼の手から受け取ったコーラは、氷が溶けて薄かった。

「可愛い坊やたちと遊んできたの。ごめんなさい」
「あぁ。ここからも見えた」

私が水着を濡らすためにわざとそうしたこともお見通し、という声。もっとも、あんな子供たち相手にナンパも何もないから、妬いてもくれないのかしら。

「飲んだら、泳ぐとしよう」
「ずいぶん暑そうね?」

私を待っている間、日陰に入っていればいいのに。でも、見守ってくれていたんだと思うと、ちょっとだけ感謝。
空になったカップを捨ててくる。
彼から離れて一人で歩く私に、相変わらず男たちの視線が突き刺さる。水に入れば少しは減るのかしら?

「泳ぐぞ」
「はい」

泳ぐ前にも、耳打ちされている。泳ぎ方まで指定付き。
まず、平泳ぎで一泳ぎ。

(あ……!)

感じる。
視線を感じる。大きく開いた脚の付け根に、視線を感じる。

(ああ……!!)

たった一枚の布で守られている私のそこを、男が視線で舐めまわす。見知らぬ若い男が、私の後ろにぴったりついて泳いでいる。
平泳ぎのウェッジキックでは、必然的に脚を大きく開いてしまうから、後ろにいる人間にそこを見せつけながら泳ぐことになる。
反対側のプールサイドにタッチしてターンするまでの間、私はその男に視姦され続けた。
ターンして違う方向に泳ぎはじめたら、さすがに不自然なのか彼は私の後を追ってこなかった。その代わりに別の男が、私の直後に張り付いた。
プールの水ではない湿り気で潤み始めた股間を見られてしまうのではと怯えながら、私は泳ぎ続けた。

充分に股間を見せつけた後は、背泳ぎでゆっくりと。
水面に突き出した二つの乳房。水に濡れて張り付いた水着の先端にくっきりと浮かび上がる突起。
一番プールサイドよりのレーンをわざと泳いでいるから、男たちが私を見つめているのが手に取るようにわかる。何人もの男たちに、よってたかって胸を揉み解され、乳首を摘み上げられるイメージ。

(……感じる……!)

目を閉じ、うっとりとしながら泳ぐ。

どんっ。

「あっ!」

誰かにぶつかってしまった。泳ぐのをやめて慌てて謝ろうとするが、相手はそれより早く私を背後から抱きしめ、水着の上から胸を鷲掴みにしてきた。

「き……!」
「静かにしろ。俺だ」

悲鳴をあげる寸前、聞き慣れた声が私を制する。彼だ。

「くく、もういいだろう。次はあれだ」

視線で私に指図をする。ここのプールの名物のウォータースライダー。

「楽しんで来い」
「……はい」

彼の意図がわからないまま、私はその指示に従った。

行列の最後尾につく。行列と言っても、そう長いものじゃないけど、それでも五分は待つかしら。
そして、彼の意図にようやく気が付いた。こうして行列に並んでいる限り、そこから逃げることはできない。前後に並んでいる人たちが、間近に私の肢体を眺めてくるのだ。
ちら、ちらと遠慮がちな視線で愛撫される。バストの谷間や、胸の先端を責められる。

(ああ……!)

そして、ウォータースライダーのスタート地点に登るための階段!
私の前にいる人はともかく、私の後にいる人の頭は、ステップのぶん低い位置にあるのだ。一段低い位置にいる人の視線は、そのまま私の胸を辱めることができる。
そしてさらに、二、三段後にいる人の視線は、私の腰に……!

(……気付かれちゃう!)

アンダーショーツを穿いていない局部にぴったりと張り付いた水着。クレヴァスの微妙な凹凸すら浮き上がっているはずだ。そうでなくても、濡れていればヘアが透けて見えてしまうかも。
かと言って、無理に隠すような仕草をすれば却って見つかり易い。平静を装って、半裸に等しい姿を晒し続けるしかないのだ。

(ああ……早く、早く……!)

周囲の男たち全員が私の胸や股間を見ているのではという錯覚。
無数の視線、無数の指先で嬲られる錯覚に襲われながらステップに立ち続ける。

(ああ……!)

じわり、とそこが濡れているのがわかる。男たちの視線で犯されて、私は濡れているのだ。乳首も、クリトリスも勃起し、興奮していることを周囲に晒している。
ああ、たった一撫でされるだけで達してしまいそう。
そして、ようやく私の番が来た。後続の男の視線から逃れるかのように、私はチューブに滑り込んだ。

「ああああーーーーーーっ!!」

水流にもまれながらウォータースライダーのチューブを駆け下りる間叫び続けていた私。
決して、恐くて叫んでいたのではない。小娘のように、黄色い歓声を上げていたわけでもない。
私は、視姦され続けることで敏感になった全身を水流に愛撫され、感じて声をあげてしまっていたのだった。
そして、クライマックスは最後の水面に到達した時に訪れた。
強烈な水の抵抗がブレーキをかける。
踵から脹脛、太股を駆け抜けた水が私の内股を擽りながら流れ去ってゆく。
水の抵抗に負けた水着が、紐のようによれて股間に食い込む。大してハイレグでもなかった水着が、Tバックのようになって私の脚の付け根を辱める。

「ああああーーーーーーーーーーーーーっ!!」

私は、衆人環視の中で絶頂をむかえてしまった。

「こっちだ」

プールの脇で彼が呼んでいる。
私は、羞恥に顔を真っ赤にしながらも、平泳ぎで彼のほうへと泳いでいった。
彼に引き上げてもらう。

「帰るぞ。満足しただろう?」
「……はい」
「その前に、その尻をなんとかした方がいい」
「え? きゃああっ!」

水着のヒップが、紐のように食い込んだままだったのだ。
そんな姿でプールサイドに上がった私は、周りの人々に何もかも見せてしまったようなものだった。慌てて水着を直す私を見て微笑む彼。

「今度くる時はビキニの方がいいか?」
「え?」

彼の視線の先では、ビキニ姿の女性が水の抵抗に負けて脱げてしまったブラを、耳まで真っ赤にしながら直していた。
それは、近い未来の私の姿。

「……はい」

新しい水着を調達しなければならない。
簡単に脱げてしまいそうな、危ういデザインのビキニの水着を。






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