彼の分身
シチュエーション


眠っている彼の足の間に入り込み、パジャマの上からそっとさする。
当然かもしれないけれど、それは柔らかい。
そのまま、くちづけしてみたけれども、反応はない。

――何してるんだろう、私…。

生理で、セックス出来ない不満がたまっているのかもしれない。
身体が疼く。だからってこんな事…。

彼は起きない。彼の分身も。高まっていた欲望は、やがて失望へと変わってゆく。

――バカみたい…。
これで、彼のものが大きくなっても、それからどうするつもり?
寝ている彼を射精させるようなテクニックなんて持ってない。
その前に…彼が途中で起きて、淫乱な女だと思われるなんて嫌だ。

もうやめよう、そう思って顔を離したとたん、彼に髪を撫でられ、びくりとする。
それと同時に、物凄い後悔に襲われる。頭に血がのぼって、顔をあげる事が出来ない。

「続けて…」

命令する口調ではなく、いつもと変わらない優しい口調に、私のさっきまでの後悔と理性が吹き飛んでいく。
彼はパジャマのズボンとトランクスを同時に下ろす。
まだ柔らかいままのそれが私の目の前でむき出しになっている。

私は、取り憑かれるように、それを口に含んだ。

柔らかいそれは、すっぽりと根元まで口の中におさまってしまう。
私を攻め立てているときとは、まるで別物みたい。

子供が、キャンディを食べるときのように、ゆっくりと口の中でそれを弄ぶ。
それに反応するように、少しづつ大きくなって、やがて先がはっきりと形を現し、くわえきれなくなり、口を離した。

手で支えるように竿を持って、その弾力のある先にくちづけする。
グミみたいだといつも思う。
いつだったか、弾力があって、針で突いたら、弾けるんじゃないかと思うと彼に告げると、聞いてるだけで痛そうだと笑った。

頭を動かして、竿の部分にキスをしながら、少しづつ舌を這わせていく。
彼の溜息が聞こえて、私の身体の芯がジンと熱くなるのを感じた。

――もっと、気持ち良くなって…。

私はさっきよりも執拗に竿を舐めまわす。
指先で陰嚢をやわやわと揉むと、彼が感じているのが分かった。それが嬉しかった。
先からにじみ出た液が竿を伝う。
下から上へ、その液を舐め、先端に辿り着くと、口をすぼめて、その液を吸い取った。

口を離して、手で竿を持って、上下に動かす。
プルプルと先が動くのを恍惚と見ていた。
その動きをとめるように、またそれを口に含む。そしてまた離し…。
私は熱く溜息をつく。快楽が、全身を支配していた。

私はなんていやらしい女なんだろう…。
彼は私の体に触れていないのに、私は…彼のものをくわえながら、こんなにも感じている…。
身体の芯が熱くて、溶けてしまいそうだった。

そこを触ってほしくて、もっと感じたくて、うつ伏せだった身体を仰向けにして、頭を彼の腿にのせて、横を向いて彼のものに舌を這わせる。
彼がその意図に気付いて、私の胸に手を延ばし、パジャマ代わりに着ているワンピースの上から乳房を揉んだ。

「は……ぁ……」

待ちわびた快楽に、身体が異常なほど反応する。自分でも、驚くほどに。

彼が両手で乳房を揉んでくる。

「ん……あぁ……」

痺れるような感覚が身体中に広がる。
もっと感じたくて、私の手は無意識に自分がいちばん感じる、その突起部分へとのびていく。

――本当に、無意識だったのか……。
本当は、彼に見せつけたかったのかもしれない。
淫乱な、私を……。

指先が、そこに触れる。彼は、見ているだろうか?私は、目を開ける事が出来ない。
全身を支配する快楽に、彼への奉仕がおざなりになる。

「自分で触ってるの?」

見て分かっているくせに、そんな意地悪を言う。
彼の手が、私の手の上に重ねられる。私の手の上から、彼が自分の指を動かす。
敏感な突起は、確かに自分の手が覆っているのに、彼の指の動きが、自分で行うそれとは違う強弱のつけ方で、私はただ、その快楽に身を任せる事しか出来なかった。

彼の手が止まる。

「自分で動かすんだよ」

その言葉の意味に、また体が熱くなる。言われるがままに、指を動かす。彼の手は、重ねられたままだ。
彼への奉仕も忘れて、夢中で指を動かす。でも、物足りない何か。
重ねた手を離し、今度は私が彼の手の上に自分の手を重ねる。
彼の指が、私のそこに触れて、思わずびくりと身体を仰け反らせる。

「……おねがい……いかせて……」

言ってしまってから、なんて卑猥な台詞だろうと思う。
でも、押さえる事が出来ない身体の疼き。

「いきたいの?」

彼の声が、身体中に響く。早く触って。いかせて…。
急かすように、重ねた手の上から、その突起を押し付けた。
彼が、それに答えるように、指を動かす。

「……ぁ………ん………」

与えられた快楽に、逆らう事など出来ない。
思い出したように、彼のものに舌をのばす。でも、うまくはいかなかった。

「……ぁ……い…く………い……っちゃう…よ……!!」

私はあっけなく絶頂を迎えた。
甘い気だるさが、全身を包む。肩で深く息をついた。

「今度は俺の番だよ」

そう言って、私の身体を横向きにさせる。目の前には、彼のもの……。
吸い込まれるように、それにくちづける。
彼は自分で竿を持って、先端からにじみ出た液体を私の唇へ塗り付けた。
それから逃れるように、私はうつ伏せになってその先を捕らえる。
彼が私の手を取って、竿の部分を握らせた。
ゆっくりと手を動かしながら、先を舌でなぞる。
手を離して、喉の奥までそれをくわえこむ。
激しく口を動かしていると、彼に頭を押さえ込まれた。

「いくよ………」

彼の声が上ずる。絶頂が近い事を示すように、私の口へ腰を打ち付けてくる。
苦しい、と思う間もなく、口の中に生温い体液が注ぎ込まれた。
こぼさないように、全部を受け止め、飲み干す。
最後の一滴も逃さないように、口をすぼめてその先を吸って、そっと唇を離した。






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