負けるもんか
シチュエーション


「うん、私。今近くまで来てるの。いい?」

電話の向こうの困惑した声。

「もう、電車無いし、お願いね。」

断りの言葉を捜す暇を与えずに電話を切る。

「・・・ったく、いい加減にしろよな。もう寝るところだったんだぜ。」
「そう、ごめんね。」
・・・その割には出るの早かったじゃない?・・・

玄関口でぶーたれながらも部屋へ上げてくれる彼。

「じゃ、シャワー借りるね。」

私はいつもの通りの言葉を投げかける。

「ああ、勝手にしろ。寝室はそっちだ。俺はソファに寝るから。」
「うん。」

バスルームには洗いざらしの気持ちのいいタオル。そして大きなTシャツ。

・・・ダレカラノデンワヲマッテイタノ・・・・

熱めのシャワーを全身に浴びながら、私は思った。

出てくれば、そこはもはや起きている気配すらない。寝室のベッドがきちんと片付けられている。リビングを覗けばソファの上に人影。
私はわざとキッチンへ入り明かりをつける。

「・・眩しいぞ。はよ消せ。」
「ビールくらい頂戴よ。」
「俺は寝る。」
「付き合ってよ。」
「やだよ。明日早いんだから。」

私に背を向けるようにタオルケットをかぶる。私はビール片手に彼の横に立つ。

「・・だよ。お前、寝室はあっちだ。」
「・・・一緒にねよっか?」
「・・んあ?!・・・あほかお前。」
「本気だけど?」
「あ〜はいはい。今度ね今度。俺眠いんだ。」

意に介さず、片手をひらひらさせ私を追い払う仕草をする。その手を掴み唇を押し当てる。引こうとするそれを無理やり押える。

「やめろ!」
「い・や。やめないよ。」

私はその指先を口に含んだ。そして分身にするように舌を絡ませる。
1本1本丁寧に舐めあげる。その間も彼はどうにかそれをやめさせようと躍起になる。

「気持ち、いい、でしょ?」
「いい加減に・・・・・」

彼が身体を私の方に向けるため仰向けになったところに間髪いれず馬乗りになる。

「どけよ!」
「いやよ。あんただって気持ちよくなってんじゃないの!こんなにしてさ。」

私の太ももに感じる熱い塊。私は思わずそれをパジャマの上から掴んだ。

「・・っく・・」
「もっとして欲しいでしょう?」
「・・・・・・んな・・こた・・ねぇ・・・」

彼の額に浮かぶ汗が言葉を裏切る。

「そう?」

そういいながら私の手が、ズボンの中へ滑り込み、直接大きくなったそれを握る。

「・・っぐ・・」

私の手の中で重量感を増すそれに私はほくそえむ。

「嘘つき・・・・」

彼を見下ろしながら、私は勝利を確信する。彼の瞳に狼狽の影がまだ見える。

「ねぇ、どうする?」

・・・意味は分かるでしょう?・・・

私は指先で彼のそれを上下に擦りあげる。

「・・・や・・・めろ・・・・」
「やめていいの?」

するりと手を抜き取ると、シャツをずらし上げ彼の乳首を摘む。

「ここ・・・・感じるんだったよね?」
「・・うっ・・・」

彼の首が仰け反る。その首筋ののど仏に噛み付くように唇を寄せる。

「このまま、噛み付いちゃおうかな?」

そう言ってきつく吸い上げると、赤く跡が残る。

「あ〜あ、明日大変だね?どうする?見られちゃったら?なんて返事するの?」
「て・・めぇ・・・・」

私は楽しそうに彼を見つめる。その瞳に淫乱の光を宿して。彼が何か言おうとしたときその唇を塞ぐ。

「・・んぐぐ・・ん・・・」

唇をこじ開け、舌を吸出し絡ませる。

・・・アナタハワタシノモノダッタハズ・・・

まだ、貴方には彼女は作らせない。
まだ、貴方は幸せになんかさせてやらない。
それは貴方の罪だから。

飽くことなく彼の唇を犯すと私は唇を離す。

「ふふふ・・・・」

私はゆっくりと唇で彼の身体を上からなぞるように愛撫していく。そして彼の下腹部のいきり立ったものをズボンから取り出し、今度はそれを思う存分口内でいたぶった。彼の顔が快楽と罪悪感の中でゆがむ。

・・・もっと、感じて・・もっと・・・

私は彼のそれの先からしょっぱい液を出し始めたことを知ると、口から出す。

「ここで?ベッドで?どっちがいい?それとも、やめる?」

やめられないことなど承知の上で聞く。

・・・サアワタシヲダキナサイ・・・

彼の上でTシャツを脱ぎ捨てる。闇の中にぼんやりと浮かび上がる私の身体。彼の両手を私の乳房へと持ち上げる。

「・・ち・・・くしょ・・う・・」

彼は私をソファに押し付けると正面から私の体内にそれを埋め込んだ。

「ああ!!いいわ・・・・」

部屋に響き渡る肉のぶつかり合う音。じゅるじゅるといやらしい水音とともに。
それを引き裂く電話の呼び出し音。彼の動きが一瞬止まる、その腰に私は足を絡みつける。

「・・ねぇ・・・もっとぉ・・・・・・」

私は吐息とともに彼に誘いかける。腕を伸ばし彼の頭を自分の胸元へと押し当てる。
両耳を手で塞いでやる。

・・・アナタニハナニモキコエナイノヨ・・・・・

私は自ら腰をくねらせ、彼のそれを引き込む。彼はその動きに身体を震わし、自身で動き始める。

「・・いい・・・あ・・・ああ・・ん・・・奥・・・・までぇ・・・ああ・・・・」

私の口から歓喜の声が上がり続ける。

「・・ん・・・・いい・・・・のぉ・・・ね・・・ぇ・・・あ・・・ああ!!!」

彼の腰が激しく前後に揺すられる。私はその擦れる感覚に酔わされている。

「・・やぁ・・・あ・・・ああん・・・・」

荒い息が彼の口から漏れてくる、そして私の唇も。全身から汗が噴出す。
私は彼に抱きかかえられ、彼がソファに座る形にされる。知らずに腰が上下に動き始める。彼の手が私の胸を強く揉みしだいている。その荒々しさに私は我を忘れて腰を振った。

「っく・・」
「ああ!!!!い・・くぅ・・・・!!」

彼のが一瞬大きく膨れる。そうして私の胎内に熱い液体を注ぎ込む。私のそこはひくひくと彼を求めてひくつき、あまねくすべてを奪い取ろうとする。
脱力したように彼に抱きつき、火照った身体を重ねながら、ぼんやりと電話機を眺める。
チカチカと留守電の録音があることを知らせている。
おそらくそれは彼の待っていた電話だろう。

でも、だめ。
彼は私のもの。

他の誰かになんかあげない。






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